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支援機関を利用して変わった親子関係

📖 約48✍️ 鈴木 美咲
支援機関を利用して変わった親子関係
知的障害と難病を抱える息子を一人で育てようとして限界を迎えた母親が、相談支援事業所や放課後等デイサービスなどの支援機関を利用することで、どのように親子関係を修復したかを描いた体験談です。過度な責任感から「指導者」のようになっていた自分を反省し、外部のプロに頼ることで得られた「客観的な視点」や「心の余裕」の重要性を説いています。また、夫婦関係の改善や将来への不安解消など、支援機関を利用する多角的なメリットを紹介し、孤独な育児に悩む保護者へ向けて「頼る勇気」を後押しする内容となっています。

専門家を頼る勇気がもたらした変化——支援機関とともに歩む新しい親子のかたち

「この子の将来のために、私だけが頑張らなきゃいけない」と、一人で全てを抱え込んでいませんか。知的障害や難病を抱えるお子さんの育児は、想像以上に過酷です。愛情があるからこそ、できないことに焦り、つい感情的に叱ってしまい、後で自己嫌悪に陥る。そんな負のループに苦しんでいる親御さんは少なくありません。

私自身、息子の障害が判明してから数年間、周囲に助けを求めることができず、親子関係が壊れかけた経験があります。しかし、支援機関という外部の力を借りることで、驚くほど心が軽くなり、息子との向き合い方が変わりました。この記事では、支援機関を利用して親子関係がどう改善されたのか、私の実体験を交えながら詳しくお伝えします。この記事が、あなたの孤独な育児を終わらせるきっかけになれば幸いです。


密室育児の限界と崩れかけた信頼関係

「私がこの子を守る」という過度な責任感

息子に重度の知的障害と、進行性の難病の可能性があると告げられたあの日、私の世界は一変しました。医師からの宣告を受け入れたつもりでも、心の奥底では「私がしっかり教育すれば、少しでも良くなるはずだ」という強い思い込みがありました。そのため、療育センターの予約を詰め込み、家庭でも24時間体制で訓練を強いるような生活を送っていました。

しかし、思い通りに進まないのが育児です。言葉が出ない、食事をこぼす、突然のパニック。それらに対して、私はいつの間にか「母」ではなく、厳格な「指導者」になっていました。息子が私を見て笑う回数は減り、代わりに顔色をうかがうような仕草を見せるようになったのです。それは、私たちが理想としていた温かな家庭とは程遠い状態でした。

家庭内が戦場と化した日々

当時の我が家は、常に緊張感に満ちていました。難病の影響で体調管理も厳しく、少しの発熱でもパニックになる私を見て、夫もどう接していいか分からず、夫婦の会話も途絶えがちでした。私は、息子のためを思ってやっていることが、結果的に息子を追い詰め、私自身の心も蝕んでいることに気づけませんでした。

ある日、いつものように食事の介助中に手が止まった息子に対し、私は強い言葉を投げかけてしまいました。その瞬間に見せた息子の怯えた表情。私はその夜、自分の愚かさに震えながら泣きました。これが、私が「自分一人の力ではもう無理だ」と認めざるを得なくなった瞬間でした。

⚠️ 注意

親が一人で責任を背負いすぎると、精神的な余裕がなくなり、虐待やネグレクトのリスクが高まります。早めに外部と繋がることは、子供を守るための義務でもあります。

孤立から抜け出す第一歩

翌日、私は以前からパンフレットだけ持っていた「相談支援事業所」に電話をかけました。最初は「こんなことで電話していいのだろうか」という不安もありましたが、電話口の相談員さんは私の声を静かに聞いてくれました。涙ながらに話す私の支離滅裂な訴えを、否定せずに受け止めてくれたのです。

相談員さんは、「お母さん、よくここまで一人で頑張りましたね」と言ってくれました。その一言で、私は何年も着ていた重い鎧をようやく脱げたような気がしました。支援機関を利用するということは、親としての責任を放棄することではなく、専門家チームの一員として、より良い育児環境を作ることなのだと教わったのです。


支援機関との連携がもたらした具体的な変化

客観的な視点を取り戻す

支援機関を利用し始めて最も良かったのは、我が子の状態を客観的に見られるようになったことです。以前の私は、他の子と比較して「これができない」と欠点ばかり探していました。しかし、相談支援専門員や放課後等デイサービスの先生方は、息子の「今できていること」をたくさん見つけてくれました。

「〇〇くん、今日は自分から靴を揃えられましたよ」「表情がとても豊かになりましたね」。第三者からの温かいフィードバックを受けることで、私も「そうか、この子は成長しているんだ」と素直に思えるようになりました。視点が変わるだけで、日常の風景がこれほど明るく見えるのかと驚きました。

適切な距離感が育む「自立」

放課後等デイサービス(放デイ)や短期入所(ショートステイ)を利用することで、物理的に息子と離れる時間ができました。最初は「見捨てたように思われないか」と不安でしたが、実際には逆でした。離れている時間があるからこそ、会ったときに心から優しく接することができるようになったのです。

息子にとっても、親以外の信頼できる大人や友達と過ごす時間は、社会性を育む大切な機会となりました。家庭という狭い世界では教えられなかった「ルールの守り方」や「他者とのコミュニケーション」を、支援機関が肩代わりしてくれました。これにより、家庭内での執着が減り、親子ともに自立への一歩を踏み出すことができました。主な支援機関の役割を以下のテーブルにまとめます。

支援機関名 主な役割とメリット 利用による変化
相談支援事業所 サービス利用計画の作成、情報の提供 悩みを共有し、将来のビジョンが明確になる
放課後等デイサービス 生活能力向上のための訓練、放課後の居場所 本人の社会性が育ち、親のリフレッシュになる
児童発達支援センター 専門的な療育、保護者への助言 家庭での適切な接し方が具体的にわかる
短期入所(ショートステイ) 宿泊を伴う預かり、緊急時の対応 親の休息(レスパイト)と本人の宿泊体験

専門的な知識がもたらす心の余裕

難病を抱える子の育児では、医学的な不安が常に付きまといます。支援機関を通じて、地域の保健師さんや訪問看護ステーションとも連携を深めることができました。体調の変化があった際に、すぐに相談できるバックアップ体制があるという事実は、私の心の平穏を保つ大きな支えとなりました。

また、行動障害に対する具体的な対処法をプロから学べたことも大きかったです。以前は力づくで抑えていたパニックも、「感覚過敏が原因かもしれない」「今は静かな場所で待とう」といった適切な知識に基づいた対応ができるようになりました。知識は武器であり、それは同時に親子を不必要な衝突から守る盾でもあります。

💡 ポイント

支援機関のスタッフは、家族の「味方」です。良いところだけでなく、困っていることや辛い気持ちも正直に話すことで、より実態に合った支援計画が作られます。


「母」に戻れた喜びと息子の成長

笑顔が増えた食卓

支援機関を導入してから半年が経つ頃には、家庭の空気は劇的に変わっていました。私が「教えなきゃ」と必死になるのをやめたことで、息子はリラックスして食事や遊びを楽しめるようになりました。以前は地獄のようだった食事の時間も、今では「美味しいね」と笑い合える時間になっています。

私が笑顔になると、不思議と息子のパニックも激減しました。親の不安や緊張は、子供に敏感に伝わります。支援機関に一部の役割を預けたことで、私は「療育の先生」ではなく、ようやく「お母さん」に戻ることができたのです。ただ隣にいて笑っている。そんな当たり前のことが、何よりも息子を成長させていることに気づきました。

夫との関係修復

支援機関とのやり取りには、夫にも可能な限り同席してもらいました。それまで「妻が一人で抱えているから口出しできない」と思っていた夫も、プロの意見を聞くことで息子の障害をより深く理解し、当事者意識を持つようになりました。今では、週末のデイサービスの送迎や、相談員さんとの面談も積極的に分担してくれます。

共通の理解者が外にいることで、夫婦間の喧嘩も減りました。困ったときは「相談員さんに聞いてみよう」という共通の解決ルートがあるため、お互いを責める必要がなくなったのです。家族というチームが、支援機関というサポーターを得て、ようやく機能し始めたのを感じました。

将来への不安が「希望」に変わるまで

知的障害や難病があると、どうしても将来の就労や生活に悲観的になりがちです。しかし、相談支援専門員さんと「将来のケアプラン」を一緒に作成したことで、具体的な道筋が見えてきました。グループホームの存在や、就労継続支援の仕組みを知ることで、「私が死んだらこの子はどうなるのか」という漠然とした恐怖が和らぎました。

「今を楽しく生きるための支援」と「未来を守るための準備」を同時進行で行う。それができるのが支援機関の強みです。未来への不安が解消されると、今この瞬間の息子の成長を、もっと純粋に喜べるようになりました。私たちは、ようやく「今」を大切に生きるという当たり前の幸せを手に入れたのです。

「一人で抱えるのは愛情ではなく、執着でした。外の手を借りて初めて、息子を心から愛することができるようになりました。」

— 難病児を持つAさん(40代・女性)


よくある質問(FAQ)

Q. 支援機関を利用したいけれど、どこに連絡すればいいですか?

まずは、お住まいの市区町村の「障害福祉課」「児童福祉課」の窓口に相談してください。そこから地域の「相談支援事業所」を紹介してもらえます。また、療育センターや保健センターでも案内を受けられます。まずは「今の生活が辛い」「サポートが欲しい」と正直に伝えることから始めましょう。

Q. サービスを利用すると、お金がかかりすぎて心配です。

障害福祉サービスや児童福祉サービスの自己負担額は、世帯所得に応じて上限額が設定されています。多くの世帯では月額0円や4,600円、高所得世帯でも37,200円が上限となっており、非常に手厚い公的支援を受けられます。詳細な金額については、自治体の窓口で計算してもらうことができますので、安心してください。

Q. うちの子はまだ診断が出ていませんが、利用できますか?

医師の確定診断がなくても、「児童発達支援」などのサービスは受給者証が発行されれば利用できる場合があります。自治体によりますが、療育が必要であることを示す診断書や、医師の意見書があれば申請可能です。まずは「診断待ちですが困っています」と相談員さんに伝えてみてください。

✅ 成功のコツ

複数の支援機関を見学し、お子さんやあなたと相性の良い場所を選びましょう。一つの場所でうまくいかなくても、別の場所ならうまくいくことも多いです。


支援を受けることを「負け」だと思わないで

自分を大切にすることが、子供への最大のプレゼント

多くの親御さんが、「自分が頑張れば済むことだ」と自分を犠牲にしています。しかし、疲弊しきった親に育てられることは、子供にとっても大きな負担です。あなたが休息をとり、趣味を楽しみ、笑顔を取り戻すことは、子供にとって最もポジティブな環境改善なのです。支援を受けることは、決して親としての負けではありません。

むしろ、早いうちに多くの「他人の手」に慣れさせておくことは、将来親がいなくなった後のことを考えても、子供にとって素晴らしいリスクヘッジになります。親以外の大人に愛され、大切にされる経験をたくさん積ませてあげてください。それは、一生の宝物になります。

一歩踏み出す勇気が、景色を変える

もし今、この記事を読みながら涙が止まらないという方がいたら、それこそが「限界」のサインです。明日一番に、近くの支援センターに電話をかけてみてください。勇気を出して繋いだその手が、あなたと息子さんの関係を、もっともっと温かく、穏やかなものに変えてくれるはずです。

かつての私のように、一人で戦わないでください。あなたの周りには、助けたいと思っている専門家がたくさんいます。彼らと一緒に歩み始めることで、育児は「苦行」から「彩り豊かな旅」へと変わっていきます。その旅の途中には、きっと想像もしなかったような息子の笑顔や、家族の絆が待っています。

これからのアクション提案

今日からできる小さなアクションをいくつか提案します。無理のない範囲で、一つだけでも試してみてください。

  • まずは自分の住んでいる地域の「相談支援事業所」をネットで検索してみる。
  • 現在の困りごとを、ノートに箇条書きで書き出してみる(相談の際に役立ちます)。
  • 自治体の障害福祉のガイドブック(冊子)を取り寄せ、眺めてみる。
  • 今日一日頑張った自分に、「お疲れ様、よくやった」と声をかけてあげる。
まずは「知ること」から。それが、新しい親子関係の始まりになります。


まとめ

支援機関を利用することで、私たちは「閉ざされた密室」から「開かれたチーム」へと変化しました。親一人の力には限界がありますが、地域の支援体制を味方につけることで、その限界は何倍にも広がります。

  • 「指導者」から「親」へ:教育や訓練をプロに任せることで、家庭はリラックスできる安らぎの場に変わります。
  • 孤立を解消する:相談できる相手がいるだけで、精神的なレジリエンス(回復力)が格段に向上します。
  • 子供の可能性が広がる:親以外の大人との関わりが、知的障害や難病のある子の世界を豊かに広げます。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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