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学校生活でつまずきやすいポイントと対処ガイド

📖 約25✍️ 鈴木 美咲
学校生活でつまずきやすいポイントと対処ガイド
学校生活で障害のある子どもが「つまずく」ポイントは、特性と環境のミスマッチが原因です。主なつまずきは、学習・認知(板書や手順理解の困難)、集団行動・ルール(暗黙の了解への適応難)、環境・感覚(騒音や刺激による過負荷)、生活スキル・体調管理(忘れ物や自己管理の困難)の4点に分類されます。対処には、学習情報の視覚化、役割の明確化、ノイズキャンセリングヘッドホンの許可、避難場所の確保といった合理的配慮が必要です。連携成功の鍵は、保護者による詳細な情報開示、個別教育支援計画(IEP)の積極的活用、そして支援機関などの第三者の専門家を交えた協力体制の構築にあります。

障害のあるお子さんを持つご家族にとって、学校生活は希望と同時に、様々な不安や課題がつきまとう場でもあります。集団生活の中で、お子さんが「つまずく」ポイントは、家庭での生活とは異なり、多岐にわたります。

学校で生じる「つまずき」は、学力や意欲の問題として捉えられがちですが、実際には、障害特性と学校の環境・仕組みとのミスマッチによって引き起こされるケースがほとんどです。このミスマッチを理解し、適切な対処法を講じることで、お子さんの学校生活は格段に安定し、本来持つ力を発揮できるようになります。

この記事では、発達障害(ADHD、ASD)や精神疾患、身体障害など、様々な特性を持つ子どもたちが学校生活で直面しやすい具体的な「つまずきポイント」を分類し、それらに対する家庭、学校、支援機関が連携して行うべき具体的な対処法(合理的配慮)を、詳細なガイドとしてご紹介します。

この情報が、お子さんの「なぜうまくいかないんだろう」という疑問を解きほぐし、ご家族が学校側と建設的な話し合いを進めるための羅針盤となることを願っています。


学校生活でつまずきやすい4つの主要なポイント

子どものつまずきは、大きく分けて以下の4つの領域に分類されます。それぞれの領域で、障害特性がどのように影響しているかを理解することが、対処の第一歩です。

ポイント1:学習・認知のつまずき(「できる」が発揮できない)

これは、単に「勉強ができない」のではなく、「能力はあるのに、環境によって発揮できない」というケースが多く含まれます。発達障害(特に学習障害やADHD)のあるお子さんに多く見られます。

  • 具体的な症状:
    • 板書や先生の説明に集中できず、ノートを取れない。
    • 宿題や課題の「意図」や「手順」が理解できず、手が進まない。
    • テストの形式(マークシート、記述式など)によって、点数が大きく変動する。
  • 特性との関連:情報処理速度の遅れ、注意の偏り、ワーキングメモリ(作業記憶)の容量不足などが影響しています。

ポイント2:集団行動・ルールのつまずき(暗黙の了解への適応)

学校は、家庭とは異なる独自の「暗黙のルール」「集団行動の規範」が存在する場所です。ASD(自閉スペクトラム症)など、社会性の発達に特性を持つお子さんにとって、最も困難な領域の一つです。

  • 具体的な症状:
    • 体育や音楽などの一斉指示が理解できず、行動が遅れる。
    • 給食や掃除の班活動で、自分の役割が明確でないと混乱する。
    • 友人間の「空気」や「冗談」が理解できず、トラブルになりやすい。
  • 特性との関連:非言語的コミュニケーション(表情、ジェスチャーなど)の読み取りの難しさ、ルールの曖昧さに対する不安などが影響します。

ポイント3:環境・感覚のつまずき(疲労と過負荷)

教室の光、音、におい、座っている椅子の感触など、感覚情報への過敏さが原因で、学校にいること自体が強烈なストレスとなる場合があります。これは、特性の有無に関わらず、精神的な疲労に直結します。

  • 具体的な症状:
    • 教室の蛍光灯の音やざわつきで、極度にイライラする(聴覚過敏)。
    • 制服の素材や体操服のタグが気になり、授業に集中できない(触覚過敏)。
    • お昼休みや体育館などの人が密集する場所に強い不安を感じ、嘔吐や腹痛などの身体症状が出る。
  • 特性との関連:感覚統合の偏り、不安障害や広場恐怖などの併発が影響します。

ポイント4:生活スキル・体調管理のつまずき(自立の困難さ)

自己管理や身の回りのことを行うスキルは、障害特性によって習得のスピードや方法が異なります。特に知的障害や身体障害を持つお子さんに、適切な支援が必要です。

  • 具体的な症状:
    • 時間割や持ち物を自分で管理できず、忘れ物が多い。
    • 薬の服用や体調の変化を、先生に適切に伝えられない。
    • 給食の準備や後片付け、清掃作業など、一連の手順が必要な行動で手間取る。
  • 特性との関連:段取りを立てる実行機能の弱さ、身体的な困難さ、記憶力の弱さなどが影響します。

💡 つまずき=SOSのサイン

子どものつまずきは、「その環境が、今の自分には合っていない」というSOSのサインです。決して「努力不足」と捉えず、環境や支援のミスマッチを疑いましょう。


つまずきへの具体的な「対処ガイド」(合理的配慮の具体例)

つまずきポイントを理解したら、次に学校側に求める、あるいは家庭で準備する具体的な対処法を見ていきましょう。これらは、文部科学省が推奨する「合理的配慮」の具体例でもあります。

対処ガイド1:学習・認知のつまずきへの配慮

配慮の目標 具体的な支援内容 連携すべき主体
情報の理解促進 板書を写真に撮ることを許可する(視覚補助)。宿題の指示を「やることリスト」として視覚化して渡す。 担任、特別支援教育コーディネーター
集中力の維持 授業中に座席を最前列または刺激の少ない窓際から離れた場所に配置する。集中が切れたら、5分間の簡単な身体活動(席を立つ、窓の外を見るなど)を許可する。 担任、カウンセラー
評価方法の柔軟化 テストの文字サイズを拡大する。マークシートではなく、口頭での回答別室での受験を許可する(特にパニックを起こしやすい場合)。 特別支援教育コーディネーター

対処ガイド2:集団行動・ルールのつまずきへの配慮

配慮の目標 具体的な支援内容 連携すべき主体
ルールの明確化 「暗黙のルール」を言語化・視覚化したマニュアルを作成し、事前に伝達する(例:「休憩時間の遊び方ガイド」)。 担任、スクールソーシャルワーカー
役割の固定化 班活動や係活動で、役割を明確に固定し、手順も視覚化する(例:掃除当番は「掃く人」「集める人」など)。曖昧な役割は避ける。 担任
クールダウンの機会 感情が高ぶった際に、保健室や相談室などの「クールダウンスペース」への移動を許可する。移動は本人の意思を尊重する。 担任、養護教諭

対処ガイド3:環境・感覚のつまずきへの配慮

配慮の目標 具体的な支援内容 連携すべき主体
感覚刺激の調整 騒音が気になる場合は、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用を許可する。光が気になる場合は、窓際の席を避け、つば付き帽子の着用を許可する。 担任、養護教諭
触覚過敏の対策 制服の素材が合わない場合、肌着の種類や着用方法について柔軟な対応(タグを切る、肌触りの良いインナーの着用など)を認める。 担任、保護者
避難場所の確保 体育館などの集団行動の前に、一人の時間(避難場所)を確保し、集団に入る前に精神的な準備をできるようにする。 担任、養護教諭

⚠️ 合理的配慮の求め方

合理的配慮は、「学校の負担になりすぎない範囲で、本人の教育機会を確保するために必要な変更・調整」を意味します。要望する際は、必ず「なぜその配慮が必要か(障害特性との関連)」を明確に伝え、学校側と協力的な態度で話し合いましょう。


親と学校との連携を成功させるための3つの視点

最も重要なのは、家庭と学校が対立するのではなく、「子どもの最善の利益」のために協力体制を築くことです。

視点1:「情報開示」と「アセスメント」の徹底

保護者は、お子さんの特性や家庭での様子について、詳細かつ具体的な情報を学校に開示することが不可欠です。

  • 提供すべき情報:「どういう状況でパニックになるか」「家庭ではどのような方法で落ち着いているか」「褒められた時に伸びる傾向があるか」など、具体的なエピソードをまとめた「取扱説明書(トリセツ)」を学校と共有しましょう。
  • 学校側の役割:学校側は、特別支援教育コーディネーターを中心に、つまずきの原因を冷静に分析する「アセスメント」を定期的に行い、情報提供を待つだけでなく、積極的に情報を収集すべきです。

視点2:個別教育支援計画(IEP)の積極的活用

個別教育支援計画(IEP)は、障害のある児童生徒に対して、教育的な目標や支援内容を定める重要な文書です。この計画を「生きた文書」として活用することが、連携の鍵となります。

  • 保護者の役割:IEP作成会議に積極的に参加し、家庭での目標と学校での目標が一致しているかを確認し、具体的な配慮内容を計画に明記するよう求めましょう。
  • 評価と見直し:計画は一度作ったら終わりではなく、学期ごとなど、定期的に「効果があったか」「次のステップは何か」を見直す機会を設けるべきです。

視点3:支援機関を「第三者の専門家」として巻き込む

学校と保護者だけの話し合いが膠着状態に陥った場合、地域の相談支援専門員や児童発達支援・放課後等デイサービスのスタッフなどの第三者の専門家に、学校との会議に参加してもらいましょう。

  • 専門家は、学校に対して「教育的な見地から見た合理的配慮の必要性」を客観的に説明することができ、学校側の理解と行動を促すことができます。

これは、対立のためではなく、専門的な知見に基づいた協力体制を築くための、建設的な一歩です。


まとめ

学校生活でつまずきやすいポイントは、学習・認知、集団行動・ルール、環境・感覚、生活スキル・体調管理の4つの領域にわたります。これらは、お子さんの特性と学校の環境とのミスマッチによって引き起こされるSOSのサインです。

  • 対処法は、情報の視覚化、役割の明確化、感覚刺激の調整、非常時の避難場所の確保といった、具体的な合理的配慮を計画的に実施することです。
  • 連携を成功させる鍵は、保護者による詳細な情報開示と、学校によるアセスメントの徹底、そして個別教育支援計画(IEP)の積極的な見直しにあります。

学校は、お子さんが社会性を身につけ、自己肯定感を育むための重要な学びの場です。家庭、学校、支援機関が手を取り合い、お子さん一人ひとりに合った「安全で安心な学びの環境」を実現していきましょう。

✅ 次のアクション

お子さんの学校でのつまずきを一つ選び、「そのつまずきは、4つのどのポイントに該当するか」を特定してみてください。その上で、この記事の対処ガイドから「試してみたい具体的な配慮」を一つ選び、次回の学校との面談で提案してみましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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