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仕事・通学の移動サポートを見直すチェックポイント

📖 約49✍️ 金子 匠
仕事・通学の移動サポートを見直すチェックポイント
本記事は、車いすユーザー、視覚障害者、精神・知的障害者の三者の当事者インタビューを通じて、外出の不安を解消し、活動範囲を広げるための具体的な工夫と活用した支援について紹介しています。車いすユーザーのAさんは、福祉タクシーの活用と施設の「100点ではない」バリアフリー情報を電話で確認する徹底した事前準備を重視。視覚障害者のBさんは、AIナビアプリによる「音の視覚化」と、同行援護ヘルパーとの詳細な「事前打ち合わせ」の重要性を語っています。精神・知的障害者のCさんは、「安心地図」の作成と、行動援護による「予期せぬ変化への対処訓練」で安定した外出を実現。最後に、これらの事例から導かれる「徹底した対話」と「公的・私的支援のハイブリッド活用」という共通の成功ポイントをまとめています。


通勤・通学の不安を解消!


仕事と学びを支える移動サポート見直しチェックポイント

毎日欠かせない通勤や通学の移動は、障害のある方にとって、一日の始まりと終わりを左右する重要なプロセスです。「毎朝のラッシュ時の移動に不安がある」「安全で効率の良い移動手段が確立できず、体力的に辛い」といった悩みは、仕事や学業の継続に直結する深刻な課題です。特に、環境の変化や体調の変化によって、これまでできていた移動が急に難しくなることもあります。

通勤・通学の移動は、基本的に障害福祉サービスの「外出支援」の対象外とされていますが、その移動を安全かつ継続的に行うための公的な支援制度や、職場・学校での合理的配慮は存在します。これらの制度を最大限に活用することで、毎日の移動をストレスから解放し、本業に集中できる環境を整えることができます。

本記事では、通勤・通学の移動を支えるための制度の枠組み、利用できる公的支援、そして職場・学校との連携における具体的なチェックポイントを詳しく解説します。現状の移動サポートを見直し、より安心で持続可能な移動環境を築くための一歩を踏み出しましょう。

通勤・通学移動の原則と公的支援の枠組み

通勤や通学のための移動は、障害者総合支援法に基づく「外出支援」(同行援護や移動支援など)の一般的な目的である「社会生活上必要不可欠な外出や余暇活動」には該当しない、という原則があります。しかし、この原則から外れる特別な支援制度が存在します。

通勤・通学移動はなぜ「外出支援」の対象外なのか?

障害福祉サービスにおける「外出支援」(同行援護、行動援護、移動支援)は、日常生活を送る上での活動(例:通院、買い物、余暇活動)を支えることを目的としています。一方、通勤や通学は、「経済活動」や「教育活動」を目的とする移動と見なされ、その支援は基本的に雇用主や学校、または他の専門的な制度で対応すべきとされています。

しかし、この原則は絶対ではありません。特に重度の障害を持つ方に対しては、国や自治体が独自の制度や特例を設けて、移動をサポートしています。この特例的な支援こそが、仕事や学びを継続するための命綱となります。

💡 ポイント

障害者総合支援法に基づくサービスである「居宅介護」のうちの重度訪問介護は、通勤・通学時間帯に限り、支援が認められる特例(通勤・通学時のサービス提供)が設けられています。これは、常時高度な介助が必要な重度障害者に限られますが、非常に重要な支援です。

通勤を支える「職場」の合理的配慮

通勤の移動サポートを考える上で、最も重要なのが「合理的配慮」の概念です。これは、障害者差別解消法に基づき、事業主や学校が、障害のある方に対し、個別のニーズに応じて、負担が重すぎない範囲で必要な変更や調整を行うことです。

通勤における合理的配慮の具体例には、以下のようなものがあります。

  • 時差出勤・フレックスタイム: ラッシュアワーを避け、混雑の少ない時間帯に通勤を許可する。
  • 交通手段の変更費用補助: 公共交通機関の利用が困難な場合、タクシーや自家用車利用のための費用を、障害のない従業員との公平性を保ちつつ補助する。
  • 通勤経路のバリアフリー化: 会社の最寄り駅からオフィスまでのルートについて、段差や危険な箇所を改善・指導する。

雇用主には合理的配慮の提供義務があるため、まずは職場の人事や産業保健スタッフに相談することが、最初の一歩となります。

通勤の移動サポートを見直すチェックポイント

現在の通勤手段が最適かどうかを見直し、より安全で効率的な手段に切り替えるための具体的なチェックポイントをまとめました。

チェックポイント1:福祉サービスの特例活用

重度の障害を持つ方は、まずは重度訪問介護の特例が適用されないかを確認しましょう。重度訪問介護は、長時間の身体介護や見守りを必要とする重度障害者向けのサービスです。

  • 対象者: 重度の肢体不自由、重度の知的障害、精神障害などで、常時介護が必要と認められる方。
  • 支援内容: 通勤時間帯における移動中の身体介助、安全確保、危険回避のための見守りなど。

この特例を利用するためには、相談支援専門員を通じて、自治体の障害福祉担当課に詳細なサービス等利用計画を提出し、個別に審査を受ける必要があります。通勤・通学の移動に介助が必要な重度障害者にとって、最も確実な支援の一つです。

チェックポイント2:公共交通機関の支援策

電車やバスといった公共交通機関を利用する場合でも、さまざまな支援策を活用できます。これらの支援は、事前の申請や手続きが必要です。

  1. 特定旅客運賃割引: 障害者手帳(身体、療育、精神)を提示することで、運賃の割引を受けられます。これは経済的な負担を軽減する重要な制度です。
  2. 駅員・乗務員の介助依頼: 車いすでの乗降時や、視覚・聴覚障害者の方に対する情報提供や誘導について、事前に駅に連絡することで、スムーズな介助を受けることができます。
  3. 優先席・優先乗車: 混雑時でも安心して乗車できるよう、優先席の利用や、一部の鉄道会社では優先乗車制度も提供されています。

✅ 成功のコツ

公共交通機関を利用する際は、「通勤ラッシュ時の具体的な混雑時間」と「必要な介助の内容」をまとめた連絡メモを作成し、駅員や乗務員に提示できるようにしておきましょう。これにより、口頭での説明の手間が省け、迅速な支援に繋がります。

チェックポイント3:代替交通手段の検討

公共交通機関の利用が困難な場合、タクシーや自家用車、または福祉有償運送といった代替交通手段の費用助成や支援制度を活用できないか検討します。

  • 自治体のタクシー助成券: 多くの自治体が、身体障害者手帳を持つ方を対象に、タクシー運賃の一部を助成するチケットを交付しています。通勤時間帯の利用が認められるか、上限金額はいくらかを確認しましょう。
  • 特定非営利活動法人による福祉有償運送: NPO法人などが提供する、福祉車両での有償移送サービスです。介護タクシーよりも安価な場合があり、通勤・通学での利用を独自に認めている団体もあります。
  • 自動車改造費助成: 障害の特性に応じて、自家用車の運転装置や乗降装置を改造するための費用を、自治体が一部助成する制度です。

通学の移動サポートを見直すチェックポイント

小・中学校、高校、大学といった教育機関への通学に関しても、公的な支援や学校側の配慮を活用することが重要です。

チェックポイント1:教育委員会・学校との連携

通学の移動サポートは、まず教育委員会または学校(大学の場合は担当部署)との連携から始まります。障害のある生徒・学生の移動を支えるための特別な配慮を、合理的配慮として依頼します。

  • 通学介助員の配置: 特に小・中学校では、自治体や学校の判断で、通学時に付き添いを行う介助員を配置する場合があります。これは、安全確保や危険回避を主な目的とします。
  • 校内での移動支援: 教室や特別支援室、体育館などへの移動時に介助が必要な場合、学校側が教職員やボランティアを配置するよう調整を求めます。

支援を依頼する際は、具体的な移動の困難さ(例:車いすで階段の昇降ができない、聴覚情報が届かず危険を回避できない)を明確に伝えることが重要です。

チェックポイント2:自立支援のための移動支援

通学の移動は原則として障害福祉サービスの対象外ですが、通学のための移動が自立訓練の一環として認められる場合があります。これは、移動を通じて「社会性を身につける」「生活能力の向上を図る」といった明確な訓練目的がある場合に限定されます。

例えば、公共交通機関を一人で利用する訓練を行うために、特定の区間での移動支援を一時的に利用する、といったケースが考えられます。これは、地域の相談支援専門員やリハビリテーションセンターを通じて、自治体と協議することが必要です。

⚠️ 注意

通学時の送迎については、義務教育期間(小・中学校)の場合、自治体(教育委員会)がスクールバスや福祉車両による送迎を行うことがありますが、高校や大学では、原則として自己負担となります。事前に学校と教育委員会に確認しましょう。

費用面を軽減する助成制度の活用

通勤・通学の移動にかかる費用は、年間で大きな負担となることがあります。移動サポートの費用面を軽減するための公的助成制度や割引制度を漏れなく活用しましょう。

助成制度1:障害者控除と交通費の扱い

障害者手帳を持つ方は、所得税や住民税の計算において障害者控除の対象となります。これは、直接的な移動サポートの費用助成ではありませんが、税負担を軽減することで、間接的に移動にかかる費用に充てられる経済的な余裕を生み出します。

また、会社に雇用されている場合、通勤手当として支給される交通費の取り扱いについても、税務上の特別なルールがある場合があります。会社の経理担当者や税理士に相談し、適切な控除や非課税措置を受けているか確認しましょう。

助成制度2:有料道路の割引制度

自家用車で通勤する場合、有料道路の障害者割引制度を活用できます。この制度を利用すると、有料道路の料金が原則として50%割引となります。この割引を受けるためには、以下の手続きが必要です。

  • 対象者: 身体障害者手帳または療育手帳を持つ方で、要件を満たす方。
  • 手続き: 自治体の福祉窓口や、高速道路会社の窓口で、事前に登録申請が必要です。

割引の適用は、事前に登録した車両1台に限定されます。通勤で自家用車を利用している場合は、必ず確認しましょう。

「よくある質問」と相談窓口

通勤・通学の移動サポートに関する、よくある質問と、困った時の相談窓口をご紹介します。

Q. 会社に合理的配慮を求めたら断られました。どうすべきですか?

A. 合理的配慮は、事業主に対し、「負担が重すぎない範囲」で提供することが義務付けられています。会社が断る場合は、「なぜ負担が重いのか」という具体的な理由を説明する責任があります。納得できない場合は、まずは都道府県の労働局にある「障害者雇用支援センター」「ハローワークの専門援助部門」に相談しましょう。これらの機関が、会社と障害者の間の調整役を担ってくれます。

Q. 障害福祉サービスの支給量を、通勤・通学のために使うことはできますか?

A. 原則としてできません。通常の「外出支援」(移動支援など)は、通勤・通学を目的とした移動には利用できません。例外的に利用できるのは、前述の重度訪問介護の特例や、通学のための移動が自立訓練の一環として認められた場合に限られます。まずは相談支援専門員に、ご自身の障害特性とニーズを伝え、特例の可能性を探ってもらいましょう。

Q. 通学介助員は、学校の敷地外の移動も手伝ってくれますか?

A. 通学介助員の配置範囲は、自治体の教育委員会によって異なりますが、多くの場合、自宅から学校の門まで、あるいは集合場所から学校までといった、学校外の公共の場所での移動をサポートします。ただし、介助員が付き添えない区間や時間帯については、ご家族や他のサービス(ボランティアなど)で対応する必要があります。必ず教育委員会に、介助員の具体的な業務範囲を確認しましょう。

相談窓口と参考リンク

通勤・通学の移動サポートに関する相談は、以下の窓口へ行いましょう。

  • 地域の相談支援事業所: 重度訪問介護の特例申請、福祉サービスの利用計画に関する相談。
  • ハローワーク(専門援助部門): 障害者雇用に関する情報、職場への合理的配慮の調整サポート。
  • 地域の教育委員会: 小・中学校の通学介助員、学校での合理的配慮に関する相談。
  • (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED): 障害者の雇用に関する専門的な情報提供。

これらの専門家と連携し、仕事や学びを継続するための最適な移動環境を整えましょう。


まとめ

通勤・通学の移動サポートは、通常の障害福祉サービスの対象外となることが多いですが、「重度訪問介護の特例」や「合理的配慮」といった、別の枠組みの支援制度を積極的に活用することが鍵となります。職場や学校には、時差出勤や代替交通費補助などの合理的配慮を具体的に求めましょう。

移動を安全で継続的なものにするためには、公共交通機関への事前連絡や、福祉タクシー・福祉有償運送といった代替交通手段の検討も重要です。費用面では、障害者控除や有料道路割引制度を漏れなく活用し、仕事と学びを支える揺るぎない移動環境を確立しましょう。

  • ポイント1: 通勤・通学には、重度訪問介護の特例合理的配慮を最優先で活用する。
  • ポイント2: 職場・学校に対して、時差出勤や介助員の配置など、具体的な配慮を文書で依頼する。
  • ポイント3: 福祉タクシー助成や有料道路割引など、費用面の公的支援を漏れなく申請する。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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