障害者の自宅での事故防止と安全対策チェックリスト

安心・安全な自宅に!障害者のための事故防止と対策チェックリスト
ご本人、ご家族、そして支援者の皆様、住み慣れた自宅は最も安心できる場所である一方で、一歩間違えば思わぬ事故につながる危険も潜んでいます。特に、身体機能や認知機能に課題のある方にとって、階段での転倒や水回りでの滑り、誤飲・誤食といった事故は、生活の質(QOL)を大きく損なう可能性があります。
ご自宅での事故を未然に防ぎ、安心できる毎日を送るためには、障害の特性に応じたきめ細やかな環境整備と継続的なチェックが欠かせません。
この記事では、障害のある方が自宅で遭遇しやすい事故の種類を分析し、それらを予防するための具体的な対策と、すぐに使えるチェックリストを、場所別に詳しくご紹介します。
ぜひ、この記事を参考に、ご自宅の安全性をもう一度見直し、リスクを最小限に抑えるための行動を今日から始めていきましょう。
🚷 転倒・移動リスクの排除:廊下と階段の安全対策
自宅内で発生する事故の約8割は転倒によるものと言われています。移動経路となる廊下や階段の安全確保は、事故防止の最優先事項です。
段差と滑りのない床面環境を作る
まず、廊下や居室の床には、わずかな段差も残さないことが重要です。敷居(しきい)は可能な限り撤去し、カーペットや電気コードはつまずきの原因となるため、端をテープで固定したり、壁に沿わせるなどして整理しましょう。
床材は、滑りにくい素材を選びます。特に玄関や水回りへのアプローチは、防滑性の高い床材への改修が理想です。既存の床を替えられない場合は、滑り止め加工が施されたマットやテープを、主要な動線に敷設するだけでも効果があります。
さらに、車椅子や歩行器を利用される方は、床面の凹凸(デコボコ)があると移動の妨げになります。厚みのあるラグや毛足の長いカーペットは避け、フラットで硬質な床面が適しています。
💡 ポイント
床面の滑り止め対策として、ホームセンターなどで手に入る「滑り止めスプレー」や「防滑ワックス」を活用するのも、手軽なDIY対策の一つです。
階段での転落事故を防ぐ三つの対策
階段は、自宅内で最も危険な場所の一つです。転落事故を防ぐためには、以下の三つの対策を徹底しましょう。
- 手すりの設置: 階段の両側に、手の高さ(床から75cm~85cm程度)に合った手すりを、途切れることなく連続して設置します。手すりの端は、服などが引っかからないよう壁側に曲げる(袖返し)工夫をしましょう。
- 視認性の向上: 階段の段鼻(段の先端)に、他の部分と色のコントラストが強い滑り止めテープを貼ることで、段差の終わりを視覚的に明確にします。特に、視覚障害のある方や高齢者に有効です。
- 適切な照明: 階段の上下にスイッチ(三路スイッチ)を設け、常に明るい状態で昇降できるようにします。足元をピンポイントで照らすフットライトも転倒予防に効果的です。
また、階段の昇降に介助が必要な場合は、可能であれば階段昇降機やホームエレベーターの導入も検討し、公的な助成制度(介護保険の住宅改修費など)を活用しましょう。
🔥 誤飲・誤食・火傷の予防:キッチンと居室の危険物管理
認知機能に課題のある方や、行動障害のある方は、食べ物でないものを口にしてしまう誤飲・誤食や、熱源に触れてしまう火傷のリスクが高まります。これらの事故を防ぐための環境整備が必要です。
キッチンでの火災・火傷の徹底対策
キッチンは、火と刃物、熱湯が集中する危険な場所です。可能な限り、ご本人を立ち入らせない物理的な隔離が第一の安全対策となります。
- 包丁や刃物の収納: 鍵のかかる引き出しや手の届かない高所に厳重に保管します。
- 調理器具の変更: ガスコンロから、熱源が直接露出しないIHクッキングヒーターに交換することを検討します。これにより、直火による火傷や着衣着火の危険を大幅に減らせます。
- ポット・炊飯器の配置: 熱湯を使う電気ポットや炊飯器は、転倒しても熱湯がこぼれにくい安全設計のものを選び、かつ、手の届きにくいカウンター奥などに配置します。
特に、知的障害や発達障害のある方の場合、興味本位で熱源に触れる行動を防ぐために、キッチンとリビングを仕切るベビーゲート(大人でも乗り越えにくい高さのもの)を設置するのも有効なDIY対策です。
⚠️ 注意
誤飲・誤食の危険があるものを、鍵付きの棚に保管する際、その鍵を常に介護者や支援者が携帯することを徹底しましょう。鍵の管理ミスが、重大な事故につながることがあります。
誤飲・誤食につながる危険物の整理
誤飲・誤食のリスクは、薬、洗剤、電池、タバコ、小さな装飾品など、家庭内のあらゆる場所に潜んでいます。これらの危険物は、すべて鍵のかかる収納場所に保管することをルール化しましょう。
テーブル
| 危険物 | 対策 |
|---|---|
| 薬(内服薬) | 日付や服用タイミングごとに一包化し、鍵付きの薬箱で管理。 |
| 洗剤・漂白剤 | 誤飲防止キャップ付きであっても、手の届かない場所または施錠。 |
| ボタン電池・磁石 | リモコンや玩具から取り出し、完全に隔離・廃棄。 |
| タバコ・ライター | 厳重に施錠し、ご本人から見えない場所に保管。 |
ご本人にとって、薬が「キャンディ」や「食べ物」と認識されないよう、保管場所の環境を整え、薬の管理は必ず支援者が行う仕組みを確立しましょう。
🛀 水回り・寝室の密室リスクと転倒対策
浴室やトイレ、そして寝室は、密室になりやすく、事故が起こった際に発見が遅れるリスクが高い場所です。プライバシーを守りつつ、安全を確保するための対策が必要です。
浴室・トイレでの閉じ込めと滑り防止
浴室は、滑りやすい床と熱いお湯が危険の要因となります。床には必ず滑り止めマットを敷き、浴槽の縁には立ち上がりをサポートするための手すり(浴槽内手すりや据置型手すり)を設置しましょう。
最も重要なのは、ドアが外から開けられる構造になっているか確認することです。内鍵がかかるタイプのドアは、万が一ご本人が中で倒れたり閉じ込められたりした際に、外から速やかに解除できる構造にしておくことが必須です。
また、シャワーやカランから出るお湯の温度設定を、熱すぎる温度(42℃以上)に固定できないよう、給湯器側で上限を設けることも、火傷を防ぐための重要な対策です。
トイレのドアも、内鍵を使用しないか、外からコインなどで解除できるタイプに交換するか、それが難しい場合は、ドアの下部に非常時用の開口部を設けるなどの工夫が求められます。
✅ 成功のコツ
トイレや浴室に、防水仕様の呼び出しボタンやワイヤレスコールを設置しましょう。ご本人が緊急事態を家族やヘルパーにすぐに伝えられる環境を整えることで、密室での発見遅れを防げます。
寝室での転落・挟まれ事故の予防
ベッドからの転落や、ベッドと壁、ベッドとサイドレール(柵)の間に体が挟まってしまう事故も多く発生しています。
ベッドは、高さが低く、足がつきやすい低床型ベッドを選ぶことが、転落時の衝撃を減らすために有効です。サイドレールを使用する場合は、体や頭が挟まらないよう、レールとマットレスの隙間を埋めるクッションやマットを必ず使用します。
また、夜間の移動(トイレなど)の際に、つまずかないよう、寝室から廊下にかけて足元灯(センサー付き)を設置するDIYも安全対策として効果的です。
てんかん発作など、就寝中に発作を起こすリスクがある方は、センサーマットや見守りカメラなどを導入し、常に異変を検知できる体制を整えましょう。
📋 自宅の安全対策チェックリストと見直し
これまでの対策を踏まえ、ご自宅の安全性を点検するためのチェックリストと、定期的な見直しの重要性について解説します。
自宅の安全点検チェックリスト(例)
このチェックリストを参考に、ご家族や支援者と一緒に、リスクのある箇所に「はい/いいえ」で答えてみましょう。
- 移動・床面
- 廊下や居室に段差やコードが露出していませんか?
- 床面に滑りやすい箇所(玄関、水回り付近)はありませんか?
- 手すりが必要な箇所に、適切な高さの手すりが設置されていますか?
- 階段・昇降
- 階段の段鼻は明確に視認できますか?
- 階段の上下に照明スイッチがありますか?
- 階段の踏面(足を乗せる部分)に滑り止め加工がされていますか?
- 危険物・火災
- 薬、洗剤、タバコ、ライターは、すべて鍵付きの場所に保管されていますか?
- ガスコンロからIHクッキングヒーターへの変更を検討しましたか?
- 火災報知器が正常に動作し、点検期限内ですか?
- 水回り・密室
- 浴室、トイレのドアは、外から緊急時に開けられる構造ですか?
- 浴室の給湯温度が、火傷しない温度に設定されていますか?
- トイレや浴室に、緊急用の呼び出し手段(コールボタン)がありますか?
一つでも「いいえ」があった場合は、その箇所を最優先で改善する必要があります。
定期的な見直しと専門家との連携
自宅の安全対策は、一度行えば終わりではありません。ご本人の身体状況や認知機能は時間とともに変化するため、少なくとも半年に一度は、このチェックリストを用いて見直しを行うことが重要です。
また、新たな事故のリスクを見つけるためには、福祉住環境コーディネーター、理学療法士、または訪問介護のサービス提供責任者などの専門家による客観的な視点が必要です。
専門家は、ご本人の歩き方や動作の癖を見て、「どこに危険が潜んでいるか」を的確に指摘してくれます。サービス担当者会議などを利用し、安全対策についても議論する場を設けましょう。
🎯 まとめと次の一歩の提案
障害のある方の自宅での事故防止は、「危険物の隔離」と「環境のバリアフリー化」、そして「緊急時の連絡手段の確保」の三本柱で成り立っています。
転倒、火傷、誤飲といった事故は、適切な事前対策によってほとんど防ぐことができます。大切なのは、日々の生活を「当たり前の安全」で満たしていくための、地道なチェックと改善の継続です。
このチェックリストが、皆様の安心できる生活を支えるための具体的なツールとなることを心より願っています。
次の一歩の提案
まずは、ご自宅の薬や洗剤などの保管場所をすべて確認し、誤飲の危険がないかチェックしてみましょう。そして、鍵付きのボックスや手の届かない棚に移すという「危険物の隔離」を最優先で実施しましょう。
まとめ
- 転倒を防ぐため、廊下・階段の段差と滑りを徹底的に排除し、両側手すりと足元照明で安全性を高める。
- 誤飲・火傷を防ぐため、薬、洗剤、ライターなどの危険物はすべて鍵付きで隔離し、キッチンはIHへの変更やベビーゲートの設置を検討する。
- 浴室やトイレは、外から開けられる構造や緊急コールボタンを設置し、ご本人の状態変化に合わせて半年に一度は専門家と連携して安全点検を行う。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





