障害者の生活支援サービスを上手に活用する方法

自立を支える!障害者の生活支援サービス活用ガイド
毎日の生活を送る中で、「もっと自由に、自分らしく暮らしたい」と感じていませんか。または、ご家族の介護や支援に、少しでもゆとりを持ちたいと願っているかもしれません。
日本には、障害のある方が地域で安心して生活を送るためのさまざまな生活支援サービスがあります。しかし、「どんなサービスがあるのかわからない」「どうやって申請すればいいの?」といった疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。
この記事では、障害者総合支援法に基づくサービスを中心に、その種類、利用の流れ、そしてサービスを最大限に活用するコツまで、専門的な内容を温かい言葉でわかりやすく解説します。
この情報が、皆様のより豊かで自立した生活を実現するための一助となることを心から願っています。
📚 障害者総合支援法の基礎知識:サービス体系を理解する
障害者の生活を支えるサービスの根幹をなすのが、2013年(平成25年)に施行された障害者総合支援法です。
この法律は、障害のある方が、可能な限り住み慣れた地域で、その人らしい生活を送ることを目的としています。
サービスは大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の二つの柱で構成されています。
自立支援給付とサービスの分類
「自立支援給付」には、日常生活の支援を行う「介護給付」と、社会参加や就労を目指す「訓練等給付」があります。
この給付は、障害の種別(身体・知的・精神・難病)に関わらず、障害支援区分(1~6)や心身の状態、そして利用者の意向に基づいて総合的に判断され、支給決定されます。
介護給付には、自宅での生活を支援する居宅介護(ホームヘルプ)や、重度の障害がある方を支える重度訪問介護などがあります。
訓練等給付には、就労に向けた支援を行う就労移行支援や、生産活動の場を提供する就労継続支援(A型・B型)が含まれます。
これらのサービスは、単に「お世話をする」だけでなく、利用者が持つ能力を最大限に引き出し、「できることを増やす」という視点で行われます。
💡 ポイント
障害者総合支援法では、難病等で長期的な療養が必要な方もサービスの対象となっています。対象となる疾病は厚生労働大臣が定める約360種類(2024年4月現在)に及びますので、病気だからと諦めずに確認してみましょう。
地域生活支援事業の役割
「地域生活支援事業」は、障害者が住んでいる市町村独自の取り組みとして実施されるサービス群です。
これは、障害者総合支援法の全国一律のサービスだけでは対応しきれない、地域特有のニーズに応えるための柔軟な支援です。
具体的なサービスには、移動を支援する「移動支援(ガイドヘルプ)」や、コミュニケーション支援、日中一時支援(レスパイトケア)、そして地域活動支援センターの運営などが含まれます。
移動支援は、通勤や通学、通所といった日常的な外出だけでなく、余暇活動や社会参加のための外出もサポートしてくれます。
この事業の利用条件やサービス内容は、市町村によって大きく異なるため、お住まいの自治体の窓口に直接確認することが、利用への第一歩となります。
例えば、ある自治体では、障害者向けのスポーツイベントへの参加費用を一部補助するサービスを提供しており、これが地域活動への参加を促すきっかけとなっています。
👤 サービス利用開始へのステップ:計画と申請の進め方
適切な生活支援サービスを利用するためには、法律で定められた一連の手続きを踏む必要があります。このプロセスを理解し、計画的に進めることが、スムーズなサービス開始の鍵となります。
相談支援専門員との出会いと「計画相談」
サービス利用の第一歩は、相談支援専門員(またはケアマネジャー)との出会いです。この専門員は、利用者の心身の状況や生活環境、そして「どう生きたいか」という希望を丁寧に聞き取り、一人ひとりに合ったサービスの組み合わせを考えるプロフェッショナルです。
サービス利用に必要な「サービス等利用計画案」を作成するプロセスを「計画相談」と呼びます。
計画相談では、例えば「日中は作業所に通いたい」「週に3回は自宅で入浴の介助を受けたい」といった具体的な要望を伝え、それに基づいて必要なサービスの種類や量(時間数)が検討されます。
この計画案は、市町村への支給申請の際に非常に重要な書類となります。相談支援専門員は、利用者と市町村の橋渡し役として、複雑な手続きをサポートしてくれます。
良い相談支援専門員を見つけることが、適切な支援を受けるための最も重要な要素の一つと言えます。
✅ 成功のコツ
相談支援専門員に会う前に、自分自身や家族が「どんな生活を送りたいか」「何に困っているか」を具体的にリストアップしておくと、よりスムーズで的確な計画作成につながります。
障害支援区分の認定と支給決定
市町村に申請を行うと、その後の調査を経て、利用者の生活の困難さの度合いを示す「障害支援区分(区分1〜6)」が認定されます。
区分は、主に介護給付の必要性を測るために使われ、数字が大きいほど、より多くの支援が必要とされます。
区分認定後、市町村は提出されたサービス等利用計画案や区分認定の結果を踏まえ、利用者にどのサービスをどのくらい支給するか(支給量)を決定し、「受給者証」が交付されます。
受給者証は、サービスを利用する際に事業者へ提示する大切な証明書です。受給者証に記載された支給量を超えてサービスを利用することは原則できませんが、必要性が高まった場合は、支給量変更の申請が可能です。
支給決定が下りたら、正式にサービス提供事業所と契約を結び、サービス利用開始となります。
「申請手続きは複雑で大変でしたが、相談支援専門員さんが一つひとつ丁寧に教えてくれたおかげで、無事にサービスを使い始めることができました。」
— ご家族からの声
💡 サービスを使いこなすための具体的ヒント
制度を知り、申請が通っただけでは、サービスの活用は半分しか成功していません。実際にサービスを「使いこなす」ためには、いくつかの実践的なヒントと心構えが必要です。
サービス提供事業所を選ぶ際の重要視点
受給者証が交付されたら、いよいよサービスを提供してくれる事業所選びです。事業所選びは、サービスの質、そして利用者とスタッフとの相性に大きく関わります。
選定時には、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- スタッフの経験と専門性: 自分の障害特性(例:肢体不自由、視覚障害、精神障害)に対する理解が深いか。
- 事業所の運営方針: 利用者の意向を尊重し、自立を促す姿勢があるか。
- 緊急時の対応体制: サービス提供時間外や緊急時にどのような連絡・対応が可能か。
- 料金体系の透明性: 法定費用以外に自己負担が発生するサービスがあるか、その内訳は明確か。
可能であれば、必ず事前に見学や体験利用を申し込むことをお勧めします。実際にスタッフと交流し、事業所の雰囲気を肌で感じることが、ミスマッチを防ぐ最良の方法です。
多くの事業所は、質の向上を目指して研修やミーティングを重ねています。そのような研修体制が整っているかを尋ねることも、質の高いサービスを見極める一つの基準になります。
「ヘルパーさん」との良好な関係構築
居宅介護(ホームヘルプ)サービスを利用する場合、自宅にヘルパーさんが入ることになります。ヘルパーさんとの関係性が、サービスの効果を大きく左右します。
良好な関係を築くためには、まず自分の希望や生活習慣を明確に伝えることが大切です。「この時間帯は静かに過ごしたい」「家事はこの方法でお願いしたい」など、遠慮せずに伝えましょう。
また、ヘルパーさんは支援のプロですが、利用者の「すべて」を知っているわけではありません。体調の変化や困りごとがあれば、小さなことでも積極的にコミュニケーションを取ることで、より細やかな支援が可能になります。
もし、どうしても相性が合わないと感じた場合は、事業所のサービス提供責任者や相談支援専門員に相談し、担当ヘルパーの変更を依頼することも、権利として認められています。我慢せずに、より良い関係性を追求しましょう。
⚠️ 注意
ヘルパーさんは、医療行為(インスリン注射、摘便など)や、利用者の生活に直接関係のない行為(同居家族の食事作り、ペットの世話など)は原則として行うことができません。サービス内容の範囲を事前に確認しておきましょう。
🌐 他制度・地域資源との連携による生活の質の向上
障害者の生活支援は、障害者総合支援法だけで完結するものではありません。他の公的制度や、地域に存在するさまざまな資源と連携することで、より多角的で充実した生活を実現できます。
介護保険制度との併用と優先順位
65歳以上で、かつ要介護認定を受けている障害のある方は、介護保険と障害者総合支援法の両方の対象となります。この場合、原則として介護保険制度が優先されます。
しかし、介護保険では賄えない、障害固有のニーズに対する支援(例:視覚障害者のための同行援護など)については、障害者総合支援法によるサービスを併用することが可能です。
併用の調整は複雑になるため、市町村の窓口や相談支援専門員(またはケアマネジャー)が密に連携を取り、どちらの制度からどのサービスを受けるかを詳細に計画する必要があります。
専門家同士の連携がうまく機能することで、「制度の谷間」に落ちることなく、切れ目のない支援を受けることができます。
| サービスの種類 | 介護保険での名称(優先) | 障害者総合支援法での名称(併用可能) |
|---|---|---|
| 自宅での介護 | 訪問介護 | 居宅介護 |
| 日中の活動・場所 | 通所介護(デイサービス) | 生活介護、自立訓練など |
| 移動支援 | なし | 移動支援(地域生活支援事業) |
地域の非営利組織(NPO)やボランティアの活用
公的な支援サービスは、提供時間やサービス内容に制約がある場合があります。そのような「ちょっとした困りごと」や、趣味・余暇活動を充実させるために、地域のNPOやボランティア団体が提供するサービスが非常に役立ちます。
例えば、自治体によっては、安価な料金で家事援助や送迎サービスを行う「生活サポート事業」や、傾聴ボランティア、趣味のサークル活動などがあります。
これらのインフォーマルな支援は、地域社会との繋がりを深め、孤立を防ぐ上で大きな役割を果たします。特に、制度化されていない柔軟な支援が、生活の質(QOL)を高める決定的な要素となることがあります。
地域の社会福祉協議会や、障害者地域活動支援センターに問い合わせることで、身近なサポート情報を見つけることができるでしょう。
ある視覚障害者の方は、公的サービスでは時間が足りなかった読書のサポートを、地域の大学生ボランティア団体にお願いすることで、読書を楽しむ時間を増やすことができました。
❓ よくある質問(Q&A)と相談窓口
サービス利用に関して、多くの方が抱く疑問と、困った時に頼れる窓口をご紹介します。
Q1. サービスの利用には自己負担がありますか?
A. 障害者総合支援法によるサービスは、原則として費用の1割が利用者の自己負担となります。
しかし、前年の所得に応じて、負担額に上限が設定されている(応益負担)ため、経済状況によっては自己負担がゼロになる方も多くいらっしゃいます。
上限額は世帯所得に応じて異なり、例えば低所得者層(市町村民税非課税世帯)であれば、自己負担上限は0円です。負担上限額については、受給者証に記載されますので、確認しましょう。
Q2. サービスの支給量は一度決まったら変えられませんか?
A. いいえ、生活状況や心身の状態に変化があった場合は、支給量変更の申請をすることができます。
例えば、病状が悪化して介護の必要性が増した、または就職活動を始めるために移動支援の回数を増やしたい、といった理由があれば、相談支援専門員を通じて市町村に変更を申請しましょう。
市町村は、再度調査や審査を行い、必要性が認められれば支給量が増えることがあります。諦めずに相談することが大切です。
Q3. サービス利用に不満や苦情がある場合はどうすれば良いですか?
A. まずは、サービスを提供している事業所のサービス提供責任者に直接相談しましょう。
それでも解決しない場合や、事業所に直接伝えにくい場合は、以下の機関に相談できます。
- 市町村の障害福祉担当課: 支給決定を行っている行政機関です。
- 都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連): 介護・福祉サービスに関する苦情を受け付けています。
- 障害者虐待防止センター: 虐待の疑いがある場合や人権に関わる問題がある場合に相談できます。
声を上げることは、サービスの質を向上させることにもつながります。安心してサービスを利用できる権利を守るために、積極的に相談してください。
🚀 次のアクション:相談から始まる豊かな生活
障害者の生活支援サービスは、私たちの生活を豊かにし、自立を力強く後押ししてくれるかけがえのない資源です。制度は複雑に見えますが、専門家のサポートを得ることで、必ず自分に合ったサービスを見つけることができます。
サービスの活用は、「助けてもらう」だけでなく、「自分の望む生活を自分で実現する」ための手段です。この視点を持つことが、サービスの真の価値を引き出すことにつながります。
この記事を読み終えた今、皆様にぜひ取っていただきたい最初のアクションは、お住まいの地域の相談支援専門員または市町村の障害福祉担当窓口に連絡を取り、現状の悩みや将来の希望を伝えることです。
今日が、皆様のより豊かで希望に満ちた生活のスタートラインとなることを願っています。
参考・相談窓口
- お住まいの市町村役場の障害福祉担当窓口
- 地域包括支援センター(65歳以上の方の介護保険との併用相談)
- 基幹相談支援センター(地域の障害者支援の中核的な相談窓口)
- 都道府県の国民健康保険団体連合会(苦情相談窓口)
不安や疑問は一人で抱え込まず、プロの力を借りて、一歩ずつ前に進みましょう。
まとめ
- 障害者総合支援法には「介護給付」や「訓練等給付」があり、地域生活支援事業と合わせて多様な支援を提供する。
- サービス利用は、相談支援専門員による「サービス等利用計画」の作成から始まり、支給決定を経て開始される。
- サービスを最大限に活用するには、事業所の見学や、ヘルパーとの建設的なコミュニケーションが不可欠である。
- 介護保険など他制度や、地域のNPO・ボランティアなどのインフォーマルな資源との連携が生活の質を高める。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
DIY、キャンプ
🔍 最近気になっているテーマ
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