ホーム/記事一覧/当事者・家族の声/知的障害・難病の体験談/パニックやこだわりと上手に付き合うための方法

パニックやこだわりと上手に付き合うための方法

📖 約61✍️ 鈴木 美咲
パニックやこだわりと上手に付き合うための方法
知的障害や難病を抱えるお子さんに多い「パニック」や「こだわり」について、その原因を深く掘り下げ、具体的な対処法を解説した記事です。パニックを「困った行動」ではなく「脳のオーバーフロー」や「SOS」として捉え直し、視覚支援(スケジュール表やタイマー)や感覚遮断(イヤーマフ等)による予防策を提案しています。また、こだわりの正体が「安心への欲求」であることを示し、無理に止めずに共存するコツを紹介。医療的要因のチェックや福祉サービスの活用など、親が一人で抱え込まずに笑顔を守るための実践的なガイドです。

パニックやこだわりを理解し、親子で笑顔を守るために

知的障害や難病を抱えるお子さんを育てていると、突然のパニックや、譲れない強いこだわりへの対応に、心身ともに疲れ果ててしまうことがあります。公共の場で泣き叫ぶわが子を前に、申し訳なさと焦りで頭が真っ白になった経験は、多くの親御さんが共有する痛みです。

しかし、パニックやこだわりは、お子さんが決して「困らせよう」として行っているわけではありません。それは、言葉で伝えられない心のSOSや、自分を守るための精一杯の防衛本能でもあります。その理由を正しく理解し、具体的な環境調整を行うことで、毎日の生活は少しずつ穏やかなものに変えていけます。

この記事では、実体験に基づいたパニックの予防策や、こだわりとの上手な付き合い方について詳しく解説します。今、出口の見えないトンネルにいるような感覚のあなたへ、日々の暮らしを楽にするヒントをお届けします。


パニックが起きる原因を紐解く

感覚過敏が引き起こす脳のオーバーフロー

パニックの背景には、多くの場合感覚過敏が隠れています。私たちにとっては気にならない掃除機の音や、スーパーの明るすぎる照明、あるいは衣類のタグのチクチクした感触が、お子さんにとっては耐えがたい「痛み」として感じられていることがあります。

脳が処理できる情報の限界を超えてしまったとき、お子さんはパニックという形で脳のフリーズを表現します。これを理解してから、私は息子がパニックを起こした際に「わがまま」と捉えるのをやめ、「情報の洪水から逃げたいんだね」と考えられるようになりました。

まずは、どのような環境でパニックが起きやすいかを観察してみてください。特定の場所や時間帯に偏りがある場合、そこには必ずお子さんにとっての不快な刺激が潜んでいます。その刺激を特定することが、解決への第一歩となります。

見通しが立たない不安と恐怖

知的障害のあるお子さんにとって、「次に何が起こるか分からない」という状態は、私たちが目隠しをして見知らぬ道を歩かされるような恐怖に近いと言われます。急な予定変更や、言葉だけでの説明は、大きな不安を煽る原因となります。

「後で行くよ」「もう少し待って」といった曖昧な表現は、時間の概念を捉えにくいお子さんには伝わりにくいものです。いつ終わるのか、次にどこへ行くのかが見えないことが、心の余裕を奪い、爆発的なパニックに繋がってしまうのです。

生活のルーチンが崩れることを極端に嫌うのは、見通しを立てて安心したいという本能的な欲求からです。これを「頑固さ」ではなく「安心への希求」と捉え直すと、接し方に少しだけ優しさが生まれるはずです。

伝えられないもどかしさとコミュニケーション

自分の気持ちを言葉にするのが難しいお子さんは、体調不良や「嫌だ」という意思をパニックで表現せざるを得ません。お腹が痛い、眠い、この靴が嫌い。そうした些細な訴えが通じないフラストレーションが、パニックを引き起こします。

私たちはつい「どうして泣くの!」と問い詰めてしまいがちですが、本人が一番その理由を説明できずに苦しんでいます。パニックは、お子さんにとっての最後のコミュニケーション手段なのだと理解することが大切です。

言葉以外のサインに目を向け、本人の意思を汲み取ろうとする姿勢は、お子さんとの信頼関係を深めます。パニックの頻度を減らす鍵は、本人の「伝わった!」という成功体験をいかに積み重ねるかにかかっています。


こだわりを「安心の盾」として受け入れる

こだわりの正体は自分を守るルーチン

「同じ道を通らなければならない」「物を特定の順番に並べたい」。こうしたこだわりは、周囲から見ると不思議に映りますが、本人にとっては混乱した世界を整理し、心の平穏を保つための儀式です。これを無理に止めようとすることは、心の支えを奪うことに等しい場合があります。

私の娘も、外出時に決まった石をポケットに入れるという強いこだわりがありました。最初は「重いから捨てなさい」と言っていましたが、その石があることで彼女がパニックにならずに人混みを歩けることに気づき、今では大切な「お守り」として尊重しています。

こだわりを「困った行動」ではなく、その子が社会と折り合いをつけるためのツールだと考えてみてください。生活に深刻な支障がない限り、まずはそのこだわりを認めてあげることが、本人の自己肯定感を守ることに繋がります。

こだわりと上手に向き合う工夫

とはいえ、こだわりが原因で日常生活が滞ることもあります。その場合は、こだわりを「禁止」するのではなく、「枠組みを作る」というアプローチが効果的です。例えば、「この遊びはあと10分だけ」「並べるのはこの机の上だけ」とルールを明確にします。

また、こだわりの対象を少しずつ広げていくことも一つの方法です。同じ色にこだわるなら、「今日は赤と青、どっちにする?」と選択肢を提示し、少しずつ変化に慣れてもらう練習をします。焦らず、ミリ単位の変化を喜ぶ余裕を持ちましょう。

こだわりは、時として素晴らしい才能や集中力の裏返しでもあります。特定のジャンルに詳しい、記憶力が抜群に良いなど、そのこだわりが将来の武器になる可能性もあります。短所として切り捨てるのではなく、その子の個性の一部として大切に育てていきたいものです。

予定変更への耐性を作るスモールステップ

こだわりが強いと、急な予定変更でパニックになりやすいものです。これを防ぐためには、あらかじめ「変更があるかもしれない」という予告を、視覚的に伝えておく練習が有効です。スケジュール表に「はてなマーク」を入れ、何が起こるか分からない時間をあえて作ります。

最初は「いつもは公園だけど、今日は雨だから家で遊ぼう」といった小さな変更から始め、成功したら大げさに褒めてあげてください。変更を受け入れられたという自信が、本人の柔軟性を少しずつ育てていきます。

✅ 成功のコツ

予定変更を伝える際は、代わりの「楽しい提案」をセットにしましょう。「〇〇には行けないけれど、代わりに大好きなアイスを食べよう」といったポジティブな代替案が、本人の気持ちを切り替える助けになります。


パニックを予防・鎮める具体的なテクニック

視覚支援を活用して見通しを立てる

言葉での説明が伝わりにくいお子さんには、写真やイラストを使った視覚支援が絶大な効果を発揮します。1日の流れを絵カードで示すことで、次に何をするかが一目で分かり、不安によるパニックを大幅に軽減できます。

タイマーの使用もおすすめです。「あと5分」という言葉よりも、赤い部分が減っていく視覚的なタイマーの方が、終わりの時間を理解しやすくなります。デジタルよりも、物理的に残り時間が減っていく様子が見えるタイプが、知的障害のあるお子さんには適しています。

視覚支援は、お子さんをコントロールするための道具ではありません。お子さんが自分の力で世界を理解し、自分で選択して動くための自立支援ツールです。このツールがあることで、お子さんは親の顔色を伺わずに安心して過ごせるようになります。以下に活用例をまとめました。

支援ツール 活用シーン 期待できる効果
スケジュール表 朝の準備、1日の流れの確認 見通しが立ち、不安が解消される
絵カード 意思表示、指示の理解 コミュニケーションの齟齬が減る
視覚タイマー 遊びの終了、待ち時間の提示 時間の区切りを受け入れやすくなる
手順書 手洗いや着替えのステップ 自分の力でやり遂げる自信がつく

パニックが起きた時の「3つのNO」

どんなに予防していても、パニックが起きてしまうことはあります。その際、周囲の親御さんに意識してほしいのが「3つのNO」です。パニック真っ最中のお子さんに以下の行動をとるのは、火に油を注ぐようなものです。

  1. NO:大声で叱らない(刺激を増やし、パニックを悪化させる)
  2. NO:理由を問い詰めない(本人は混乱しており答えられない)
  3. NO:無理やり抑え込まない(身の危険がある場合を除き、逆効果になる)

パニック時は、親もパニックにならないことが最優先です。深呼吸をして、まずは安全な場所へ誘導しましょう。そして、言葉をかけすぎず、静かに見守ることが、脳の興奮を鎮める最短ルートになります。

クールダウンの場所と時間を確保する

興奮した脳を休ませるために、クールダウン用のスペースを家の中に作っておくことをお勧めします。テントやクローゼットの中など、視覚的・聴覚的な刺激が遮断される「狭くて暗い場所」は、多くのお子さんにとって安心できるシェルターになります。

外出時であれば、車の中や多目的トイレなどが一時的な避難所になります。パニックが起きたとき、すぐにそこへ行けば落ち着けるという「安全地帯」があるだけで、親子ともに外出への恐怖心が和らぎます。

💡 ポイント

パニックが落ち着いた後は、本人が一番疲れています。決して「どうしてあんなことしたの!」と反省を促さず、「落ち着けて頑張ったね」と優しく抱きしめたり、温かい飲み物を与えたりして、安心させてあげてください。


難病や身体的要因への配慮

体調不良がパニックのトリガーになる

難病を抱えるお子さんの場合、パニックが実は身体的な苦痛のサインであることも少なくありません。低血糖、脱水、てんかんの予兆、あるいは内臓の痛み。言葉で訴えられないお子さんは、パニックという全身全霊の表現で痛みを伝えています。

特に、普段温厚なお子さんが突然激しいパニックを起こすようになった場合は、まず医療的な要因を疑ってみてください。睡眠不足や便秘といった日常的な不快感も、知的障害のあるお子さんにとっては耐えがたいストレスとなり、パニックを引き起こします。

私たちは主治医と連携し、パニック時の状況(時間帯、直前の行動、食事の摂取状況など)を詳細にメモして共有するようにしています。これにより、特定の薬の副作用や、栄養不足が原因であることが判明し、パニックが解消された事例もあります。

環境調整:音や光のコントロール

感覚過敏への対策として、便利なグッズを活用しましょう。ノイズキャンセリングヘッドホンやイヤーマフは、外出時の騒音をカットし、お子さんの心の平安を守る強力な味方になります。サングラスや帽子で、眩しすぎる光を遮ることも有効です。

家の中では、騒音の出る家電の使用時間を工夫したり、カーテンの素材を変えて光を和らげたりするなどの配慮が考えられます。こうした物理的な環境調整だけで、パニックの回数が劇的に減るケースも多いのです。

⚠️ 注意

感覚過敏は「慣れ」で治るものではありません。無理に刺激に晒し続けると、トラウマになり、さらに過敏さが強まることがあります。無理なトレーニングは避け、適切な遮断と保護を優先してください。

福祉サービスとの連携による負担軽減

パニックやこだわりへの対応を24時間一人で行うのは、どんなに強い親でも不可能です。放課後等デイサービスや移動支援といった福祉サービスを積極的に利用しましょう。専門のスタッフは、パニックへの対応にも慣れており、親とは違った視点でのアプローチを提示してくれます。

また、行動援護というサービスを利用すれば、外出時のパニックにもプロが同行して対応してくれます。親以外の支援者が増えることは、お子さんの世界を広げると同時に、親御さんの休息(レスパイト)にも繋がります。一人で抱え込まず、社会の力を借りることは、決して恥ずかしいことではありません。


よくある質問(FAQ)

Q1. 外出先でパニックになり、周りの目が気になって辛いです。

公共の場でのパニックは、親にとって最も精神的な負担が大きい場面です。私は「ヘルプカード」や「障害があることを伝えるマーク」をカバンに付け、周囲に「今、混乱しています」というメッセージを可視化するようにしています。また、周囲の視線を気にする前に、まずはお子さんの安全と落ち着きを最優先し、その場を離れる勇気を持ってください。あなたのせいでも、お子さんのせいでもありません。

Q3. こだわりを無理にやめさせると、別のこだわりが出てくるのはなぜですか?

こだわりは、不安な心を落ち着かせるための「代替手段」だからです。根本的な不安やストレスが解決されないまま一つのこだわりを取り上げると、脳はまた別の方法で自分を守ろうと新しいこだわりを作り出します。こだわりを「消す」ことよりも、本人がリラックスして過ごせる時間を増やすことに注力しましょう。

Q3. パニックの記録はどのように取ればいいですか?

ABC分析という手法がお勧めです。A(Antecedent:直前の状況)、B(Behavior:行動/パニック)、C(Consequence:結果/その後の対応)をセットで記録します。これを繰り返すと、「おもちゃを片付けると言われた時(A)に、床に寝そべって泣き(B)、最終的にテレビを見せてもらった(C)」といったパターンが見えてきます。パターンが分かれば、事前の声かけを工夫するなど、効果的な予防策が立てられます。

Q4. 難病による薬の影響でパニックが起きることはありますか?

はい、十分にあり得ます。抗てんかん薬やステロイド剤など、精神面に影響を与える副作用を持つ薬は少なくありません。新しく薬を始めた時期や、量を変更したタイミングでパニックが増えた場合は、速やかに主治医に相談してください。薬の調整だけで劇的に落ち着くこともあります。


まとめ:焦らず、お子さんのペースを信じて

パニックは成長の過程で変わっていく

今、毎日のように繰り返されるパニックに、「この生活が一生続くのだろうか」と絶望的な気持ちになっているかもしれません。しかし、多くの場合、成長とともにコミュニケーション能力が向上したり、自分なりの落ち着き方を見つけたりすることで、パニックの形は変わっていきます。

大切なのは、パニックそのものを敵にするのではなく、お子さんの「困りごと」に寄り添う姿勢です。今日できなかったことが、1年後にはできるようになっているかもしれません。その小さな変化を見守り続けることが、私たち親にできる最大のサポートです。

あなたは、今日まで本当によくやってきました。パニックに振り回された日も、こだわりにつきあいきれなかった日も、あなたは一生懸命わが子を守ってきました。まずはその自分自身を、たっぷり褒めてあげてください。

次の一歩へのアクション提案

この記事を読み終えたら、今日から一つだけ始めてみてください。それは、「お子さんがパニックになっていない穏やかな時間」を意識して褒めることです。何事もなく過ごせている時間にこそ、たくさんの愛情を伝えることで、お子さんの心は満たされ、安心の土台が作られていきます。

また、もし限界を感じているなら、今日中にケアマネジャーや相談支援専門員に電話をして、「今の困りごと」を吐き出してみてください。言葉にすることで、具体的な支援の道が開けるはずです。

まとめ

  • 原因を分析し環境を整える:感覚過敏や見通しの不透明さがパニックの引き金。視覚支援や物理的な刺激遮断で予防する。
  • こだわりを安心の材料として認める:無理に禁止せず、枠組みの中で尊重することで本人の自己肯定感を育てる。
  • 親自身の心の平安を最優先する:パニック時は親も落ち着き、福祉サービスを積極的に利用して一人で抱え込まない。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

📢 この記事をシェア

関連記事