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自宅で快適に過ごすためのバリアフリーアイデア集

📖 約77✍️ 伊藤 真由美
自宅で快適に過ごすためのバリアフリーアイデア集
自宅を障害のある方や高齢の方が安全かつ快適に過ごせる「バリアフリー」な空間にするための具体的なアイデア集です。玄関、リビング、キッチン、トイレ・浴室、寝室の5つのエリアに分け、物理的なリフォームからDIY、便利な福祉用具の活用、最新のスマートホーム技術まで幅広く解説。車椅子での動線確保や転倒防止、自立を助ける調理器具など、当事者や家族の生活の質(QOL)を向上させるためのヒントを実例とともに紹介します。助成金の活用法や、専門家への相談の進め方についても網羅した実践的なガイドです。

理想の住まいを叶える:心と体に優しいバリアフリーの工夫

「家の中での移動が少し大変になってきた」「家族がもっと安全に暮らせるように工夫したいけれど、何から始めればいいか分からない」そんな悩みをお持ちではありませんか。住まいは、心身を休める大切な場所ですが、ちょっとした段差や使いにくい扉が、日々の生活に大きな負担を感じさせる原因になることがあります。

バリアフリーと聞くと、大がかりなリフォームを想像して構えてしまうかもしれません。しかし、実は「日々のちょっとした工夫」や、福祉用具を上手に取り入れることで、劇的に暮らしやすさが向上するケースも多いのです。この記事では、玄関からトイレ、寝室に至るまで、自宅をより快適にするためのバリアフリーアイデアを幅広くご紹介します。

この記事を読むことで、専門知識がなくても「これなら明日から試せそう」と思えるヒントが見つかるはずです。大切なのは、今の生活のどこに「不便」が隠れているかを見つけること。あなたとご家族が、笑顔で安心して過ごせる住まいづくりのガイドとして、ぜひ最後までお読みください。


玄関周りの安全とスムーズな移動

段差解消のスロープと手すり

玄関は「家の顔」であると同時に、外出や帰宅の際の大きなハードルになりやすい場所です。特に、日本の住宅によく見られる高い上がり框(あがりかまち)は、膝や腰に負担をかけるだけでなく、転倒のリスクも高めます。この課題を解決する第一歩が、「段差の解消」です。

市販の段差解消スロープは、木製、ゴム製、アルミ製など種類が豊富です。車椅子を利用する場合は、勾配が緩やかになるよう長さのあるタイプを選びましょう。また、スロープの設置が難しい狭い玄関でも、踏み台(玄関台)を置くことで、一段の段差を低く分割し、昇り降りを楽にすることができます。踏み台を選ぶ際は、表面に滑り止め加工が施され、しっかりと安定感があるものを選ぶのがコツです。

さらに、壁に一本の手すりがあるだけで、バランスを崩しにくくなります。手すりの取り付け位置は、本人の身長や動作に合わせて慎重に決める必要があります。縦型の手すりは立ち上がり動作を助け、横型の手すりは移動の際の支えとして機能します。賃貸物件などで壁に穴を開けられない場合は、床に置くタイプの工事不要な手すりも非常に便利です。

ベンチの設置でゆとりのある外出を

玄関に小さなベンチや椅子を置くアイデアは、多くの当事者の方から「驚くほど楽になった」という声をいただく工夫の一つです。立ったりしゃがんだりした状態で靴を脱ぎ履きするのは、想像以上に足腰のバランス感覚を必要とします。椅子に座ることで姿勢が安定し、落ち着いて靴の紐を結んだり、カバンの整理をしたりできるようになります。

例えば、車椅子から玄関台へ移乗する際の中継地点としても、ベンチは有効です。折りたたみ式の壁付け椅子であれば、通路を塞がず、必要な時だけ活用できます。ベンチの近くには、靴べらや杖立てを配置し、「座ったまま完結する動線」を作ることが理想的です。

ある視覚障害をお持ちの方は、玄関に質感の異なるマットを敷くことで、足の裏の感覚で玄関ドアの位置を把握できるように工夫されています。バリアフリーは物理的な段差だけでなく、「情報としてのバリア」を取り除く視点も大切です。玄関を「整える」ことが、外出への意欲を高めるきっかけにも繋がります。

照明とスイッチの小さな工夫

暗い玄関は、足元の障害物を見落とす原因になります。特に夕方以降、帰宅した瞬間に足元を照らしてくれる「人感センサー付き照明」は、バリアフリーの強い味方です。暗闇でスイッチを探す必要がなく、両手に荷物を持っている時でも自動で点灯するため、非常に安全です。

既存の照明器具を交換しなくても、電球自体をセンサー付きのものに変えるだけで簡単に導入できます。また、スイッチ自体の面積が広い「ワイドスイッチ」に変更することも検討しましょう。指先だけでなく、手の甲や肘でも操作しやすくなるため、握力が弱い方や麻痺がある方にとって大きな助けとなります。

加えて、玄関ドアの鍵穴周りに蓄光シールを貼ったり、暗くなると自動で点灯する足元灯(フットライト)をコンセントに差し込んだりする工夫も有効です。小さな明かり一つが、夜間の不安を払拭し、家の中と外を繋ぐ安心の架け橋になってくれます。

💡 ポイント

玄関のバリアフリー化を検討する際は、本人だけでなく、介助者の動きやすさも考慮しましょう。介助者が横に立てるスペースがあるかどうかが、毎日のスムーズな外出を左右します。


リビング・廊下の動線確保

家具配置の見直しと床の整理

リビングは家族が集まる団らんの場所ですが、家具の配置によっては「障害物競争」のような空間になってしまうことがあります。バリアフリーなリビングを作る基本は、「広い通路の確保」です。車椅子や歩行器を利用する場合、通路の幅は最低でも80cm〜90cm程度あることが望ましいとされています。

まずは、床に直接置いているものを整理することから始めましょう。新聞の束、読みかけの本、ついつい出しっぱなしにしてしまうカバンなどは、転倒事故の元です。キャスター付きのワゴンを活用して収納を浮かせれば、掃除もしやすくなり、部屋を広く使うことができます。また、家具の角が尖っている場合は、クッション材を貼ることで、万が一ぶつかった際のケガを最小限に抑えられます。

ある肢体不自由の方は、ダイニングテーブルを壁に寄せず、部屋の中央に近い位置に配置することで、車椅子での旋回スペースを確保しています。お気に入りの椅子やソファの高さも、立ち上がりやすさを基準に選び直してみると、リビングでのリラックスタイムがより快適なものになります。

滑り止めと配線の処理

意外な落とし穴が「ラグやカーペット」です。部屋のアクセントとして素敵なラグですが、端がめくれ上がっていたり、薄手のものが床の上で滑ったりすると、非常に危険です。特にすり足で歩く癖がある方や、視力が低下している方は、ラグの端に足を取られやすい傾向にあります。

ラグを敷く場合は、厚みがあり端がめくれにくいものを選ぶか、床との間に強力な滑り止めシートを敷くようにしてください。できれば、床材自体を滑りにくいコーティングが施されたものに変えるか、クッションフロアなどを上貼りするのが理想的です。クッションフロアは、万が一転んだ時の衝撃を吸収してくれる効果も期待できます。

また、テレビやパソコンの配線コードが床を這っている状態は厳禁です。コード類は壁際にまとめ、専用の配線カバー(モール)で覆うようにしましょう。コードを隠すことで見た目がスッキリするだけでなく、車椅子のタイヤが絡まるトラブルや、掃除機がけのストレスからも解放されます。小さな配慮の積み重ねが、日々の「イライラ」と「ヒヤリ」を減らしてくれます。

扉の形状変更:引き戸への転換

廊下からリビング、あるいは各部屋への出入り口にある「開き戸(ドア)」は、バリアフリーの観点では少し厄介な存在です。ドアを開ける際には、一旦後ろに下がる動作が必要になり、車椅子や歩行器を使っている方にとっては非常に大きな動作負担となります。可能であれば、ドアを「引き戸」に変更することをお勧めします。

引き戸は、前後の移動を伴わずに横にスライドさせるだけで開閉できるため、軽い力で操作が可能です。最近では、大がかりな工事をしなくても、既存のドア枠を利用して取り付けられる「アウトセット引き戸」という製品も増えています。さらに、取っ手部分を「大型のバーハンドル」にすることで、握る動作が難しい方でも、腕を引っ掛けるだけで開け閉めができるようになります。

扉を閉める際に大きな音が鳴らない「ソフトクローズ機能」が付いたタイプを選べば、深夜の移動も家族に気兼ねなく行えます。扉ひとつを変えるだけで、家の中の「回遊性」が高まり、自分の意志で行きたい場所へ行ける喜びを再確認できるはずです。

✅ 成功のコツ

家具を新調する際は、座面の高さだけでなく「肘掛けの有無」に注目してください。肘掛けがあることで、立ち上がる際の支えになり、動作の安定感が格段に向上します。


キッチン・食事の利便性向上

高さを調整できるシンクと調理台

キッチンは、毎日使う場所だからこそ、使い勝手の良さがQOL(生活の質)に直結します。一般的なシステムキッチンの高さは80cm〜85cm程度ですが、車椅子に座って作業する場合、この高さではシンクの中が見えにくく、蛇口に手が届かないことがあります。そのため、「足元に空間のあるキッチン」への工夫が求められます。

車椅子対応のキッチンは、シンクの下が空洞になっており、膝を深く入れることができる設計になっています。これにより、前かがみにならずに正しい姿勢で調理や洗い物が可能になります。また、昇降式の吊り戸棚を導入すれば、高い場所にある食器や調味料もボタン一つで手元まで降りてくるため、踏み台を使う危険な作業が不要になります。

実例として、難病で立ち仕事が難しくなったDさんは、既存のキッチンに高さを合わせた専用のキャスター付きスツールを導入しました。スツールに座ったまま横移動ができるため、体力消費を抑えながら、以前と同じように得意料理を振る舞うことができるようになったそうです。すべてをリフォームしなくても、補助器具を組み合わせることで道は開けます。

ユニバーサルデザインの調理器具

キッチンの設備を整えると同時に、「調理器具のバリアフリー」にも目を向けてみましょう。最近では、軽い力で切れる包丁や、片手で蓋を開けられる鍋、握りやすい形状のピーラーなど、ユニバーサルデザインを採用したキッチンツールがたくさん登場しています。これらは、手の震えがある方や握力が低下している方にとって、非常に心強い味方です。

特にIHクッキングヒーターへの変更は、安全面で大きなメリットがあります。ガスコンロのように火を使わないため、衣服への着火事故(袖口火災)を防ぐことができ、消し忘れ防止機能やチャイルドロックも充実しています。また、天板がフラットなので、重い鍋を滑らせて移動させることができ、調理後の掃除もサッと拭くだけで完了します。

食器についても、底にシリコンの滑り止めが付いたものや、縁が高くなっていて食べ物をすくいやすいタイプを選ぶことで、食事の時間がより楽しく、自立したものになります。介助される側だけでなく、自分自身の「できる」を増やす道具選びが、キッチンのバリアフリーの神髄です。

家電の配置と収納の工夫

電子レンジや炊飯器、ポットなどの家電は、どの高さに置いていますか。重いお皿を出し入れする電子レンジが目の高さより上にあったり、逆に極端に低い位置にあったりすると、思わぬケガの原因になります。家電は、「腰から胸の間の高さ」に集中して配置するのが、最も体に負担がかからないコツです。

また、よく使うカトラリーや調味料は、引き出し式の収納にまとめましょう。奥にあるものが見渡しやすく、腰をかがめずに取り出すことができます。透明な容器に移し替えてラベルを貼ったり、色分けしたりすることで、視覚的にも何がどこにあるか直感的に理解できるようになります。

冷蔵庫の配置も重要です。扉が開く方向に十分なスペースがあり、中身が取り出しやすい位置にあるか。さらに、賞味期限切れのものを定期的に整理し、棚を低めに設定することで、車椅子の方やお子さんでも使いやすい「家族みんなのキッチン」が完成します。収納の工夫は、コストをかけずに明日からでも取り組める立派なバリアフリーです。

キッチンの工夫項目 具体的な改善策 主なメリット
コンロ IHクッキングヒーターの導入 火災予防、掃除の簡略化
収納 吊り戸棚を昇降式にする 高い場所の荷物を安全に出し入れ
水栓 タッチレス(センサー)水栓 軽い操作で節水、手が汚れてもOK
滑りにくいマットを敷く 水跳ねによる転倒を防止

⚠️ 注意

IHクッキングヒーターを導入する場合、心臓ペースメーカーを使用している方は、電磁波による影響について必ず主治医に相談してください。メーカーによっても推奨事項が異なります。


水回り(トイレ・浴室)の徹底対策

トイレの広さと立ち上がり支援

トイレは、家の中でも最も自立した行動が求められる場所であり、同時に事故が起きやすい場所でもあります。バリアフリー化のポイントは、「広さの確保」と「立ち上がりのサポート」です。可能であれば、トイレの室内面積を広げ、車椅子が回転できるスペース(直径150cm程度)を確保するのが理想的です。

既存のトイレが狭い場合でも、扉を「外開き」や「折り戸」に変更するだけで、万が一室内で倒れた際の救助がスムーズになります。また、便座の高さを上げる「補高便座」を設置することで、立ち座りの際の足腰への負担を軽減できます。便座周りには、左右どちらか、あるいは両側にL字型の手すりを設置しましょう。L字型は、横の部分で体重を支え、縦の部分で立ち上がりをガイドする優れた形状です。

最近では、「温水洗浄便座(シャワートイレ)」の操作パネルを壁掛けタイプにし、ボタンが大きく押しやすいものにする工夫も一般的です。さらに、自動で蓋が開閉する機能や自動洗浄機能があれば、動作の回数を減らすことができ、麻痺がある方や高齢の方にとって、自尊心を保ちながら排泄を行える環境が整います。

浴室の段差と滑り止め対策

浴室の最大のバリアは、入り口の段差と、浴槽を跨ぐ動作です。浴室リフォームを行う際は、床の段差をなくした「バリアフリー浴槽」の導入を検討しましょう。浴槽自体の縁(エプロン)が低く設計されており、足を高く上げずにスムーズに入浴できるタイプが人気です。

リフォームが難しい場合は、洗い場の床に強力な滑り止めマットを敷き、浴槽の横に「移乗台(バスボード)」を設置します。バスボードがあれば、浴槽の縁に一旦座ってから、お尻を滑らせるようにして中に入ることができるため、片足立ちになる不安定な時間をなくせます。洗い場には、高さのある「シャワーチェア」を置くことで、座ったまま安全に体を洗うことができます。

浴室の壁にも、適切な位置に手すりを配置しましょう。特に入り口付近、洗い場から立ち上がる場所、そして浴槽への出入りを助ける場所の3点は必須です。冬場の「ヒートショック」を防ぐために、浴室暖房機を設置して脱衣所との温度差をなくすことも、目に見えない大切なバリアフリーの一つです。

洗面所の機能性と使い勝手

洗面所は、手洗いや歯磨き、整容など、一日の始まりを整える場所です。ここのバリアフリーで重要なのは、「足元の開放」です。キッチンと同様に、洗面台の下がオープンになっていれば、椅子に座ったまま、あるいは車椅子のまま鏡に近づくことができます。鏡は、座った状態でも全身が見えるように、少し斜めに角度をつけて設置する工夫が有効です。

蛇口は、軽い力で操作できる「レバー式」や、手をかざすだけの「センサー式」が便利です。さらに、シャワーヘッドが伸びるタイプであれば、洗髪や洗面台の掃除も楽に行えます。タオル掛けの位置も、本人が無理なく手が届く高さ(床から100cm〜110cm程度)に調整しましょう。

ある自閉症のお子さんがいるご家庭では、洗面所での一連の動作(手を濡らす、石鹸をつける、洗う、拭く)をイラストにして鏡の横に貼ることで、スムーズに身支度ができるように工夫されています。このように、「手順の見える化」も立派な生活サポートの一部です。物理的な使いやすさと、心理的な安心感を両立させることが、水回りバリアフリーの成功の秘訣です。

✅ 成功のコツ

トイレや浴室の改修には、介護保険の「住宅改修費」や、障害者福祉の「日常生活用具給付事業」などの助成金が利用できる場合があります。着工前に必ず担当のケアマネジャーや福祉窓口に相談しましょう。


寝室・休息スペースの快適化

ベッドの高さと周辺動線

寝室は、一日の3分の1以上を過ごす大切な休息の場です。ここでのバリアフリーの中心は「ベッド」です。ベッドの高さは、座った時に足の裏がしっかりと床につき、膝の角度が90度より少し広くなる程度(一般的には40cm〜50cm前後)が、最も立ち上がりやすいとされています。マットレスの硬さも、柔らかすぎると体が沈み込んで寝返りが打ちにくくなるため、適度な反発があるものを選びましょう。

ベッドの配置は、可能な限り「左右のスペース」を空けることが理想です。片側が壁に接していると、介助が必要になった際にスペースが足りなかったり、車椅子での接岸が難しくなったりします。ベッドの足元には夜間灯を置き、枕元には照明のスイッチやスマートフォンの充電器、緊急時の呼び出しチャイムなどをまとめて配置できるナイトテーブルを用意しましょう。

実例として、電動のリクライニングベッド(介護ベッド)を導入したEさんは、背上げ機能を使うことで、食事や読書の際に楽な姿勢を保てるようになっただけでなく、起床時の立ち上がりも格段にスムーズになったと喜ばれています。最近の電動ベッドはデザイン性も高く、普通のインテリアにも馴染むものが増えています。

床材の選択と温度調節

寝室の床材は、冬場でも足が冷えにくく、万が一の転倒時にクッション性のある「コルク材」や「タイルカーペット」が適しています。特にタイルカーペットは、汚れた部分だけを剥がして洗ったり交換したりできるため、清潔を保ちやすく、車椅子の走行による傷も目立ちにくいというメリットがあります。

また、質の良い睡眠を確保するためには、遮光カーテンや防音対策も重要です。発達障害などで音や光に敏感な方は、カーテンを厚手のものにしたり、二重サッシにして外の騒音をカットしたりすることで、安心感が高まります。エアコンの風が直接体に当たらないようにルーバーの向きを調整し、季節を問わず「一定の温度と湿度」を保てる環境を整えましょう。

寝室のクローゼットも、扉を「引き戸」にするか、思い切って「扉なし(オープン収納)」にすることで、服の出し入れが楽になります。ハンガーパイプの高さを低めに設定し、座ったままでもすべての服に手が届くようにする工夫も、自立した生活を後押しします。自分だけの「最高の聖域」を作ることが、明日の活力を生みます。

IT・スマートホームの活用

近年、バリアフリーの概念を大きく広げているのが「スマートホーム技術」です。スマートスピーカー(アレクサやGoogle Homeなど)を導入すれば、「電気を消して」「カーテンを開けて」「テレビをつけて」といった言葉の指示だけで、家電を操作することが可能になります。これは、身体を自由に動かすことが難しい方や、視覚障害のある方にとって、革命的な利便性をもたらします。

例えば、寝室にいながら玄関のチャイムに応答し、スマートロックで鍵を開閉することも可能です。わざわざ移動する必要がなくなるため、転倒リスクを回避し、体力を温存できます。また、見守りカメラや人感センサーを活用すれば、別室にいる家族も本人の状況をそっと把握でき、お互いのプライバシーを守りながら安心を共有できます。

スマート電球を使えば、朝は自然な光で点灯し、夜は徐々に暗くなるように設定でき、体内リズムを整えるのにも役立ちます。最新のテクノロジーは、高価な設備投資と思われがちですが、最近では数千円から導入できるデバイスも増えています。「声やスマートフォンで家を操る」という選択肢を、ぜひ検討してみてください。

💡 ポイント

バリアフリーは「一度作ったら終わり」ではありません。体の状態やライフスタイルの変化に合わせて、柔軟に家具の配置や補助器具を見直していくことが、長く快適に暮らすための秘訣です。


よくある質問(FAQ)

Q. 賃貸物件でもできるバリアフリー対策はありますか?

はい、たくさんあります。まずは、床を傷つけずに設置できる「置くだけの手すり」や、粘着テープで固定できる「段差解消スロープ」の活用です。これらは退去時に簡単に取り外せます。また、ドアノブを回すのが大変な場合は、ノブに被せるだけでレバー式のように使える「ドアノブカバー」が便利です。クッションフロアやタイルカーペットも、現状復帰が可能なタイプを選べば床の保護と滑り止めを両立できます。最近では「DIY可能な賃貸」も増えていますので、まずは管理会社に、簡易的な手すり設置などが可能か相談してみるのも一つの手です。

Q. バリアフリー改修をしたいのですが、どこに相談すればいいですか?

まずは、お住まいの地域の「地域包括支援センター」や、市区町村の福祉窓口に相談することをお勧めします。介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーが窓口となります。福祉住環境コーディネーターなどの専門資格を持つリフォーム業者を紹介してもらえることもあります。自治体によっては、作業療法士や一級建築士などの専門家を自宅に派遣し、本人の動作に合わせたアドバイスを無料で受けられる制度を設けているところもあります。見積もりを取る際は、必ず複数の業者から話を聞き、補助金の申請実績が豊富な業者を選ぶようにしましょう。

Q. 全身の筋肉が衰える疾患ですが、将来を見据えて今やるべきことは?

将来的な進行が予想される場合は、「可変性のある住まい」を意識することが大切です。例えば、今は必要なくても将来的に車椅子が通れるように廊下幅にゆとりを持たせたり、トイレを広めに確保しておいたりすることです。具体的には、壁の中に「下地」をあらかじめ入れておくと、将来いざ手すりが必要になった際に、大がかりな壁の解体なしで安価に取り付けが可能です。また、現在の不便さだけでなく「介助がしやすくなる工夫」も取り入れておくことで、ご自身とご家族の両方の負担を軽減できます。専門家と相談しながら、段階的なプランを立てるのが安心です。

Q. バリアフリーにすると「施設のような部屋」になりそうで抵抗があります。

最近のバリアフリー用品はデザイン性が非常に向上しており、一見して「福祉用具」と分からないようなスタイリッシュな製品が増えています。例えば、木目調の美しい手すりや、ホテルのようなデザインの多目的トイレ、インテリアに馴染むカラーのシャワーチェアなどです。また、手すり自体をおしゃれな棚(手すり兼用シェルフ)にしたり、段差を「隠す」のではなく「見せる」照明演出を施したりすることで、「機能的でありながら美しい住まい」をデザインすることも可能です。「バリアフリー=介護」と捉えず、「家族全員が使いやすいユニバーサルデザイン」という視点で楽しんでみてください。


まとめ

自宅をバリアフリーにするということは、単に段差をなくすことだけではありません。それは、自分や大切なご家族が、自分の力で「やりたいこと」を実現し、安全で穏やかな時間を守るための「愛のある環境づくり」です。今回ご紹介したアイデアを振り返ってみましょう。

  • 玄関・動線:段差解消スロープ、ベンチの設置、ワイドスイッチへの変更で外出をスムーズに。
  • リビング・廊下:家具配置の見直し、滑り止め対策、引き戸への変更で安全な回遊性を確保。
  • キッチン・水回り:高さの調整、ユニバーサル調理器具、手すりとバスボードの活用で自立を支援。
  • 寝室・スマートホーム:適切なベッド選び、環境調節、IT技術の活用で最高の休息環境を実現。
  • 情報収集:自治体の助成金や専門家のアドバイスを活用し、賢く環境を整える。

バリアフリー化に「早すぎる」ことはありません。今の生活で、ほんの少しでも「不便だな」「怖いな」と感じる場所があるなら、そこが改善のスタート地点です。まずは滑り止めシートを一枚敷く、あるいは使わない家具を一つ移動させるといった、コストをかけずにできることから始めてみませんか。

次のアクションとして、まずはご自身やご家族が家の中で「ヒヤリとした場所」や「使いにくい場所」をメモに書き出してみてください。そのリストを持って、地域包括支援センターや福祉用具の展示場へ足を運んでみると、具体的な解決策がパズルのピースのように埋まっていくはずです。あなたの住まいが、世界で一番優しく、自由な場所になることを心から応援しています。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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