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障害者向け住宅改修の流れと費用の目安

📖 約44✍️ 酒井 勝利
障害者向け住宅改修の流れと費用の目安
本記事は、障害者向け住宅改修の具体的な流れと費用目安を解説します。改修は、まず理学療法士ら専門家による現状評価とプラン策定から始めます。費用助成の核となるのは、介護保険(上限20万円)と障害者総合支援法(応能負担)で、自己負担を抑えるため両制度の併用と自治体独自の補助金の活用を推奨。最も重要なのは、工事着工前の「事前申請」の徹底です。工事費用の目安として、手すり設置が3〜10万円、大規模な浴室改修が80〜200万円程度であることを示し、賃貸住宅での注意点や、相談窓口についても具体的に案内します。

安心の在宅生活へ!障害者向け住宅改修の流れと費用の目安

障害のある方やご家族にとって、自宅のバリアフリー改修は、生活の安全と自立度を高めるための重要なステップです。しかし、「どこから手をつけたらいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」「複雑な申請手続きをどう進めたらいいのか」といった疑問や不安を抱えることは自然なことです。

住宅改修は、専門家の連携と公的制度の活用が成功の鍵となります。特に、事前の計画と市町村への申請手続きを誤ると、助成金が受け取れないといった大きな問題につながりかねません。

この記事では、障害者向けの住宅改修を計画段階から完了まで、費用助成の仕組みを交えてステップごとにわかりやすく解説します。具体的な工事の費用目安や、賢く制度を組み合わせる方法を知り、安心して改修を進めるための道筋を一緒に確認していきましょう。


🤝 ステップ1:準備と専門家への相談

改修の第一歩は、ご本人の現在の状態を正確に把握し、最適な改修プランを立てるための「チーム」を作ることです。この準備段階で、改修の成否がほぼ決まります。

現状評価と「困りごと」の可視化

まず、ご本人とご家族が、日常生活で感じている「困りごと」を具体的にリストアップします。

  • 移動の困難さ: どの場所(玄関、廊下、トイレなど)で、どんな道具(杖、車椅子など)を使って、どのように移動しているか。
  • 介助の負担: 家族やヘルパーが、どの動作(入浴、移乗、体位変換など)でどれくらいの介助力を要しているか。
  • ヒヤリハットの記録: 過去に転倒しそうになった場所や、特に危険を感じる瞬間を記録します。

この情報は、理学療法士や福祉住環境コーディネーターに、改修の必要性を根拠づけるための重要な資料となります。具体的なデータに基づいた要望は、改修の効果を高めます。

💡 ポイント

改修の際には、現在の状態だけでなく、将来的に障害が進行する可能性や、加齢による機能低下も視野に入れましょう。「今、手すりが欲しい場所」だけでなく、「5年後、車椅子が必要になった時に備えるべき通路幅」など、長期的な視点を持つことが重要です。

福祉住環境コーディネーターとリハビリ専門職への相談

適切な改修プランを立てるために、以下の専門職に相談し、チームに加わってもらいましょう。

  • 理学療法士(PT)・作業療法士(OT): ご本人の動作分析を行い、手すりの最適な高さ、角度、必要な動作補助具などを提案してもらいます。この専門的な意見書が、助成金申請の重要な根拠となります。
  • 福祉住環境コーディネーター: PT・OTの提案を基に、家の構造や予算、利用できる制度を考慮した具体的な改修プランを作成します。また、複数の工事業者との調整役も担います。

この二者の連携により、機能的で安全、かつ費用対効果の高い改修計画が実現します。


💰 ステップ2:費用助成制度の確認と併用

障害者向け住宅改修には複数の公的支援制度が存在します。これらの制度を理解し、賢く組み合わせることで、自己負担額を大きく減らすことができます。

制度の柱:介護保険と障害者総合支援法

改修費用を助成する主要な公的制度は、主に二つあります。

1. 介護保険による住宅改修費の支給

  • 対象者: 要介護認定または要支援認定を受けている方(原則65歳以上)。
  • 支給限度額: 20万円(原則一生涯)が上限です。これに対し、自己負担は所得に応じて1割、2割、または3割となります。
  • 対象工事: 手すりの取り付け、段差の解消、滑り止め床材への変更、引き戸等への扉の交換、洋式便器への交換の5項目に限定されます。

2. 障害者総合支援法による日常生活用具給付等事業

  • 対象者: 障害者手帳(身体、療育、精神)を所持している方。
  • 支給内容: 居宅生活動作補助用具(住宅改修費)として、自治体が定める基準額内で助成されます。介護保険の対象外となる、より大規模な改修(リフト、ホームエレベーターの一部など)が対象となる場合もあります。
  • 費用の特徴: 所得に応じた応能負担であり、月額の自己負担上限額が設定されています(低所得者は自己負担なし)。

✅ 成功のコツ

40歳以上65歳未満で特定疾病により要介護認定を受けた障害のある方は、まず介護保険(20万円)を優先して利用し、それを超える費用や対象外の改修については障害者総合支援法の制度の活用を検討しましょう。制度の併用により、自己負担を最小限に抑えられます。

その他の補助金と低利融資

国の制度の限度額を超えた場合や、対象外の工事が必要な場合は、自治体独自の補助制度や金融支援を検討します。

  • 自治体独自の重度障害者向け改修補助金: 各市町村が、国の制度に上乗せする形で、重度の障害者世帯に高額改修費用の一部を補助する制度を設けていることがあります。上限額は自治体によって数十万円から数百万円と幅広いです。
  • 住宅金融支援機構の融資: バリアフリー工事を行う際の低利融資制度があります。自己資金や公的助成では賄いきれない大規模改修を行う際に有効です。

これらの制度は複雑であるため、まずは地域の相談支援専門員(障害者)や地域包括支援センター(高齢者)に確認することが最も確実です。


🏗️ ステップ3:申請と工事業者選定・契約

費用の見通しが立ったら、いよいよ改修の「肝」となる公的申請と、工事を担う業者選定の段階に入ります。

絶対に守るべき「事前申請の原則」

すべての公的助成制度において、最も重要なルールが「事前申請」です。

「住宅改修は、いかなる理由があっても、市町村の承認(支給決定)が出る前に着工してはならない。着工した場合は、たとえ制度の対象となる工事であっても助成の対象外とする。」

— 公的制度の基本ルール

このルールを徹底し、市町村の窓口に以下の書類を提出します。

  • 申請書、理由書(リハビリ専門職の意見を含む)
  • 改修前の写真
  • 工事見積書、図面(改修前・改修後)

市町村による書類審査、必要に応じて現地確認を経て、「支給決定通知書」が届いたら、初めて工事を開始できます。

工事業者の選び方と契約時のポイント

バリアフリー改修は、一般的なリフォームとは異なり、高い専門知識が必要です。

  • 福祉住環境コーディネーター資格を持つ業者: 設計担当者や現場監督が、福祉住環境コーディネーターの資格を持っているか確認しましょう。福祉的な知見を持っていることが重要です。
  • 複数業者からの見積もり: 必ず2~3社から見積もりを取り、相場や工事内容、担当者の対応などを比較検討します。
  • 契約時の注意: 契約書には、工事期間、費用の内訳、公的助成金が不支給となった場合の対応などを明確に記載してもらいましょう。

助成金制度を利用する場合、市町村から指定された業者や、制度利用に慣れた業者を選ぶと手続きがスムーズに進むことが多いです。


💰 工事の種類別:費用の具体的な目安

改修費用の目安は、住宅の構造や仕様、地域の物価によって大きく変動しますが、一般的な工事の種類ごとの費用感を知っておくことは重要です(自己負担分を除く、総工事費用)。

軽微な改修と水回りの費用目安

多くの家庭で必要とされる、比較的費用が抑えられる工事の目安です。

工事の種類 費用の一般的な目安(総額) 制度利用の可能性
手すりの取り付け(1箇所) 3万円〜10万円 介護保険/日常生活用具
段差解消(簡易スロープ設置) 2万円〜5万円 介護保険/日常生活用具
トイレの洋式化・手すり設置 10万円〜25万円 介護保険/日常生活用具
扉の交換(開き戸→引き戸) 20万円〜40万円 介護保険/日常生活用具

トイレの改修は、特に床材を滑りにくいものに変更したり、スペースを広げたりすると費用が大きく上がることがあります。手すり一本の設置費用は安価ですが、下地補強(壁の裏側の補強)が必要な場合、総額が予想よりも高くなることがあります。

大規模改修と高額設備の費用目安

大規模な改修や高額な設備は、主に障害者総合支援法や自治体独自の補助金、または住宅ローンを利用して行われます。

  • 浴室の全面改修(ユニットバス交換、低床化、暖房設置): 80万円〜200万円
  • 車椅子対応キッチン(昇降式、シンク下スペース確保): 150万円〜300万円
  • ホームエレベーター設置: 300万円〜600万円(構造や機種による)
  • 屋外スロープ設置(大規模): 50万円〜200万円(勾配や設置場所による)

特にホームエレベーターや大規模なスロープは、介護保険の20万円の枠では全く足りません。これらの高額改修を検討する際は、必ず市町村の障害福祉課に、独自の重度障害者向け補助金制度があるかを確認しましょう。補助金の上限額が100万円以上である自治体も存在します。


❓ よくある質問(Q&A)と相談窓口

住宅改修に関する、障害者やご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 賃貸住宅でも改修は可能ですか?

A. 可能です。ただし、オーナー(大家)の承諾が絶対条件です。手すりの取り付けなど、原状回復が比較的容易な工事であれば、承諾を得やすい傾向にあります。

助成金制度(介護保険、日常生活用具)は、賃貸住宅でも利用できますが、申請時にオーナーの承諾書が必要です。退去時に原状回復を求められる場合があるため、契約内容をしっかり確認しましょう。

Q2. 助成金の「理由書」は誰に書いてもらうのですか?

A. 制度によりますが、介護保険の場合はケアマネジャー、障害者総合支援法の場合は相談支援専門員が中心となって作成します。しかし、内容の根拠となる「医学的な見地」は、

  • 手すりの設置位置などの機能的な理由:理学療法士・作業療法士
  • 医学的な必要性:主治医

の意見書を添付するのが一般的です。特に、リハビリ専門職の「動作分析に基づく提案」は、支給決定に非常に大きな影響を与えます。

Q3. 改修工事の期間はどれくらいかかりますか?

A. 工事の種類によって大きく異なります。

  • 手すり取り付け・簡易段差解消: 1日〜数日
  • 扉の交換・トイレ改修: 1週間〜2週間
  • 浴室の全面改修(ユニットバス交換): 1週間〜2週間(既存の解体や乾燥期間を含む)
  • 大規模改修(間取り変更、エレベーター設置など): 1ヶ月〜数ヶ月

工事期間中は、入浴やトイレが一時的に使えなくなるため、仮設トイレや代替の入浴サービス(デイサービスなど)の手配が必要です。スケジュールは事前に業者と綿密に打ち合わせましょう。


✨ まとめと次の一歩の提案

障害者向けの住宅改修は、費用助成の仕組みが複雑ですが、「事前申請の徹底」「専門家チーム(PT/OT、コーディネーター)の連携」「制度の複合的な活用」という三つのステップを踏むことで、必ずスムーズに進めることができます。

特に、介護保険(20万円)と障害者総合支援法の両方の制度を活用する知識は、自己負担を軽減する上で不可欠です。この記事で紹介した費用の目安を参考に、まずはご自宅の改修イメージを描いてみましょう。

次の一歩の提案

お住まいの地域の相談支援事業所に連絡し、「自宅のバリアフリー改修を検討しているので、理学療法士の訪問と、利用できる制度の確認をお願いしたい」と具体的に伝えてみましょう。ここからすべてが始まります。

まとめ

  • 改修は事前申請が必須であり、介護保険(20万円上限)と障害者総合支援法(応能負担)の制度の併用を検討する。
  • 計画は、理学療法士・作業療法士の動作分析に基づき、福祉住環境コーディネーターが具体的なプランに落とし込む。
  • 高額な改修費用は、自治体独自の補助金や低利融資の情報を確認し、自己負担を最小限に抑えることが鍵である。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

スマート家電と福祉の融合、IoT活用

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