生活環境を改善するためのDIY・福祉用具活用法

小さな工夫で生活激変!障害者のためのDIY・福祉用具活用法
ご本人、ご家族、そして支援者の皆様、住み慣れた家での生活を「もっと楽に、もっと安全に」したいという思いは、誰もが抱く願いでしょう。
大規模なリフォームには費用と時間がかかりますが、身近な福祉用具の導入や、簡単なDIY(Do It Yourself)だけでも、日々の生活環境は劇的に改善できます。特に、ちょっとした段差や動作の困難さが、大きなストレスや事故につながることも少なくありません。
この記事では、コストを抑えつつ、すぐに効果を実感できる具体的なDIYアイデアと、それと組み合わせることで効果が倍増する福祉用具の活用法を、住まいのエリア別にご紹介します。
ぜひ、この記事を参考に、ご自宅の環境をより快適で安心できる空間へと変えていきましょう。
🚪 玄関・廊下での安全対策:移動と段差の解消
玄関は「家の顔」であると同時に、外出と帰宅の際に必ず通る場所であり、段差や狭さが事故の原因となりやすい場所です。ここでの対策は、活動範囲を広げる上でも非常に重要です。
玄関の段差を解消するDIYスロープと踏み台
玄関の上がり框(かまち)や、戸外への段差は、つまずきや転倒、車椅子の移動にとって大きな障壁となります。
比較的安価で簡単なDIYとして、既製の木材やブロックを利用した踏み台の設置が挙げられます。踏み台は、一段の高さを低くし、足を乗せる面積(踏面)を広くすることで、昇降の負担を軽減します。
車椅子を使用される場合は、ゴム製やアルミ製の既製スロープ(携帯用スロープ)の活用が便利です。これはDIYではありませんが、工事不要で簡単に設置・撤去が可能です。スロープを設置する際は、傾斜が緩やかであること(推奨勾配1/12以下)を確認しましょう。
踏み台やスロープの表面には、必ず滑り止めシートやテープを貼り付け、雨の日や濡れた状態でも滑りにくい工夫を施しましょう。これにより、安全性が格段に向上します。
💡 ポイント
既製の踏み台やスロープは、介護保険の福祉用具貸与(レンタル)の対象となる場合があります。購入前に、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認しましょう。
廊下の移動をサポートする手すりと誘導の工夫
廊下には、工事不要で安全性を高める手軽な福祉用具があります。
突っ張り棒式の手すり(据置型手すり)は、壁に穴を開けることなく、賃貸住宅でも利用できる便利なアイテムです。玄関から居室までの短い区間や、立ち上がりの補助が必要な場所に一時的に設置できます。
また、視覚に課題のある方や、夜間の移動の安全性を高めるために、蓄光テープやLEDセンサーライトを廊下の壁や床の隅に設置するDIYも非常に効果的です。これにより、暗闇でも移動経路が視覚的に誘導され、転倒を防ぎます。
廊下の足元に、コード類や小さな家具など、つまずきの原因となるものを置かないよう徹底することも、最も重要なDIY(整理整頓)の一つです。
🛁 水回りでの安心確保:浴室とトイレの簡単改修
浴室とトイレは、自宅内で最も転倒事故が多い場所です。水に濡れて滑りやすく、立ち座りの動作が多い水回りの安全対策は最優先で行うべきです。
滑り止めと補助具による浴室の安全性向上
浴室の床は滑りやすいため、まずは滑り止めマットを敷くことが最も手軽で効果的なDIY対策です。浴槽内用と洗い場用の両方を設置し、カビが生えにくい素材を選びましょう。
入浴時の立ち座りや、体を洗う動作を安定させるためには、シャワーチェアが不可欠な福祉用具です。高さ調節が可能なモデルを選び、ご本人の膝や腰に負担がかからないように調整します。
浴槽をまたぐのが困難な場合は、バスボードや浴槽台を利用します。バスボードは浴槽の縁に渡し、一度腰掛けてから浴槽に入る動作を助けます。浴槽台は浴槽の底に置き、浴槽の深さを浅くする役割を果たします。
✅ 成功のコツ
シャンプーやソープの容器を、握力が弱い方でも押しやすい大型ポンプ式や、手をかざすだけで中身が出る非接触の自動ディスペンサーに交換するDIYも、入浴時の負担を大きく減らします。
トイレの立ち座り支援と空間の工夫
トイレの立ち座りが不安定な場合は、据置型の手すり(トイレ用手すり)の導入が簡単で効果的です。これは便器を挟んで置くだけで、立ち上がりや着座の際の支えとなります。
便座の高さが低く立ち上がりにくい場合は、補高便座を便器の上に取り付けるDIYで高さを調整できます。これにより、膝への負担が軽減されます。
知的障害や発達障害のある方の場合、トイレの場所を認識しやすくするために、ドアや壁にピクトグラム(絵文字)を貼るという簡単なDIYも有効です。また、トイレットペーパーのホルダーの位置を、手が届きやすい位置に調整することも大切です。
便座の自動開閉機能や自動洗浄機能が付いた高機能な便器も、介助負担の軽減と自立的な排泄をサポートする有効な福祉用具です。
🍽️ 居室・キッチンでの生活改善アイテム
居室やキッチンは、食事や団らん、休息といった生活の中核を担う場所です。ここでは、細かい動作や、快適な姿勢をサポートするアイテムに焦点を当てます。
食事をサポートする自助具と食器の工夫
手指の震えや握力の低下、片麻痺などにより、食事の動作に困難がある方には、自助具(自助カトラリー)の活用が自立支援につながります。
- 太柄カトラリー: グリップが太く握りやすいスプーンやフォーク。
- 曲がるカトラリー: 角度を自由に変えられ、口へ運びやすい形状にできるもの。
- すくいやすい食器: 皿の縁に立ち上がりがあり、食べ物が逃げにくい形状の食器。
これらはすべて、福祉用具店やインターネットで手軽に購入できます。また、キッチンでの調理作業をサポートするために、まな板の下に滑り止めマットを敷くという簡単なDIYも、片手で作業を行う際に非常に役立ちます。
⚠️ 注意
自助具を選ぶ際は、必ずご本人の手の状態や動かしやすさを考慮して試用しましょう。カタログ上の機能だけでなく、実際に手に取った感触や重さが重要です。
座り姿勢を快適にするための工夫と福祉用具
居室で長時間過ごす方にとって、座位の姿勢は健康と快適性に直結します。
椅子や車椅子を使用する場合、体圧分散型のクッションやバックサポート(背もたれ)は、褥瘡(じょくそう)予防や姿勢の安定に不可欠な福祉用具です。これらはレンタルの対象となる場合も多いです。
また、ベッドサイドでは、オーバーテーブル(ベッド用テーブル)をDIYでカスタマイズするアイデアも有効です。既製品のテーブルの足元にキャスターを取り付けることで、車椅子の高さに合わせて調整しやすくなり、ベッド上や車椅子での食事、読書、作業が格段に楽になります。
電動ベッドは、寝返りや起き上がりの動作をサポートする最も高機能な福祉用具であり、介護保険の要介護度によってはレンタルが可能です。
📢 DIY・福祉用具活用を成功させる連携と制度
DIYや福祉用具の導入は、ご本人のニーズを正確に把握し、公的な支援制度を上手に活用することで、より安全かつ経済的に実現できます。
DIYの安全性を高める専門家のアドバイス
いくら簡単なDIYであっても、安全に関わる部分の改修については、必ず福祉住環境コーディネーターや理学療法士などの専門家のアドバイスを受けましょう。
例えば、手すりを取り付ける際、壁の裏の柱の位置を正確に把握せずに設置すると、ぐらつきが発生し、事故の原因になります。専門家は、安全性が確保できる構造や適切な設置場所を助言してくれます。
「少しの手助けで改善できる」と自己判断せず、ご本人の身体機能の評価に基づいた専門的な視点を取り入れることが、失敗を防ぐ最大のコツです。
「滑り止めマットを敷いただけでは不安でしたが、理学療法士さんにマットの最適な厚さと敷く範囲を教えてもらい、安心して歩けるようになりました。」
— ご家族からのエピソード
福祉用具のレンタルと購入の賢い選択
福祉用具には、介護保険や障害者総合支援法によってレンタル(貸与)や購入費の支給(給付)の対象となるものがあります。
テーブル
| 福祉用具 | 制度の選択肢 | 特徴 |
|---|---|---|
| 車椅子、電動ベッド、歩行器 | レンタル(貸与) | 身体状況の変化に合わせて交換可能。費用を抑えられる。 |
| ポータブルトイレ、入浴用いす、スロープ(一部) | 購入費支給 | 肌に触れるもの、衛生上レンタルに適さないもの。 |
特に、身体状況が今後変化する可能性がある方や、高額な用具(電動ベッドなど)については、レンタルを優先的に検討するのが賢明です。購入費支給制度を利用する場合は、購入前に市町村への申請と承認が必要です。
DIYで解決できない、あるいは安全性が担保できない部分は、積極的に福祉用具の専門相談員に相談し、制度を活用しながら導入しましょう。
❓ よくある質問(Q&A)と相談窓口
DIYや福祉用具活用に関する、よくある疑問と相談窓口をまとめました。
Q1. DIYで改修した部分に、後から福祉用具を取り付けても良いですか?
A. はい、可能です。例えば、DIYで広い踏み台を作成し、その上に立ち座り補助のための据置型手すり(福祉用具)を置くといった組み合わせは非常に有効です。
ただし、DIYした部分の強度が、福祉用具の荷重に耐えられるか、安全性を必ず確認してください。不安定な構造物の上に用具を設置することは危険です。
Q2. 福祉用具のレンタルは、どこに相談すれば良いですか?
A. 介護保険を利用できる方(要介護認定者)は、担当のケアマネジャーを通じて、福祉用具貸与事業者に相談します。
障害者総合支援法を利用する方(日常生活用具給付)は、相談支援専門員またはお住まいの市町村の福祉担当課に相談し、指定された業者を紹介してもらいます。
レンタル事業所の専門相談員が、自宅を訪問してアドバイスや適合評価をしてくれます。
Q3. 賃貸住宅でもできる、簡単なDIYは何がありますか?
A. 賃貸住宅の壁や床を傷つけずにできるDIYは以下の通りです。
- 滑り止めマットの敷設(浴室、玄関、廊下)
- 粘着テープ式のフックや収納用品の設置
- 突っ張り棒式の手すりや収納棚の活用
- 蓄光テープやピクトグラム(絵文字)の貼り付け
- 家具の配置換えによる動線確保
画鋲程度の穴でも気になる場合は、事前に大家さんや管理会社に相談しましょう。
✨ まとめと次の一歩の提案
障害のある方の生活環境改善は、DIYによる身近な工夫と、専門性の高い福祉用具の活用を組み合わせることで、費用を抑えつつ、大きな効果を発揮します。
特別な技術や高価な資材は必要ありません。大切なのは、ご本人の日々の動作を観察し、「どこに不便や危険が潜んでいるか」を見つける観察眼です。
DIYで愛着の湧いた住まいと、福祉用具がもたらす安心感。この二つが合わさることで、日々の生活はより快適で前向きなものへと変わっていくでしょう。
次の一歩の提案
今すぐ、ご自宅の玄関や廊下の小さな段差を測ってみましょう。その寸法をメモして、地域のホームセンターや福祉用具店に行き、その段差に合う「滑り止めマット」や「簡易スロープ」があるか確認してみましょう。具体的な行動から改善は始まります。
まとめ
- 玄関や廊下の小さな段差は、DIYの踏み台や、工事不要の既製スロープ・突っ張り手すりで解消する。
- 水回りの安全対策は、滑り止めマット、シャワーチェア、据置型トイレ手すりの活用が最も効果的である。
- DIYは専門家のアドバイスを受け、福祉用具はレンタル・購入費支給制度を賢く活用し、安全性と経済性を両立させる。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





