障害者のための家事支援サービス活用法

自立した暮らしを支える!障害者のための家事支援サービス活用法
障害のある方やご家族、そして支援者の皆様、「自分の力で生活を組み立てたい」「家族の負担を少しでも減らしたい」という思いは、誰もが持っているものです。その中でも、食事の準備、掃除、洗濯といった日々の「家事」は、自立した生活を送る上で非常に重要な要素となりますが、障害特性によっては大きな困難を伴う場合があります。
家事支援サービスは、単に家事を代行するだけでなく、ご本人の生活能力を維持・向上させるための訓練の場にもなり得ます。しかし、公的な制度から民間のサービスまで多岐にわたるため、「どのサービスが自分に合っているのか」「どうやって利用手続きを進めるのか」と迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、障害者総合支援法に基づく公的な家事支援(居宅介護など)の仕組みから、自立を促す効果的な活用法、さらには民間サービスの上手な組み合わせ方までを詳細に解説します。この情報を活用して、ご自身の生活に最適な家事支援体制を構築し、より安心で豊かな暮らしを実現するための第一歩を踏み出しましょう。
⚖️ ステップ1:公的家事支援サービスの種類と対象者
障害のある方への家事支援サービスの中心となるのは、障害者総合支援法に基づく「居宅介護」です。この制度を理解し、ご自身の障害支援区分に応じたサービス量を確保することが最も重要です。
公的サービスの中核:居宅介護(生活援助)
居宅介護は、ご自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの「身体介護」と、掃除、洗濯、調理などの「生活援助」を提供するサービスです。
- 生活援助の定義: ご本人が日常生活を送る上で必要不可欠な家事であって、ご本人やご家族が代わりに行うことが困難なものを指します。具体的には、調理、衣類の洗濯・補修、居室の掃除・整理整頓、生活必需品の買い物、薬の受け取りなどです。
- 対象者: 障害支援区分が認定されている方で、居宅での生活を送る上で支援が必要と認められた方。
- サービスの特徴: サービスの内容や時間は、個別支援計画に基づいて細かく設定されます。
⚠️ 注意
生活援助は、ご家族が同居している場合は、原則として利用できません。ただし、ご家族が障害や病気、仕事などで家事を行うことが困難な特別な事情がある場合に限り、例外的に認められることがあります。この判断は、市町村が行います。
その他の家事支援サービス
居宅介護以外にも、特定の状況に応じて家事を支援するサービスがあります。
- 重度訪問介護(家事支援含む): 重度の肢体不自由や知的・精神障害のある方に対し、長時間の支援を行うサービスです。生活援助だけでなく、外出中の移動支援や見守りなども包括的に提供されます。
- 自立訓練(生活訓練): 障害のある方が、自立した生活を送るために必要な知識や技能を習得するための訓練を提供するサービスです。この中で、調理や掃除などの家事スキルを訓練する支援が行われることがあります。
これらのサービスは、ご本人の障害支援区分や生活状況に応じて、相談支援専門員が作成する「サービス等利用計画」に組み込まれます。
📋 ステップ2:家事支援の効果的な利用計画の立て方
家事支援を最大限に活用し、ご本人の自立と生活の質の向上につなげるためには、単なる「代行」ではなく、「目標設定」と「訓練」の視点を持って計画を立てることが重要です。
「自立支援」を意識した目標設定
家事支援は、すべてをヘルパーに任せるのではなく、「できることは自分でやる」という自立支援の視点が不可欠です。
- 現在の能力評価: ご本人が今、どこまで家事ができるのか(例:献立は決められるが、包丁は危険、など)を正確に把握します。
- 目標設定: 「3ヶ月後までに、ヘルパーのサポートを受けながら、自分の食器洗いができるようになる」「週に1回、ヘルパーと一緒に献立を立て、買い物に行く」など、具体的で達成可能な目標を設定します。
- 支援内容の決定: 目標達成のために、どの家事を、どの程度の時間、ヘルパーに「代行」してもらうか、または「訓練」として一緒に取り組んでもらうかを明確にします。
支援計画を立てる際には、必ず作業療法士(OT)やリハビリ専門職の意見を取り入れ、ご本人の残存機能を活かせるような方法を検討することが望ましいです。
✅ 成功のコツ
家事支援を「訓練」として活用する際は、ヘルパーに「やってもらう」のではなく、「見守ってもらいながら、一緒にやる」というスタイルを取り入れましょう。例えば、知的障害のある方の場合、ヘルパーが手順を具体的に示し、一緒に作業することで、家事の手順を覚えることができます。
時間と内容の具体的な割り振り
居宅介護の生活援助のサービス時間は限られています。効率よく利用するために、時間と内容の割り振りを具体的に計画します。
- 優先順位の設定: 「調理」「掃除」「洗濯」のうち、ご本人にとって最も難易度が高く、生活に影響が大きいものから優先的に時間を割り振ります。
- 週間のスケジュール化: 「月曜日の15時から1時間、台所とトイレの掃除」「水曜日の午前中に買い物と下ごしらえ」など、曜日と時間を固定し、ヘルパーとの間で共有します。
- 調理への重点配分: 食事は栄養面でも重要であり、手間がかかるため、多くの支援利用者が調理支援に時間を重点的に配分しています。冷凍保存や作り置きができる献立をヘルパーと相談しながら作ることも有効です。
💰 ステップ3:公的サービスと民間サービスの組み合わせ
公的サービス(居宅介護)は、利用時間や内容に厳密な制限があります。公的サービスでカバーできない部分を、民間のサービスで補完することで、より充実した生活環境を実現できます。
公的サービスではできないことの補完
居宅介護の生活援助には、「本人の日常生活に必要不可欠な家事」という制限があるため、以下の内容は原則として対象外です。
- 家族のための家事: 同居する家族の食事の準備、洗濯、部屋の掃除。
- 特別な掃除・手入れ: 庭の草むしり、窓のサッシ掃除、ペットの世話、自家用車の洗車。
- 趣味や娯楽のための活動: 凝った料理や特別な来客への準備。
これらの公的サービスの対象外となる家事や、より長時間・高品質な家事代行を依頼したい場合に、民間の家事代行サービスが有効な選択肢となります。
民間家事代行サービスの活用メリット
民間の家事代行サービスは費用が全額自己負担となりますが、サービスの柔軟性が高いという大きなメリットがあります。
- サービスの柔軟性: サービス内容に制限がなく、プロの技術による徹底した清掃(例:エアコン、換気扇)や、公的サービスでは対象外の家事を依頼できます。
- 時間の確保: 公的サービスの時間が限られている場合や、ご家族が不在で手伝えない週末など、必要な時にスポットで利用できます。
- 専門性の活用: 家事代行サービスのプロは効率的な家事の進め方を知っているため、そのノウハウをご本人やヘルパーに共有してもらうことも可能です。
| サービスの種類 | 費用の負担割合 | サービスの内容 | 利用の主な目的 |
|---|---|---|---|
| 居宅介護(生活援助) | 1割負担(上限額あり) | 日常生活に不可欠な調理、掃除、洗濯 | 自立支援、日々の生活維持 |
| 民間家事代行 | 全額自己負担 | 制限なし(高度な清掃、家族の家事など) | 高品質な環境維持、家族負担の軽減 |
💬 ステップ4:ヘルパーとの円滑な連携とマニュアル作成
複数のヘルパーが自宅を訪問する場合、支援内容にばらつきが出ないように、ご本人とヘルパー、そして事業所との間で円滑なコミュニケーションと情報共有が不可欠です。
ヘルパーとの情報共有と指示出し
支援の質を維持し、ご本人の要望を正確に伝えるための具体的な方法です。
- 指示書の作成: 掃除や調理の手順、使用する洗剤や道具の場所、ご本人が特に嫌がる作業(特定の音、強い匂いなど)を具体的に記載した「マニュアル」を作成し、共有します。
- 連絡ノートの活用: 毎日または訪問ごとに、ヘルパーがその日の作業内容、ご本人の体調、気づいた点などを記入する連絡ノートを作成します。これにより、多職種連携(相談支援専門員、看護師など)の情報共有もスムーズになります。
- 調理内容の記録: 食事の支援を受けている場合、作った料理の写真や献立を記録しておくことで、栄養バランスの偏りを防いだり、アレルギー対応の確認が容易になります。
💡 ポイント
知的障害や精神障害のある方の場合、ヘルパーとの相性が非常に重要になります。初回のサービス利用時に、事業所に希望するヘルパーの特性(明るい、静か、指示が具体的など)を具体的に伝えることで、より質の高い支援につながります。
トラブルを未然に防ぐための工夫
訪問サービスでは、生活習慣や考え方の違いから小さなトラブルが生じることがあります。それを防ぐための予防策を講じましょう。
- 個人情報とプライバシーの保護: ヘルパーと共有する情報や、立ち入ってもらう場所の範囲を明確にし、プライバシーを尊重したルールを定めます。
- 貴重品の管理: ヘルパー訪問前に、貴重品や金銭は必ず鍵のかかる場所に保管するなど、自己防衛策を徹底します。
- 事業所との定期的な面談: 支援の進捗や、ヘルパーとの間で生じた小さな違和感について、サービス提供責任者や相談支援専門員と定期的に面談し、早期に問題を解決できる体制を整えます。
✨ まとめと次の一歩の提案
障害のある方のための家事支援サービスは、障害者総合支援法に基づく「居宅介護(生活援助)」が中心となります。このサービスは、単に家事を代行するだけでなく、ご本人の残存機能を活かし、自立生活の維持・向上を目指す「訓練」の場として、目標を設定して活用することが成功の鍵です。
公的サービスだけではカバーできない特別な家事や長時間労働が必要な場合は、民間の家事代行サービスを柔軟に組み合わせることで、ご本人とご家族双方の負担を大きく軽減できます。ヘルパーとの円滑な連携のために、具体的な指示書や連絡ノートを作成し、情報の共有を徹底しましょう。
次の一歩の提案
まだ公的支援を受けていない方は、まずはお住まいの地域の相談支援事業所に連絡し、「居宅介護サービス(生活援助)の利用を検討したい」と伝えてください。専門員がご本人の状況を確認し、サービス等利用計画作成のサポートを開始してくれます。
まとめ
- 公的家事支援の中心は居宅介護(生活援助)であり、家族同居の場合は原則利用できないため、事前の確認が必要である。
- 支援の活用は、単なる「代行」ではなく、自立支援の目標を設定し、「一緒にやる」訓練の視点を取り入れることが重要。
- サービスの質と継続性を高めるため、ヘルパーと具体的な指示書や連絡ノートを作成し、情報共有を徹底する。

原田 彩
(はらだ あや)35歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。
大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
街歩き、写真撮影
🔍 最近気になっているテーマ
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