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障害者の健康診断で注意すべきポイント

📖 約53✍️ 酒井 勝利
障害者の健康診断で注意すべきポイント
障害のある方の健康診断は、二次障害や生活習慣病の早期発見に重要ですが、パニックや体位の問題から受診率が低い傾向にあります。健診を成功させるには、事前に障害特性、常用薬、必要な配慮をまとめた情報シートを医療機関に提出することが不可欠です。健診施設は、待ち時間短縮や車椅子対応など柔軟な配慮が可能な専門性の高い病院を選びましょう。検査時には、採血時の不安軽減策や、視覚支援を用いた手順説明が求められます。健診後は、結果をかかりつけ医と共有し、相談支援専門員を通じて食事や運動などの生活支援に反映させることが、健康管理を継続する上での最も重要なフォローアップとなります。

🩺 障害のある方のための健康診断ガイド:準備、受診、フォローアップの注意点

「健康診断を受けさせたいけれど、パニックを起こさずにスムーズに検査を受けられるか不安…」「障害特性に合わせて、どのような配慮を医療機関に求めれば良いのだろう?」

障害のある方、特に知的障害や発達障害、重度の身体障害がある方は、自分の体調の変化を言葉で伝えることが難しかったり、慣れない環境での検査に強い不安や抵抗を示したりすることが多いため、健康診断の受診率が一般と比較して低い傾向にあります。しかし、早期発見が重要な生活習慣病や、重症化しやすい二次障害を防ぐためには、定期的な健康診断は極めて重要です。

この記事では、障害のある方が「安全かつ安心して」健康診断を受けられるように、受診前の準備、検査時の具体的な配慮事項、そして結果に基づいたフォローアップ体制の構築について、徹底的に解説します。この記事を参考にして、ご本人にとって最も適した方法で、予防的な健康管理を実現するための具体的なアクションプランを見つけていきましょう。


📅 1. 健康診断の重要性と受診前の準備

障害のある方は、身体的・精神的な特性から、一般の方とは異なる健康リスクを抱えていることが多く、定期的な健康診断が特に重要です。

なぜ障害のある方にとって健診が重要なのか

障害のある方が健康診断を受けるべき主な理由は以下の通りです。

  • 二次障害の早期発見:身体障害の場合、無理な姿勢や運動不足による骨折、関節の変形、内臓の機能低下などが起こりやすく、早期発見が必要です。
  • 生活習慣病リスクの把握:服薬の影響や食習慣の偏り、運動量の不足から、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高くなります。
  • 「訴えの困難さ」への対応:痛みや体調不良を言葉で伝えられない、または訴えが曖牲な場合に、客観的なデータ(血液検査など)に基づいて病気のサインを見つけることができます。
  • 服薬管理への反映:血液検査や腎機能検査の結果は、現在服用している薬の量や種類が適切か、副作用が出ていないかを評価する重要な情報となります。

「息子の体調の変化に気づきにくいので、半年に一度の血液検査で肝機能の数値をチェックしています。数値が少しでも動いたら、主治医にすぐに相談できる体制が安心です。」

— 知的障害のある子の保護者の声

受診前の具体的な準備:医療機関への情報提供

健康診断をスムーズに進めるために、受診前に医療機関に以下の情報を詳細に提供することが不可欠です。

  1. 障害特性と配慮事項:
    • パニックになりやすいか、特定の音や光に敏感か(聴覚・視覚過敏)。
    • 過去の健診で特に困難だった検査項目(例:採血、胸部X線)。
    • 治療や検査中のコミュニケーション方法(例:絵カード、触覚による合図)。
  2. 常用薬とアレルギー:現在服用している全ての薬(特に精神科の薬)と、過去の重篤なアレルギー反応を正確に伝えます。
  3. 移動・体位に関する情報:車椅子の種類(電動か手動か)、体位変換が可能か、介助者が同行するかどうか。

これらの情報を事前に文書(サマリー)にまとめ、予約時に郵送またはメールで送っておくと、当日の連携が円滑になります。


🏥 2. 医療機関の選び方と特別な配慮の要請

どこで健康診断を受けるかは、成功を左右する重要なポイントです。障害特性に対応できる専門性を持つ医療機関を選び、必要な配慮を要請しましょう。

健診施設の種類と適性

障害のある方の健康診断を受け入れる施設には、主に以下の種類があり、それぞれ得意とする配慮が異なります。

施設の種類 特徴と適性 チェックポイント
障害者専門病院・クリニック 障害特性に精通したスタッフ、バリアフリー設備が充実。 行動調整、全身麻酔下での検査に対応可能か。
地域の総合病院(障害者担当部門) 多職種連携が可能。特殊な検査機器も利用可能。 担当の看護師や医師がつくか、待ち時間の配慮があるか。
かかりつけの医療機関(内科など) 慣れた環境、信頼関係のある医師が対応。 基本的な採血・血圧測定以外の検査(X線など)に対応できるか。

特に、知的障害や発達障害があり、パニックのリスクが高い方は、地域の健康診断センターのような流れ作業的な施設ではなく、予約時間や個室での対応が可能な専門性の高い医療機関を選ぶべきです。

検査時の具体的な配慮事項の要請

受診当日、安心して検査を受けるために、事前に以下の配慮を要請しましょう。

  • 待ち時間の短縮と個室対応:感覚過敏や不安が強い方のために、優先的な案内や、待機場所として個室(または静かなスペース)を用意してもらう。
  • 検査手順の視覚化:次に何をするかを理解できるように、絵カードや写真を用いた検査手順の説明を求める。
  • 採血時の工夫:採血が苦手な場合、事前に麻酔テープを使用する、体を押さえつけるのではなく、介助者が抱きしめるなどの安全確保の方法を相談する。
  • 全身麻酔下での検査:歯科治療と同様に、どうしても検査が困難な場合は、大学病院などで麻酔科医立ち会いのもと、全身麻酔下で一連の検査を一回で済ませる方法を検討する。

✅ 成功のコツ

検査当日は、ご本人が最も安心できる信頼できる介助者(家族または支援員)が必ず付き添い、検査中の声かけや行動調整を行うことで、検査の成功率が格段に向上します。


🧪 3. 検査項目別:障害特性に合わせた注意点

障害の種類や特性によって、検査項目ごとに特別な注意や工夫が必要です。

採血・血液検査

血液検査は、体調不良を訴えられない障害者にとって、病気のサインを見つける最も重要な客観的指標です。

  • 精神科薬と検査値:抗精神病薬や抗てんかん薬など、常用薬が肝機能、腎機能、血糖値、脂質などに影響を与えることがあります。服薬の影響を考慮した評価が必要であり、採血前に必ず服薬情報を医療機関に伝えましょう。
  • 甲状腺機能:特にダウン症のある方は甲状腺機能低下症のリスクが高いため、定期的な甲状腺ホルモン検査(TSH、FT4など)が推奨されます。
  • 検査値の基準:知的障害のある方は、標準的な基準値とは異なる傾向を示す項目もあるため、かかりつけ医との連携を通じて、その人にとっての「平常値」を把握しておくことが重要です。

胸部X線・心電図検査

体位の維持や静止が難しい、衣服の着脱に時間がかかる、といった特性への配慮が必要です。

  • X線検査:ポータブルX線装置を使用し、車椅子に乗ったままや、座位・臥位(寝た姿勢)で撮影できるよう、柔軟に対応してくれる施設を選びましょう。また、撮影時は大きな音が鳴ることを事前に伝え、不安を和らげます。
  • 心電図:皮膚に電極を貼ることに強い抵抗がある場合があります。リラックスできる体勢での検査を試みる、また、入眠中に検査を行うなどの工夫が求められます。

「心電図で電極を貼る際、看護師さんが『冷たいシールを貼るよ、大丈夫だよ』と声をかけ、事前に貼る場所を指で触って確認してくれたことで、パニックにならずに済みました。」

— 発達障害のある方の家族の声

視力・聴力検査

簡単な指示の理解や、自発的な応答が困難な場合、通常の検査方法では正確な結果が得られないことがあります。

知的な遅れがある場合は、ランドルト環(Cのような記号)ではなく、絵カードを使った視力検査や、音への反応を観察する聴力検査など、工夫された検査方法が必要です。また、介助者が横でサポートしながら検査を行うことも一般的です。


📚 4. 結果の評価とフォローアップ体制の構築

健康診断は、受けて終わりではありません。結果を正確に評価し、必要な治療や生活指導に繋げる「フォローアップ体制」の構築が最も重要です。

検査結果の評価:かかりつけ医との連携

健康診断の結果に異常値が見つかった場合、主治医(かかりつけ医)に結果を持参し、常用薬の影響や障害特性を考慮に入れた総合的な評価を受ける必要があります。

  • 二次精査:異常値が確認された場合、精密検査(二次精査)が必要です。この際も、健診時と同様の配慮が受けられるよう、かかりつけ医から専門医へ情報連携を行ってもらいましょう。
  • 生活指導への反映:例えば、血糖値が高かった場合、単に薬を増やすだけでなく、食事指導や運動指導が必要です。この指導は、本人の理解度や嗜好に合わせて、絵や写真、簡単な言葉を使って具体的に行う必要があります。

服薬・生活習慣の見直し

健診結果に基づき、特に精神科の常用薬が検査値に大きく影響している場合、主治医と相談して薬の種類や量を見直す必要があります。

同時に、生活習慣の改善は、障害福祉サービスとの連携が不可欠です。

  • 食事の調整:糖尿病予防のためのカロリー調整や塩分制限を、障害者支援施設の栄養士や調理担当者と連携して実施します。
  • 運動量の確保:身体機能維持と肥満予防のため、リハビリ専門職(PT/OT)や日中活動の支援員と連携し、楽しめる運動プログラム(例:水中ウォーキング、レクリエーション)をサービス等利用計画に組み込みます。

💡 ポイント

健康診断の結果は、年に一度のサービス等利用計画の見直し(モニタリング)の際に、生活目標設定の重要な資料として活用しましょう。健康状態を改善するための支援内容を計画に具体的に盛り込みます。


🤝 5. 相談窓口と健康管理のためのアクションプラン

障害のある方の健康診断は、医療機関だけでなく、福祉サービスや地域社会全体で支えるべき課題です。適切な窓口を頼り、健康管理体制を確立しましょう。

健康診断に関する主な相談窓口

健康診断の準備や受診後のフォローアップで困ったときは、以下の窓口に相談しましょう。

窓口 主な相談内容
かかりつけ医(主治医) 健診の必要性、検査項目、結果の評価、二次精査への紹介。
地域の保健センター(保健師) 地域で受けられる健診の種類、健診施設の情報、生活習慣病の予防指導。
相談支援専門員(地域の相談支援事業所) 健診結果に基づいた福祉サービスの調整(食事・運動の支援)。
障害者支援施設・入所施設の看護師 施設利用者の健診手続き、当日の付き添い、服薬管理。

特に、地域の保健師は、医療機関と福祉施設をつなぐ役割を果たしてくれることが多く、健診の準備段階から相談することで、スムーズな受診につながります。

健康診断を成功させるためのアクションプラン

この記事を読まれた後に、以下の具体的なステップを実行に移してください。

  1. かかりつけ医の決定:障害特性を理解し、健診結果を総合的に評価してくれる「かかりつけ医」を決めましょう。
  2. 情報シートの作成:障害特性、配慮事項、常用薬、過去の健診で困難だった点をまとめた「情報提供シート」を作成し、健診施設に事前提出しましょう。
  3. 健診施設の選定:待ち時間の配慮、体位への対応、コミュニケーション支援など、必要な配慮を具体的に確認し、健診施設を予約しましょう。
  4. 生活支援への反映:健診結果が出たら、相談支援専門員と連携し、食事・運動に関する支援内容をサービス利用計画に組み込み、日々の支援に活かしましょう。

定期的な健康診断は、障害のある方が健やかで安定した生活を送るための土台です。必要な配慮を求め、積極的な健康管理を行っていきましょう。


まとめ

  • 障害のある方にとって健康診断は、体調変化の訴えが難しい場合の二次障害や生活習慣病の早期発見に極めて重要である。
  • 健診前には、障害特性、パニックリスク、必要なコミュニケーション方法をまとめた情報シートを医療機関に事前提出し、配慮を要請することが不可欠。
  • 健診施設は、待ち時間短縮、個室対応、車椅子対応など、柔軟な配慮が可能な専門病院や総合病院を選ぶべきである。
  • 検査時には、常用薬の影響を考慮した血液検査の評価、X線検査での体位調整、視覚支援を用いた検査手順の説明などの工夫が求められる。
  • 健診後は、結果をかかりつけ医と共有し、相談支援専門員を通じて福祉サービス(食事・運動支援)に反映させることが、健康維持の鍵となる。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

スマート家電と福祉の融合、IoT活用

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