障害年金だけでは生活が苦しいときの支援制度まとめ

障害年金だけでは生活が苦しいときに知っておきたい支援制度まとめ
障害年金を受給できていても、「家賃や医療費を払うと生活費がほとんど残らない」「年金だけでは家族を養っていけない」といった経済的な困難に直面している方は少なくありません。特に障害基礎年金2級の場合、単身世帯では年金収入が生活を維持するための最低限の費用に届かないことがあります。
障害年金は確かに大切な収入源ですが、国の公的支援はそれだけではありません。年金受給者に加え、低所得や特定の生活課題を抱える方を対象とした様々な支援制度が存在します。
この記事では、障害年金と合わせて活用できる「所得を増やす(加算する)制度」「支出を減らす(優遇する)制度」「生活の基盤を整える制度」の3つの柱に沿って、具体的な公的サポートを詳しくご紹介します。複数の制度を組み合わせることで、経済的な不安を解消し、安定した生活を送るための道筋を見つけていきましょう。
所得を増やす:障害年金以外の現金給付制度
障害年金に加えて現金給付を受け取ることで、月々の収入を安定させることができます。ただし、これらの制度は「所得制限」がある場合が多いので注意が必要です。
特別障害者手当:重度障害を持つ在宅者向け
この手当は、20歳以上で、日常生活において常時特別の介護を必要とする程度の重度の障害が2つ以上ある方、またはそれと同等の精神・身体の重度障害を持つ方を対象とした国の手当です。
- 対象者: 身体障害者手帳1・2級、療育手帳A判定など、極めて重度の障害を持つ在宅の方。
- 支給額: 令和6年度の例では、月額約27,980円(変動あり)が支給されます。
- 所得制限: 受給者本人だけでなく、扶養義務者(配偶者、親など)にも所得制限があります。入院が3ヶ月を超える場合などは支給対象外となります。
この手当は、障害年金の等級とは別に、日常生活の困難度で判断されます。重度の障害があり、ご家族が常時介護している場合は、申請の可能性があります。
障害児福祉手当:20歳未満の障害児向け
20歳未満で、重度の障害があり、日常生活において常時介護が必要な状態にあるお子さんを養育している保護者を対象とした手当です。
- 対象者: 身体障害者手帳1級や2級の一部、療育手帳A判定の一部、またはそれと同程度の精神・身体の障害を持つ20歳未満の子。
- 支給額: 令和6年度の例では、月額約15,690円(変動あり)が支給されます。
- 所得制限: 申請者(保護者)と扶養義務者(配偶者など)に所得制限があります。
障害年金(20歳前傷病による障害基礎年金)を受給している場合も、手当の支給基準を満たせば併給が可能です。市区町村の窓口で確認しましょう。
生活保護制度:最終的なセーフティネット
障害年金やその他の収入、資産を全て活用しても、国が定める最低生活費に満たない場合に、その不足分が支給される制度です。
- 補足性の原理: 障害年金などの公的給付を優先的に利用し、それでも足りない分を補う(補足性の原理)ため、年金受給中でも利用可能です。
- 支給額: 地域や世帯構成によって定められた「最低生活費」から、年金収入などを差し引いた額。
- 資産の活用: 申請には、利用できる資産(預貯金、生命保険、不動産など)の活用が求められます。自動車や持ち家の扱いには一定のルールがあります。
生活保護は最後のセーフティネットです。生活に本当に困窮している場合は、迷わずお住まいの地域の福祉事務所に相談してください。
💡 ポイント
障害年金には所得制限がありませんが、特別障害者手当、障害児福祉手当、生活保護には所得制限があります。まずはご自身の世帯の所得状況を確認し、どの制度が適用できるかを福祉事務所で相談しましょう。
支出を減らす:税金・医療費・公共料金の優遇制度
生活費の負担を軽減するためには、収入を増やすだけでなく、毎月かかる費用(支出)を公的な優遇制度によって減らすことが非常に重要です。
税金の控除・非課税制度
障害者手帳の有無や、障害年金の受給状況に応じて、所得税や住民税の負担が軽減されます。
- 障害者控除: 納税者自身や扶養家族が障害者である場合、一定額が所得から控除され、税金が安くなります。重度の場合は「特別障害者控除」となり、控除額が大きくなります。
- 非課税所得: 障害年金は、所得税が非課税です。このため、年金収入だけで生活している場合、所得税や住民税の納税義務が発生しないことが多いです。
- 相続税・贈与税の優遇: 重度障害者のいる家族が、将来の生活費を確保するための信託契約を結んだ場合、一定額までの贈与や相続が非課税になる優遇措置があります。
年末調整や確定申告の際に、障害者手帳の情報を正しく申告することが大切です。手帳がなくても、「障害者控除対象者認定書」を取得できる場合もありますので、役所に確認しましょう。
医療費の助成制度
病気の治療や障害に伴う医療費は大きな負担です。これを軽減するための公的制度があります。
- 自立支援医療(精神通院医療): 精神疾患の治療(通院、薬代)にかかる医療費の自己負担が原則1割になります。所得に応じて、月々の負担上限額も設定されます。
- 重度心身障害者医療費助成: 自治体によって名称は異なりますが、重度の障害者に対して、医療費の自己負担分を助成する制度です。自己負担が実質ゼロになる場合もあり、障害年金受給者にとって最も重要な助成制度の一つです。
- 高額療養費制度: 医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。特に高額な治療を受ける際に、所得区分に応じた負担軽減が図られます。
公共料金・交通費の割引
障害者手帳を提示することで、日常生活の様々な費用が軽減されます。
- 公共交通機関の割引: JRや私鉄、バス、タクシーなどで運賃割引が適用されます(手帳の種類・等級による)。特に通院や社会参加の費用軽減に役立ちます。
- 公共料金の割引: NHK受信料の全額または半額免除、携帯電話料金の割引、有料道路(ETC)の割引など、生活に必要な固定費を抑えることができます。
✅ 成功のコツ
自立支援医療と重度心身障害者医療費助成の2つを組み合わせることで、精神疾患や身体合併症の医療費負担を限りなくゼロに近づけることができます。必ずお住まいの自治体の窓口で両方の制度の適用を確認しましょう。
生活基盤を安定させるための融資・住居サポート
家計の急な出費への対応や、安心して暮らせる住居の確保は、経済的な安定に直結します。緊急時に利用できる公的な融資制度や、住居確保のサポート制度も知っておきましょう。
生活福祉資金貸付制度
低所得者、障害者、高齢者世帯を対象に、資金の貸し付けを行う公的な制度です。銀行などの一般の金融機関からの借り入れが難しい場合に利用できます。
- 目的別貸付: 福祉費、教育支援費、緊急小口資金など、資金の目的が定められています。福祉費は、療養費、住宅改修費、技能習得費などに利用できます。
- 低利・無利子: 貸付利率は非常に低く(保証人ありの場合は無利子)、据置期間も設けられているため、返済負担が軽くなっています。
- 相談窓口: 相談・申請は、お住まいの市町村の社会福祉協議会(社協)で行います。
急な医療費や、生活再建のための資金が必要になった場合に、まず検討すべき公的融資制度です。障害年金受給者も利用可能です。
住居確保給付金と住宅手当
家賃の支払いが困難になったり、公営住宅への入居を希望したりする場合の制度です。
- 住居確保給付金: 離職や廃業、その他のやむを得ない事由により住居を失った、または失うおそれがある方を対象に、家賃相当額を支給する制度です。一定の資産要件、所得要件があります。
- 障害者向け公営住宅: 地方公共団体が管理する公営住宅には、障害者世帯を対象とした優先入居や、一般世帯よりも収入基準が緩和される措置があります。
- グループホームの家賃補助: 障害福祉サービスのグループホームに入居している場合、家賃の一部を補助する特定障害者特別給付費(地域によっては補足給付)が支給される場合があります。
家賃は生活費の中で最も大きな割合を占める支出です。住居関連の支援を組み合わせることで、経済的な安定が大きく図れます。
よくある質問(FAQ):併用制度と生活設計
障害年金受給者がその他の支援制度を検討する際によくある疑問にお答えします。
Q1: 障害年金と生活保護は併給できますか?
A1: はい、併給できます。ただし、生活保護費から障害年金の全額が収入として差し引かれます(補足性の原理)。年金収入が最低生活費に満たない場合、その不足分だけが生活保護費として支給されます。年金が増額されても、生活保護費が減るため、世帯収入の総額は最低生活費までしか増えません。
Q2: 障害年金を受給しながら働くと、生活保護は打ち切られますか?
A2: 働くことで得た収入(給与)は、収入認定され生活保護費から差し引かれますが、働いて得た収入の一部は控除(勤労控除)され、手元に残すことができます。これにより、働かない場合よりも手取りが増えるため、働く意欲を削がない仕組みになっています。安定した収入を得ることで、生活保護から自立を目指すことが可能です。
Q3: 障害年金と特別障害者手当の両方を受け取る場合の注意点は?
A3: 特別障害者手当は、障害年金と同様に所得制限がない制度(ただし扶養義務者の所得制限あり)ですが、3ヶ月以上の長期入院や、施設に入所している場合は支給が停止されます。手当の受給中に長期入院が決まった際は、すぐに市区町村の窓口に連絡し、手続きを確認しましょう。
Q4: 障害年金は非課税ですが、確定申告は必要ですか?
A4: 収入が障害年金のみで、他に所得がない場合、基本的に確定申告は不要です。しかし、医療費控除や、生命保険料控除などの控除を受けたい場合、または障害者控除の適用を受けるためには、確定申告を行うことで還付金を受けられる可能性があります。ご自身の所得控除の状況に応じて、申告の要否を判断しましょう。
次の一歩:まずは「相談」から始めましょう
多くの支援制度は、申請しなければ利用できません。経済的な困難を感じているなら、ご自身だけで悩まず、専門機関に相談して利用可能な制度を洗い出してもらうことが、最初の一歩です。
行動チェックリスト
- 収支の明確化: 毎月の障害年金収入と、家賃・医療費・食費などの支出を正確に把握し、不足額を明確にしましたか?
- 社会福祉協議会への連絡: 緊急小口資金などの融資や、住居確保給付金について相談するため、お住まいの地域の社会福祉協議会に予約を取りましたか?
- 市区町村窓口への相談: 重度心身障害者医療費助成や、特別障害者手当など、自治体独自の福祉制度の有無を確認しましたか?
- 就労支援の検討: 障害年金受給中でも、体調に合わせて働きたい場合、就労移行支援事業所への相談を検討しましたか?
相談窓口と参考リンク
- 市区町村役場 障害福祉課: 特別障害者手当、障害児福祉手当、医療費助成の窓口
- 社会福祉協議会(社協): 生活福祉資金貸付、その他の生活相談
- 福祉事務所(生活保護担当課): 生活保護制度に関する相談
- ハローワーク(専門援助部門): 障害者雇用の相談、就職活動の支援
まとめ
- 3つの柱で対策: 障害年金が不足する場合、①特別障害者手当などの現金給付、②自立支援医療や税控除による支出削減、③社協の融資や住居確保給付金による生活基盤安定の3つの柱で対策を組み合わせましょう。
- 医療費と税金の優遇活用: 特に自立支援医療や重度心身障害者医療費助成、障害者控除は、手続きをするだけで大幅な支出削減につながるため、必ず申請しましょう。
- 生活保護は最後の砦: 障害年金受給中でも、収入が最低生活費に満たない場合は、福祉事務所で生活保護の相談を迷わず行うべきです。これは、安心して治療や療養に専念するための重要なセーフティネットです。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





