障害者向けワクチン・予防接種情報まとめ

💉 障害のある方のためのワクチン・予防接種ガイド:種類、接種方法、費用補助
「基礎疾患があるため、一般的なワクチン接種の対象になるか不安…」「慣れない場所での注射でパニックにならないか、医療機関にどう相談すればいい?」
ワクチン(予防接種)は、感染症から身を守るための最も効果的な手段です。特に、障害のある方や基礎疾患を持つ方は、感染症に罹患した場合に重症化しやすいリスクを抱えていることが多く、積極的な予防接種が極めて重要となります。しかし、接種時の体制や費用、障害特性への配慮が必要なため、スムーズな接種が困難な場合もあります。
この記事では、障害のある方やそのご家族、支援者が知っておくべき主要なワクチンの種類と推奨情報、費用負担の軽減制度、そして安全かつ安心して接種するための医療機関での配慮事項について徹底的に解説します。この情報を通じて、適切な予防接種計画を立て、感染症から利用者さんの健康を守るための具体的な戦略を構築しましょう。
🦠 1. 障害のある方が特に注意すべき感染症と推奨ワクチン
障害の種類や基礎疾患の内容によって、特に重症化しやすい感染症があります。これらの感染症に対しては、積極的にワクチン接種を検討すべきです。
インフルエンザワクチン:重症化予防の基本
インフルエンザは、特に呼吸器系に基礎疾患を持つ方や、体力・免疫力が低下している方にとって、肺炎などの合併症を引き起こし、命に関わるリスクが高い感染症です。
- 対象者:原則、生後6ヶ月以上の全ての方に推奨されます。特に、知的障害、重度の身体障害、慢性的な呼吸器・循環器・腎臓疾患、糖尿病などの基礎疾患を持つ方は最優先で接種が推奨されます。
- 接種時期:流行前の10月〜12月上旬に、毎年1回接種することが基本です。
- 接種回数:生後6ヶ月から13歳未満は2回接種(2〜4週間隔)、13歳以上は原則1回接種です。
💡 費用補助の確認
インフルエンザワクチンは任意接種ですが、65歳以上の方や、基礎疾患を持つ一部の方(例:身体障害者手帳1級)を対象に、自治体独自の費用補助や無料化を実施している場合があります。必ずお住まいの市区町村役場で確認しましょう。
肺炎球菌ワクチン:高齢者と基礎疾患のある方に
肺炎は、特に高齢者や呼吸機能が低下している方にとって重篤化しやすい病気です。肺炎の原因菌の多くを占める肺炎球菌に対するワクチン接種が推奨されます。
- 定期接種の対象:
- 65歳以上の方。
- 60歳以上65歳未満で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害を持つ方(身体障害者手帳1級相当)や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害を持つ方。
- ワクチンの種類:
- 23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23):定期接種に使われるワクチンで、5年以上の間隔を空けて生涯1回接種が推奨されます。
- 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13):主に小児の定期接種に使われますが、免疫不全の方など一部の方にはPPSV23と組み合わせて接種が推奨される場合があります。
新型コロナウイルスワクチン:最新情報と基礎疾患の優先度
新型コロナウイルス感染症は、基礎疾患を持つ方に重症化リスクが高いことが確認されています。
- **基礎疾患の優先接種:**過去の接種体制では、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳を持つ方、慢性的な疾患(心血管疾患、呼吸器疾患、糖尿病など)を持つ方が、重症化リスクの高い基礎疾患として優先接種の対象とされてきました。
- 接種体制の移行:現在は、インフルエンザと同様に秋冬の定期接種や、特例臨時接種として実施されています。接種費用や時期は、国や自治体の最新情報に注意を払いましょう。
- **接種方法の配慮:**知的障害や発達障害などで接種時の協力が難しい場合は、かかりつけ医による個別接種や、集団接種会場での優先的な案内などの配慮が受けられる場合があるため、事前に自治体に相談することが重要です。
📅 2. 定期接種と任意接種:制度と費用の理解
予防接種には、法律に基づいて市区町村が実施する「定期接種」と、それ以外の「任意接種」があり、それぞれ費用負担のルールが異なります。
定期接種(公費負担)の範囲
定期接種は、特定の期間内に接種すると**原則として公費(無料)**で受けられます。対象年齢を過ぎると任意接種扱いとなり、自己負担となるため注意が必要です。
- 主な定期接種ワクチン:
- Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン(小児)、四種混合(DPT-IPV):主に乳幼児期に実施。
- MR(麻しん風しん)ワクチン:第1期(1歳)と第2期(小学校入学前1年間)。
- 日本脳炎ワクチン:主に3歳〜4歳と9歳。
- HPVワクチン:小学校6年〜高校1年相当の女子。
- **接種機会の確保:**障害のある方のうち、長期療養や入院などやむを得ない理由で定期接種の機会を逃した場合は、特例として対象期間を過ぎても公費で接種できる場合があります(長期療養特例)。事前に主治医やかかりつけの小児科医に相談し、証明書を発行してもらう必要があります。
任意接種(原則自己負担)と助成制度
定期接種ではないワクチンは任意接種となり、原則自己負担となります。しかし、健康を守る上で重要であり、一部自治体では費用助成が行われています。
- 主な任意接種ワクチン:
- インフルエンザワクチン(高齢者など一部を除く)。
- おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチン(経口接種)。
- B型肝炎ワクチン(乳幼児の定期接種化以前の世代)。
- **自治体独自の助成:**インフルエンザ以外にも、水痘やおたふくかぜなどの任意接種について、独自の費用助成を行っている自治体が増えています。障害のある児童を対象に、特に助成を手厚くしている自治体もあるため、居住地の情報を確認しましょう。
🏥 3. 安心して接種するための医療機関での配慮
注射への恐怖心や慣れない環境での不安から、特に知的障害や発達障害のある方は、接種時にパニックを起こすことがあります。医療機関側に求めるべき、具体的な配慮事項を解説します。
接種前の情報共有と環境調整
接種を円滑に進めるためには、予約時の情報共有と事前の環境調整が不可欠です。
- 情報提供シートの活用:接種時に「どのような声かけが有効か」、「強いこだわりや嫌悪感を持つもの(例:特定の音や光、白衣)」、**「過去の失敗経験」**などをまとめた情報シートを事前に医療機関に提出しましょう。
- **待ち時間の短縮:**待合室での不安が高まらないよう、予約時間厳守、または優先的な案内を要請します。可能であれば、他の患者と離れた静かな場所で待機させてもらえるよう相談しましょう。
- **注射部位の準備:**衣服の着脱が苦手な場合は、簡単に腕を出せる服装で来院するか、あらかじめ着替えを済ませておくなど、事前の工夫が必要です。
「注射されることへの不安を和らげるために、事前に接種の手順を絵カードで見せる練習をしました。当日は、看護師さんにも絵カードを見せてもらいながら接種できたため、落ち着いて対応できました。」
— 発達障害のある子の保護者の体験談
接種時の具体的な配慮と鎮静の選択肢
実際に注射を行う際の、具体的な方法に関する配慮です。
- 麻酔テープ(ペンレステープなど):注射の痛みを和らげるための局所麻酔テープを、接種時間の1時間前に接種部位(主に上腕)に貼っておくことで、注射の瞬間の痛みを軽減できます。事前に医師に相談し、処方してもらいましょう。
- 介助者の同席と体位:ご本人が最も安心できる介助者(ご家族や支援員)が同席し、抱っこや体位の保持を行うことを許可してもらいましょう。押さえつけるのではなく、安心感を与えるように保持することが大切です。
- **鎮静下の接種:**極端に注射を嫌がり、安全な接種が困難な場合、大学病院や専門病院では、笑気ガスや鎮静剤を使用して、ご本人の意識を保ちつつ不安を取り除く方法(セデーション)や、全身麻酔下で他の検査や処置と同時にワクチン接種を行う方法が検討されます。
📚 4. 接種後の体調管理と副反応への対応
ワクチン接種後は、副反応(副作用)が出ることがあるため、介助者はご本人の体調を注意深く観察し、適切な対応をとる必要があります。
主な副反応とその対応
多くのワクチン接種後に現れる副反応は、通常は軽度で一過性です。
| 副反応の種類 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 局所反応 | 接種部位の腫れ、赤み、痛み | 冷湿布などで冷やす。通常2〜3日で治まる。 |
| 全身反応 | 発熱、倦怠感、頭痛、寒気 | 水分補給、安静にする。症状が強い場合は医師に相談し、解熱鎮痛剤を使用する。 |
| アレルギー反応 | じんましん、呼吸困難、顔面蒼白(アナフィラキシー) | 稀だが、接種直後に発生することが多いため、接種後30分は医療機関に滞在し、すぐに医師の診察を受ける。 |
副反応は、通常接種後24〜48時間以内に現れることが多いため、介助者はこの期間、特にバイタルサインや行動の変化に注意を払いましょう。
体調変化を訴えられない方への観察ポイント
痛みや不調を言葉で伝えられない方の場合、非言語的なサインを見逃さないことが大切です。
- 行動の変容:接種後に自傷行為やパニック、攻撃性が増すなど、普段と違う行動が見られた場合、痛みや不調の訴えである可能性があります。
- **排泄の変化:**尿量が少ない、色が濃い(脱水)、下痢・嘔吐など。
- **局所症状の確認:**特に痛みや腫れを訴えられない場合は、接種部位が赤くなったり、熱を持ったりしていないかを、介助者が目視と触診で定期的に確認しましょう。
「いつもと違う」サインが見られた場合は、単なる副反応と自己判断せず、必ずかかりつけ医や訪問看護師に相談しましょう。
🤝 5. 接種体制と医療連携:安心のための体制構築
障害のある方の予防接種を安全かつ継続的に行うためには、医療と福祉の連携、そして適切な接種体制の選択が必要です。
かかりつけ医による個別接種の重要性
可能であれば、普段の病状や障害特性を理解しているかかりつけ医がいる医療機関での個別接種を選ぶことが、最も安心で安全な方法です。
- メリット:
- 慣れた環境と信頼関係のあるスタッフが対応してくれる。
- 基礎疾患や服薬との関連を考慮した上で、接種の適否を判断してくれる。
- 接種後に副反応が出た場合も、すぐに適切な治療を開始できる。
- **連携体制:**かかりつけ医が対応困難な場合は、**地域の専門病院(障害者歯科や特別支援外来など)**を紹介してもらい、必要な配慮を文書で引き継いでもらいましょう。
訪問接種の検討(主に施設や在宅の方)
重度の身体障害や医療的ケアが必要な方、または感染リスクを避ける必要がある方など、通院が困難な場合は訪問による接種を検討できます。
- 対象:主に訪問診療や訪問看護を利用している方。
- 体制:****訪問看護ステーションや、訪問診療を行っているクリニックに相談し、インフルエンザワクチンなど、訪問での接種が可能か確認します。
- **費用:**訪問にかかる費用(往診料など)は、別途かかる場合があるため、事前に確認が必要です。
相談窓口の活用
接種に関する疑問や、接種体制に関する相談は、以下の窓口を活用しましょう。
| 相談窓口 | 主な相談内容 |
|---|---|
| かかりつけ医・主治医 | 接種の可否、基礎疾患との関連、麻酔テープなどの処方。 |
| 市区町村役場 予防接種担当課 | 公費(定期接種)の対象期間、自治体独自の任意接種助成、新型コロナワクチン接種の最新情報。 |
| 地域の保健センター(保健師) | 接種できる医療機関の紹介、接種に関する一般的な不安。 |
| 相談支援専門員 | 接種に伴う移動手段の確保や、医療機関への情報提供書の作成支援。 |
接種は義務ではありませんが、感染症の予防は利用者さんのQOLと命を守る重要な責務です。必要な情報を得て、安全な予防接種を実現しましょう。
まとめ
- 障害のある方は、感染症に罹患した場合の重症化リスクが高いため、インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナなどのワクチン接種が強く推奨される。
- 定期接種は公費(無料)だが、対象期間外は自己負担となるため、長期療養などで逃した場合は長期療養特例の適用を検討する。
- 接種時の不安やパニックを防ぐため、医療機関には情報提供シートを事前に提出し、待ち時間の短縮、麻酔テープ、鎮静下の接種などの配慮を要請する。
- 接種後は、局所反応だけでなく、行動の変容など、非言語的な副反応のサインに注意を払い、異常があればすぐに医療機関に報告する。
- 最も安心な接種方法は、かかりつけ医による個別接種であり、通院困難な場合は訪問接種の体制を検討する。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
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「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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