障害者の薬の管理・服薬支援サービスの活用法

💊 障害のある方のための薬の管理と服薬支援サービス活用法:安全と自立を両立させるために
「薬の飲み忘れや飲み間違いが多くて不安…」「多剤服用になってしまい、家族や支援員だけで管理するのが難しくなってきた」
服薬(薬の服用)は、障害のある方が病気の治療を継続し、安定した生活を送るための基本です。特に、精神疾患、てんかん、慢性的な基礎疾患を持つ方にとって、正確な服薬は症状の安定と二次障害の予防に直結します。しかし、知的障害や認知機能の低下、多剤服用(ポリファーマシー)、あるいは薬に対する抵抗感などから、自己管理が困難となり、支援が必要となるケースが多く見られます。
この記事では、障害のある方が安全かつ確実に服薬を継続できるよう、薬剤師との連携による専門的な服薬管理、介護保険・障害福祉サービスを活用した服薬支援、そしてIoT機器やITツールを使った最新の自己管理方法に至るまでを徹底的に解説します。これらの支援サービスを理解し、活用することで、服薬による効果を最大化し、自立を尊重した安全な薬の管理体制を構築しましょう。
👩⚕️ 1. 専門家との連携:薬剤師による服薬支援の活用
薬の管理と支援の専門家は、医師だけでなく薬剤師です。薬局や訪問薬剤師サービスを積極的に活用することが、服薬の安全性を高める第一歩です。
「かかりつけ薬剤師制度」の活用
かかりつけ薬剤師とは、特定の薬局の薬剤師と利用者さんが合意した上で、薬に関する全ての情報を一元的に把握し、継続的にサポートしてくれる制度です。
- メリット:
- **多剤服用のチェック:複数の病院から薬を処方されている場合でも、薬の重複や飲み合わせ(相互作用)**をチェックし、危険を回避します。
- **服薬状況の把握:**飲み忘れや拒否の状況、薬による副作用の有無などを把握し、医師にフィードバックします。
- **服薬支援ツールの提供:**ご本人の認知レベルや生活リズムに合わせた、一包化や服薬カレンダーなどの服薬支援ツールを提案・作成してくれます。
- 手帳との関係:障害者手帳の有無に関わらず利用できます。特に、精神障害や知的障害があり、服薬の自己管理が難しい方には、かかりつけ薬剤師を持つことが強く推奨されます。
薬局での「一包化」と剤形の工夫
薬局で実施してもらえる服薬支援サービスの中でも、特に重要なのが薬の「一包化」です。
- **一包化(いっぽうか):**朝・昼・夕など、服用すべきタイミングごとに薬をまとめて一つの袋に入れるサービスです。袋には日付や服用時点が印字されるため、利用者さん自身や介助者が管理しやすくなります。
- **剤形(ざいけい)の工夫:**錠剤が飲み込みにくい方のために、OD錠(口腔内崩壊錠)やシロップ剤、水に溶かして飲める散剤などに変更できないか、医師や薬剤師に相談することも重要です。特に嚥下機能が低下している方には、誤嚥リスクの低い剤形を選ぶことが安全につながります。
💡 費用面
一包化は、薬の飲み間違い防止など医師が必要と認めた場合、保険適用となります。自己判断でなく、必ず主治医から薬剤師への指示書を出してもらいましょう。
🏠 2. 在宅での服薬支援:福祉・介護サービスの活用
自宅で生活する障害のある方に対しては、訪問介護や訪問看護といった福祉サービスを通じて、専門的な服薬支援を受けることができます。
訪問介護(ホームヘルプサービス)による服薬介助
訪問介護のホームヘルパーは、医師の処方に基づいた服薬介助を行うことができます。
- 支援の範囲:ヘルパーは、内服薬や外用薬(塗り薬、貼り薬)の確認、準備(一包化されたものを出すなど)、服用の見守り、声かけを行います。また、薬の残量のチェックや、飲み忘れ・飲み間違いがないかの記録も行います。
- できないこと(特定行為):ヘルパーは、一包化されていない薬をシートから取り出す行為や、インスリン注射、経管栄養の注入など、医療行為に該当する行為は原則として行うことができません(一定の研修を修了した特定行為実施者を除く)。
訪問看護による専門的な服薬管理
訪問看護師は、医療職として、より専門性の高い服薬支援や医療的ケアを行うことができます。
- 医療的ケアを含む支援:インスリン注射や血糖値測定の実施、点滴の管理、吸入薬の使用指導など、医療的な判断や手技が必要な服薬支援を行います。
- 副作用の観察と報告:看護師は、服薬後のバイタルサインや全身状態を観察し、薬の副作用の兆候を早期に発見した場合、速やかに医師に報告し、薬の調整を促します。
- 家族や支援者への指導:ご家族やヘルパーに対し、薬の正しい管理方法や、服薬時の注意点について具体的な指導を行います。
「訪問看護師さんが、週に一度、薬のセットと残薬の確認をしてくれます。また、認知機能が不安定な時は服薬後の様子を毎日チェックしてくれるので、副作用を恐れずに治療を続けられています。」
— 精神疾患のある方の家族の声
🧠 3. 障害特性別:服薬管理を成功させるための工夫
障害の種類や認知機能、行動特性に合わせて、服薬の支援方法を工夫することが、服薬アドヒアランス(服薬遵守)を高める鍵となります。
知的障害・認知機能の低下がある方への工夫
薬の必要性や服用方法を理解することが難しい場合、視覚的な支援が特に有効です。
- **服薬カレンダーの活用:**曜日や服用時点(朝・昼・夕)ごとに薬をセットし、飲んだらシールを貼るなど、達成感を伴うシンプルな仕組みを取り入れます。
- **視覚的なサイン:**服薬の時間が来たら、**音ではなく視覚的な合図(点滅するライトなど)**で知らせるツールを利用します。
- 手順の定型化:「朝食後の薬は、コーヒーを飲む前に飲む」など、日常生活の動作と結びつけて服薬手順を定型化し、習慣化を促します。
精神障害・発達障害のある方への工夫
薬に対する抵抗感や、過敏な感覚特性がある場合、心理的な配慮が必要です。
- 薬の意味の理解:薬を飲む目的(「これを飲むと気分が安定するよ」「眠れるようになるよ」)を、ご本人の理解できる言葉で丁寧に伝え、納得して飲んでもらうプロセスを大切にします。
- 感覚的な配慮:薬の味や匂いに敏感な場合は、服薬ゼリーやオブラートの活用、または前述の剤形の変更を検討します。
- **頓服薬(とんぷくやく)の判断支援:頓服薬はご本人の判断に委ねられることが多いですが、判断が難しい場合は、「不安が80点になったら飲む」**など、具体的な判断基準を支援者と一緒に設定し、記録します。
✅ 拒否があった場合の対応
服薬拒否があった場合、無理強いはせず、理由を尋ねる姿勢が大切です。薬を飲むことへの不安や、副作用の不快感があるかもしれません。看護師や主治医に速やかに報告し、薬の種類や量、または支援方法の見直しを相談しましょう。
📱 4. 最新の服薬管理ツールとIoT機器の活用
近年、IT技術を活用した服薬管理ツールが進化しており、服薬支援の幅を広げています。
服薬支援アプリとリマインダー機能
スマートフォンアプリは、服薬の時間になると音や通知で知らせてくれるリマインダー機能が基本ですが、さらに多様な機能を持つものがあります。
- **服薬ログ機能:**薬を飲んだかどうかをアプリ上で記録し、飲み忘れを自動でチェックできます。
- **家族・支援者との共有:**一部のアプリでは、服薬記録や残薬情報を離れて暮らす家族や支援者とリアルタイムで共有できる機能があります。これにより、遠隔からの見守りが可能になります。
- **薬の情報提供:**薬の効能や副作用に関する情報を簡単に検索できるため、ご本人やご家族の理解を助けます。
IoTを活用したスマートピルケース
IoT(モノのインターネット)技術を活用したスマートピルケース(薬箱)は、より確実な服薬管理をサポートします。
- **自動通知機能:**設定した時間になると、薬の収納部分が光ったり、音を鳴らしたりして服薬を促します。
- **服用検知機能:**薬箱から薬が取り出されたことを検知し、服薬記録を自動で記録します。薬が取り出されなかった場合は、支援者や家族のスマホに通知が届きます。
- メリット:服薬の「した/していない」を客観的に把握できるため、特に知的障害や認知機能の障害があり、自己申告が難しい方に有効です。
📝 5. 服薬支援計画と多職種連携の構築
安全で効果的な服薬支援のためには、医師、薬剤師、看護師、支援員、そしてご本人が連携した多職種による支援体制が不可欠です。
サービス等利用計画への服薬支援の組み込み
障害福祉サービスを利用している方は、サービス等利用計画の中に、服薬支援に関する具体的な内容を組み込む必要があります。
- 記載すべき事項:
- 誰が(家族、ヘルパー、看護師)、いつ(朝食後、就寝前)、どの薬を(〇〇錠)支援するか。
- 服薬拒否や異常があった場合の具体的な対応手順(誰に、いつまでに報告するか)。
- 服薬管理に使用するツール(カレンダー、アプリ)や一包化の有無。
- **相談支援専門員の役割:**相談支援専門員は、薬剤師や看護師から得た情報を元に、ご本人の生活リズムや障害特性に合った支援内容を計画に落とし込み、関係者間の情報共有を促します。
残薬問題と「ポリファーマシー」の解消
**残薬(飲み残しの薬)**は、服薬管理の失敗だけでなく、医療費の無駄にもつながります。また、**多剤服用(ポリファーマシー)**は、副作用や飲み間違いのリスクを高めます。
薬剤師と連携し、以下のチェックを行いましょう。
- **残薬の整理:**定期的に薬箱を確認し、残っている薬の量や種類を薬剤師に報告する。
- 服用の継続性評価:「本当にその薬が必要か」「副作用が出ていないか」を、薬剤師を通じて医師に確認してもらい、不必要な薬の減薬や中止を検討してもらう。
- 高齢者への配慮:65歳以上で5種類以上の薬を服用している場合は、特にポリファーマシーの解消が強く推奨されています。
🚨 介助者への注意
残薬が多いからといって、勝手に薬を捨てることは医療費の不正請求につながる可能性があるため、絶対に避け、必ず薬剤師に相談して処分してもらいましょう。
🤝 6. 相談窓口と服薬支援のためのアクションプラン
薬の管理は複雑で責任が重いですが、一人で抱え込まず、専門的な知識と福祉サービスを活用することが安全な服薬支援の鍵です。
服薬支援に関する主な相談窓口
服薬に関する疑問や支援の相談先は以下の通りです。
| 窓口 | 主な相談内容 |
|---|---|
| かかりつけ薬剤師・薬局 | 一包化、剤形の変更、薬の飲み合わせチェック、残薬整理、服薬ツール提供。 |
| かかりつけ医・主治医 | 薬の増減・中止の相談、副作用の報告、服薬拒否の対応。 |
| 訪問看護ステーション | インスリン注射などの医療的ケア、専門的な副作用の観察・指導。 |
| 相談支援専門員 | サービス等利用計画への服薬支援の組み込み、訪問介護・訪問看護の調整。 |
まずは、いつも薬をもらっている薬局の薬剤師に「かかりつけ薬剤師」になってもらい、服薬に関する全ての相談窓口にすることを強く推奨します。
服薬管理を確立するためのアクションプラン
安全な服薬管理体制を築くために、以下の具体的なステップを実行しましょう。
- 薬剤師との連携開始:薬局でかかりつけ薬剤師を決め、多剤服用や飲み間違いのリスクを相談し、一包化の要請を行う。
- **服薬ツールの導入:**ご本人の認知機能や生活リズムに合わせて、服薬カレンダー、服薬支援アプリ、IoTピルケースなどのツールを選定し、活用を始める。
- **服薬記録の徹底:**誰が、いつ、何を、どれだけ飲んだかを正確に記録し、飲み忘れ・残薬が発生していないか定期的にチェックする。
- **サービスの調整:**相談支援専門員と連携し、**訪問介護(服薬の見守り)や訪問看護(医療的ケア、副作用観察)**のサービスを、服薬支援に最適な時間帯に組み込む。
服薬支援は、医療と福祉の連携によって初めて成り立つものです。専門家のサポートを得て、利用者さんが安心して治療を継続できる環境を整えていきましょう。
まとめ
- 服薬管理の専門家である薬剤師と連携し、かかりつけ薬剤師制度を利用することで、多剤服用のチェックや飲み合わせの確認、一包化などのサービスを受けられる。
- 訪問介護ヘルパーは服薬介助(薬の準備、声かけ)を行うが、インスリン注射などの医療行為は訪問看護師が行う。
- 服薬管理が難しい方には、服薬カレンダー、視覚的なサイン、手順の定型化などの工夫が有効であり、薬の拒否があった場合は無理強いせず医師・看護師に報告する。
- 服薬支援アプリやIoTスマートピルケースを活用することで、遠隔からの見守りや服用の自動記録が可能となり、安全性が向上する。
- 服薬支援の内容は、サービス等利用計画に具体的に組み込み、**多職種(医師、薬剤師、看護師、支援員)**で連携し、残薬やポリファーマシーの解消に取り組むことが重要である。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
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精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
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「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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