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障害者の住まいに必要な福祉用具の選び方

📖 約58✍️ 酒井 勝利
障害者の住まいに必要な福祉用具の選び方
本記事は、障害のある方とその家族・支援者向けに、住まいで活用できる福祉用具の選び方を解説します。移動(車椅子・手すり)、排泄(ポータブルトイレ)、入浴(シャワーチェア・バスボード)、日常生活動作(自助食器)など、分野ごとの用具の特徴と選定ポイントを具体的に紹介。特に、身体への適合性、安全性、自立支援という視点を強調します。また、高額な用具の導入を可能にする介護保険や障害者総合支援法といった公的支援制度の活用法、そして失敗を防ぐための福祉用具専門相談員やPT・OTとの連携、購入前の試用の重要性についても詳しく解説します。

安心・快適な生活を実現!障害者の住まいに必要な福祉用具の選び方

ご本人やご家族、そして支援者の皆様、福祉用具と聞くと「どんな種類があるの?」「本当に自分に合ったものを選べるだろうか?」と悩むことはありませんか。

福祉用具は、障害のある方の自立を促し、ご家族の介助負担を軽減するための、生活に欠かせない大切なパートナーです。正しく選ぶことで、日々の生活の質(QOL)は劇的に向上します。

この記事では、生活の場(住まい)に焦点を当て、移動、排泄、入浴、食事といった日常生活の様々なシーンで役立つ福祉用具の種類、選び方のポイント、そして公的な制度を活用する具体的な方法について、専門的な知識を温かく、わかりやすくお伝えします。

この情報が、皆様の快適で安心できる毎日をサポートする一助となることを心より願っております。


♿️ 移動をサポートする用具:家の中でも外でも快適に

住まいの中で自由に移動できることは、自立した生活の基本です。福祉用具は、その移動を安全かつスムーズにするために多岐にわたります。

移動のサポートは、単に「動けるようにする」だけでなく、ご本人の活動範囲を広げ、社会参加を促すという大きな意味を持っています。

車椅子・歩行器の適切なサイズの選び方

車椅子や歩行器は、単に移動のための道具ではなく、ご本人の身体の一部となります。そのため、サイズと適合性が非常に重要です。

車椅子を選ぶ際には、まず座面の幅が、お尻の両側に手のひら一枚分程度のゆとりがあるかを確認しましょう。座面が広すぎると姿勢が不安定になり、狭すぎると褥瘡(じょくそう)の原因となることがあります。

また、背もたれの高さ、フットサポート(足乗せ)の高さも、理学療法士(PT)や福祉用具専門相談員と相談しながら、ご本人の体幹の安定度や足の長さに合わせて細かく調整する必要があります。

歩行器は、使用する場所(屋内か屋外か)や、ご本人の握力、バランス能力に合わせて、フレームの形状や車輪の有無を選びます。歩行器のハンドル位置は、肘が軽く曲がる程度の高さに調整するのが基本です。

特に、屋内用の歩行器は、狭い場所でも取り回しがきくよう、小回りの利く軽量モデルが推奨されます。

💡 ポイント

車椅子のクッションは、座り心地だけでなく、褥瘡予防のために非常に重要です。エアセル型、ジェル型、ウレタン型など様々な種類があり、体圧分散能力が異なります。必ず専門家と相談して選びましょう。

手すりとスロープの選び方と活用法

住居内の段差や滑りやすい場所での移動を助けるのが、手すりとスロープです。

手すりは、工事を伴う「固定式」と、設置が容易な「据置型」があります。玄関や廊下、トイレ、浴室など、立ち座りや移動の動作を伴う場所には、ご本人の握りやすい太さ(直径30mm〜40mmが一般的)で、力が入りやすい高さに設置することが重要です。

特に、浴室やトイレでは、縦型と横型の手すりを組み合わせた「L字型」が、立ち上がりと移動の両方をサポートできるため効果的です。

スロープは、玄関や上がり框(かまち)などの段差解消に役立ちます。車椅子が利用する場合は、傾斜が緩やかであること(推奨勾配1/12以下)が安全上重要です。

持ち運びができる「携帯用スロープ」は、外出時や玄関先の一時的な利用に便利ですが、設置時の安定性を必ず確認しましょう。

ある視覚障害のある方は、廊下の片側に連続した手すりを設置したことで、「家の中のどこにいても安心感があり、一人で自由に動けるようになった」と話されています。これは、物理的なサポートが心理的な安心感につながる好例です。


🚽 排泄と入浴を快適にする用具:自立と清潔のサポート

排泄と入浴は、プライバシーに関わる大切な行為であり、用具の選択が自立の維持と介助者の負担軽減に直結します。適切な用具で、これらの行為を安全かつ快適に行いましょう。

ポータブルトイレと便座周りの工夫

トイレへの移動が困難な方にとって、ポータブルトイレは非常に有効な選択肢です。ポータブルトイレを選ぶ際は、まず設置場所のスペースを考慮し、ご本人が移乗しやすい高さを調整できるモデルを選びましょう。

排泄物の処理を簡単にする消臭機能や自動ラップ機能が付いた高機能モデルもあります。臭いや衛生面への不安を軽減し、介助者の負担を減らすことにつながります。

通常のトイレを利用する場合でも、座りやすく立ち上がりやすくするための工夫が必要です。

補高便座(便座の高さを上げるもの)や、便器の左右に設置する簡易的な手すり(トイレ用手すり)を利用することで、膝や腰への負担を軽減し、ご本人による自立的な排泄をサポートします。

✅ 成功のコツ

ポータブルトイレは、日中過ごす場所のすぐ近く(例:ベッドサイド)に設置することで、夜間の移動距離を短縮し、転倒リスクを大幅に減らすことができます。

安全な入浴のための補助用具

浴室は滑りやすく、特に危険な場所です。入浴に関する福祉用具は、安全性の確保リラックス効果の両立を目指します。

シャワーチェアは、浴槽のそばで体を洗う際に非常に便利です。座面の高さが調整できるもの、背もたれや肘掛けが付いているものなど、ご本人の体幹の安定度に合わせて選びます。

浴槽への出入りを助けるのが、浴槽台バスボードです。浴槽台は浴槽内に設置し、浴槽の底を高くすることで、浴槽をまたぐ高さを低くし、また浴槽内で座る高さを調整できます。

バスボードは、浴槽の縁に渡し、腰掛けて浴槽をまたぐ際の足場として使います。体力が低下している方にとって、安全に移乗できる補助具として非常に有効です。

床材は、濡れても滑りにくいマット(滑り止めマット)を敷くことも、手軽ながら効果的な対策です。


🍽️ 日常生活動作(ADL)を支援する用具

食事、着替え、整容といった日常の細かな動作(ADL: Activities of Daily Living)を支援する用具は、障害のある方の生活の質を向上させる上で、非常に重要な役割を果たします。

食事を楽にする自助食器とカトラリー

手指の震えや握力の低下、関節の可動域制限などがある場合、通常の食器やカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン)を使うのは困難です。

自助食器は、その使いやすさを追求した製品群です。例えば、お皿の縁に立ち上がり(フチ)が付いているものは、スプーンで食べ物をすくいやすく、こぼれを防ぎます。また、お皿の裏に滑り止めが付いていると、片手でも安定して食事ができます。

カトラリーは、柄(グリップ)を太くしたり、曲げたりすることで、握りやすく、口まで運びやすいように工夫されています。

重力でスプーンの皿の部分が常に水平を保とうとする「揺れ止め機能」が付いたカトラリーもあり、手の震えがある方でも食べ物をこぼさずに食事を楽しむことができます。

「自助食器を使うようになってから、食事中にイライラすることが減り、家族と一緒に食事の時間を楽しめるようになった。」

— ご家族からのエピソード

着替え・整容のための補助具とアイデア

着替えや整容(歯磨き、洗顔など)も、工夫次第で自立を促せます。

着替えについては、ボタンの代わりにマグネットやマジックテープを採用した衣類を選ぶことで、手指の細かい動作が苦手な方でも自分で着替えを完了しやすくなります。

靴下を履く動作が困難な方には、ソックスエイド(靴下履き補助具)という用具があり、かがまずに靴下を履くことができます。

洗面台周りでは、車椅子に乗ったままでも鏡が見やすく、顔が洗えるように、高さ調整が可能な洗面台を設置したり、鏡の角度を変えられるようにしたりする工夫が有効です。

また、シャンプーやハンドソープの容器は、軽く押すだけで中身が出る大型ポンプ式のものや、非接触の自動ディスペンサーを選ぶと、握力の弱い方でもスムーズに利用できます。


💰 福祉用具を導入するための公的支援制度

良質な福祉用具は高価なものが多いため、費用の負担がネックになることがあります。しかし、日本には、障害のある方の生活を支援するためのhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sougoushien/index.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">公的な支援制度が整備されています。

これらの制度を理解し、賢く利用することが、福祉用具導入の鍵となります。

介護保険と障害者総合支援法によるサービス

福祉用具の導入を支援する主な制度は、以下の通りです。

  1. 介護保険(福祉用具の貸与・購入費の支給): 要介護認定を受けた方が対象です。電動ベッド、車椅子、歩行器、手すりなどは「貸与(レンタル)」が原則です。入浴や排泄に使用する特定福祉用具(ポータブルトイレ、入浴用いすなど)は「購入費の支給(上限10万円/年)」が可能です。
  2. 障害者総合支援法(補装具費の支給): 障害者手帳を持つ方が対象で、身体の欠損や機能の低下を補うための用具(例:義肢、装具、車椅子、電動車椅子など)が「現物給付」または「費用支給」されます。
  3. 障害者総合支援法(日常生活用具給付等事業): 障害者手帳を持つ方が対象で、日常生活を便利にする用具(例:入浴補助用具、住宅改修、コミュニケーション機器など)が給付されます。

特に、介護保険と障害者総合支援法の両方の対象となる場合、原則として介護保険が優先されます。しかし、障害固有のニーズに対応する用具は、障害者総合支援法で支給されることがあります。

⚠️ 注意

これらの制度を利用する際は、必ず用具の購入やレンタル契約を結ぶ前に、市町村への申請と支給決定が必要です。事後申請は認められないことがほとんどですので、注意しましょう。

用具レンタルと購入のメリット・デメリット

福祉用具を導入する際は、レンタル(貸与)と購入のどちらが良いかを慎重に検討する必要があります。

  • レンタルのメリット: 初期費用が抑えられる、身体状況の変化に応じて用具を交換しやすい、メンテナンス費用がかからない。
  • レンタルのデメリット: 長期的に見ると購入よりも総額が高くなる場合がある、特定福祉用具はレンタルできない。
  • 購入のメリット: 完全に自分のものになる、特定福祉用具を購入できる、使い慣れたものをずっと使える。
  • 購入のデメリット: 初期費用が大きい、身体状況が変わっても交換が難しい、メンテナンスは自己負担。

特に、身体機能が今後変化する可能性がある場合は、レンタルのメリットが大きいと言えます。福祉用具専門相談員と相談し、将来の見通しを立てて選択することが大切です。


🤝 失敗しないための連携と試用の重要性

福祉用具選びで最も避けるべきなのは、「使ってみたら身体に合わなかった」というミスマッチです。これを防ぐためには、専門家との連携と、購入前の試用(デモ)が欠かせません。

専門職(PT・OT)と福祉用具専門相談員との連携

最適な福祉用具を選ぶためには、ご本人の身体能力を正確に評価する必要があります。

理学療法士(PT)は、移動や動作に必要な筋力、バランス、関節の動きを評価し、最も適した歩行補助具や車椅子の仕様をアドバイスできます。

作業療法士(OT)は、日常生活動作(食事、入浴、着替えなど)の困難さを評価し、自助具や住宅改修の具体的なアイデアを提供してくれます。

そして、福祉用具専門相談員は、これらの専門職のアドバイスに基づき、市場にある具体的な製品の中から、制度の範囲内で最適な用具を提案・提供するプロです。

この三者の連携が取れていると、身体状況と制度、製品の特性を総合的に踏まえた、最も適切な用具選びが実現できます。

✅ 成功のコツ

福祉用具専門相談員には、「単に用具を貸してほしい」と伝えるだけでなく、「その用具を使って、どのような生活を送りたいか」という具体的な目標を伝えましょう。これにより、相談員はより的確な提案ができます。

必ず試す!「試用」と「モニタリング」の重要性

カタログで見ただけ、あるいは話を聞いただけでは、その用具が本当に自分に合うかはわかりません。

福祉用具は、必ず自宅で一定期間試用する(モニタリング)機会を設けてもらいましょう。特に電動ベッドや車椅子といった高額な用具は、実際に使ってみて、生活空間での取り回しや、介助者が使用する上での操作性を確認することが非常に重要です。

試用期間中は、ご本人だけでなく、介助するご家族も使ってみて、不便な点や改善点をメモしておきましょう。そのフィードバックを元に、福祉用具専門相談員が調整や別製品の提案を行うことで、ミスマッチを最小限に抑えられます。

福祉用具のレンタル業者は、試用期間を設けていることが一般的です。遠慮せずに希望を伝えましょう。


❓ よくある質問(Q&A)と相談窓口

福祉用具の導入に関して、多くの方が抱える疑問にお答えします。

Q1. 用具の調整や修理はどこに依頼すれば良いですか?

A. レンタル(貸与)品の場合は、契約している福祉用具レンタル事業所に連絡すれば、無料で修理や調整を行ってくれます。

購入した用具の場合は、販売店やメーカーに問い合わせることになりますが、その費用は原則として自己負担となります。購入前に、保証期間やアフターサービスの内容を確認しておきましょう。

Q2. 子ども向けの福祉用具も制度の対象ですか?

A. はい、対象です。障害のある児童向けの補装具や日常生活用具も、障害者総合支援法に基づく支給対象に含まれています。

ただし、大人のものとは異なり、成長に合わせて細かくサイズ調整が必要なため、専門の業者や小児の専門家(PT・OT)との連携がより重要になります。

Q3. どこに相談すれば、最初から適切な用具を選んでもらえますか?

A. 最も包括的なアドバイスを得られるのは、以下の窓口です。

  • 相談支援専門員(障害者の方) / ケアマネジャー(介護保険の方): サービス全体との連携や制度の案内が可能です。
  • 福祉用具専門相談員: 製品知識と制度に精通しています。地域の福祉用具レンタル・販売事業所に所属しています。
  • 理学療法士・作業療法士: 身体状況の評価に基づいた専門的なアドバイスが可能です(訪問リハビリテーションなどで依頼できます)。

まずは、相談支援専門員やケアマネジャーに連絡し、用具選定の専門家を紹介してもらうのがスムーズです。


✨ まとめと次の一歩

障害者の住まいに必要な福祉用具の選び方は、ご本人の現在の身体状況だけでなく、将来の変化、そしてご家族の介助状況を総合的に考慮する、非常に専門的なプロセスです。

大切なのは、カタログの機能や値段に惑わされず、「その用具を使うことで、どんな生活が実現できるか」という視点を常に持つことです。

福祉用具は、生活の困難さを軽減し、ご本人とご家族の生活を豊かにするための強力なツールです。ぜひ、恐れずに専門家の知恵を借りて、最適な一品を見つけてください。

次の一歩の提案

まずは、お住まいの地域にある福祉用具レンタル・販売事業所に連絡を取り、「車椅子や電動ベッドの試用をお願いしたい」と伝えてみましょう。実際にプロに会って話をすることで、具体的な選択肢が見えてきます。

まとめ

  • 福祉用具を選ぶ際は、自立支援と介助負担軽減の視点を持ち、身体状況に合ったサイズと適合性を最優先する。
  • 手すりやスロープ、ポータブルトイレなどの用具は、公的制度(介護保険、障害者総合支援法)を活用して導入する。
  • 用具のミスマッチを防ぐため、理学療法士や作業療法士による評価を受け、必ず購入・契約前に試用(モニタリング)を行う。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

スマート家電と福祉の融合、IoT活用

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