障害者と家族が知っておきたい介護保険と医療の違い

⚖️ 障害者と家族が知っておきたい介護保険と障害福祉サービスの決定的な違いと利用のポイント
「障害福祉サービスを利用しているが、40歳になったら介護保険も申請すべき?」「介護保険と障害福祉サービス、どちらが優先されるの?」「サービス内容や費用負担がどう変わるのか、仕組みが複雑でわからない…」
障害のある方が年を重ね、加齢に伴う体力の低下や病気を抱えるようになると、「介護保険制度」と「障害福祉サービス制度」の二つの制度が関わるようになります。特に40歳や65歳という節目を迎えるにあたり、どちらの制度をどのように利用すべきか、その優先順位、費用負担、サービスの範囲が複雑で分かりにくいと感じるご家族や支援者は少なくありません。
これらの制度を正しく理解し、ご本人の状態や必要な支援に合わせて最適な組み合わせを選択することは、切れ目のない安心できる生活を維持するために不可欠です。制度の選択を誤ると、必要な支援が受けられなくなったり、自己負担額が増加したりする可能性があります。
この記事では、障害福祉サービスと介護保険の根本的な違いを明確にし、40歳、65歳以降の優先関係、そして両制度を併用する際の具体的な手順とメリット・デメリットを徹底的に解説します。「二階建て構造」の仕組みを理解し、生涯にわたって安心して利用できる支援体制を築きましょう。
👤 1. 二つの制度の根本的な違い:目的と対象者
障害福祉サービスと介護保険は、同じ「支援」を提供する制度であっても、その目的と対象者に明確な違いがあります。
① 障害福祉サービス制度
障害福祉サービスは、障害者総合支援法に基づき提供されます。
- 目的:****障害のある方の自立と社会参加の促進、及び日常生活や社会生活を営む上での困難の解消を目的としています。
- 主な対象者:身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病の方など、障害者手帳を交付されている方、またはそれに準ずる方。
- 年齢制限:基本的に年齢による制限はありませんが、原則として18歳未満は障害児通所支援など別の制度の対象となります。
- サービスの例:****居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、行動援護、就労継続支援、グループホームなど、多様なニーズに対応したサービスがあります。
② 介護保険制度
介護保険は、介護保険法に基づき提供されます。
- 目的:****加齢に伴う要介護状態になった高齢者に対し、自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスを提供し、国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的としています。
- 主な対象者:
- 第1号被保険者:****65歳以上の全ての方(要介護認定が必要)。
- 第2号被保険者:****40歳から64歳で、特定疾病(末期がん、関節リウマチなど16種類)により要介護認定を受けた方。
- サービスの例:****訪問介護、通所介護(デイサービス)、訪問リハビリテーション、福祉用具の貸与など、高齢者の介護ニーズに対応したサービスが中心です。
📝 2. 決定的な違い:優先関係と費用負担
制度の目的が異なるため、特に40歳、65歳という節目において、利用者にとってのサービスの優先順位と費用負担の仕組みが大きく変わります。
優先関係のルール:40歳と65歳の分岐点
介護保険と障害福祉サービスのどちらを利用するかは、原則として以下のルールが適用されます。
- 40歳未満:介護保険の対象外のため、障害福祉サービスのみを利用できます。
- 40歳〜64歳:原則として障害福祉サービスを優先しますが、特定疾病により介護が必要になった場合は介護保険サービスも利用可能になります。
- 65歳以上:原則として、障害福祉サービスと共通するサービス(訪問介護、短期入所など)については介護保険サービスが優先されます。これを**「介護保険優先原則」**と呼びます。
🚨 介護保険優先原則の例外
65歳以上でも、介護保険では提供されない独自の障害支援(例:重度訪問介護、行動援護、就労継続支援など)については、引き続き障害福祉サービスを利用できます。
費用負担の仕組みの違い
どちらの制度を利用するかで、窓口での自己負担額が変わる可能性があります。
| 項目 | 障害福祉サービス | 介護保険サービス |
|---|---|---|
| 自己負担割合 | 原則1割 | 原則1割(所得により2〜3割) |
| 負担上限額 | 所得に応じて月額上限(例:0円、9,300円、37,200円など)が設定される。 | サービス利用料全体への月額上限はない(高額介護サービス費制度で負担軽減あり)。 |
| 食費・居住費 | 施設入所・グループホームでは、減免措置が適用される場合がある。 | 全額自己負担が原則(低所得者への特定入所者介護サービス費制度あり)。 |
障害福祉サービスは、所得に応じた負担上限額が設定されるため、多く利用しても自己負担額が一定以上にはなりません。一方、介護保険は、利用するサービスが増えると自己負担額も増加しますが、高額介護サービス費によって月々の負担上限はあります。
🔄 3. 65歳以降の切り替えと併用:具体的な手順
65歳になり、介護保険が優先されるようになった場合、どのような手順でサービスを切り替え、または併用していくかを理解しておきましょう。
ステップ①:要介護認定の申請
65歳になったら、介護保険サービスを利用するために、まず市区町村の窓口で要介護認定を申請します。
- **同時申請:**障害福祉サービスの支給決定を受けている方も、65歳になったら要介護認定の申請が必要です。障害福祉サービスの申請と同時に、介護保険の申請を行うことができます。
- **認定調査:**認定調査員による訪問調査を受け、介護の手間や認知機能などを確認されます。
ステップ②:ケアプランとサービス等利用計画の作成
介護保険サービスを利用する場合はケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプランを、障害福祉サービスを利用する場合は相談支援専門員がサービス等利用計画を作成します。
- 連携が不可欠:このとき、ケアマネジャーと相談支援専門員が密接に連携し、介護保険で賄えない部分を障害福祉サービスで補完する「二階建て」のサービス構造を計画に落とし込みます。
- **プランニングの原則:**まず、**訪問介護、短期入所(ショートステイ)**など、両制度に共通するサービスについて、介護保険サービスの枠内で賄えるか検討します。
ステップ③:併用サービスの決定
介護保険優先原則を適用した上で、以下のサービスについては障害福祉サービスを引き続き利用できます。
- **介護保険に相当サービスがない場合:**重度訪問介護、行動援護、共同生活援助(グループホーム)、自立訓練、就労移行支援など。
- **介護保険の上限を超えた場合(措置的利用):**訪問介護などの共通サービスで、介護保険の支給限度額(区分支給限度基準額)を超えた分については、特例として障害福祉サービスで補える場合があります。ただし、これは自治体の判断によるため、確認が必要です。
📊 4. サービス内容と質の比較:それぞれのメリット・デメリット
介護保険と障害福祉サービスでは、提供されるヘルパーの資格やサービス内容にも違いがあり、どちらがご本人に適しているか検討する必要があります。
訪問介護(介護保険)と居宅介護(障害福祉)の比較
最も利用頻度が高い訪問サービスについて、その特性を理解します。
| サービス | 訪問介護(介護保険) | 居宅介護(障害福祉) |
|---|---|---|
| ヘルパーの資格 | 介護職員初任者研修以上が一般的。 | 同行援護研修、行動援護研修など、障害特性に特化した研修修了者も多い。 |
| サービス内容 | 生活援助(掃除、調理など)、身体介護(入浴、排泄など)。 | 上記に加え、重度訪問介護や行動援護など、障害特有の支援(見守り、行動障害対応)が可能。 |
| 時間設定 | 1回あたりの時間が細かく定められている(例:30分未満、30分以上1時間未満など)。 | 比較的**長時間(1時間単位)**での利用が可能。 |
重度訪問介護は、重度の肢体不自由や精神障害、知的障害のある方に、長時間(24時間体制も可能)の支援を提供できる障害福祉サービス独自の重要なサービスであり、介護保険にはこれに相当するサービスはありません。65歳以降も、長時間かつ専門的な見守りが必要な場合は、重度訪問介護の利用継続を目指すべきです。
支援の質の継続性
65歳以降に介護保険に切り替わると、慣れたヘルパーや事業所が介護保険の指定を受けていない場合、支援者が変わってしまうリスクがあります。
- 切り替え時の課題:長年支援してきたヘルパーが障害特性を熟知している場合、介護保険のヘルパーに切り替わることで、支援の質が一時的に低下する可能性があります。
- **対策:**現在利用している事業所が、介護保険の指定も受けているか事前に確認し、可能であれば同じ事業所、同じヘルパーによるサービス継続を依頼します。
📚 5. 知識が支える安心の生活:意思決定と相談体制
複雑な制度の狭間でご本人の意思決定を尊重し、継続的に適切な支援を受けるためには、ご家族や支援者が制度への理解を深めることが不可欠です。
ご本人の意思決定支援(意思能力の尊重)
知的障害や精神障害のある方が制度を選ぶ際、ご本人の希望や意思が尊重されるべきです。
- **説明の工夫:**ケアマネジャーや相談支援専門員は、介護保険と障害福祉サービスの違い、メリット・デメリットを、ご本人の理解力に合わせて、わかりやすい言葉や図を用いて説明する必要があります。
- **意思能力の確認:**ご本人が契約や制度利用の意思を判断することが難しい場合は、家族や成年後見人が代行して意思決定支援を行う必要があります。
相談窓口と制度活用のアクションプラン
制度の複雑な切り替えや併用については、必ず専門家に相談しましょう。
| 窓口 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 相談支援専門員 | 障害福祉サービスの利用継続・変更、ケアマネジャーとの連携、介護保険では賄えない支援の調整。 |
| ケアマネジャー | 介護保険サービスの利用計画、要介護認定の申請代行、介護保険の費用負担に関する相談。 |
| 市区町村役場 障害福祉担当課・介護保険担当課 | 両制度の申請手続き、地域のサービス事業所の情報、措置的利用の可能性に関する確認。 |
特に、65歳が近づいてきたら、遅くとも64歳の誕生日を迎える半年前には、相談支援専門員とケアマネジャー(または地域の包括支援センター)に連絡を取り、連携会議を開いてもらうことが重要です。
まとめ
- 障害福祉サービスは自立と社会参加、介護保険は加齢に伴う介護が目的であり、その対象者、サービス内容、費用負担の仕組みが根本的に異なる。
- 原則として65歳以上は、訪問介護など共通するサービスについて介護保険が優先される(介護保険優先原則)。
- 65歳以降も、重度訪問介護や行動援護、就労支援など、介護保険に相当サービスがないものは引き続き障害福祉サービスを利用できる。
- 費用負担は、障害福祉サービスは所得に応じた月額上限があるのに対し、介護保険は利用量に応じて費用が増える。
- サービスの切り替えや併用は、ケアマネジャーと相談支援専門員が連携し、介護保険の限度額を超えた部分を障害福祉サービスで補完する構造を計画的に構築することが成功の鍵となる。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





