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はじめて心の不調に気づいた日——私が精神障害と向き合うまで

📖 約17✍️ 鈴木 美咲
はじめて心の不調に気づいた日——私が精神障害と向き合うまで
ある朝、布団から出られなくなった私が、精神障害に気づき、受診を決意し、治療を受けながら向き合ってきた体験談です。「ただの疲れ」だと見過ごしていたサイン、受診への葛藤、初めての診察での驚き、そして治療を通じて学んだこと。同じように心の不調を感じている方、ご家族の方に、一人で抱え込まず専門家の力を借りることの大切さを伝えます。早期の相談が回復への第一歩です。

ある朝、いつもと違う自分に気づいた

朝、目が覚めても布団から出られない。体が鉛のように重く、何をする気力も湧いてこない——そんな経験はありませんか?

私がはじめて心の不調に気づいたのは、社会人3年目の秋のことでした。それまで「ちょっと疲れているだけ」「気合いが足りない」と自分に言い聞かせていた日々が、実は精神障害のサインだったと知るまでには、長い時間がかかりました。

この記事では、私自身の体験を通して、心の不調に気づくきっかけ、受診を決意するまでの葛藤、そして精神障害と向き合う日々について、率直にお話しします。同じような悩みを抱える方、ご家族の方の参考になれば幸いです。

「ただの疲れ」だと思っていた日々

見過ごしていた小さなサイン

振り返ってみると、心の不調のサインは、実は半年以上前から出ていました。でも当時の私は、それらを「仕事が忙しいから仕方ない」と片付けていたのです。

最初に現れた変化は、睡眠の乱れでした。夜中に何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまう、逆に休日は昼過ぎまで眠り続けてしまう——こうした症状が日常になっていました。

次第に、以下のような変化も現れるようになりました。

  • 好きだった趣味に興味が持てなくなる
  • 友人からの誘いを断るようになる
  • 食事の味がわからない、食欲がない
  • 些細なことでイライラする
  • 集中力が続かず、仕事でミスが増える

💡 ポイント

心の不調のサインは、一つだけでなく複数が組み合わさって現れることが多いです。「いつもと違う」と感じる変化が2週間以上続く場合は、注意が必要です。

「自分は大丈夫」という思い込み

こうした変化に気づきながらも、私は医療機関を受診しようとは思いませんでした。「精神科に行くほどではない」という思い込みが、強くあったからです。

当時の私には、こんな考えがありました。「精神障害は、もっと深刻な状態になった人がなるもの」「自分はまだ働けているし、日常生活も送れている」「気の持ちようで治るはず」——今思えば、こうした考えが受診を遅らせる大きな要因になっていました。

また、周囲に相談することへの抵抗感もありました。家族や友人に心配をかけたくない、弱音を吐きたくない、という気持ちが先立ち、一人で抱え込んでしまっていたのです。

限界を迎えた日

そんな状態が続いたある日、私は会社のデスクで突然涙が止まらなくなりました。特別なきっかけがあったわけではありません。ただ、パソコンの画面を見つめていたら、理由もなく涙が溢れてきたのです。

その日、上司に早退を申し出て、そのまま自宅に帰りました。布団に入っても涙は止まらず、「このままではいけない」と初めて強く感じた瞬間でした。

「心が風邪をひいただけ。誰にでも起こりうることなんだ」

— 後に主治医が私にかけてくれた言葉

受診を決めるまでの葛藤

どこに相談すればいいのか

受診を決意したものの、次の問題は「どこに行けばいいのか」でした。精神科、心療内科、メンタルクリニック——似たような名称の医療機関がたくさんあり、何が違うのかもよくわかりませんでした。

まず私が頼ったのは、インターネットでの情報収集でした。口コミサイトで評判を調べたり、各クリニックのホームページを見比べたりしました。でも、情報が多すぎて逆に迷ってしまったのです。

✅ 成功のコツ

初めて受診する際は、まずお住まいの自治体の「保健センター」や「精神保健福祉センター」に電話で相談するのがおすすめです。専門の相談員が、症状に応じて適切な医療機関を紹介してくれます。

受診への心理的ハードル

実は、最初に予約を入れた日、私はクリニックの前まで行きながら、そのまま引き返してしまいました。「本当に自分が精神科に行っていいのだろうか」という迷いが、最後まで消えなかったのです。

当時の私を躊躇させていた要因は、以下のようなものでした。

  1. 精神科を受診することへのスティグマ(偏見)
  2. 診断名がつくことへの恐怖
  3. 薬物療法への不安
  4. 周囲にどう説明すればいいかわからない

特に、「精神科を受診した」ということが、職場や周囲に知られてしまうのではないかという不安が大きかったです。

背中を押してくれた言葉

そんな私の背中を押してくれたのは、偶然再会した大学時代の友人でした。久しぶりに会った彼女は、私の様子がいつもと違うことにすぐ気づき、心配して声をかけてくれました。

彼女自身も数年前にうつ病と診断され、治療を受けた経験があることを打ち明けてくれました。「早く受診したおかげで、今はこうして元気に働けている。一人で抱え込まないで」——その言葉に、私は救われた思いがしました。

友人との会話の後、私はもう一度クリニックに予約の電話を入れました。今度は、ためらうことなく受診日を迎えることができました。

初めての診察で感じたこと

診察室での緊張と安堵

初診の日は、待合室で座っているだけで心臓がドキドキしていました。でも、実際に診察室に入ると、想像していたのとは全く違う雰囲気でした。

医師は穏やかな口調で、「今日はどうされましたか?」と尋ねてくれました。私は準備していた言葉を忘れ、ただ「朝、起きられなくて」「涙が止まらなくて」と、つたない言葉で症状を伝えました。

医師は私の話を一つひとつ丁寧に聞いてくれました。否定したり、叱ったりすることは一切なく、ただ「つらかったですね」「よく来てくれましたね」と言ってくれたのです。

診断を受けて

問診と簡単な検査の結果、私は「適応障害」と診断されました。職場のストレスが原因で、抑うつ状態に陥っているとのことでした。

診断名を告げられたとき、私の中には複雑な感情が渦巻いていました。一方では「やはり病気だったのか」というショック、もう一方では「原因がわかってよかった」という安堵——その両方が同時に存在していました。

⚠️ 注意

診断名はあくまで治療を進めるための指標の一つです。同じ診断名でも、症状や経過は人それぞれ異なります。診断名に過度にとらわれず、自分に合った治療を見つけることが大切です。

治療方針の説明

医師からは、以下のような治療方針が提案されました。

治療内容 具体的な方法
薬物療法 抗うつ薬と睡眠導入剤の処方(少量から開始)
休養 診断書を発行し、2週間の休職を推奨
カウンセリング 臨床心理士との面談(月2回)
生活指導 睡眠リズムの改善、軽い運動の導入

特に休職については、「働けているうちは大丈夫」と思っていた私にとって、大きな決断でした。でも医師は、「今休まなければ、もっと長い休養が必要になるかもしれない」と説明してくれました。

精神障害と向き合う日々

周囲への説明と理解

診断を受けた後、最も難しかったのは、職場や家族への説明でした。特に会社への報告は、大きなプレッシャーを感じました。

上司に診断書を提出したとき、予想外の反応が返ってきました。「実は気になっていたんだ。無理させてしまって申し訳なかった」——その言葉に、私は思わず涙が溢れました。

家族への説明では、母親が最初は戸惑っていました。「何か私たちが悪かったのか」と自分を責める母に、「誰のせいでもない。脳の病気なんだ」と伝えるのに時間がかかりました。

治療の中で見えてきたもの

休職中は、カウンセリングを通して自分自身と向き合う時間が増えました。臨床心理士との対話の中で、私は自分が完璧主義的な傾向が強く、人に頼ることが苦手だったことに気づきました。

薬物療法については、最初は抵抗がありました。「薬に頼るのは負け」だと思っていたからです。でも、服薬を始めて2週間ほどで、少しずつ気持ちが楽になっていくのを感じました。

  • 朝、自然に目が覚めるようになった
  • 食事が美味しく感じられるようになった
  • 本を読んだり、音楽を聴いたりする余裕が出てきた
  • 散歩に出かけられるようになった

こうした小さな変化の積み重ねが、回復への道筋を感じさせてくれました。

復職に向けて

医師と相談しながら、段階的な復職プログラムを計画しました。まずはリワークプログラム(復職支援プログラム)に通い、生活リズムの安定と作業能力の回復を図りました。

リワークでは、同じように精神障害を抱えながら復職を目指す仲間と出会いました。それぞれの経験や工夫を共有し合う中で、「自分だけじゃない」という安心感を得ることができました。

💡 ポイント

リワークプログラムは、全国各地の医療機関や障害者職業センターで実施されています。復職の成功率を高めるだけでなく、再発予防にも効果があることが報告されています。

今、大切にしていること

復職してから現在まで、私は主治医の診察を月に一度受け続けています。症状が落ち着いた今でも、定期的な通院を続けることで、再発のサインを早期に発見できるからです。

また、日々の生活の中で、以下のようなことを心がけています。

  1. 十分な睡眠時間を確保する(7-8時間)
  2. 無理なスケジュールを組まない
  3. 困ったときは早めに相談する
  4. 自分を責めすぎない
  5. 小さな楽しみを大切にする

精神障害は、「治った」「治らない」という二択ではなく、上手に付き合っていくものだと、私は考えるようになりました。調子の良い日もあれば、悪い日もある。それを受け入れながら、自分のペースで歩んでいくことが大切なのです。

よくある質問

Q1: 精神科と心療内科、どちらを受診すればいいですか?

一般的に、精神科は心の症状(抑うつ、不安、幻覚など)が中心の場合、心療内科は心の問題から生じる体の症状(胃痛、頭痛など)が中心の場合に適しています。ただし、多くのクリニックでは両方の診療を行っているため、迷ったら電話で相談してみるとよいでしょう。

Q2: 初診にはどのくらい時間がかかりますか?

クリニックにもよりますが、初診は30分から1時間程度かかることが多いです。問診票の記入時間も含めると、余裕を持って1時間半から2時間程度を見ておくと安心です。

Q3: 受診したことは会社に知られますか?

医療機関には守秘義務があるため、患者本人の同意なく会社に情報が伝わることはありません。ただし、診断書の提出や傷病手当金の申請など、自分から会社に伝える必要がある場合もあります。

Q4: 薬は一生飲み続けなければいけませんか?

症状や診断によって異なりますが、多くの場合、症状が安定すれば徐々に減薬し、最終的には服薬を終了することができます。ただし、再発予防のために長期的な服薬が推奨される場合もあります。必ず主治医と相談しながら進めましょう。

Q5: 家族としてどうサポートすればいいですか?

まずは、本人の話をじっくり聞き、「理解しようとする姿勢」を示すことが大切です。「頑張れ」などの励ましは逆効果になることもあります。また、家族自身も「家族教室」や「家族会」に参加して、正しい知識とサポート方法を学ぶことをおすすめします。

まとめ

この記事では、私自身が精神障害に気づき、受診を決意し、治療を受けながら向き合ってきた経験についてお話ししました。

  • 心の不調のサインは、「いつもと違う」変化が2週間以上続くときに現れます
  • 受診を躊躇する気持ちは自然なことですが、早期の相談・受診が回復への第一歩です
  • 精神障害は「治す」よりも「上手に付き合う」という視点が大切です
  • 周囲の理解とサポート、そして自分自身を大切にすることが回復を支えます

心の不調を感じたら、一人で抱え込まず、まずは信頼できる人に話してみてください。そして、専門家の力を借りることを恐れないでください。あなたの勇気ある一歩が、きっと明日への希望につながります。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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