障害者向けバリアフリー住宅の基礎知識と選び方

住まいのバリアをなくして、自分らしい暮らしを
「車椅子でも快適に暮らせる家を探したい」「将来のことを考えて、今のうちにバリアフリーにしたい」「どんな設備が必要なのかわからない」——障害のある方やそのご家族から、住まいに関するこうした相談をよく耳にします。住まいは生活の基盤であり、快適な住環境は生活の質に直結します。
この記事では、障害者向けバリアフリー住宅の基礎知識と選び方について、わかりやすく解説します。バリアフリーの基本から、具体的な設備、物件の選び方、利用できる補助制度まで、住まい探しや住宅改修に役立つ情報をお届けします。
バリアフリー住宅の基本を知る
バリアフリーとは何か
バリアフリーとは、障害のある方や高齢者が生活する上での障壁(バリア)を取り除くことを意味します。住宅においては、段差の解消、手すりの設置、広い廊下や出入口の確保など、誰もが安全で快適に暮らせる工夫を指します。
バリアフリー住宅というと、車椅子ユーザーのためのものと思われがちですが、実際にはさまざまな障害の方にメリットがあります。視覚障害のある方には点字ブロックや音声案内、聴覚障害のある方にはフラッシュライト付きインターホン、発達障害のある方には動線のわかりやすい間取りなど、それぞれのニーズに応じた配慮があります。
最近ではユニバーサルデザインという考え方も広まっています。これは、障害の有無や年齢に関わらず、すべての人が使いやすいデザインを目指すもので、バリアフリーをさらに発展させた概念です。
バリアフリー住宅の種類
バリアフリー住宅には、大きく分けて以下の種類があります:
- 新築のバリアフリー住宅:設計段階からバリアフリーを考慮した住宅
- 既存住宅の改修:現在住んでいる家をバリアフリーに改修する
- バリアフリー対応の賃貸住宅:賃貸物件でバリアフリー仕様のもの
- グループホーム:障害のある方が共同生活を送る住まい
それぞれにメリットとデメリットがあります。新築は自由度が高い反面、コストがかかります。改修は住み慣れた場所で暮らし続けられますが、建物の構造によっては限界もあります。賃貸は初期費用が抑えられますが、大幅な改修は難しいでしょう。
💡 ポイント
バリアフリー住宅を選ぶ際は、現在の状態だけでなく、将来の変化も考慮することが大切です。障害の状態は変わる可能性がありますし、加齢による身体機能の変化もあります。長期的な視点で考えましょう。
必要な設備とその選び方
基本的なバリアフリー設備
バリアフリー住宅に必要な基本的な設備を見ていきましょう。すべてを一度に揃える必要はなく、優先順位をつけて段階的に整えていくことも可能です。
| 場所 | 設備 | 目的 |
|---|---|---|
| 玄関 | スロープ、手すり、引き戸 | 車椅子での出入り、転倒防止 |
| 廊下・通路 | 幅120cm以上、手すり | 車椅子の通行、歩行の安定 |
| トイレ | 広いスペース、手すり、洋式便器 | 車椅子での利用、立ち座りの補助 |
| 浴室 | 段差なし、手すり、滑りにくい床 | 転倒防止、入浴動作の補助 |
| 居室 | 段差なし、広い出入口 | 移動のしやすさ、車椅子での利用 |
障害特性に応じた設備
障害の種類や程度によって、必要な設備は異なります。自分の生活スタイルに合わせた設備選びが重要です。
車椅子ユーザーの場合、以下のような設備が役立ちます:
- 低めに設置されたスイッチやコンセント(床から90〜100cm程度)
- システムキッチンの高さ調整(車椅子でも使いやすい高さ)
- 浴室のリフトや移乗台
- 駐車場から玄関までの屋根付き通路
視覚障害のある方には:
- 廊下や階段の端に誘導ブロック
- 音声案内付きの設備(インターホン、給湯器など)
- 照明の明るさ調整機能
- 色のコントラストを明確にした内装
聴覚障害のある方には:
- フラッシュライト付きインターホンや火災警報器
- 振動で知らせる目覚まし時計や呼び出しベル
- テレビ電話機能付きのインターホン
✅ 成功のコツ
実際に設備を選ぶ際は、ショールームや展示場で実物を試してみることをおすすめします。カタログだけでは分からない使い心地や高さ、操作性などを確認できます。可能であれば、作業療法士などの専門家に同行してもらうとより良い選択ができます。
物件選びのチェックポイント
立地と周辺環境の確認
住宅そのもののバリアフリーだけでなく、立地や周辺環境も重要なポイントです。いくら家の中が快適でも、外出が困難では生活の質が下がってしまいます。
立地選びで確認したい項目:
- 最寄り駅やバス停までの距離と、その道のりに段差や急な坂がないか
- 駅やバス停にエレベーターやスロープがあるか
- 病院、スーパー、銀行など日常的に利用する施設へのアクセス
- 歩道の幅や状態(車椅子で通行できるか)
- 地域の福祉サービスの充実度
実際に現地を訪れて、時間帯を変えて複数回確認することをおすすめします。平日と休日、昼と夜では交通量や人通りも異なります。可能であれば、実際に車椅子や白杖を使って移動してみると、リアルな感覚がつかめます。
建物と設備の詳細確認
物件を内覧する際は、以下のような点を細かくチェックしましょう。事前にチェックリストを作っておくと確認漏れを防げます。
玄関まわり:
- 段差の有無と高さ(2cm以上の段差は車椅子に影響)
- スロープがある場合、その勾配(1/12以下が理想)
- 玄関ドアの幅(80cm以上が望ましい)
- 鍵の開け閉めのしやすさ(電子錠なども選択肢)
室内:
- 各部屋のドア幅と開閉方式(引き戸が便利)
- 廊下の幅(車椅子での方向転換には150cm程度必要)
- 床の材質(滑りにくく、車椅子で傷つきにくいもの)
- エアコンやスイッチの位置と操作のしやすさ
水回り:
- トイレの広さ(車椅子で入れるには最低150cm×150cm)
- 浴室の段差と手すりの有無
- 洗面台の高さと車椅子での使いやすさ
- キッチンの作業台の高さと収納の位置
⚠️ 注意
賃貸物件の場合、改修できる範囲が限られることがあります。契約前に大家さんや管理会社に、手すりの設置や段差解消などの改修が可能か確認しましょう。退去時の原状回復についても明確にしておくことが大切です。
利用できる補助制度と支援
住宅改修費の助成制度
バリアフリー住宅への改修には費用がかかりますが、さまざまな補助制度を利用することで負担を軽減できます。制度によって対象者や補助額が異なるので、自分が利用できるものを確認しましょう。
主な補助制度:
| 制度名 | 対象者 | 補助額 |
|---|---|---|
| 障害者住宅改修費助成 | 身体障害者手帳所持者など | 上限20万円程度(自治体により異なる) |
| 介護保険の住宅改修費 | 要介護・要支援認定を受けた方 | 上限20万円(自己負担1〜3割) |
| 日常生活用具給付 | 重度障害者 | 品目により異なる |
| 住宅金融支援機構の融資 | バリアフリー工事を行う方 | 低金利での融資 |
これらの制度は併用できる場合もあります。例えば、介護保険の住宅改修費と自治体の助成制度を組み合わせることで、より大きな工事が可能になることもあります。
補助制度の申請方法
補助制度を利用する際の一般的な流れは以下の通りです。ただし、自治体によって手続きが異なる場合があるので、必ず事前に確認しましょう。
- 市区町村の障害福祉課または介護保険課に相談
- 必要な書類(診断書、見積書、改修箇所の写真など)を準備
- 改修前に申請書を提出(工事前の申請が必須の場合が多い)
- 審査・承認
- 工事の実施
- 完了報告と補助金の受け取り
重要なのは、工事を始める前に必ず申請することです。工事後の申請では補助が受けられないケースがほとんどです。また、指定の業者でないと補助対象にならない場合もあるので、事前確認が必要です。
💡 ポイント
申請に必要な書類は制度によって異なりますが、身体障害者手帳や医師の診断書、工事の見積書などが一般的です。書類の準備には時間がかかることもあるので、早めに動き始めることをおすすめします。
よくある質問
Q1. バリアフリー改修にはどのくらい費用がかかりますか?
改修の規模によって大きく異なりますが、小規模な工事(手すりの設置、段差解消など)で10〜30万円程度、浴室やトイレの大規模改修で100〜200万円程度が目安です。補助制度を活用することで、実質負担を抑えることができます。
Q2. 賃貸住宅でもバリアフリー改修はできますか?
可能ですが、大家さんや管理会社の許可が必要です。手すりの設置など、原状回復が比較的容易なものは許可されやすい傾向にあります。近年は、障害者への合理的配慮として改修を認めるケースも増えています。まずは相談してみましょう。
Q3. 将来のことを考えて、今から準備できることはありますか?
新築やリフォームの際に、将来の改修を見据えた設計をしておくことが有効です。例えば、トイレや浴室を広めに作っておく、壁の下地を補強しておく(後から手すりを付けやすくする)、段差を作らないなどです。長期的な視点で計画しましょう。
Q4. バリアフリー住宅を探すには、どこに相談すればいいですか?
市区町村の障害福祉課や住宅課が相談窓口になります。また、障害者向けの住宅情報を扱う不動産会社や、バリアフリー住宅を専門とする建築士、福祉住環境コーディネーターなどの専門家に相談するのも良い方法です。
Q5. グループホームとバリアフリー住宅、どちらがいいですか?
これは個人のニーズによります。グループホームは支援スタッフがいるため、日常生活のサポートが必要な方に適しています。一方、自立した生活を望む方には、バリアフリーの一般住宅が向いています。自分のライフスタイルや必要なサポートの程度を考えて選びましょう。
まとめ
この記事では、障害者向けバリアフリー住宅の基礎知識と選び方について解説しました。
- バリアフリー住宅には新築、改修、賃貸など複数の選択肢があり、それぞれの特徴を理解することが大切
- 障害の種類や程度に応じて必要な設備は異なるため、自分の生活スタイルに合わせた選択が重要
- 住宅そのものだけでなく、立地や周辺環境のバリアフリー状況も確認する
- 障害者住宅改修費助成や介護保険など、利用できる補助制度を活用することで費用負担を軽減できる
- 工事前の申請が必須なので、計画段階から市区町村の窓口に相談する
- 将来の変化も見据えた長期的な視点で住まいを選ぶことが大切
住まいは生活の基盤です。自分に合ったバリアフリー住宅を選ぶことで、より快適で自立した生活を送ることができます。一人で悩まず、専門家や支援者と相談しながら、最適な住まいを見つけていきましょう。
詳しい情報やご不明な点は、お住まいの市区町村の障害福祉課、または施設検索ページからお近くの相談支援事業所にお問い合わせください。福祉住環境コーディネーターなどの専門家に相談することもできます。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
🎨 趣味・特技
DIY、キャンプ
🔍 最近気になっているテーマ
スマート家電と福祉の融合、IoT活用





