痛みやしびれと共に生きる日々:私のリアルな体験

身体障害を抱える当事者の方やご家族にとって、「痛み」や「しびれ」は、見えない、理解されにくい、そして終わりの見えない苦痛として、日々の生活に重くのしかかっているのではないでしょうか。特に脊髄損傷や脳卒中などに伴う神経原性の痛み(神経障害性疼痛)は、麻痺があるにも関わらず激しく感じられるため、周囲にその辛さを理解してもらうのが非常に難しいと感じることが多々あります。
私自身、下肢麻痺を抱えながら、足の裏に砂利が詰まっているような「異感覚」や、突然電気が走るような「激しい痛み」に毎日悩まされています。この痛みは、車椅子を操る体力や、日常生活を送る気力さえも奪い去ってしまうほど、手強い存在です。
この体験談では、私が日々どのように痛みやしびれという見えない敵と向き合い、共存しようとしているのか、そのリアルな試行錯誤と具体的な対策についてお話しします。今、同じように見えない苦痛に耐えているあなたの心に寄り添い、少しでも痛みを和らげるヒントや共感をお届けできれば幸いです。
「見えない痛み」の正体と孤独
麻痺があるのに、なぜ激しく痛むのか
受傷直後の急性期の痛みは、手術や怪我によるもので、まだ理解できます。しかし、麻痺が残った後に現れた慢性的な痛みは、全く性質が異なるものでした。私の足は感覚がなく、動かせないにも関わらず、まるで灼熱の鉄板の上に乗せられているかのような、焼けるような痛みが常にあります。
これは、医学的には「神経障害性疼痛(ニューロパシックペイン)」と呼ばれるもので、損傷した神経が誤作動を起こして痛み信号を送り続けるために生じます。脳は、動かない足からの異常な信号を「激痛」として解釈してしまうのです。痛みの種類も様々で、チクチク刺すような感覚、締め付けられるような感覚、ズキズキと脈打つ感覚が入り混じっています。
特に辛いのは、痛み止めが効きにくいことです。市販の鎮痛剤はほとんど効果がなく、神経性の痛みに特化した薬を服用する日々が続いています。この薬との付き合い方も、終わりが見えない戦いです。
周囲に理解されない「見えない苦痛」
「足、動かないんですよね? じゃあ、痛くないでしょう?」— 私が最も多くかけられた言葉です。周囲の人たちは、麻痺しているから痛みも感じないはずだと無意識に考えています。そのため、私が痛みに顔を歪めたり、活動を制限したりすると、「大袈裟にしているのでは」と見られているような孤独感に襲われます。
家族でさえ、私の痛みがどれほど深刻で継続的かを完全に理解するのは難しいようです。痛みは数値化できないため、説明しようとしても「辛そうだね」で終わってしまい、具体的なサポートに繋がりにくいのです。
この「理解されない痛み」との闘いが、身体的な苦痛以上に精神的な負担となって、私を深く疲弊させていました。「誰かにわかってほしい」と願う気持ちと、「どうせわかってもらえない」という諦めの間で、私はいつも揺れ動いていました。
⚠️ 注意
神経障害性疼痛は、麻痺の程度とは無関係に発生します。この痛みは、うつ病や不眠症の原因ともなるため、専門のペインクリニック(疼痛外来)での治療が不可欠です。
痛みとの共存に向けた試行錯誤
薬物療法:効く薬を探す終わりなき旅
慢性的な痛みを抱える当事者にとって、薬物療法は生活の質を維持するための最初の砦です。しかし、これがまた難しい。「特効薬」はなく、複数の薬を組み合わせたり、用量を微調整したりしながら、「効き目」と「副作用」のバランスが取れた「ゴールデンな組み合わせ」を探す作業が続きます。
- 抗てんかん薬・抗うつ薬:神経の異常な興奮を抑えるために使われます。特に抗てんかん薬の
プレガバリンやガバペンチンは、多くの神経障害性疼痛の治療で用いられます。 - オピオイド系鎮痛薬:激しい痛みが続く場合、医師の管理下でモルヒネ系などの強力な鎮痛剤が使われることもあります。
- 副作用との戦い:眠気、ふらつき、倦怠感といった副作用で、日中の活動が制限されることも多く、薬の調整は医師との密な連携が欠かせません。
私は現在、数種類の薬を組み合わせていますが、痛みは「ゼロ」にはなりません。目標は、痛みを「無視できるレベル」にまで抑え込むことです。そのために、毎日の体調を細かく記録し、医師に報告しています。
非薬物療法:心と体からのアプローチ
薬物療法だけでは限界があるため、私は痛みをコントロールするために、様々な非薬物療法も試しています。これは、痛みに意識を集中させないためのトレーニングでもあります。
- マインドフルネスと瞑想:痛みを「敵」と捉えるのではなく、「感覚の一つ」として受け流す訓練です。痛みに囚われている自分を客観的に観察することで、精神的な負担が軽減されます。
- リハビリとストレッチ:動く部分の筋肉を積極的に動かし、血行を良くすることで、痛みが和らぐことがあります。特に軽い有酸素運動は、鎮痛効果があると言われています。
- 温熱療法・冷却療法:痛みの種類や部位によって効果が異なります。焼けるような痛みには冷却、締め付けられる痛みには温熱が効果的な場合がありますが、麻痺があるため熱傷や凍傷に注意が必要です。
これらの対策は、即効性はありませんが、継続することで痛みの波を緩やかにし、日々の生活の質を少しずつ向上させてくれます。
💡 ポイント
痛みはストレスや疲労によって悪化します。痛みのコントロールには、生活リズムを整え、十分な睡眠と休息を確保することが、薬物療法以上に重要となります。
痛みとの「共存」を目指して
痛みの日記をつける習慣
痛みをコントロールするための第一歩は、痛みを客観的に「知る」ことでした。私は、いつ、どこが、どのような痛みで、何が引き金になったかを記録する「痛みの日記」をつけるようになりました。
| 記録項目 | 具体例 |
|---|---|
| 時刻・期間 | 午前10時〜12時 |
| 痛みの種類 | 電気が走るような鋭い痛み(神経痛) |
| 痛みの強さ | 10段階で7 |
| 誘因 | 朝の移乗時に失敗した直後、天候(低気圧) |
| 対策と効果 | 処方薬を服用、1時間後に痛みが6に低下 |
この日記のおかげで、私の痛みは「天候」や「疲労」と深く関連していることが分かりました。これにより、痛みが強くなる前に休息をとる、という予防的な行動を取れるようになり、痛みのピークを避けることができるようになりました。
ピアサポートで得た心の安定
見えない痛みとの孤独な戦いの中で、私を救ってくれたのは、やはり同じ痛みを持つ仲間との交流でした。ピアサポートの集まりで、「足の裏が氷水につかっているみたいにしびれる」「突然ナイフで刺されたようになる」といった、自分の痛みを正確に表現してくれる仲間に出会ったとき、私は涙が止まりませんでした。
「その感覚、すごくよくわかるよ。誰に言ってもわかってもらえないよね。でも、ここでは理解してもらえる。それだけで、少し痛みが軽くなる気がするんだ。」
— 先輩当事者 F氏
言葉にできない苦しみを共有し、共感を得ることで、私は精神的に非常に安定しました。痛みを「自分だけのもの」として抱え込む必要がないと知ったとき、痛みの支配から少しだけ解放されたのです。
痛みと共に、人生の主導権を取り戻す
慢性的な痛みは、しばしば私たちの人生の主導権を奪い去ります。「今日は痛いから、あれはできない」と、痛みが行動を決定してしまうのです。しかし、私はこの痛みに人生を決められたくない、という強い意志を持つようになりました。
痛みがあるのは事実です。それでも、「痛みがあっても、この活動はやる」と、意識的に痛みを無視し、活動を優先する日を増やしていきました。もちろん、無理は禁物ですが、痛みに屈しない「精神的な抵抗力」を育てることが、共存への最大のカギだと感じています。
痛みは、一生消えないかもしれません。しかし、私たちは、痛みを感じながらも、充実した人生を送る術を学ぶことができます。
よくある質問と今後のアクション
Q. 家族はどうサポートすべきですか?
ご家族は、当事者の痛みを「治せない」ことに無力感を感じがちですが、最も大切なサポートは「痛みを信じてあげる」ことです。「気のせいだ」「頑張りなさい」といった言葉は厳禁です。
- 傾聴と共感:「辛いね」「痛みがあるのに頑張っているね」と、痛みの存在を肯定し、話を聞いてあげること。
- 痛みの誘因の記録:当事者と一緒に「痛みの日記」をつけ、痛みの誘因(寒さ、疲労、ストレスなど)を客観的に把握し、予防的な環境調整を行うこと。
- 休息の推奨:痛みが強くなる前に、強制的に休息を促す役割を担うこと。
痛みを理解しようとする姿勢こそが、当事者にとって最大の安心となります。
Q. 専門的な相談窓口はどこですか?
慢性的な痛み、特に神経障害性疼痛は専門性が高いため、まずは主治医に相談し、以下の専門機関を紹介してもらいましょう。
- ペインクリニック(疼痛外来):痛みの専門医が在籍しており、薬物療法や神経ブロック注射など、高度な痛み治療を受けることができます。
- 心療内科・精神科:慢性疼痛に伴ううつ症状や不安のケア、認知行動療法などの精神的なアプローチを受けられます。
痛みは我慢するものではありません。積極的に専門家の力を借りましょう。
今後のアクションの提案
痛みに苦しんでいる方へ、すぐにできる次のアクションを提案します。
- 今日の痛みを10段階で記録:今日一日の痛みの最大値を記録し、その時の状況を簡単にメモしましょう。
- 医師に相談する日時を予約:主治医または専門医に、痛みの専門的な相談をしたい旨を伝え、予約を取りましょう。
- ピアサポート団体を検索:地域の身体障害者向けのピアサポート団体を探し、見学や体験の申し込みをしてみましょう。
痛みに支配されるのではなく、痛みを乗りこなす技術を身につけていきましょう。
まとめ
身体障害に伴う痛みやしびれは、周囲に理解されにくい、非常に孤独な戦いです。しかし、私たちは薬物療法と非薬物療法を組み合わせ、痛みの誘因を客観的に把握することで、痛みを「ゼロ」にはできなくても、「無視できるレベル」にコントロールすることが可能です。
最も大切なのは、「痛みを信じてくれる人」の存在と、痛みに人生の主導権を奪われないという強い意志です。痛みと共に生きる日々を、私たちは必ず乗りこなしていくことができます。あなたは一人ではありません。
まとめ
- 神経障害性疼痛は、麻痺があるにも関わらず生じる「見えない痛み」であり、専門的な治療が必要です。
- 薬物療法とマインドフルネス、運動などの非薬物療法を組み合わせ、痛みのレベルをコントロールしましょう。
- 痛みの日記で誘因を特定し、ピアサポートで孤独感を解消することが、痛みのコントロールに不可欠です。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





