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障害年金が不支給になる理由と改善のための対策

📖 約42✍️ 高橋 健一
障害年金が不支給になる理由と改善のための対策
障害年金の申請で「不支給」という結果に直面した方や、これから申請を控えている方のための対策ガイドです。初診日証明の壁、保険料納付の落とし穴、そして最も多い「等級未達」の原因を詳しく解説。医師に実態を正しく伝えるためのコツや、診断書・申立書の整合性を高めるポイントなど、審査を有利に進めるための具体的なテクニックを網羅しています。万が一不支給になった際の「審査請求」や「再請求」の手順、社会保険労務士などの専門家を活用するメリットも紹介。諦めずに正当な受給を目指すための実践的な一冊です。

障害年金の不支給を防ぐために知っておきたい理由と対策

生活の安定を支える大きな柱である「障害年金」ですが、申請すれば誰もが必ず受給できるわけではありません。一生懸命に書類を揃えて申請したにもかかわらず、「不支給」という通知を受け取った時のショックは計り知れないものです。「自分の苦しさが否定されたように感じる」という声も多く耳にします。

しかし、不支給には必ず明確な理由があります。それは決してあなたの障害が軽いという意味ではなく、書類の書き方や制度上の要件がうまく噛み合わなかっただけかもしれません。この記事では、不支給になる主な原因を徹底的に分析し、再挑戦するための具体的な改善策を詳しく解説します。あなたが正当な権利を受け取るためのヒントとして、ぜひ役立ててください。

障害年金の受給を阻む3つの高い壁

初診日の証明ができないケース

障害年金の申請において、最も重要でありながら最初の難関となるのが「初診日」の特定と証明です。初診日とは、その障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診察を受けた日のことを指します。この日が特定できないと、どの年金制度(基礎年金か厚生年金か)から支給されるかが決まらず、審査が進みません。

よくある不支給の理由は、カルテの保存期間(一般的に5年)が経過しており、病院から「受診状況等証明書」が発行されないケースです。また、自分では「ここが最初だ」と思っていても、さらに以前に受診した病院があった場合、そこが初診日と見なされ、書類の不備で却下されることもあります。初診日の証明は、年金受給への「通行手形」のようなものだと考えてください。

保険料納付要件を満たしていない

障害年金はあくまで「保険」の制度であるため、一定の保険料を納めていることが条件となります。具体的には、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間のうち、3分の2以上の期間で保険料を納付または免除されている必要があります。あるいは、直近1年間に未納がないという特例もあります。

もし、経済的な理由で国民年金保険料を未納のまま放置していた時期に初診日が重なってしまうと、どんなに障害が重くても制度上「不支給」となってしまいます。意外と見落としがちなのが、会社を退職した後の切り替え期間です。短期間の未納が原因で一生の保障を逃してしまうのは非常に勿体ないことですので、事前の確認が不可欠です。

障害の状態が等級基準に達していない

初診日と保険料の要件をクリアしても、最後に立ちはだかるのが「障害の程度」の壁です。障害年金には1級から3級(基礎年金は2級まで)の基準がありますが、日本年金機構が定める「障害認定基準」に現在の状態が該当しないと判断されると不支給になります。

ここでのポイントは、ご本人が感じている「辛さ」と、書類上の「判定」にズレが生じることです。診断書の内容が日常生活の困難さを十分に反映していなかったり、就労しているという事実だけで「日常生活に支障なし」と判断されたりすることがあります。審査は原則として「書類のみ」で行われるため、このズレを埋める工夫が不支給回避の鍵となります。

⚠️ 注意

20歳前の傷病による障害基礎年金の場合は、保険料納付要件は問われませんが、本人に一定の所得制限があります。制度によって細かなルールが異なる点に注意が必要です。

診断書で不支給にならないためのポイント

日常生活の困難さを正確に伝える

不支給の理由で最も多いのが、医師が作成した診断書の内容が「実態よりも軽く書かれてしまった」というパターンです。診察時間は限られており、患者さんは無意識に「先生の前ではしっかり振る舞ってしまう」傾向があります。その結果、医師が「この人は身の回りのことは概ね一人でできている」と判断し、診断書に反映されてしまうのです。

例えば、うつ病などで「食事は摂れていますか?」と聞かれ、「はい」と答えたとします。しかし、実態が「コンビニ弁当を何とか食べているだけ」であったり「家族が用意してくれないと食べられない」のであれば、それは「できている」ことにはなりません。「誰の助けも借りずに、自分一人で、適切な頻度でできるか」という視点で、医師に実態を伝える必要があります。

「就労中」が審査に与える影響

「働いていると障害年金はもらえない」という噂がありますが、これは正確ではありません。しかし、現実に働いているという事実は、審査において「日常生活能力がある」と見なされる強力な材料になります。特に精神障害の場合、一般企業でフルタイム勤務をしていると、2級以上の受給は非常に厳しくなるのが現状です。

改善策としては、もし仕事をしていても、職場から受けている「合理的配慮」の内容を詳しく記載してもらうことです。「短時間勤務である」「急な欠勤が許されている」「常に補助者がついている」といった特別な事情が診断書や申立書に明記されていれば、就労していても受給できる可能性は残されています。働いているからと諦める前に、その働き方の実態を精査しましょう。

診断書の「記載漏れ」をチェックする

医師も人間ですので、多忙な中で書類を作成すると、必須項目のチェック漏れや、前後で矛盾する記載をしてしまうことがあります。例えば、日常生活の判定項目は重いのに、全体的な総合評価が軽くなっているようなケースです。このような不整合があると、審査官は「軽い方」の印象を強く持ってしまいます。

医師から診断書を受け取ったら、封をする前に(あるいはコピーをもらって)内容を念入りに確認してください。もし明らかな事実誤認や記載漏れがあれば、失礼のないよう配慮しつつ、修正を依頼することが大切です。「診断書は唯一無二の証拠書類」であることを忘れず、提出前に細部まで目を通しましょう。

💡 ポイント

医師に症状を伝える際は、口頭だけでなく「日常生活の困りごとをまとめたメモ」を渡すのが効果的です。医師も診断書を書く際の根拠として活用しやすくなります。

病歴・就労状況等申立書での失敗を避ける

診断書との整合性が取れているか

「病歴・就労状況等申立書」は、ご本人やご家族がこれまでの経過を詳しく説明する書類です。この書類でよくある失敗は、診断書の内容と矛盾してしまうことです。診断書では「外出はほぼ不可能」と書かれているのに、申立書で「毎日散歩をしている」と書いてしまうと、書類の信憑性が疑われ、不支給のリスクが高まります。

申立書は診断書を補完する役割を持っています。診断書では伝えきれない、日々の具体的なエピソードを盛り込むことで、審査官にあなたの苦しさを「視覚化」させることが目的です。診断書の評価項目を意識しつつ、その判定の根拠となるような具体的なエピソード(例:お風呂に1週間入れない、火の消し忘れが頻繁にある等)を記載しましょう。

発病から現在までを漏れなく記述する

申立書は、発病から現在までの経過を3年〜5年ごとに区切って記載する必要があります。この期間に「空白」があると、その時期は症状が軽快していたのではないか、あるいは通院を中断していたのではないかと疑われる原因になります。たとえ通院していない時期があっても、その間にどのような症状があり、生活にどう困っていたかを記載し、連続性を持たせることが重要です。

また、通院を中断(転院など)していた時期がある場合は、その理由(例:症状が悪化して外出できなかった、合う病院が見つからなかった等)を明確に説明しましょう。一貫した「闘病の歴史」を示すことで、障害の継続性と重篤さを印象づけることができます。

感情論ではなく「客観的事実」を書く

申立書に「本当に辛いです」「助けてください」といった感情的な言葉を並べるだけでは、審査に有利には働きません。審査官が求めているのは、「何ができて、何ができないのか」という具体的な客観的事実です。家事、買い物、対人交流、清潔保持などの項目について、具体的な状況を記しましょう。

成功のコツは、第三者が読んでもあなたの生活風景が目に浮かぶように書くことです。「食事はあまり食べられない」ではなく、「食欲がわかず、1日1食パンをかじる程度で、体重が3ヶ月で5キロ減った」と数字や固有名詞を交えて書くことで、説得力が格段に増します。文章力に自信がない場合は、家族や支援者に客観的な意見をもらいながら作成してください。

✅ 成功のコツ

申立書の余白や別紙を活用して、「日常生活の不自由さ」をチェックリスト形式で添えるのも有効です。審査官が情報を整理しやすくなります。

不支給通知が届いた時の「次の一手」

「審査請求」で再審査を求める

不支給の決定に納得がいかない場合、決定を知った日の翌日から3ヶ月以内であれば「審査請求」を行うことができます。これは、地方厚生局の社会保険審査官に対して、決定の取り消しを求める手続きです。不支給理由が「等級に該当しない」というものであった場合、その判断が不当であることを理論的に反論する必要があります。

ただし、単に「もっと重いはずだ」と言い張るだけでは覆りません。元の診断書では反映されていなかった新たな資料を提出したり、医学的な見地から等級基準に該当することを証明したりする必要があります。この手続きは非常に専門性が高いため、社会保険労務士などの専門家の力を借りることが強く推奨されます。

「再請求」で書類を整え直す

審査請求とは別に、もう一度最初から申請をやり直す「再請求」という選択肢もあります。審査請求が「過去の決定の是非」を問うものであるのに対し、再請求は「現時点の新しい診断書」で申請するものです。もし初回の不支給の原因が「診断書の書き方が不十分だった」という明確なものであれば、再請求の方が早く結果が出る場合もあります。

再請求を行う際は、前回の不支給理由を徹底的に分析することが不可欠です。年金事務所で「保有個人情報開示請求」を行い、前回の審査の過程(審査用カルテなど)を取り寄せることで、どこがマイナス評価されたのかを知ることができます。敵を知り己を知れば、勝機は見えてきます。

額改定請求(受給中の方の場合)

すでに年金を受給しているものの、等級が3級などで金額が不十分な場合、症状が悪化したタイミングで「額改定請求」を行うことができます。通常は受給開始から1年経過しないとできませんが、明らかに悪化した場合は例外もあります。不支給(あるいは低すぎる等級)をそのままにせず、体調の変化に合わせて権利を主張していく姿勢が大切です。

障害年金は一度決まったら終わりではありません。病状は変化するものですし、社会状況によって認定の傾向が変わることもあります。「一度ダメだったから」と諦めてしまうのが最大の損失です。不支給は「今回は書類が足りなかった」というサインだと捉え、次への準備を始めましょう。

手続き 目的 期限
審査請求 決定の誤りを正す 決定から3ヶ月以内
再請求 新しい書類で再挑戦 いつでも可能
額改定請求 等級の引き上げ 原則受給から1年後

専門家の力を借りるメリットと選び方

社会保険労務士(社労士)の役割

障害年金は「書類の格闘技」とも言われるほど、手続きが煩雑です。そこで頼りになるのが、障害年金を専門に扱う社会保険労務士です。社労士は、初診日の調査から、医師への診断書作成依頼のサポート、申立書の代筆、不支給時の審査請求まで、トータルでバックアップしてくれます。

特に「医師にどう説明すればいいかわからない」「自分の状態を文章にできない」という方にとって、社労士はあなたの「翻訳者」となってくれます。社労士が作成する書類はポイントが押さえられているため、個人で申請するよりも受給率が高まる傾向にあります。費用はかかりますが、不支給になって1円も入らないリスクを考えれば、投資価値は十分にあります。

良い専門家を見極めるための条件

社労士なら誰でも良いわけではありません。社労士の仕事は多岐にわたるため、普段は企業の労務管理をしていて障害年金には詳しくないという方もいます。必ず「障害年金特化型」の事務所を選びましょう。また、精神障害に強いのか、身体障害に強いのかといった得意分野も確認が必要です。

まずは無料相談を利用して、「話をじっくり聞いてくれるか」「不支給になるリスクも説明してくれるか」「成功報酬などの費用体系が明確か」をチェックしてください。障害年金の申請は数ヶ月から年単位の付き合いになるため、信頼関係を築けるパートナー選びが成功の鍵を握ります。

支援機関やピアサポートの活用

社労士に依頼する資金的な余裕がない場合でも、一人で悩む必要はありません。各自治体の障害者就業・生活支援センターや、精神保健福祉センターなどの相談員が、申請のアドバイスをしてくれることがあります。また、同じ障害を持つ仲間が集まるピアサポートグループでは、実際に受給している人からの生のアドバイスが得られることもあります。

「自分一人で頑張らなければ」という思い込みが、不備のある書類を生む原因になりがちです。周囲のサポートを遠慮なく受け、多くの視点で書類をチェックしてもらうことで、不支給の原因となる「穴」を一つずつ塞いでいくことができます。孤立せず、繋がることが受給への近道です。

「一度は不支給になりましたが、社労士さんと一緒に前回の診断書の問題点を見直し、再請求したところ2級が認められました。あの時諦めなくて本当に良かったです。」

— 40代・双極性障害の受給者様より


よくある質問と改善へのアドバイス

Q1. 昔の病院が潰れて初診日証明が取れません。どうすれば?

病院が廃業していても諦めないでください。診察券、お薬手帳、当時の領収書、母子手帳、あるいは当時の日記や家計簿なども、初診日を推定する補強証拠になります。また、第三者(当時の友人や同僚など)に「当時、確かに通院していた」という証言を書いてもらう「第三者証明」という制度もあります。複数の客観的な資料を組み合わせることで、初診日として認められる可能性がありますので、まずは年金事務所に相談しましょう。

Q2. 症状は重いのに「不支給」の通知が届きました。なぜ?

通知書に記載されている「理由コード」や説明文を確認してください。「等級に該当しない」という理由であれば、それはあなたの症状が軽いのではなく、「書類から重さが伝わらなかった」ことが原因です。特に精神障害の場合、診断書裏面の「日常生活能力の判定」の平均点や「程度」のチェックが、認定基準のガイドラインを下回っている可能性があります。次回は、より詳細な実態を医師に伝え、内容を強化する必要があります。

Q3. 審査にはどのくらいの時間がかかりますか?

通常、申請書を提出してから結果が出るまで3ヶ月から4ヶ月ほどかかります。書類に不備があったり、年金機構から医師へ照会が行われたりすると、半年以上かかることもあります。待っている間は不安になりますが、結果が出るまで静かに療養して待つしかありません。不支給通知が遅いからといって、不吉な予兆というわけではありません。もし5ヶ月を過ぎても連絡がない場合は、年金ダイヤルに現在の審査状況を確認してみるのも良いでしょう。

Q4. 更新の時に不支給(支給停止)になることはありますか?

はい、あります。障害年金は永久認定(一生もらえる)でない限り、数年ごとに「更新(障害状態確認届の提出)」が必要です。この時、前回の診断書よりも内容が軽くなっていたり、安定して就労していると判断されたりすると、支給が停止されることがあります。「良くなった」と書かれるのは喜ばしいことですが、実際には無理をして生活している場合は、その無理を強いている状況をしっかりと反映させた診断書を書いてもらう必要があります。

💡 ポイント

更新時も新規申請と同様、医師とのコミュニケーションが重要です。「今の等級を維持したい」という意向ではなく、「現在の不自由な実態を正確に書いてほしい」と伝えましょう。


まとめ

障害年金の不支給は、決してあなたの人生の行き止まりではありません。それは、制度という複雑なパズルのピースが、一時的に噛み合わなかっただけなのです。初診日の特定、保険料の確認、そして何より「実態を100%反映した診断書」の作成。これらを一つずつ丁寧に見直していくことで、道は必ず開けます。

まずは、今回の申請でどこに課題があったのか、不支給理由を冷静に分析することから始めましょう。自分一人で抱え込まず、社労士や相談機関といったプロの知恵を借りることを恥じないでください。あなたの権利は、あなたと、あなたを支える周囲の努力によって守られます。次の一歩を踏み出す勇気が、将来の安心へと繋がっていくことを心から応援しています。

まとめ

  • 不支給の主な原因(初診日不明、保険料未納、等級未達)を正確に把握し、自分のケースに当てはめて分析しましょう。
  • 診断書作成の際は、医師に「日常生活の困りごと」を具体的に伝え、実態と書類のズレをなくす工夫をしましょう。
  • 不支給通知が届いても諦めず、「審査請求」や「再請求」といった次の手段があることを知り、専門家への相談を検討しましょう。
  • 申立書は感情論ではなく客観的なエピソードを積み重ね、診断書と整合性の取れた「証拠書類」として仕上げましょう。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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