障害者向けリハビリ施設の種類と選び方

🚶 リハビリテーション施設徹底ガイド:障害のある方のための種類と最適な選び方
「退院後の生活に向けて、どこでリハビリを続けたらいいのだろう?」「子どもの発達を促すために、どんな施設を選べば良いのかわからない」
リハビリテーション(以下、リハビリ)は、障害のある方が身体機能や精神機能の回復を図り、自分らしい生活を取り戻すための重要なプロセスです。しかし、「リハビリ施設」と一口に言っても、医療機関、介護施設、福祉施設など、その種類は多岐にわたり、それぞれ対象者や目的、提供されるサービスが大きく異なります。
どこを選べば、最も効果的かつ継続的にリハビリを受けられるのか、迷ってしまう方も多いでしょう。この記事では、障害の種類や年齢層に応じた主要なリハビリ施設の種類を体系的に解説し、あなたやご家族にとって最適な施設を見つけるための具体的な「選び方のポイント」を、全6000字以上の大ボリュームで徹底的にお伝えします。
🩺 リハビリ施設の種類とそれぞれの目的
リハビリ施設は、主に「医療」「介護」「福祉」の3つの分野に分類され、提供されるサービスの種類と、リハビリの「量」や「期間」に違いがあります。まずは、それぞれの施設の目的と対象者を理解することが、施設選びの第一歩です。
医療分野のリハビリ施設:急性期から回復期まで
医療機関で提供されるリハビリは、病気や怪我の直後から集中的に行われるのが特徴です。
急性期・回復期病院
「急性期病院」は、病気や怪我の直後に、生命を救うための治療と並行して早期リハビリテーションを行う場所です。
- 目的:発症・受傷直後からベッド上での安静による機能低下(廃用症候群)を防ぎ、早期に生活機能の回復を開始すること。
- 対象者:脳卒中、脊髄損傷、大腿骨骨折などの発症・受傷直後の患者。
その後、集中的なリハビリテーションを目的とするのが「回復期リハビリテーション病棟」(以下、回復期病棟)です。
💡 ポイント
回復期病棟は、自宅や社会復帰を目指し、1日最大3時間(年間365日)という充実したリハビリを集中的に提供します。入棟できる期間は疾患によって最長150日または180日と定められています。
「維持期・生活期病院」は、回復期を終え、自宅や施設に戻った後の機能維持や生活動作の再獲得を目的として、外来や訪問でリハビリを提供する病院です。
福祉分野のリハビリ施設:生活訓練と社会参加
障害のある方の地域生活を支えるため、福祉サービスとして提供されるリハビリテーションです。特に、小児の発達支援や、障害特性に合わせた生活訓練が中心となります。
児童発達支援・放課後等デイサービス
未就学の障害のあるお子さんを対象とするのが「児童発達支援」、就学後の小中高校生が対象となるのが「放課後等デイサービス」です。
- 目的:機能訓練士(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)による専門的なリハビリに加え、遊びや集団活動を通じた発達促進と日常生活動作(ADL)の訓練を行います。
- 対象者:障害児通所受給者証を持つ、障害のある未就学児・学齢期の子ども。
- 特徴:医療保険ではなく、福祉サービスとして提供されるため、利用料は原則1割負担(所得に応じた上限額あり)です。
障害者支援施設・生活介護事業所
主に重度の障害を持つ方や、常に介護が必要な方が日中通所したり入所したりする施設です。
これらの施設でも、リハビリ専門職が配置され、機能維持のための個別リハビリや集団での体操が提供されます。目的は回復というよりも、現在の機能を維持し、残存能力を活用した生活の質(QOL)向上に重点が置かれます。
介護分野のリハビリ施設:高齢期の機能維持
主に65歳以上で介護保険の認定を受けた方が対象となりますが、特定疾患による若年層の障害者も利用できる場合があります。
「介護老人保健施設(老健)」は、病院での急性期・回復期リハビリを終えた後、自宅復帰を目指してリハビリと看護・介護を行う施設です。訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション(デイケア)も介護保険サービスとして提供されています。
👶 年齢・障害別に見るリハビリ施設の選び方
リハビリ施設選びでは、「誰が」「何のために」リハビリを受けるのかという視点が最も重要です。年齢や障害の種類によって、最適な施設の種類は異なります。
小児期・発達障害のリハビリテーション
発達の遅れや発達障害のあるお子さんのリハビリは、単なる機能回復ではなく、「発達の土台を築き、日常生活や学校生活に適応する力」を育むことが目的です。
- 医療と福祉の併用:重度の身体障害がある場合は、専門の小児病院で医療保険によるリハビリ(理学療法士、作業療法士など)を受けつつ、日中の活動の場として児童発達支援や放課後等デイサービスを利用するのが一般的です。
- 療育センター:自治体が運営する療育センターは、医療と福祉、教育が一体となったサービスを提供しており、多職種連携による質の高い専門的なリハビリを受けられることが多いです。
- 言語訓練:言葉の遅れや発音の難しさ、摂食嚥下の問題がある場合は、言語聴覚士(ST)が配置されている施設(病院や療育センター、一部の通所施設)を選ぶ必要があります。
「息子の発達障害のリハビリは、最初は病院のOT(作業療法)だけでしたが、遊びを通して社会性を学ぶ放課後等デイサービスを併用することで、学校での集団行動もスムーズになりました。」
— 発達障害のある子の保護者の声
成人・身体障害のリハビリテーション
脳卒中や脊髄損傷などで身体に障害を負った成人の方は、生活期に入ると「制度の切れ目」が生じやすく、リハビリを継続することが課題となります。
- 回復期以降の選択肢:回復期病棟を退院した後、医療保険による外来リハビリは期限(疾患によって異なる)があるため、多くの場合は「介護保険サービス」(訪問リハビリ・通所リハビリ)または「障害福祉サービス」(自立訓練など)へ移行します。
- 障害特性に合わせた訓練:脳性麻痺などの先天性障害の場合、老健などの介護施設よりも、障害者支援施設や自立訓練事業所のように、障害特性を理解した専門職がいる福祉施設の方が適している場合があります。
自立訓練(機能訓練・生活訓練)の活用
障害福祉サービスの一つである「自立訓練」は、リハビリテーション専門職による機能訓練や、日常生活を営むための訓練を一定期間集中的に行うことが可能です。「地域生活への移行」を目指す方に特におすすめです。
精神障害・高次脳機能障害のリハビリテーション
精神疾患や高次脳機能障害(脳の損傷による認知機能の障害)のリハビリテーションは、身体機能訓練とは異なり、社会適応や生活スキルの再獲得に重点が置かれます。
- 精神科デイケア:精神科病院やクリニックで実施され、集団活動や作業を通して、社会生活を送るためのリズムや対人スキルを取り戻す訓練を行います。
- 高次脳機能障害支援拠点:各都道府県に設置され、専門的な評価と訓練プログラム(記憶訓練、注意機能訓練など)の提供、地域の生活訓練施設への橋渡しを行います。
- 就労移行支援事業所:就職を目指す方に対し、リハビリ専門職が生活習慣の改善や職業準備性を高めるための訓練を行う場合もあります。
🔎 失敗しない施設選びのための評価基準
リハビリ施設は、ただサービスを提供していれば良いわけではありません。効果的かつ継続的なリハビリのために、利用者が何を基準に施設を評価し、選ぶべきかを見ていきましょう。
専門職の質と配置状況
リハビリの質を決定するのは、セラピスト(専門職)の経験と専門性です。
| 専門職 | 役割 | チェックポイント |
|---|---|---|
| PT(理学療法士) | 座る、立つ、歩くなどの基本的な動作能力の回復・維持 | 重症度に応じた訓練経験、福祉用具や装具の専門知識 |
| OT(作業療法士) | 食事、着替え、家事などの応用的動作や精神機能へのアプローチ | 生活動作だけでなく、趣味や就労支援の知識があるか |
| ST(言語聴覚士) | 言語、発声、嚥下(飲み込み)機能の回復 | 小児の場合は「摂食指導」の経験が豊富か |
特に、小児のリハビリや高次脳機能障害のリハビリなど、専門性が求められる分野では、その領域での認定資格を持つセラピストが在籍しているかを確認することが、施設の質を見極める重要な基準となります。
施設連携と情報共有の体制
リハビリの成否は、病院・施設内の訓練だけで決まるものではありません。自宅や学校、職場との連携が不可欠です。
- 多職種連携:リハビリ専門職だけでなく、医師、看護師、介護士、ケースワーカー(MSW)、栄養士などが密に連携し、生活全般をサポートできる体制が整っているか。
- 地域連携:退院・退所後の生活を見据え、地域の訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、学校、職場などと、円滑に情報共有を行っているか。見学時に、連携実績について尋ねてみましょう。
医療ソーシャルワーカー(MSW)が充実している施設は、退院後の生活や福祉サービスの利用についてもしっかりサポートしてくれる傾向があります。
通いやすさと継続性
リハビリは継続が命です。物理的な通いやすさと、金銭的な負担の継続性は、施設選びにおいて現実的な重要性を持ちます。
- 地理的な利便性:自宅から施設までの距離や、送迎サービスの有無、公共交通機関でのアクセスの良さ。特に疲労を溜めたくない通院には、利便性が重要です。
- 費用の継続性:医療保険から介護保険、あるいは福祉サービスに移行する際、自己負担額がどのように変化するかを事前にシミュレーションし、無理なく長期的に続けられるか確認しましょう。
- 訓練時間と頻度:生活との両立を図るため、訓練の曜日や時間、頻度について、柔軟に対応してくれるかどうかも重要な判断材料です。
📚 リハビリテーション施設利用のための手続きと準備
最適なリハビリ施設を見つけても、利用するためには適切な手続きが必要です。利用する制度によって手続きの流れが異なります。
医療保険リハビリ(回復期・外来)の利用手続き
回復期病棟への入院や、外来リハビリの開始には、医師の診断と指示が不可欠です。
- 回復期病棟:急性期病院のMSWを通じて、回復期病棟を持つ病院へ転院の申し込みを行います。対象疾患や期間の制限があるため、必ずMSWと相談し、期限内に手続きを完了させる必要があります。
- 外来リハビリ:かかりつけの医師にリハビリの必要性を相談し、診療報酬制度に基づく「標準的算定日数」(保険でリハビリが受けられる日数制限)を確認します。期限が来たら、介護保険や福祉サービスへの移行を検討する必要があります。
障害福祉サービス(児童発達支援・自立訓練など)の利用手続き
福祉サービスを利用する場合、自治体への申請が必要です。
- 相談:市区町村役場の障害福祉担当窓口や、相談支援事業所に相談し、サービス利用の意向を伝えます。
- 申請と調査:申請後、聞き取り調査(アセスメント)が行われ、心身の状況や生活環境などが確認されます。
- 支給決定:調査結果に基づき、利用できるサービスの種類と支給量(時間数・日数)が決定されます。
- 契約と利用:決定内容に基づき、希望するリハビリ施設(事業所)と契約を結び、利用を開始します。
✅ 成功のコツ
福祉サービスを利用する際は、「相談支援専門員」のサポートを受けることが成功の鍵です。この専門員が、最適なサービス計画(サービス等利用計画案)の作成や、施設との連絡調整を代行してくれます。
施設見学・体験時のチェックリスト
実際に利用する施設を決める前に、必ず見学や体験利用を行いましょう。
- 訓練内容:個別の訓練と集団での活動の割合、訓練時間と内容の個別性(オーダーメイドであるか)。
- 環境面:リハビリ機器の清潔さ、施設のバリアフリー状況、静かで集中できる訓練室があるか。
- 利用者の様子:利用者がリラックスして訓練に取り組めているか、職員と利用者間のコミュニケーションは活発か。
- 送迎サービス:送迎の範囲、利用料金、車椅子対応の車両があるか。
❓ よくある質問(FAQ):リハビリ施設の制度と費用
リハビリ施設の利用に関して、制度や費用面でよくある質問にお答えします。
Q1. 医療保険のリハビリ期限が過ぎた後、どうすればいいですか?
A. 医療保険のリハビリには、回復期病棟の入院期間制限や、外来リハビリの算定日数制限(標準的算定日数)があります。期限が近づいたら、以下のいずれかへの移行を検討します。
- 介護保険:40歳以上で特定疾病、または65歳以上で介護認定を受けている場合は、訪問リハビリや通所リハビリ(デイケア)へ移行できます。
- 障害福祉サービス:障害者手帳を持っている方は、自立訓練(機能訓練)や生活訓練などの福祉サービスでリハビリを継続できます。
- 自費リハビリ:公的保険制度の枠外で、全額自己負担となりますが、回数や期間の制限なく集中的にリハビリを受けられるサービスも増えています。
Q2. 施設を選ぶ際、病院と福祉施設ではどちらが費用負担が少ないですか?
A. 一般的に、障害福祉サービスの方が費用負担は少ないです。
- 医療・介護保険:原則として医療費の1~3割、介護費の1~3割の自己負担が発生します(高額療養費制度や医療費助成制度の適用は可能)。
- 障害福祉サービス:原則としてサービス費の1割負担ですが、世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定されます。低所得層や生活保護世帯は、上限額が0円となるため、実質無料で利用できます。
Q3. 子どもが発達障害ですが、身体リハビリの施設にも通うべきですか?
A. 発達障害と診断されても、体の使い方の不器用さや感覚の偏り(感覚統合の問題)など、運動機能に関連する課題を抱えているケースは少なくありません。
この場合、身体リハビリの専門家であるPTやOTが在籍する施設で、運動機能の発達を促す訓練や、感覚統合療法などを受けることが有効です。まずは、医師や児童発達支援の専門家に、身体的なアプローチの必要性について相談してみましょう。
「高次脳機能障害のリハビリは、退院後が本当に大変でした。病院から紹介された地域の自立訓練事業所で、専門のOTさんに生活の中での記憶の補い方を教えてもらい、地域生活に戻ることができました。」
— 高次脳機能障害のある方の家族の声
🤝 まとめと地域生活へのアクションプラン
リハビリテーションは、障害のある方がその人らしい生活を送るための土台作りです。最適な施設を選ぶことで、リハビリの効果は大きく高まります。
リハビリテーション施設利用のためのアクションプラン
- 情報源の一元化:かかりつけ医、病院のMSW、そして地域の相談支援専門員の3者を連携させ、リハビリの目標、期間、そして費用負担について共通理解を持ちましょう。
- ニーズの明確化:「身体機能の回復」が目標か、「日常生活の自立」が目標か、「社会参加・就労」が目標か、最も優先度の高いニーズを明確にし、それに特化した施設を探しましょう。
- 制度の切れ目対策:特に回復期を終える際は、介護保険または福祉サービスへの移行手続きを早めに開始し、リハビリが途切れる期間(制度の切れ目)を作らないよう計画しましょう。
- 地域資源の活用:リハビリ施設だけでなく、地域のピアサポートグループや患者会なども活用し、情報交換や精神的なサポートを得ることも継続の力となります。
リハビリの道のりは長く、時に厳しいものですが、諦めずに最適な支援を選ぶことが、未来を切り開きます。私たちは、皆さまの自立と社会参加を心から応援しています。
まとめ
- リハビリ施設は、目的によって医療(急性期・回復期)、福祉(発達支援・生活訓練)、介護(老健・デイケア)の3分野に分けられます。
- 最適な施設選びには、年齢、障害の種類、リハビリの目標を明確にすることが不可欠です。小児は療育、成人は回復期以降の福祉サービスへの移行が鍵となります。
- 施設選びの基準として、専門職(PT/OT/ST)の質と専門性、多職種連携体制、自宅からの通いやすさを必ずチェックしましょう。
- 医療保険リハビリには期限があるため、終了後は障害福祉サービス(自立訓練)や介護保険サービスへのスムーズな移行を計画する必要があります。
- 福祉サービスを利用する際は、相談支援専門員を活用して、最適なサービス利用計画を立てることが重要です。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
DIY、キャンプ
🔍 最近気になっているテーマ
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