「障害について説明してください」と言われたときの答え方

面接で最も緊張する質問の一つが、「あなたの障害について詳しく教えてください」という問いではないでしょうか。「どこまで話すべきか」「ネガティブな情報で不利にならないか」と不安になるのは当然です。
採用担当者がこの質問をする真の目的は、あなたの障害の「診断名」を知ることではなく、あなたの「自己理解の深さ」と「安定就労への準備」が整っているかを確認することです。企業は、あなたの特性が業務にどのような影響を与え、そのリスクをどう管理しているかを知りたいのです。
この記事では、障害について質問された際に、採用担当者に「この人なら安心して採用できる」と思わせるための、論理的で前向きな3つのステップからなる回答構成を徹底解説します。さらに、障害種別ごとの具体的な表現例や、回答の際に避けるべきNG表現もご紹介します。
この記事を読むことで、不安なく、自信を持ってあなたの障害特性と安定就労への強い意欲を伝えられるようになり、選考を有利に進めることができるでしょう。
企業が「障害の説明」で本当に知りたい3つの視点
視点1:現在の「状態の安定性」と「継続就労の可能性」
企業が最初に知りたいのは、「現在、あなたが就労可能な状態にあるか」という事実です。診断名や過去の病状よりも、直近の体調の安定度や、継続的な就労ができるだけの準備が整っているかどうかが重要視されます。
- 確認事項:病状が最も重かった時期ではなく、直近の体調の波や服薬状況の安定度。
- 伝え方:療養期間を経て、現在は主治医の許可を得ており、「〇〇という工夫により、安定就労の準備が完了している」と具体的に伝えます。
あなたの回答全体を通じて、「長く、安定して働き続けたい」という強い意欲が伝わることが、信頼感を与えるための土台となります。
視点2:業務遂行における「具体的な影響」と「自己対策」
次に企業が知りたいのは、あなたの障害特性が、応募職種の具体的な業務にどのような影響を与えるか、そしてそれに対してあなたがどのような「具体的な対策(自己管理)」を行っているかです。
- 確認事項:苦手なこと(例:マルチタスク、騒音)を避けるための、具体的な自己管理方法や合理的配慮の必要性。
- 伝え方:「〇〇という特性があるため、△△という具体的な対策を講じています。これにより、業務の質を担保できます」と、問題解決能力とセットで伝えます。
この説明は、あなたの「自己理解の深さ」を証明するものであり、配慮が過重な負担ではないことを企業に納得させるための鍵となります。
視点3:「必要な配慮」と「企業への貢献」の結びつき
障害に関する説明は、最終的に「必要な配慮を受けることで、あなたが企業にどう貢献できるか」というポジティブな着地点に結びつける必要があります。配慮は「要望」ではなく、あなたの能力を最大限に引き出すための「条件」として提示しましょう。
- 確認事項:配慮事項が、あなたの得意なことや強み(例:高い集中力、正確性)と結びついているか。
- 伝え方:「定時の退社という配慮は必要ですが、その分、勤務時間内は〇〇という得意業務で高い集中力を発揮し、貴社の生産性向上に貢献できます」と伝えます。
回答の構成:採用担当者に響く3つのステップ
ステップ1:簡潔な「現状報告」と「安定性の強調」
まず、聞かれたことに対して結論から簡潔に答えることで、面接官の疑問を速やかに解消し、安心感を与えます。
- (1)診断名と等級:例:「精神障害者保健福祉手帳2級(うつ病)を所持しています。」
- (2)現在の状況と安定性:例:「現在は主治医の許可を得ており、過去半年間は週5日の訓練(または勤務)を継続できており、安定した状態です。」
- (3)通院状況:例:「通院は月に一度のペースで安定しており、服薬調整も完了しています。」
このパートでは、過去の重い病状や、発症の経緯など、業務遂行に直接関係のないネガティブな話はできるだけ避けることが重要です。現在の「安定」を強調しましょう。
ステップ2:業務への「影響」と「自己管理の工夫」をセットで説明
次に、障害特性が業務に与える影響と、それに対するあなたの自己管理の方法を具体的に説明します。
- (1)影響を受ける業務:例:「聴覚過敏の特性があるため、電話が集中する環境や、マルチタスクの業務は集中力を乱す可能性があります。」
- (2)具体的な自己対策:例:「そのため、日々の体調を記録し、疲れを感じる前に自席で10分間の休憩を取るなど、自己管理のルーティンを徹底しています。」
- (3)第三者の意見:例:「就労移行支援の担当者からは、私の自己管理能力は高く評価されています。」
この段階で、あなたの「自己理解の深さ」と「問題解決能力」をアピールできます。感情ではなく、具体的な行動やツール(例:チェックリスト、日報)を用いて説明しましょう。
ステップ3:「必要な配慮」と「貢献の具体例」で締めくくる
最後に、あなたの能力を最大限に発揮するために必要な配慮と、それが企業にとってどのようなメリットをもたらすかを結びつけて、ポジティブに締めくくります。
- (1)具体的な配慮:例:「具体的には、業務指示の文書化と、残業の原則免除をお願いできれば幸いです。」
- (2)貢献への言及:例:「この配慮があれば、私の強みであるデータ入力の正確性と、文書作成のスピードを最大限に発揮し、貴社の業務効率化に大きく貢献できると確信しております。」
障害種別ごとの具体的な表現例
(1)精神障害(うつ病、双極性障害など)の場合
精神障害の場合、「現在は安定していること」と「再発予防のための具体的な対策」を最も明確に伝える必要があります。
「私は精神障害(〇〇病)を持っていますが、現在は主治医の指導のもと、服薬管理が安定しており、就労可能な状態であるとの許可を得ています。」
「業務においては、急な業務負荷の増加が疲労の引き金となる可能性があるため、残業は原則免除をお願いしたいです。その代わり、勤務時間内に高い集中力で業務を終わらせるよう、時間管理能力を高めてまいりました。週に一度、上司と業務量の確認を行う面談を設けていただけると、さらに安定して勤務できます。」
(2)発達障害(ASD、ADHDなど)の場合
発達障害の場合、「苦手なこと」の理由を論理的に説明し、「強み」を活かせるよう誘導することが重要です。
「私は発達障害(ASD)の特性があり、特に複数の情報を同時に処理するマルチタスクや、曖昧な口頭指示に苦手さを感じます。しかし、この特性は一つのタスクへの高い集中力と、ミスを許さない厳密なチェック能力という強みの裏返しでもあります。」
「貴社には、業務指示を必ず文書化していただき、複雑なタスクは分解して一つずつ与えていただく配慮をお願いしたいです。この条件があれば、私の強みを活かし、データ管理や校正業務で、他の方よりも正確で質の高い成果を提供できます。」
(3)身体障害(肢体不自由、内部障害など)の場合
身体障害の場合、必要な設備や環境に関する配慮を具体的かつ簡潔に伝えることが中心になります。
「私は身体障害(車いすを使用)を持っています。業務遂行能力そのものに影響はありませんが、オフィス環境において、車いすがスムーズに移動できる導線の確保と、高さ調整可能なデスクをお願いしたいです。」
「また、通勤ラッシュ時の体力的消耗を避けるため、30分程度の時差出勤をお願いできますでしょうか。通勤ストレスを減らすことで、業務開始時から万全の状態で臨み、貴社の事務サポート業務で即戦力として貢献いたします。」
面接で避けるべきNG表現と注意点
NG表現1:「根拠のない曖昧な表現」や「他責的な説明」
「ストレスをかけないようにしてほしい」「前の会社は理解がなかった」といった、曖昧な要求や他責的な言葉は避けましょう。企業は、あなたが問題を客観的に分析し、自分で解決しようと努力している姿勢を見たいのです。
【避けるべき点】
- 症状の過度な詳細:発病の詳しい経緯や、辛かった症状を長々と語る。
- 企業の批判:前の職場の悪口や、配慮が足りなかったことを批判する。
- 抽象的な要求:「できるだけ配慮を」ではなく、「○○を、△△という方法で」と具体的に。
注意点2:回答に「障害版トリセツ」を活用する
口頭での説明に不安がある場合は、事前に作成した「障害版トリセツ(自分自身の取扱説明書)」を面接時に提出しましょう。これは、あなたの自己理解の深さと、情報公開への積極性を示す非常に有効な手段です。
トリセツには、「診断名」「得意なこと・苦手なこと」「必要な配慮(具体的な方法)」「体調悪化時のサインと対応方法」を整理して記載します。
注意点3:面接官の「理解度」に応じて説明の深さを調整する
面接官が障害者雇用の専門知識を持つ人事担当者か、現場の部署の責任者かによって、説明の深さを調整します。
- 人事担当者:専門用語(合理的配慮、定着支援など)を用いても伝わりやすいが、客観的なデータや実績を重視する。
- 現場責任者:専門用語は避け、「業務に具体的にどう影響するか」と「入社後にどう動いてほしいか」という実践的な視点を中心に説明する。
まとめ
面接で「障害について説明してください」と問われたら、それはあなたの「自己理解の深さ」と「安定就労への準備」を証明するチャンスです。質問の意図を理解し、現在の安定性、具体的な自己対策、そして配慮がもたらす企業への貢献を、3つのステップで論理的に伝えましょう。
不安な感情を抱えたまま面接に臨むのではなく、就労移行支援などの専門家と何度もロールプレイング(面接練習)を重ね、この3ステップでの回答を完璧に習得してください。自信を持って、あなたの能力を最大限にアピールしましょう。
- 回答は、「現状の安定性」「自己管理の工夫」「貢献と配慮のセット」の3ステップで構成する。
- 過去の病状やネガティブな話は避け、「現在の安定」と「未来の貢献」に焦点を当てる。
- 具体的な配慮は、「障害版トリセツ」として文書で準備し、提出する。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





