高齢障害者の外出・通院を支えるサービスまとめ

安心をプラス:高齢障害者の外出・通院を支える
介護保険と障害福祉の連携サービス徹底解説
高齢期に入り、長年抱えてきた障害に加えて、加齢に伴う身体機能の低下や認知症などの課題が加わると、外出や通院のハードルは一気に高まります。「以前は一人で通院できたのに、最近は付き添いがないと不安」「介護保険と障害福祉、どちらのサービスを使えばいいのか分からない」といった悩みは、多くの高齢障害者の方々やご家族が直面する現実です。
特に、65歳を境に、利用できる福祉サービスの制度が複雑化するため、ご自身の状況に合った最適なサポートを見つけることが困難になります。本記事では、高齢障害者の方々の外出・通院を安全かつ快適に継続するために、介護保険制度と障害福祉サービスをどのように組み合わせて活用すべきか、具体的なサービス内容や利用の流れを、専門用語を丁寧に解説しながら、分かりやすくご紹介します。
この記事を読み進めることで、ご自身の生活に必要な移動支援を見つけ出し、住み慣れた地域で安心して生活を送り続けるための確かな道筋を見つけていただければ幸いです。
高齢障害者の移動支援:制度の複雑さと「原則」
高齢障害者の移動支援を考える上で、まず理解しておきたいのが、65歳以上の方が直面する「介護保険優先原則」という制度上のルールです。
「介護保険優先原則」とは何か?
障害福祉サービスは、原則として年齢制限なく利用できますが、65歳になり介護保険のサービス対象者となった場合は、障害福祉サービスと「同様の目的」を持つサービスについては、介護保険のサービスが優先されます。これが「介護保険優先原則」です。
この原則が適用される主な外出・移動関連サービスは、以下の通りです。
- 居宅介護の「身体介護」:外出時の移動介助や身体介護を伴う支援。
- 訪問介護:通院時の乗降介助や移乗介助。
しかし、障害福祉サービスでなければ提供できないサービスや、介護保険に該当サービスがない場合は、引き続き障害福祉サービスを利用できます。この制度間の線引きが、高齢障害者の方の支援を複雑にしています。
💡 ポイント
介護保険と障害福祉サービスを比較検討する際には、自己負担額(原則1割)だけでなく、サービス内容の柔軟性や支給時間数についても総合的に判断することが大切です。特に障害福祉サービスの方が、細やかな移動支援を提供できる場合があります。
障害福祉サービスが引き続き利用できるケース
介護保険が優先される原則があっても、以下のケースでは引き続き障害福祉サービス(特に移動支援や居宅介護)の利用が可能です。
- 「移動支援」が必要な場合: 介護保険には、余暇活動や社会参加を目的とした個別的な外出支援(移動支援)に相当するサービスがありません。そのため、通院や生活必需品の買い物以外の余暇活動には、障害福祉の移動支援を引き続き利用できます。
- 重度訪問介護が必要な場合: 重度の肢体不自由や知的障害、精神障害などで常時見守りや高度な介護が必要な方に対する「重度訪問介護」は、介護保険の訪問介護では対応が困難なため、引き続き利用できる特例が設けられています。
- 介護保険の支給量が不足する場合: 介護保険の要介護認定を受けても、必要な支援時間数(支給量)が不足する場合、その不足分を障害福祉サービスで補うことが認められる場合があります。
利用の可否については、お住まいの市町村の障害福祉窓口や、相談支援専門員に相談することが必須です。
制度間の「調整役」:相談支援専門員とケアマネージャー
高齢障害者の方のサービス利用においては、相談支援専門員(障害福祉)と介護支援専門員(ケアマネージャー・介護保険)の連携が非常に重要です。この二者が、重複を避けつつ、最大限のサービスが提供できるように調整します。
特に65歳を迎え、初めて介護保険の申請を行う際には、これまでの障害福祉サービスの利用状況をケアマネージャーに正確に伝え、双方のサービスを組み合わせた利用計画(ケアプランとサービス等利用計画)を作成してもらうことが、最もスムーズな支援への道となります。
通院を支えるサービス:介護保険の強み
高齢障害者の方の移動支援の中でも、特に生命維持に関わる重要な外出である「通院」に関しては、介護保険サービスが提供する手厚いサポートを活用できます。
訪問介護の「通院等乗降介助」
介護保険の訪問介護サービスには、「通院等乗降介助」という、通院に特化した移動支援サービスがあります。これは、ヘルパーが運転する車(またはタクシーなど)への乗車・降車の介助、そして病院内での受付や薬の受け取りなどのサポートを行うものです。
単に車を運転するだけでなく、ヘルパーが自宅から病院まで付き添い、安全を確保しながら移動できる点が大きな強みです。このサービスは、要介護認定を受けている高齢障害者の方が、通院を継続するための最も有効な手段の一つとなります。
- ヘルパーが運転する車両(多くは福祉有償運送)への乗降介助を行う。
- 病院への送り迎えだけでなく、診察時の移動介助や、会計・薬の受け取りもサポート範囲に含まれる。
訪問介護の「身体介護」としての外出介助
通院等の乗降介助に加えて、訪問介護の「身体介護」の時間内で、外出時の移動介助を受けることも可能です。これは、主に車いすへの移乗、歩行介助、排泄介助など、身体に直接触れて行う介助サービスを指します。
このサービスは、通院のほか、生活必需品の買い物や銀行などの生活上必要な外出にも利用できます。例えば、「ヘルパーの付き添いのもと、車いすでスーパーへ行き、買い物をし、帰宅する」といった一連の流れをサポートしてもらえます。これにより、生活機能の維持・向上にも繋がります。
✅ 成功のコツ
通院時のサポートをスムーズにするために、ヘルパーに対して、かかりつけ医の場所、通院時間、必要な介助の具体的な手順(例:車いすの畳み方、排泄のタイミング)を、事前に書面で詳しく伝えておきましょう。
自治体独自の通院サポート(助成制度)
介護保険サービスとは別に、多くの市町村が独自の通院サポートを提供しています。これは、主に経済的な負担を軽減するためのタクシー利用券の交付や、福祉移送サービスの提供です。
特に地方では、病院が遠方に集中していることが多いため、タクシー利用券の助成は非常に有効です。自治体によっては、介護保険サービスでは対応できない時間帯や、対象外となる移動(例:地域内の移動)にも利用できる場合があるため、お住まいの市町村の福祉窓口に確認してみましょう。
障害福祉サービスが担う「社会参加」の移動支援
介護保険が「生活に必要な外出」を主に担うのに対し、障害福祉サービスは、高齢障害者の方の「社会参加」や「余暇活動」を支える移動支援を担う点で、非常に重要な役割を果たします。
移動支援(ガイドヘルプ)の継続的な活用
前述の通り、介護保険には余暇的な外出を個別的に支援するサービスがないため、高齢障害者の方は、引き続き障害福祉の「移動支援(ガイドヘルプ)」を利用できます。これは、通院や生活必需品の買い物以外の、以下の活動に活用できます。
- 趣味の活動(例:美術館、習い事、趣味の集まりへの参加)。
- 友人や親戚との交流(例:自宅訪問、食事会への参加)。
- 社会貢献活動(例:ボランティア活動への参加)。
これにより、加齢や障害によって自宅に閉じこもりがちになるのを防ぎ、社会との繋がりを維持することができます。
「65歳になって介護保険に切り替わった時、趣味の陶芸教室に行けなくなるかと心配しました。でも、移動支援が使えると聞いて、週に一度の外出を楽しみにしています。社会と繋がっていると感じられるのが嬉しいです。」
— 高齢障害者 Kさんの体験談
重度訪問介護による柔軟な移動支援
重度の障害を持つ高齢障害者の方にとって、介護保険の訪問介護では、細切れのサービス時間や、提供内容の制限により、十分な外出支援が受けられない場合があります。このような場合は、「重度訪問介護」の利用を継続または新規申請することを検討しましょう。
重度訪問介護は、長時間の支援や、移動中の高度な医療的ケア(例:痰の吸引、人工呼吸器の管理)を伴う外出にも対応できます。これにより、旅行や遠方への外出など、介護保険では難しい活動も、安全に実現できる可能性が高まります。
福祉有償運送サービスと移動支援の連携
移動支援のヘルパーは、自家用車でサービスを提供する場合がありますが、これとは別に、NPOなどが運営する「福祉有償運送サービス」の利用も有効です。これは、非営利団体が、要介護者や障害者など、公共交通機関の利用が困難な方を対象に、有償で移送を行うサービスです。
福祉有償運送は、介護保険の通院等乗降介助の利用対象外である余暇的な外出にも利用できることが多く、車いすのまま乗れるリフト付き車両も用意されています。移動支援と福祉有償運送を組み合わせることで、より幅広い移動ニーズに対応できます。
制度をスムーズに連携させるためのステップ
複雑な介護保険と障害福祉の制度を、ご自身の生活に最適に活かすためには、適切な手順を踏むことが大切です。
ステップ1:要介護認定の申請と意見書の確認
65歳を迎え、介護保険サービスの利用を検討する場合、まずはお住まいの市町村の窓口で「要介護認定」の申請を行います。この際、認定調査の担当者に、既存の障害福祉サービスの利用状況と、外出時に必要な障害特有の介助内容を正確に伝えましょう。
特に重要なのが、認定調査後に作成される「主治医の意見書」と「認定調査票」の内容です。これらの書類に、障害の特性や必要な外出支援の記載が漏れていると、適切なサービス支給に繋がりません。必ず、意見書の記載内容を確認しましょう。
ステップ2:ケアマネージャーと相談支援専門員との連携
要介護認定を受けたら、次に介護保険サービスの利用計画を作成するケアマネージャーを選定します。このケアマネージャーと、引き続き障害福祉サービスを担当する相談支援専門員を、早い段階で引き合わせ、三者面談を実施しましょう。
この連携会議の場で、以下のことを明確にします。
- 介護保険で優先的に利用するサービス(例:通院等乗降介助)。
- 障害福祉で利用を継続するサービス(例:移動支援、重度訪問介護)。
- それぞれのサービスで発生する自己負担額と支給上限時間。
この明確な役割分担が、サービスが途切れることなく、過不足なく提供されるための鍵となります。
ステップ3:地域包括支援センターの活用
高齢障害者の方の相談窓口として、地域の地域包括支援センターも非常に有用です。地域包括支援センターは、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員といった専門職が在籍し、介護、医療、福祉の複合的な相談に応じてくれます。
どこに相談すべきか迷った場合や、複数のサービス事業所との調整に困った場合は、まず地域包括支援センターに相談しましょう。地域の社会資源(ボランティア、福祉有償運送など)の情報にも精通しているため、制度外のサポートも見つけやすくなります。
💡 ポイント
多くの自治体で、地域包括支援センターは中学校区ごとに設置されています。自宅から近いセンターを探し、まずは電話で相談してみましょう。専門職が親身になって対応してくれます。
「よくある質問」と相談窓口
高齢障害者の外出・通院支援サービスに関して、よくある質問とその解決策、そして相談窓口をご紹介します。
Q. 65歳未満で、介護保険サービスが必要になった場合はどうなりますか?
A. 40歳から64歳までの特定疾病により要介護状態になった場合も、介護保険のサービスを優先して利用できます。この場合も、高齢障害者と同じく、介護保険でカバーできない移動支援などのサービスは、障害福祉サービスで利用可能です。申請窓口は、お住まいの市町村の介護保険担当課となります。
Q. 介護保険の通院等乗降介助の自己負担はどのくらいですか?
A. 介護保険サービスは、原則として利用料の1割(所得に応じて2割または3割)が自己負担となります。通院等乗降介助の料金は、サービス事業所によって多少異なりますが、1回あたり数百円程度となるのが一般的です。ただし、タクシーの実費運賃部分は全額自己負担となりますので、ご注意ください。
Q. 介護保険の支給量が少ないと感じた場合、どうすれば増やせますか?
A. 要介護認定の支給量が少ないと感じた場合は、以下のステップを踏みましょう。
- 担当のケアマネージャーに相談し、生活状況を改めて伝え、ケアプランの見直しを依頼する。
- 区分変更申請を市町村に行い、改めて要介護度の認定調査を受ける。
- 不足分を障害福祉サービス(移動支援など)で補えないか、相談支援専門員と検討する。
特に、障害福祉サービスとの連携は、支給量を増やすための重要な方法となります。
相談窓口と参考リンク
高齢障害者のサービス利用に関する複雑な調整について迷ったときは、以下の専門窓口へ相談しましょう。
- 市町村の障害福祉担当課: 障害福祉サービス(移動支援、重度訪問介護など)の申請・相談。
- 市町村の介護保険担当課: 要介護認定の申請、介護保険サービス全般の相談。
- 地域包括支援センター: 介護保険と障害福祉サービス双方の制度の概要説明、地域の社会資源の紹介。
これらの専門家と連携することで、最も適切な外出・通院支援を見つけることができます。
まとめ
高齢障害者の外出・通院支援は、介護保険と障害福祉サービスを適切に連携させることが成功の鍵となります。通院や生活に必要な移動は介護保険の訪問介護(通院等乗降介助)を優先し、余暇活動や社会参加は障害福祉の移動支援を継続して利用する、という役割分担を理解することが大切です。
制度の複雑さに直面したら、必ずケアマネージャーと相談支援専門員の連携を依頼し、ご自身のニーズを最大限に反映した利用計画を作成してもらいましょう。適切なサービスを活用することで、高齢期に入っても、安全で活動的な生活を維持することができます。
- ポイント1: 65歳以上は介護保険が優先されるが、余暇の移動は引き続き障害福祉の移動支援を利用できる。
- ポイント2: 訪問介護の通院等乗降介助は、通院を支える最も重要なサービスである。
- ポイント3: ケアマネージャーと相談支援専門員の連携が、複雑な制度を乗りこなすための鍵となる。

藤原 洋平
(ふじわら ようへい)40歳📜 保有資格:
一級建築士、福祉住環境コーディネーター
バリアフリー設計専門の建築士として15年。公共施設や商業施設のユニバーサルデザインに携わってきました。「誰もが使いやすい」施設情報と、バリアフリーの実践的な知識をお届けします。
大学で建築を学び、卒業後は設計事務所に就職。当初は一般的な建築設計をしていましたが、車椅子を使う友人から「段差一つで行けない場所がたくさんある」と聞き、バリアフリー設計の重要性に目覚めました。その後、ユニバーサルデザインを専門とする設計事務所に転職し、学校、図書館、商業施設など、様々な公共建築のバリアフリー化に携わってきました。特に印象深いのは、地域の古い商店街のバリアフリー改修プロジェクト。車椅子の方も、ベビーカーの方も、高齢者も、みんなが安心して買い物できる街になり、「誰にとっても便利」なデザインの素晴らしさを実感しました。記事では、すぐサポの施設データベースを活用しながら、バリアフリー施設の見つけ方、チェックポイント、外出時の工夫など、実際に役立つ情報を建築の専門家の視点で発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
車椅子を使う友人から「段差一つで行けない場所がたくさんある」と聞き、バリアフリー設計の重要性に目覚めました。
✨ 印象に残っている出来事
古い商店街のバリアフリー改修で、誰もが安心して買い物できる街を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
建築の専門家の視点で、実際に役立つバリアフリー情報を発信します。
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街歩き、建築巡り
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