障害年金と仕事の両立:収入との関係をわかりやすく整理

障害年金を受給しながら働くことは可能?就労と収入の不安を解消
「障害年金をもらっているけれど、体調が安定してきたから少し働いてみたい。でも、働くと年金が止められてしまうのでは?」という不安を抱えてはいませんか。障害年金は、障害によって生活や仕事に制限がある方を支える大切な命綱です。しかし、いざ仕事を始めようとすると「収入制限はあるのか」「更新に影響するのか」といった疑問が次々と湧いてくるものです。
結論からお伝えすると、障害年金を受給しながら働くことは法律上認められています。実際に多くの方が、年金という安定した経済基盤を持ちながら、無理のない範囲で社会参加や就労を実現しています。ただ、障害の種類や就労の形によっては、更新の際に影響が出るケースがあるのも事実です。正しく制度を理解し、準備しておくことが、安心してキャリアを築く鍵となります。
この記事では、障害年金と仕事の両立について、収入制限の有無や更新時の注意点、そして長く働き続けるためのコツをわかりやすく整理しました。これから一歩を踏み出したいと考えているあなたや、支えるご家族にとって、不安を希望に変えるガイドブックとなれば幸いです。それでは、具体的な仕組みから一緒に見ていきましょう。
障害年金と収入制限の基本ルール
働いても年金は原則継続される
まず最も大切なポイントは、障害基礎年金や障害厚生年金を受給している方が働いて給与を得たとしても、「働いていること」や「収入があること」だけで直ちに年金が支給停止になるわけではないということです。日本の年金制度において、障害年金は「障害の状態」に対して支払われるものであり、所得の多寡(一部の例外を除く)で決まるものではありません。
例えば、身体障害をお持ちの方が、ITスキルを活かしてフルタイムで高収入を得ているケースでも、障害の状態が変わらなければ年金は継続されます。仕事の内容が障害をカバーする工夫(在宅勤務や補助器具の使用など)に基づいているのであれば、それは本人の努力の結果であり、受給権を否定する理由にはならないからです。
ただし、精神障害や知的障害、がん、難病などの「目に見えにくい障害」の場合は、就労の状況が「日常生活能力の向上」とみなされ、更新時に等級が下がったり停止になったりする可能性はゼロではありません。しかし、これも「働いているからダメ」という短絡的な理由ではなく、あくまで総合的な判断の結果として行われます。まずは「働く=即停止」ではないことを知って、安心してください。
「20歳前傷病」による制限に注意
前述の「原則として収入制限はない」というルールには、一つだけ大きな例外があります。それが「20歳前傷病による障害基礎年金」を受給している場合です。これは、20歳になる前に初診日がある障害の方が受け取る年金で、保険料を納めていなくても受給できる福祉的な側面が強いため、所得制限が設けられています。
具体的な数字を見てみましょう。20歳前傷病の障害年金には、2段階の所得制限があります。単身者の場合、前年の所得が約360万円(収入ベースで約500万円前後)を超えると年金の「半分」が停止され、約462万円(収入ベースで約640万円前後)を超えると年金の「全額」が停止されます。この所得額は扶養親族の数によって加算されるため、家族構成によって変動します。
この所得制限に該当して停止になったとしても、あくまで「一時的な停止」です。転職や退職、あるいは給与の変動によって所得が基準を下回れば、再び申請することで受給を再開できます。20歳前傷病以外(厚生年金加入中の発症など)であれば、基本的にはどれだけ稼いでも年金の額に直接的な所得制限はかからないため、自信を持って働いてください。
就労状況と等級判断の関係性
障害年金の審査において、日本年金機構が確認するのは「日常生活能力」です。仕事を始めたという事実は、間接的に「日常生活能力が改善したのではないか」という推測を生むことがあります。特に精神障害の分野では、認定基準に「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したと捉えず、就労の実態(配慮の有無など)を考慮する」という旨が明記されています。
つまり、「どのような環境で働いているか」が非常に重要になります。一人で何でもこなし、他の社員と全く変わらない責任を負ってフルタイムで働いているのか。あるいは、短時間の勤務で、職場から特別な配慮(休憩の頻度、業務の簡素化、通院のための休暇など)を受けながら働いているのか。この実態の違いが、年金の継続を左右します。
更新時の診断書には、現在の仕事内容や受けている配慮を医師に正確に書いてもらう必要があります。「頑張って働いています」という言葉だけが一人歩きしないよう、職場での具体的な困りごとやサポート体制を普段から医師と共有しておくことが、適切な等級判定に繋がります。働くことは素晴らしいことですが、無理をして「完璧な社会人」を演じすぎる必要はありません。
💡 ポイント
厚生年金加入者の障害年金には所得制限はありません。20歳前傷病の方のみ、年収が一定額(目安として500万円以上)を超えると制限がかかる可能性があると覚えておきましょう。
働き方の種類と年金への影響
一般企業でのオープン・クローズ就労
一般企業で働く場合、自分の障害を職場に伝えて配慮を受ける「オープン就労」と、伝えないで働く「クローズ就労」の2つの選択肢があります。障害年金の継続を考える上で、より安定的なのはオープン就労です。職場からの「合理的配慮」を受けているという事実は、障害年金が必要な状態であることの強力な証明になるからです。
クローズ就労の場合、周囲からは「健常者と同じように働けている」と見なされるため、診断書に「就労中」とだけ記載されると、年金機構の審査官は「もう支援は不要ではないか」と判断しやすくなります。もしクローズで働く場合は、仕事終わりや休日に寝込んでしまっているなど、労働以外の時間でどれほど支障が出ているかを医師に詳しく伝えることが大切です。
また、一般企業であっても、特例子会社や障害者雇用枠での採用であれば、あらかじめ業務内容が調整されていることが前提となります。このような形での就労は、社会との接点を持ちながらも、年金の受給理由となる「労働への制限」が依然として存在することを意味するため、年金と仕事を両立させる理想的な形の一つと言えます。
就労継続支援(A型・B型)での活動
福祉的な就労である「就労継続支援事業所」での活動は、障害年金への影響が最も少ない働き方と言えます。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばず、体調に合わせて短時間から活動する場所です。ここでの工賃(収入)は比較的少額であり、そもそも「一般就労が困難な方」を対象としているため、年金が停止される心配はほとんどありません。
雇用契約を結ぶ就労継続支援A型についても、一般就労へのステップアップを目的とした福祉サービスであるため、ここでの就労をもって「障害が治った」と判断されることは稀です。むしろ、A型事業所で働きながら年金を受給し、生活を安定させながら一般就労を目指すというモデルが推奨されています。福祉的就労は、経済的なメリットだけでなく、生活リズムを整える上でも非常に有効です。
ただし、A型事業所から一般企業の障害者雇用へ、そして一般枠へとステップアップしていく過程では、徐々に「労働能力」が向上したと見なされていきます。これは、あなたが社会に適合し始めているというポジティブな変化ですが、それと同時に年金の必要性が薄れていくという側面も持ち合わせています。自分の体調と相談しながら、どの段階で年金から卒業するのか、あるいは維持するのかを長期的に考える視点を持ちましょう。
フリーランスや自営業としての自立
最近では、クラウドソーシングなどを活用し、自宅でフリーランスとして働く障害者の方も増えています。通勤の負担がなく、自分のペースで働けるこのスタイルは、障害年金との相性が非常に良いといえます。自営業の場合、会社員のような「勤務時間」や「出勤日数」という明確な基準がないため、仕事の合間に休憩を挟みながら、体調に合わせて活動できるからです。
注意点としては、確定申告によって所得が明らかになる点です。先述の20歳前傷病の制限に該当する場合は所得額に気をつける必要があります。また、どれだけ高収入であっても、「在宅で、多大な配慮や工夫を凝らしながら働いている」という実態を説明できれば、年金の継続は可能です。自分の仕事環境を客観的に説明できるよう、使用している補助ツールや一日のスケジュールの記録を残しておくと良いでしょう。
また、自営業として活動する場合、国民年金の第1号被保険者となります。障害年金1級・2級を受給している方は、法律によって国民年金保険料が全額免除(法定免除)される制度があります。働いて得た収入を保険料に回す必要がなくなり、手元に残るお金が増えるという点も、年金受給者ならではの大きなメリットです。こうした制度をフル活用して、経済的な自立を目指しましょう。
✅ 成功のコツ
無理なく仕事を続けるためには、まず「短時間・少日数」から始めることが鉄則です。収入アップを急ぐよりも、まずは「1ヶ月間休まずに働けた」という実績を積むことで、自分への自信と社会への信頼を築いていきましょう。
更新時に重要となる診断書のポイント
医師へ伝えるべき「就労の実態」
障害年金には、数年ごとに訪れる「更新(再認定)」があります。この時、最も重要なのが主治医に作成してもらう診断書です。医師はあなたの診察室での様子は知っていますが、職場でどのように振る舞い、どのような苦労をしているかまでは把握しきれません。そのため、「働いているけれど、実はこれだけの支援を受けている」という事実を、あなたから正確に伝える必要があります。
具体的には、以下の内容をメモにまとめて医師に渡すのが効果的です。
- 1週間の勤務日数と1日の勤務時間(例:週3日、1日4時間)
- 仕事の内容(例:単純なデータ入力のみ、責任のある判断は免除)
- 職場での配慮(例:パニック時に使える休憩スペースがある、指示はすべて書面でもらう)
- 仕事のあとの状態(例:帰宅後は疲労で食事も摂れず、15時間以上眠ってしまう)
- 欠勤や遅刻の頻度(例:体調不良により月1〜2回は当日欠勤がある)
医師が診断書の「就労状況」の欄に、これらの詳細なエピソードを盛り込んでくれることで、年金機構の審査官に対して「就労はしているが、障害の状態が軽快したわけではない」というメッセージを明確に送ることができます。単に「データ入力の仕事をしています」とだけ書かれるのとでは、受ける印象が180度変わります。医師とのコミュニケーションを大切にしましょう。
職場から「就労状況説明書」をもらう
特に精神障害や知的障害の更新において、非常に有効な書類が「就労状況説明書」です。これは、職場の担当者(上司や人事の方)に作成してもらう書類で、第三者の視点からあなたの働きぶりを説明するものです。年金機構が用意している正式な様式ではありませんが、任意で提出することができます。この書類があることで、本人の主張と職場の実態が一致していることを証明できます。
説明書には、次のような内容を書いてもらうと良いでしょう。「本人は意欲的に取り組んでいますが、疲れやすく頻繁な休憩が必要です」「指示を一度に複数出すと混乱するため、常に1つずつメモで伝えています」「体調の波が激しく、急な欠勤があっても業務が回るよう予備の体制を敷いています」。これらは、企業が障害者雇用としてどれほどのコストと配慮を払っているかを示す証拠になります。
職場にこのお願いをするのは少し勇気がいるかもしれませんが、多くの企業は「社員の生活の安定(年金の継続)」が「長期的な雇用継続」に繋がることを理解しています。オープン就労をしているのであれば、信頼関係を築いている上司に「年金の更新のために、今の配慮状況を書いていただけないでしょうか」と相談してみてください。この一枚が、年金の継続を決定づけることもあります。
日常生活能力の判定を落とさないために
診断書には、食事、着替え、掃除、買い物といった「日常生活能力」の判定項目が並んでいます。仕事を始めると、生活リズムが整い、一見すると何でも一人でできているように見えがちです。しかし、実は「仕事にすべてのエネルギーを注ぎ込んでいて、家では掃除もできずゴミ屋敷状態になっている」といったケースをよく耳にします。
障害年金の審査では、仕事場での姿よりも「一人で生活を営む能力」が重視されます。仕事ができているからといって、日常生活も完璧だとは限りません。食事は買ってきたお惣菜ばかりではないか、お金の管理を家族に頼っていないか、薬の飲み忘れはないか。診察の際には、仕事以外の「生活の裏側」での支障を正直に話すようにしてください。
また、更新時期が近づいてから慌てて体調の悪さを訴えるのではなく、普段から安定して診察を受け続けることが重要です。「働けるようになったから病院はもういいや」と通院を中断してしまうと、更新時に必要な経過がわからず、医師も診断書が書けなくなってしまいます。働きながらも通院を習慣化することは、健康管理の面でも、年金維持の面でも必須の条件です。
「仕事をしていることで診断書を軽めに書かれてしまい、年金が支給停止になって絶望しました。次の更新では、日々の生活のしんどさをしっかり医師に伝えるようにします。」
— 40代 当事者の声
仕事を始めたときに必要な手続き
就職したことを年金事務所に報告すべき?
初めて仕事を始めたとき、「年金事務所にわざわざ届け出に行く必要があるのか」と迷う方が多いですが、実は「年金を停止するかどうかの届出」を自ら行う義務はありません。就職して厚生年金に加入すると、会社を通じて年金機構にデータが届くため、機構側はあなたが働いていることを把握します。ただし、それだけで年金が止まることはないので、特段のアクションは不要です。
ただし、一つだけ例外があります。それが「20歳前傷病による障害基礎年金」を受給している方で、かつ「所得制限の基準を超えることが明らかな場合」です。この場合は、所得状況の届出が必要になることがあります。もっとも、これらも基本的には市役所や年金事務所から書類が届くのを待って、指示に従って手続きを行えば問題ありません。
「何か手続きを忘れて、あとで年金を返せと言われたらどうしよう」と不安になる必要はありません。年金は「受給権」が発生している以上、次回の更新(再認定)のタイミングまでは支給され続けるのが原則です。不安であれば、お近くの年金事務所や年金相談センターに電話をして「仕事を始めましたが、何か提出物はありますか?」と確認するだけで、心はぐっと軽くなるはずです。
厚生年金への加入と将来のメリット
会社員としてフルタイム、あるいは一定時間以上(目安として週20時間以上)働くようになると、厚生年金に加入することになります。障害年金をもらっているのに厚生年金の保険料を払うのは損だと感じるかもしれませんが、実は大きなメリットがあります。それは、将来もらう「老齢年金」の額が増えるということです。
障害厚生年金を受給している間も、厚生年金保険料を納め続けることで、その納付実績が積み重なっていきます。将来、障害が回復して老齢年金に切り替える際、あるいは障害年金と老齢年金のどちらか高い方を選べるようになった際、働いた期間の分だけ受取額が加算されます。また、もし仕事が原因でさらに障害が重くなったような場合に、障害年金の等級改定を申し立てる際にも、厚生年金に加入していることがプラスに働くことがあります。
さらに、社会保険(健康保険)に加入できることも大きなメリットです。国民健康保険よりも保険料の負担が軽く済むことが多く、傷病手当金などの「もしもの時の保障」も手厚くなります。障害年金をベースにしつつ、社会保険の恩恵を受けながら働くことは、生活の安全網を二重、三重にすることに他なりません。経済的な安定感は、精神的な安定にも直結します。
傷病手当金との調整に注意
働く中で体調を崩し、仕事を長期間休むことになった場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されることがあります。ここで注意したいのが、障害年金と傷病手当金の両方を満額もらうことはできない(併給調整)というルールです。同一の病気やケガで障害年金と傷病手当金の両方の対象になった場合、障害年金の支給が優先されます。
もし障害年金の額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額分だけが傷病手当金として支給されます。逆の場合(年金のほうが多い場合)は、傷病手当金は1円も支給されません。これを「二重取り」としてあとで返金請求されないよう、傷病手当金の申請時には「障害年金を受給しています」というチェック欄を正しく記入することが重要です。
このルールを知らないと、家計の計算が狂ってしまう恐れがあります。病気で休んでいる間も、障害年金という最低限の収入が確保されているのは強みですが、会社からもらう予定の手当が思っていたより少ない可能性があることは頭の片隅に置いておきましょう。制度の仕組みを把握しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、安心して休養に専念することができます。
⚠️ 注意
障害年金1級・2級の方は「国民年金保険料」が免除されますが、厚生年金保険料は免除されません。給与から天引きされる金額を見て驚かないよう、事前に手取り額をシミュレーションしておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 働くと年金の等級が下がるのは本当ですか?
A. 「働く=等級が下がる」という単純なものではありません。障害年金の等級は、あくまで「障害によってどの程度、生活や労働に支障が出ているか」で決まります。重い障害があっても、職場の理解と工夫(合理的配慮)によって働けているのであれば、等級が維持される可能性は十分にあります。しかし、更新時に「何の配慮も受けず、健常者と全く同じように働けている」と診断書に記載されると、等級が下がる理由になります。大切なのは「労働の対価を得ること」と「障害がなくなったこと」は別であるという事実を証明することです。
Q. 月収いくらまでなら働いても大丈夫ですか?
A. 一般的な「障害基礎年金」や「障害厚生年金」には、月収による一律の制限はありません。月収30万円でも受給している人はいます。唯一の例外は、記事内で解説した「20歳前傷病による障害基礎年金」です。この場合は所得制限があるため、前年の所得が約360万円(単身者の場合)を超えると半額停止になります。それ以外の方については、金額そのものを気にするよりも、「その月収を得るためにどれほどの無理や周囲のサポートがあるか」という文脈が問われると理解しましょう。
Q. 障害年金をもらっていることを会社に隠せますか?
A. はい、基本的には隠すことができます。障害年金の受給は、所得税の計算に含まれない非課税収入のため、年末調整や住民税の通知から会社にバレる心配はほとんどありません。ただし、国民年金の「法定免除」を受けている場合、社会保険への切り替え手続きの際に年金手帳などの記載から気づかれる可能性はゼロではありません。クローズ就労を希望される方は、免除制度を利用せずあえて保険料を支払う選択をする方もいますが、経済的なメリットとの天秤にかける必要があります。
Q. 就労移行支援事業所に通うと年金は止まりますか?
A. 就労移行支援事業所は「働くための訓練を受ける場所」であり、そこでの活動自体は労働ではありません。したがって、事業所に通っていることで年金が止まることはまずありません。むしろ、通所して訓練が必要な状態であることは、まだ一般就労が困難な状態であることを示唆しています。多くの受給者が事業所に通いながら年金を受給し、数年かけてじっくりと就職の準備をしています。安心して自分の将来のために時間を使ってください。
無理なく働き続けるためのステップ
自分の「取扱説明書」を作成する
仕事を長く続けるために最も効果的なのが、自分専用の「ナビゲーションブック(取扱説明書)」を作成することです。これは、自分の障害の特性、得意なこと、苦手なこと、そして必要な配慮をA4用紙1〜2枚にまとめたものです。就職活動の面接時や、入社後の上司への説明に活用します。自分の状態を客観的に伝えることが、周囲からの適切なサポートを引き出す近道になります。
例えば、「疲れがたまると言葉が詰まりやすくなりますが、15分ほど休憩すれば戻ります」「曖昧な指示だと不安になるので、優先順位を番号で示していただけると助かります」といった具体的な要望を盛り込みます。職場側も「どう接していいかわからない」という不安を抱えていることが多いため、こちらからガイドラインを示すことは、お互いのストレスを減らし、結果として「配慮を受けているから年金が必要」という状況の維持にも繋がります。
この説明書は一度作ったら終わりではなく、体調の変化や業務内容に合わせて更新していきましょう。自分の取扱説明書がアップデートされるたびに、あなたの自己理解は深まり、社会での居場所はより確固たるものになっていきます。自分の弱さをさらけ出すのではなく、働きやすくするための「前向きな提案」として活用してください。
相談できる「第三者」を確保する
仕事をしていると、必ず壁にぶつかります。職場の人や家族には話しにくい悩みも出てくるでしょう。そんな時に備えて、就業・生活支援センターや就労定着支援などの外部サポーターを確保しておくことが大切です。これらの機関のアドバイザーは、職場の人間関係の調整や、業務の進め方の相談に専門的な立場から乗ってくれます。自分一人で抱え込まず、外部の視点を取り入れることで、パニックや離職を防ぐことができます。
また、障害年金に関する不安(更新のタイミングなど)については、社会保険労務士(社労士)に相談するのも一つの手です。特に障害年金を専門に扱っている社労士は、就労状況がどのように審査に影響するか、診断書をどう書いてもらうべきかのアドバイスをしてくれます。プロの知識を借りることで、年金と仕事の両立という難しいバランスをうまく保つことができます。
「自分一人で頑張らなければならない」という思い込みは、心身を壊す原因になります。周囲に頼れる人や機関を増やしておくこと(受援力)こそが、障害年金をもらいながら安定して働き続けるための最強の戦略です。サポーターはあなたの自立を妨げる存在ではなく、あなたの自立を支える土台なのです。
自分を褒める習慣を持つ
最後に、一番大切なことをお伝えします。それは、障害年金をもらいながら仕事に挑戦している自分を、毎日しっかりと褒めてあげることです。健常者と同じ時間働けないこと、同僚より仕事が遅いこと、時々体調を崩して休んでしまうことに、罪悪感を持つ必要は全くありません。あなたは、自分にできる最大限の努力をして、社会と繋がろうとしています。その姿勢そのものが、称賛に値することなのです。
「今日は朝起きられたから100点」「職場で挨拶ができたから200点」。そんな小さなハードルを自分で作り、クリアするたびに自分を認めてあげてください。心のエネルギーが枯渇してしまうと、仕事も年金も、本来の「自分を守るためのもの」ではなくなってしまいます。自分のペースを大切にし、時にはしっかり休むことも仕事の一部だと捉えましょう。
障害年金は、あなたが倒れたときの「セーフティネット」であると同時に、再び立ち上がるための「バネ」でもあります。年金があるからこそ、失敗を恐れずに新しい仕事に挑戦でき、年金があるからこそ、無理な働き方を断る権利が持てるのです。年金を「自立への追い風」に変えて、あなたらしい人生の歩みを進めていきましょう。
✅ 成功のコツ
年金の更新に怯えるあまり、自分の成長を止めてしまうのはもったいないことです。今の自分にできることを精一杯やり、その上での「しんどさ」を正しく周囲に伝える。この姿勢さえあれば、年金もキャリアも、きっと守り抜くことができます。
まとめ
- 仕事と年金の併用は可能:所得制限(20歳前傷病を除く)はなく、働いていることだけで支給停止にはなりません。
- 就労実態の証明が大切:更新時には、職場での配慮や日常生活での支障を医師に詳しく伝え、正確な診断書を作成してもらいましょう。
- オープン就労のメリット:合理的配慮を受けている事実は、年金の受給理由となる「労働の制限」の証明に繋がります。
- 外部サポーターを味方に:相談支援センターや専門家を活用し、一人で抱え込まずに社会とのバランスを保ちましょう。
「働きたい」というあなたの願いは、とても尊いものです。障害年金は、その願いを支えるための強力なパートナーであって、決してあなたの意欲を削ぐ鎖ではありません。正しく制度を知り、周囲の助けを借りることで、経済的な不安を最小限に抑えながら、自分に合った働き方を見つけることができます。
もし今、不安で立ち止まっているなら、まずは信頼できる医師や相談員に「仕事を始めたいけれど、年金が心配です」と正直に打ち明けてみてください。そこから新しい一歩が始まります。あなたの可能性は、あなたが思っているよりもずっと大きく広がっています。焦らず、一歩ずつ、理想のライフスタイルを形にしていきましょう。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





