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感覚過敏で体がつらい…光・音・匂いへの対策

📖 約31✍️ 酒井 勝利
感覚過敏で体がつらい…光・音・匂いへの対策
光、音、匂いへの過剰な刺激で苦しむ感覚過敏の当事者向けに対策を解説。感覚過敏は脳のフィルター機能不全によるもので、疲労やパニックの原因となります。対策として、聴覚過敏にはノイズキャンセリングやイヤーマフ、視覚過敏には色付きレンズや遮光アイテム、嗅覚過敏にはアロマなどでのマスキングを推奨。また、環境調整としての「情報のノイズ化」や、合理的配慮による職場でのツール使用許可の申請方法も具体的に紹介します。感覚統合療法など専門家への相談も有効です。

感覚過敏で体がつらい…光・音・匂いへの対策

「蛍光灯の光が痛い」「周りの音がざわざわ聞こえすぎて疲れる」「他人の香水の匂いで頭痛がする」—日常生活を送る中で、人一倍、光、音、匂いといった五感の刺激に苦しんでいませんか。

これは、感覚情報が脳で過剰に処理されてしまう「感覚過敏」という特性です。特に発達障害(ASDなど)や一部の精神障害を持つ方にとって、感覚過敏は、強い疲労感、イライラ、そしてパニック発作の大きな原因となります。

この記事では、感覚過敏がなぜ起こるのかを理解し、日常的な外出先や家庭内で、光、音、匂いといった主要な刺激から身を守るための具体的な対策と、そのためのツール(感覚保護ツール)をご紹介します。

感覚過敏は治すものではなく、「環境を調整して付き合っていく」ものです。あなたの心身を守るための効果的な防御策を一緒に見つけていきましょう。


感覚過敏のメカニズムと心身への影響

感覚過敏は、単なる「敏感」という意味ではなく、特定の感覚刺激に対する脳の処理システムが、非当事者とは異なっている状態を指します。

感覚の「フィルター機能」の不全

人間の脳には、無意識のうちに重要な情報とそうでない情報をふるいにかける「フィルター機能」が備わっています。

しかし、感覚過敏を持つ方の場合、このフィルター機能がうまく働かず、全ての情報が同等の強さで脳に送り込まれてしまいます

その結果、オフィスでのエアコンの作動音や、遠くの話し声など、通常は無視できるはずの刺激が、すべて意識に上り、脳が過負荷(オーバーロード)状態に陥ってしまいます。

刺激の蓄積が引き起こす心身の不調

感覚刺激によるストレスは、小さなものでも積み重なることで、深刻な心身の不調を引き起こします。

  • 身体症状:頭痛、吐き気、めまい、慢性的な肩こりや疲労感。
  • 精神症状:強いイライラ、突発的な怒り(感覚爆発)、不安、パニック発作。
  • 行動症状:特定の場所への回避行動(例:電車に乗れない、人混みを避ける)。

特に、刺激が限界を超えた結果起こる「感覚爆発(カンカク・オーバーロード)」は、本人の意思とは関係なく、泣き叫んだり、周囲の人を傷つけたりする行動につながることもあるため、予防が非常に重要です。

感覚過敏の種類と具体的な症状

感覚過敏は、五感すべてに現れる可能性がありますが、特に生活で問題になりやすいのは以下の3つです。

種類 具体的な刺激 症状の例
聴覚過敏 特定の周波数、騒音、人の話し声、時計の秒針 耳鳴り、頭痛、集中力の欠如
視覚過敏 蛍光灯の光、強い日光、色、模様、視覚的なノイズ 目の痛み、吐き気、めまい
嗅覚過敏 香水、柔軟剤、タバコの煙、特定の食材の匂い 吐き気、強い不快感、呼吸困難感


聴覚過敏への対策:音のバリアを築く

騒音や特定の音がストレスになる聴覚過敏は、外出時や集団生活の場で非常に大きな消耗につながります。音の刺激を「必要なものだけ」に絞るための対策をご紹介します。

「ノイズキャンセリング」の積極的な活用

最も有効な対策の一つが、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンやイヤホンの使用です。

これは、周囲の環境音を打ち消す逆位相の音波を発生させることで、物理的に騒音のレベルを下げてくれるため、脳の処理負担を大幅に軽減できます。

職場や学校で装着に抵抗がある場合は、合理的配慮として申請し、「集中作業時のみ使用する」など、使用ルールを決めて利用しましょう。

イヤーマフ・聴覚保護具の導入

ヘッドホンに抵抗がある場合や、完全に音を遮断したい時には、イヤーマフや高性能の耳栓(聴覚保護具)を導入しましょう。

特に「音楽は聴きたくないが、騒音だけ遮断したい」というニーズには、音楽用や睡眠用の耳栓が適しています。

✅ 成功のコツ

イヤーマフや耳栓は、派手な色ではなく、肌の色や髪の色に近い地味な色を選ぶと、周囲に気づかれにくく、抵抗感なく使用できます。

ホワイトノイズ・音楽によるマスキング

完全に静かな環境が逆に耳鳴りや不安を引き起こす場合、ホワイトノイズや特定の音楽でマスキング(覆い隠す)する方法が有効です。

規則的な周波数のホワイトノイズや、歌詞のない環境音楽、バイノーラルビートなどを小さく流すことで、不規則で予期せぬ騒音を意識しにくくする効果があります。


視覚過敏への対策:光と情報の遮断

蛍光灯のちらつき、強い日差し、文字や模様の刺激(視覚的なノイズ)は、目の疲れだけでなく、頭痛や吐き気を引き起こします。光と情報の刺激をコントロールしましょう。

「色付きレンズ」と遮光アイテムの使用

視覚過敏の対策として最も効果的なのは、特定の光の波長をカットする色付きレンズ(カラーレンズ)の眼鏡やサングラスの使用です。

特に、蛍光灯に含まれるブルーライトや、眩しさを引き起こす光を軽減するレンズを選ぶことで、目の負担を大幅に減らせます。

  • 室内:薄いブラウンやグレーなど、視界が暗くなりすぎない色を選ぶ。
  • 屋外:つばの広い帽子や、UVカット機能のあるサングラスを常に着用する。

環境調整:光と情報のノーンイズ化

自宅や職場で、視覚的な刺激そのものを減らすための環境調整を行います。

刺激の種類 具体的な対策
蛍光灯のちらつき LED照明への交換、光を和らげるカバーや調光機能の導入
視覚的なノイズ 不要なポスターや飾りを撤去、目に入る物を収納に隠す「見せない収納」
デジタル機器 PCやスマートフォンにブルーライトカットフィルムを貼り、画面の明るさを最低限に設定

特に職場で、デスクを壁向きに配置してもらうなど、目に入る情報量を減らすための合理的配慮を求めましょう。

「タスクの分割」で情報過負荷を防ぐ

視覚過敏を持つ方は、書類や情報が大量にあると、それだけで脳が混乱し、パニックになることがあります。

大きなタスクは、小さなステップに分割し、一つずつクリアしていく「構造化」を徹底しましょう。

これにより、「全体を見渡さなければならない」という情報過負荷のプレッシャーから解放されます。


嗅覚・触覚過敏への対策:不快な刺激を避ける

匂いや肌触りの刺激は、周囲に理解されにくく、我慢しがちですが、これらも強いストレスとなり、心身の不調を引き起こします。

嗅覚対策:匂いの「バリア」と「マスキング」

匂いに対する過敏性の対策は、主に「匂いを防ぐ」か「別の匂いで覆い隠す(マスキング)」の2つです。

  • 防ぐ:活性炭フィルター入りのマスクを着用する、または無香料の衣類・洗剤に統一する。
  • マスキング:自分が心地よいと感じる匂い(例:ミント、柑橘系のアロマオイルを染み込ませたハンカチ)を携帯し、不快な匂いの上から優しくかぶせるように嗅ぐ。

特に、職場で他者の香水や柔軟剤の匂いがつらい場合は、人事や産業医を通して、職場全体の「香害対策ポリシー」の導入を提案してもらいましょう。

触覚対策:衣類と環境の質感の調整

衣服のタグや縫い目、素材のチクチク感が耐えられない触覚過敏には、物理的な刺激を徹底的に排除します。

💡 ポイント

衣類は、縫い目を外側にした肌着を選ぶ、または「シームレス(縫い目なし)」の肌着や靴下を積極的に利用しましょう。

自宅では、肌触りの良い特定の素材(例:フリース、コットン)の毛布やクッションを常に配置し、不快な感覚が襲ってきた際の「安心アイテム」として活用しましょう。

感覚統合療法と専門家への相談

感覚過敏は、専門的な感覚統合療法によって、脳の感覚処理機能を改善できる可能性があります。

感覚統合療法は、作業療法士(OT)が中心となって行い、安全な環境下で、脳が様々な感覚刺激を適切に処理できるように訓練します。

特に幼少期から有効ですが、大人になってからも、生活のしづらさの根本的な改善につながる可能性がありますので、まずは作業療法を提供するリハビリテーション施設や専門クリニックに相談してみましょう。


よくある質問(FAQ)と相談窓口リスト

感覚過敏に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。

Q. 感覚過敏は治りますか?

A. 感覚過敏は、脳の機能特性であるため、完全に「治る」という表現は適切ではありません。

しかし、環境調整(バリア)と、感覚統合療法による脳の慣れ(順応)によって、そのつらさや日常生活への支障を大幅に軽減することは可能です。適切な対策を継続することで、「付き合いやすくなる」という視点が大切です。

Q. 支援者として、本人にどう声をかけるべきですか?

A. 感覚過敏で苦しんでいる時、本人に「気にしすぎだ」「我慢しなさい」といった否定的な声かけは絶対に避けましょう。

「つらいね」「刺激が強すぎるね」と共感を示し、その上で「どうしたら楽になるか」を具体的に本人に尋ねることが重要です。事前に決めておいたクールダウン・スペースへ誘導するなどの、具体的な行動サポートに徹しましょう。

Q. 感覚過敏による合理的配慮はどこに申請できますか?

A. 職場であれば、障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)や、ハローワークの専門援助部門を通じて申請のサポートを受けられます。

学校であれば、スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターを通じて申請します。配慮の内容(例:ヘッドホンの使用、席の変更)を具体的に文書化し、「健康と生産性を維持するために必要不可欠である」ことを明確に伝えましょう。


まとめ

  • 感覚過敏は、脳の「フィルター機能」の不全により、光・音・匂いなどの刺激が過剰に処理され、心身の不調を引き起こす特性です。
  • 聴覚過敏には、ノイズキャンセリングヘッドホンや高性能耳栓による音のバリアが有効です。
  • 視覚過敏には、色付きレンズの使用や、蛍光灯や情報のノイズを減らす環境調整を行いましょう。

感覚過敏によるつらさは、あなたの感受性の強さの裏返しでもあります。

まずは、ご自身の最もつらい刺激(光、音、匂い)一つを特定し、それに対応する「感覚保護ツール」を購入して試してみるという、具体的な一歩から始めてみましょう。

主な相談窓口・参考情報

  1. 作業療法士(OT)のいるクリニック: 感覚統合療法の相談と実施。
  2. 障害者就業・生活支援センター: 職場での感覚過敏に対する合理的配慮の交渉支援。
  3. 精神科・心療内科: 感覚過敏による二次障害(不安障害、パニック)の診断と治療。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

スマート家電と福祉の融合、IoT活用

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