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学校の理解が得られず、悩み続けた日々

📖 約55✍️ 鈴木 美咲
学校の理解が得られず、悩み続けた日々
知的障害や難病を持つお子さんの学校生活において、学校側との理解の齟齬に苦しんだ保護者の実体験をベースにした記事です。学校側の「公平性へのこだわり」や「現場の余裕のなさ」といった背景を分析しつつ、感情的な対立を避け、建設的に支援を引き出すための戦略を詳しく解説しています。医師の意見書や「サポートブック」の活用、家での様子を映した動画による可視化、そして教育委員会や医療機関を巻き込んだチーム支援の構築など、孤立した親が現状を打破するための具体的なステップを提案。今まさに悩みの中にいる読者に寄り添い、希望を届ける内容です。

見えない壁に抗った日々——学校との対立を乗り越え、最善の支援を勝ち取るまで

「なぜ、うちの子の困り感を分かってもらえないのだろう」。そんな孤独な思いを抱えながら、学校の門をくぐる親御さんは少なくありません。知的障害や希少難病を抱えるお子さんにとって、学校は学びの場であると同時に、最も「理解の壁」にぶつかりやすい場所でもあります。特に外見からは分かりにくい困難さがある場合、親の訴えが「過保護」や「わがまま」と片付けられてしまうことさえあります。

私自身、難病と軽度の知的障害を持つ息子の就学において、学校側との深刻な温度差に何度も涙しました。何度も話し合いを重ねても平行線のまま、絶望感に苛まれた日々は今でも忘れられません。しかし、あるきっかけから戦略を変え、一歩ずつ「理解の土壌」を耕していくことができました。この記事では、苦しみの渦中にいた私の実体験をもとに、学校側の心理や、建設的な関係を再構築するための具体的な方法を詳しくお伝えします。今まさに孤独な戦いを続けているあなたの心が、少しでも軽くなることを願っています。


「普通」を求める学校との間に生じた深い溝

診断名だけでは伝わらない「生活のしづらさ」

息子が小学校に入学した当初、私は診断書を提出し、必要と思われる配慮を一覧にして伝えました。しかし、学校側の反応は意外なほど冷ややかなものでした。「診断名があるのは分かりますが、学校では普通に過ごせていますよ」という言葉。これが、長く険しい対立の始まりでした。

学校という集団生活の場では、先生方は「目に見えるトラブル」がない限り、その子が困っているとは認識しにくい傾向があります。息子は家ではパニックを起こし、ぐったりと寝込んでしまうほど疲弊していましたが、学校では必死に周りに合わせ、「適応しているふり」をしていたのです。この「学校での姿」と「家での姿」の乖離が、私と先生の間の大きな溝となりました。

「特別扱い」を警戒する教育現場の心理

先生方との面談を重ねる中で見えてきたのは、現場の強い「公平性」へのこだわりでした。「一人にだけ特別な配慮をすると、他の保護者から不公平だと言われる」「前例がないので難しい」といった言葉が繰り返されました。当時の私には、それが子供を見捨てているかのように聞こえ、激しい憤りを感じていました。

しかし、後になって分かったのは、先生方もまた「余裕のない現場」で戦っていたということです。一クラス30人以上の児童を抱え、多忙を極める中で、未知の難病や障害への対応に強い不安と負担感を抱いていたのです。相手を「敵」と見なして攻撃しても、事態は悪化するばかりでした。このすれ違いを解消するには、感情的な訴えではない「別の力」が必要でした。

⚠️ 注意

学校を「敵」と見なして強い口調で責めると、防衛反応からさらに壁を厚くされてしまうことがあります。悔しい思いがあっても、まずは「共通の目的(子供の幸せ)」を確認する姿勢が大切です。

孤立無援の親が陥る「精神的な闇」

学校との交渉がうまくいかない日々が続くと、親の心は次第に蝕まれていきます。「私の伝え方が悪いのか」「息子がもっとしっかりしていれば」と、自責の念に駆られるようになりました。学校へ行くのが怖くなり、電話のベルが鳴るたびに動悸がする。そんな極限状態にまで追い詰められていました。

周囲のママ友には相談できず、夫とも意見が合わない。この時期の私は、まさに孤立無援でした。しかし、このままでは親子共倒れになってしまうという危機感が、私を外の世界へと向かわせました。自分たちだけで解決しようとするのをやめ、外部の専門家や支援者に助けを求めることを決意したのです。


状況を一変させた「客観的なデータ」の力

医師や専門家の「意見書」を活用する

親の言葉が届かないなら、専門家の言葉を借りよう。そう考えた私は、主治医や療育センターの心理士さんに相談しました。そこで作成してもらったのが、具体的な「合理的配慮」の根拠を示す意見書です。「疲れやすいのは本人の甘えではなく、疾患によるエネルギー代謝の異常である」といった医学的見地からの記述は、非常に強力な説得力を持ちました。

学校は、保護者の主観的な要望には「検討します」で逃げがちですが、専門家による書面での指摘には真摯に対応せざるを得ません。この意見書を提出した際、先生方の表情が変わったのを覚えています。初めて「この子の困りごとは実在するのだ」と、客観的な事実として認識してもらえた瞬間でした。

「サポートブック」で我が子のトリセツを作る

次に私が取り組んだのは、息子の特性を一枚で把握できる「サポートブック」の作成です。分厚い診断資料ではなく、パッと見てすぐに理解できる工夫を凝らしました。これがあることで、先生方も「どう接すればいいか」の具体的なガイドラインを手に入れることができ、心理的なハードルが下がったようでした。

  • 得意なこと:絵を描くこと、ルールを守ること
  • 苦手なこと:急な予定変更、大きな音(聴覚過敏)
  • パニック時の対応:静かな場所へ移動し、落ち着くまで待つ(声掛けは逆効果)
  • 緊急時の連絡先:主治医の電話番号、救急搬送の要否

💡 ポイント

サポートブックは「短く、簡潔に」が鉄則です。多忙な先生が休み時間にサッと目を通せる分量にまとめることで、活用の可能性がぐんと高まります。

家での様子を「動画」で可視化する

「学校では頑張っています」という言葉を打ち破るために、私は家での息子の様子を短い動画に収め、面談で見ていただきました。放課後、玄関で倒れ込むように寝てしまう姿、パニックで自分の頭を叩く姿。言葉でどれだけ説明しても伝わらなかった「息子の真実」が、数分の映像で先生方の心に届きました。

先生方は絶句し、「ここまで大変だとは思いませんでした」と謝罪してくださいました。学校での姿は、息子が必死に振り絞った限界の努力の結果だったのです。この動画の共有は、学校と家庭が同じ「現実」を共有するための最大の転換点となりました。目に見えない障害だからこそ、視覚的な情報は強力な武器になります。


「チーム」として歩み寄るための交渉術

「できないこと」ではなく「やりたいこと」を語る

これまでの交渉では、どうしても「配慮が足りない」「ここがダメだ」というマイナスの指摘ばかりになっていました。しかし、それでは先生方のモチベーションを下げてしまいます。そこで、私は「将来、この子にどうなってほしいか」というプラスの目標を語るようにしました。

「今は算数ができなくてもいい、まずは笑顔で学校に来られるようになってほしい」。そうした共通のゴールを設定することで、先生方も「自分たちが何を助ければいいか」が明確になったようでした。批判する相手から、共に子供を育てるチームメイトへ。この関係性のリフォーミング(再構築)が、支援の質を劇的に向上させました。

「小さな試行」を提案する

大きな要求を一度に通そうとすると、学校側は「無理です」と拒絶しがちです。そこで私は、「まずは1週間だけ、授業中に5分間のクールダウンタイム(休憩)を取り入れてもらえませんか?」というスモールステップの提案をしました。ダメならやめてもいい、という期限付きの試みなら、先生方も「それくらいなら」と受け入れてくれやすくなります。

実際に行ってみて、息子のパニックが減り、クラス全体の落ち着きにも繋がることが確認できれば、その配慮は継続され、さらに新しい配慮へと繋がっていきます。「実績」を積み上げることが、頑固な学校組織を動かす近道です。以下のテーブルは、交渉の際に有効だった対話の変化をまとめたものです。

これまでの言い方(対立的) これからの言い方(協力的)
「なぜイヤーマフがダメなんですか?」 「イヤーマフを使うことで、授業に集中できる時間を増やしたいのですが、方法はありますか?」
「もっとうちの子を見てください!」 「息子のこういうサインが出たとき、どう対応すると先生の負担が少なく済みますか?」
「学校の対応が不十分で困っています」 「家庭と学校で一貫した対応をしたいので、情報を共有させてください」

スクールカウンセラーを味方につける

担任の先生と折り合いが悪いとき、無理に直接交渉を続ける必要はありません。私はスクールカウンセラー(SC)を「通訳」として活用しました。SCは学校組織の中にいながら、福祉の視点を持つ専門家です。私の想いを整理し、教育現場の言葉に変換して先生に伝えてくれる頼もしい存在でした。

面談にSCに同席してもらうだけで、その場に「客観的な視点」が入り、感情的な議論を避けることができます。また、SCから「この配慮は他の自治体でも一般的に行われていますよ」と助言してもらうことで、前例主義に縛られた学校側の重い腰を上げることができました。使えるリソースは全て使い、多角的にアプローチするのが賢い戦略です。

✅ 成功のコツ

面談の最後には必ず「今日のお話のおかげで、少し希望が持てました。ありがとうございます」と感謝を伝えましょう。先生も人間です。自分の努力を認められれば、次も協力しようという気持ちになります。


自治体や外部機関との連携による「包囲網」

教育委員会の「就学相談員」に相談する

学校単体で解決しない場合、より上位の組織である教育委員会に相談することも検討すべきです。私は、自治体の「就学相談員」に現在の困りごとを詳しく報告しました。そこから学校へ向けて、指導主事による助言が入るように働きかけたのです。学校にとって、教育委員会からの示唆は大きな影響力を持ちます。

ただし、これはあくまで「チクる」ためではなく、適切な支援体制を整えるための「公的な調整」です。学校側が配慮の方法を知らなくて困っている場合に、外部から専門的な知見を入れるという形をとれば、角を立てずに状況を改善できます。「一保護者の要望」を「公的な支援ニーズ」へと格上げする作業です。

「福祉」と「教育」の連携会議を開く

難病児の場合、学校だけでなく放課後等デイサービスや訪問看護などの福祉サービスとも深く関わっています。そこで私は、学校の先生、放デイのスタッフ、ソーシャルワーカーを一堂に集めた「ケース会議」を企画しました。普段見ることのない、福祉現場での息子の自立した姿を先生に見てもらうためです。

異なる専門性を持つ支援者が集まることで、多角的な支援プランが練り上げられます。先生も、福祉のプロがどう息子を支えているかを知ることで、多くの学びを得たようでした。「学校だけで抱えなくていいんだ」という安心感を与えたことが、結果として息子への手厚いサポートに繋がりました。地域全体で子供を育てる体制を作ることが、親の孤独を救います。

医療機関による「学校訪問」の依頼

希少難病など、医学的な知識が不可欠な場合は、主治医や訪問看護師に学校を訪問してもらうよう依頼しました。専門家が直接学校に足を運び、先生方の疑問に答える時間は、どんな資料よりも説得力がありました。「もしもの時に命をどう守るか」という安全管理の面で学校側の不安が解消されたことが、受け入れ態勢を劇的に好転させました。

もちろん、医師の往診には費用がかかることもありますが、それによって得られる数年間の安心感には代えがたい価値があります。学校側も「医療のバックアップがある」と確信できれば、果敢に新しい配慮に取り組めるようになります。専門家を招き入れ、学校を「孤立した島」にさせないことが、子供を守る最大の防波堤になります。


よくある質問(FAQ)

Q. 担任の先生が明らかに子供を嫌っているように見えます。どうすればいいですか?

悲しいことですが、先生も人間であり、相性の問題は存在します。しかし、「嫌い」に見える原因が「対応方法が分からず、困り果てている」ことにある場合も多々あります。まずは感情的な対立を避け、管理職(教頭・校長)に相談しましょう。「担任を責めたいわけではなく、クラス全体がうまく回るためにサポートをしてほしい」というスタンスで、配置の工夫や支援員の加配を相談してみてください。

Q. 合理的配慮をお願いしたら、「他の保護者からの苦情」を理由に断られました。

これは典型的な「拒絶の理由」ですが、2024年に改正された障害者差別解消法により、合理的配慮は義務化されています。他の保護者の目や感情は、配慮を拒否する正当な理由にはなりません。「具体的にどのような困難があるのか、公的なガイドラインに基づいて再考をお願いしたい」と冷静に伝えましょう。必要であれば、法的な根拠を示した資料を提示することも有効です。

Q. 子供が「自分だけ違うのは嫌だ」と言って配慮を拒否します。

多感な時期のお子さんにとって、周囲と違うことは大きな苦痛になり得ます。無理に配慮を押し付けるのではなく、まずは「どうすれば君が楽になれるかな?」と、本人の意向を最大限に尊重しましょう。目立たない形での座席の配慮や、こっそり使えるタブレットなど、本人が納得できる「ステルス(隠れた)支援」を一緒に考えていくことが、信頼関係を守る鍵になります。


「あきらめない」が未来を拓く

絶望の先に見つけた「共生の種」

学校との対立に疲れ果て、「もう転校させるしかない」と考えた夜は数えきれません。しかし、諦めずに丁寧な対話を続け、客観的なデータを示し、外部の力を借りることで、かつては頑固だった学校が、今では息子の最大の味方になってくれました。あの時、怒りに任せて関係を断ち切らなくて良かったと、心から思います。

学校の理解が得られないのは、先生方が悪いわけでも、あなたが悪いわけでもありません。単に「情報のミスマッチ」が起きているだけなのです。情報の伝え方を変え、適切な助っ人を呼ぶことで、現実は必ず変わります。学校という場所を、子供が傷つく場所から、自分を肯定してもらえる場所へと変えていく。その力は、あなたの「あきらめない心」の中にあります。

今日から取り組めるアクション提案

現状を変えるために、まずは以下のどれか一つから始めてみませんか?

  • お子さんの「家での困った様子」をスマホで1分間動画に撮ってみる。
  • 主治医に「学校に提出するための意見書」を書いてもらえるか相談してみる。
  • スクールカウンセラーの予約を取り、今の辛い胸の内を全て吐き出す。
  • サポートブックの「これだけは知ってほしい」項目を3つだけ書き出してみる。
小さな一歩が、学校の厚い壁にヒビを入れ、温かな光を差し込ませるきっかけになります。あなたは決して一人ではありません。私たち支援者や、同じ道を歩む仲間が、いつもあなたの後ろにいます。


まとめ

学校の理解が得られず、孤立無援で悩み続けた日々。それは決して無駄な時間ではなく、我が子にとっての「真の権利」を守るために必要な葛藤でした。

  • 客観性の活用:主観的な訴えを、医師の意見書や動画などの「事実」に置き換えて伝えましょう。
  • チームビルディング:学校を「敵」ではなく「共に育てるチーム」と定義し直し、プラスの目標を共有します。
  • 外部の力:教育委員会、医療機関、SCなどの専門家を巻き込み、多層的な支援体制を構築しましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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