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障害者の金銭トラブルを防ぐための基本知識

📖 約77✍️ 金子 匠
障害者の金銭トラブルを防ぐための基本知識
障害のある方が直面しやすい金銭トラブル(詐欺、高額課金、知人からの搾取など)の実態を詳しく紹介し、それを防ぐための実践的な知識と対策を解説したガイドです。日常でできる「現金管理の工夫」や「お断りの練習」から、万が一の際の「クーリング・オフ」や「消費者ホットライン」の活用術、さらには資産を守るための公的な「日常生活自立支援事業」や「成年後見制度」の仕組みまでを網羅しています。本人、家族、支援者がそれぞれの立場からできるサポートのポイントを提示し、経済的な自立と安心を両立させるための具体的なアクションを提案します。

大切な資産を守るために:障害者の金銭トラブルを防ぐ知識と備え

「自分一人でお金の管理をするのが不安」「知らない間に高額な契約を結んでしまわないか心配」といった悩みをお持ちではありませんか。障害を抱えながら生活する中で、お金に関する問題は生活の基盤を揺るがす大きな不安要素になりがちです。特に知的障害や精神障害、発達障害のある方は、その特性ゆえに悪質な勧誘の標的になったり、衝動的な支出を抑えられなかったりすることがあります。

しかし、お金の問題は正しい知識を持ち、周囲のサポートや公的な制度を賢く利用することで、未然に防ぐことが可能です。この記事では、よくある金銭トラブルの具体例から、それらを防ぐための実践的な工夫、そして万が一の時に頼れる権利擁護の仕組みまでを詳しく解説します。

この記事を読み終える頃には、お金に対する不安が安心へと変わり、自分らしい自立した生活を送るための具体的な一歩が見えてくるはずです。大切な資産を守り、穏やかな毎日を過ごすための知恵を一緒に学んでいきましょう。


身近に潜む金銭トラブルの現状と具体例

悪質な勧誘や詐欺のターゲットに

障害のある方が直面しやすいトラブルの筆頭に、悪質な勧誘や詐欺があります。「あなただけ特別に」「今日契約すれば安くなる」といった言葉巧みな誘いに、断り切れず応じてしまうケースが後を絶ちません。断ることへの苦手意識や、相手を信じやすい特性が悪用されてしまうのです。

例えば、路上でのキャッチセールスや、自宅を突然訪問してくる点検商法などが挙げられます。「屋根が壊れているから今すぐ直さないと危険だ」と不安を煽られ、必要のない高額なリフォーム契約を結ばされてしまう実例も報告されています。これらは本人の判断能力の隙を突いた、非常に卑劣な行為です。

また、近年ではSNSを通じた「投資詐欺」や「副業詐欺」も急増しています。「スマホ一台で月収50万円」といった広告に惹かれ、初期費用として消費者金融から借金をさせられるケースもあります。一度支払ってしまうと取り戻すのは非常に困難であるため、入り口で食い止める知識が何より重要です。

オンラインゲームやSNSでの高額課金

スマートフォンの普及に伴い、オンラインゲームの課金トラブルも深刻化しています。ゲーム内での承認欲求や、ガチャを回す際のギャンブル的な高揚感に抗えず、親のクレジットカードを勝手に使ったり、自分の給料や年金をすべてつぎ込んだりしてしまう事例があります。これは衝動性のコントロールが難しい発達障害のある方に多く見られる傾向です。

課金画面では「10,000円」という数字がただのデータに見えてしまい、現金を使っている実感が希薄になりがちです。気がついた時には数十万円の請求が届き、生活費が底を突いてしまうという事態に陥ります。こうしたトラブルは、単なる「遊びすぎ」ではなく、脳の特性による依存状態に近い場合もあります。

また、SNSでの「推し活」による過度な投げ銭なども同様です。相手に喜んでもらいたい、応援したいという純粋な気持ちが、いつの間にか家計を圧迫するほどの支出に繋がってしまうことがあります。デジタルの世界では、お金の「重み」が見えにくいというリスクを常に意識しておく必要があります。

知人との金銭貸借や搾取の問題

最も心が痛むトラブルの一つが、友人や知人との間に起こる金銭の貸し借りです。「困っているから助けてほしい」と言われ、断れずに現金を渡してしまう、あるいは自分の名前でローンを組まされてしまうといったケースです。これは、良好な人間関係を維持したいという願いを逆手に取られた、実質的な搾取であることも少なくありません。

障害者雇用の現場や福祉施設の利用者同士でも、こうした問題が発生することがあります。「貸したはずなのに返ってこない」「お金を渡さないと仲間外れにされる」といった状況は、心理的な虐待や経済的虐待にも繋がります。お金のやり取りが絡むと、対等な関係性は容易に崩れてしまいます。

特に、知的障害のある方が「パシリ」のように使われ、コンビニで買い物をさせられ続けるといったケースも散見されます。これらは周囲が気づきにくい場所で起こるため、本人が「何かおかしい」と感じた時にすぐに相談できる環境作りが欠かせません。お金を守ることは、自分自身の尊厳を守ることでもあるのです。

⚠️ 注意

「お金を貸して」と言ってくる人は、本当の意味での友人ではありません。はっきりと断るか、その場を離れて周囲に相談することを習慣づけましょう。


日常でできるトラブル予防の工夫

現金の持ち歩きと管理のルール化

衝動買いを防ぐための最もシンプルで強力な方法は、持ち歩く現金の額を制限することです。財布に必要以上の現金が入っていると、つい余計なものを買ってしまいがちです。「一日に使う分だけ」を財布に入れ、それ以外は持ち歩かないというルールを徹底しましょう。

例えば、一週間分の食費や日用品費をあらかじめ封筒に分けて管理する「封筒管理法」は非常に有効です。月曜日の朝にその週の分だけを財布に移し、金曜日まで持たせるという練習を繰り返します。残高が目に見える形で減っていくため、計画性が身につきやすくなります。

また、大きな買い物をする際には「一晩寝てから決める」というルールも効果的です。お店で欲しいと思った瞬間に、スマホのリマインダーに「明日もう一度考える」と登録します。翌日になれば冷静さを取り戻し、「やっぱり必要なかった」と思えることが多々あります。感情と行動の間に「時間」というクッションを置く工夫です。

キャッシュレス決済との付き合い方

クレジットカードは便利ですが、障害特性によっては「支出のコントロール」を困難にする原因にもなります。可能であれば、銀行口座の残高以上に使えないデビットカードや、事前に入金した分だけ使えるプリペイド式のカードへの切り替えを検討しましょう。

スマホ決済を利用する場合は、オートチャージ設定をオフにすることが重要です。自分でチャージする手間を作ることで、お金を使っているという意識を呼び起こせます。また、カードの利用上限額を可能な限り低く設定しておくことも、万が一の被害を最小限に抑えるための知恵です。

家計簿アプリを活用して、使った金額をリアルタイムで視覚化するのも良い方法です。銀行口座と連携させれば、自動でグラフ化してくれるため、管理の手間を大幅に削減できます。数字で見るよりもグラフで「見える化」されることで、使いすぎを直感的に察知できるようになります。

勧誘に対する「お断り」の練習

悪質な勧誘を断るためには、「断りのフレーズ」をあらかじめ決めておき、練習しておくことが役立ちます。その場で理由を考えて説明しようとすると、相手のペースに巻き込まれてしまいます。理由は言わずに、同じ言葉を繰り返す「壊れたレコード作戦」が有効です。

  • 「必要ありません。お帰りください」
  • 「自分一人では決められません。家族に相談します」
  • 「興味がないので、結構です」
  • (電話の場合)「お断りします」と言って、すぐに切る。

これらを家族や支援員とロールプレイング(練習)してみてください。声に出して練習することで、いざという時にスムーズに言葉が出てくるようになります。また、玄関には「セールス・勧誘お断り」のステッカーを貼っておくのも、心理的な防波堤になります。

もし強引に契約させられそうになったら、「今は決められません」と言って一旦その場を離れることが鉄則です。相手がどれだけ親切に見えても、お金が絡む話であれば警戒心を持つことが自分を守ることに繋がります。断ることは、相手を否定することではなく、自分の生活を守るための正当な権利です。

💡 ポイント

トラブルに遭いやすい時間帯や場所を知っておくことも予防になります。疲れている時や一人で寂しいと感じている時は、判断力が鈍りやすいため、特に注意が必要です。


万が一トラブルに遭ってしまったら

クーリング・オフ制度を活用する

もし不当な契約をしてしまったとしても、諦めてはいけません。消費者を守るための強力な味方が「クーリング・オフ」制度です。これは、一定の期間内であれば、理由を問わず無条件で契約を解除できる仕組みです。訪問販売や電話勧誘販売の場合、契約書を受け取ってから通常「8日間」以内であれば適用されます。

クーリング・オフは、書面(ハガキなど)または電磁的記録(メールなど)で行う必要があります。手続きが不安な場合は、すぐに最寄りの消費生活センターに相談してください。スタッフが書き方や送付方法を丁寧に指導してくれます。期間を過ぎてしまうと解除が難しくなるため、一日でも早い行動が大切です。

ただし、自分からお店に行って買った場合や、ネットショッピングなど、クーリング・オフが適用されないケースもあります。それでも、契約の際に嘘の説明があったり、脅されたりした場合には、消費者契約法に基づいて取り消せる可能性があります。まずは「おかしい」と思った時点で、専門家に相談することが解決への近道です。

消費者ホットライン「188」へ電話する

トラブルに遭った際、どこに相談すればいいか迷ったら、全国共通の電話番号「188(いやや!)」へ電話しましょう。これは「消費者ホットライン」といって、お住まいの地域の消費生活センターや消費生活相談窓口に繋いでくれる番号です。

相談員は、商品やサービスのトラブルに関する専門家です。障害があることを伝えた上で相談すれば、本人の状況に合わせた解決策を一緒に考えてくれます。必要に応じて、業者との交渉方法を助言してくれたり、他の専門機関を紹介してくれたりすることもあります。

相談する際は、以下のものを手元に用意しておくとスムーズです。

  • 契約書や領収書
  • 相手の名刺やパンフレット
  • やり取りの経緯をメモしたもの(いつ、どこで、何を言われたか)

こうした書類を保管しておく習慣をつけることも、トラブル対応の重要なステップです。たとえ自分が悪いと感じていても、相談員はあなたの味方です。怒られたり責められたりすることはありませんので、勇気を出してダイヤルしてみてください。

警察や弁護士、法テラスの利用

詐欺の被害に遭ったことが明らかな場合や、脅迫を受けている場合は、警察の相談専用電話「#9110」に相談しましょう。事件になる前の段階でも、どのように対処すべきかアドバイスをもらえます。緊急性が高い場合は、迷わず110番通報をしてください。

また、法的なトラブルの解決を求めるなら、「法テラス(日本司法支援センター)」の利用も検討しましょう。法テラスでは、経済的に余裕がない方向けに、無料の法律相談や弁護士費用の立て替え制度を行っています。障害のある方にとって、法律の壁は高く感じられるかもしれませんが、こうした制度がそのハードルを下げてくれます。

実例として、架空請求のハガキに驚いてお金を振り込んでしまったBさんは、法テラスを通じて弁護士に依頼しました。結果として、振り込み先の口座を凍結させ、被害金の一部を取り戻すことができました。専門職が介入することで、相手業者に対する抑止力も働きます。一人で悩まず、プロの力を借りることが最善の策です。

✅ 成功のコツ

トラブルを隠そうとすると被害が拡大しがちです。家族や支援員に「ちょっと変なことがあったんだけど」と、小さなことでも早めに共有する習慣を作りましょう。


権利を守るための公的な支援制度

日常生活自立支援事業の活用

自分でお金を管理することに不安があるけれど、完全に人に任せるのは嫌だという方に最適なのが、「日常生活自立支援事業」(地域福祉権利擁護事業)です。これは、都道府県や指定都市の社会福祉協議会が実施しているサービスです。本人の判断能力が十分でない場合に、日常生活での金銭管理や福祉サービスの利用手続きをサポートしてくれます。

具体的には、以下のような支援を受けられます。

  • 公共料金や家賃、福祉サービスの利用料の支払い代行。
  • 預貯金の出し入れの手伝い。
  • 年金証書や印鑑、通帳などの大切な書類の預かり。

この事業の素晴らしい点は、あくまで「本人の意思」を尊重しながら、必要な部分だけを補ってくれる点です。定期的に生活支援員が訪問し、一緒にお金の使い方を考えたり、生活の困りごとの相談に乗ったりしてくれます。利用料はかかりますが、所得が低い方は助成制度がある場合もあります。「守られている」という安心感の中で、自立した生活を継続するための強力なサポーターとなります。

成年後見制度による法的な保護

判断能力が著しく低下しており、多額の財産管理や重要な契約が困難な場合は、「成年後見制度」の利用を検討しましょう。これは家庭裁判所によって選ばれた後見人等が、本人に代わって財産を管理したり、不利益な契約を取り消したりする制度です。法的な権限が強いため、悪徳商法の被害から本人を強力に守ることができます。

成年後見制度には、すでに判断能力が不十分な場合に利用する「法定後見」と、元気なうちに将来に備えて契約しておく「任意後見」の二種類があります。特に知的障害のあるお子さんを持つ親御さんにとっては、「自分たちが亡くなった後の子供のお金の管理」を託すための有力な選択肢となります。

ただし、成年後見制度を利用すると、本人の決定権が一部制限されたり、一定の報酬(費用)が発生したりするという側面もあります。また、一度始めたら原則として途中でやめることはできません。そのため、検討にあたっては「地域包括支援センター」や「相談支援事業所」などで専門家のアドバイスを受け、本人の生活に本当に必要かどうかを見極めることが大切です。

福祉信託や民事信託の仕組み

最近では、「信託」という仕組みを使って障害のある方の資産を守る方法も注目されています。これは、信頼できる家族や信託銀行に資産を預け、本人の生活や介護のために計画的にお金を使ってもらう契約です。例えば、「毎月決まった額だけを本人に渡す」といった設定ができるため、一気に使い切ってしまうリスクを防げます。

「特定贈与信託」という制度を利用すれば、重度の障害がある方に対して、一定額までの贈与税が非課税になる優遇措置もあります。これは、親から子へ財産を引き継ぎたい場合に非常に有効な手段です。銀行や生命保険会社が障害者専用の信託商品を提供していることもあります。

これらの制度は複雑に感じるかもしれませんが、すべては「障害のある方が、誰からも搾取されず、お金の不安なく一生を過ごせるように」という願いから作られたものです。どの制度が自分や家族の形に合っているか、ソーシャルワーカーや司法書士などの専門家と一緒に探してみましょう。備えがあることが、未来への大きな安心感に繋がります。

制度・事業名 主なサポート内容 実施主体・相談窓口
日常生活自立支援事業 日常的な金銭管理・書類預かり 市区町村の社会福祉協議会
成年後見制度 包括的な財産管理・契約の代理 家庭裁判所・権利擁護センター
特定贈与信託 資産の計画的な給付と税制優遇 信託銀行
日常生活用具給付 金銭管理を助けるグッズ等の給付 市区町村の障害福祉窓口

💡 ポイント

公的な支援制度は、組み合わせて使うことができます。例えば「日常生活自立支援事業」からスタートし、必要性が高まったら「成年後見制度」へ移行するという段階的な活用も一般的です。


家族や支援者ができるサポートのポイント

本人の「強み」と「弱み」を正しく把握する

金銭トラブルを防ぐための支援において、最も大切なのは本人の特性を深く理解することです。数字の計算が苦手なのか、人からの頼みを断るのが苦手なのか、あるいは特定の嗜好品に対して衝動が抑えられないのか。人によって「つまずきポイント」は全く異なります。そこを否定するのではなく、客観的に把握することから始めましょう。

例えば、「1,000円札はわかるけれど、3,000円と5,000円の価値の差が曖昧」という方には、具体的な「物の量」で説明するのが効果的です。「その買い物は、好きなお弁当5個分だよ」と伝えることで、価値の実感が湧きやすくなります。抽象的な言葉ではなく、本人の生活感覚に根ざした言葉で対話することが、金銭感覚を養う近道です。

また、過去の失敗を責めすぎないことも重要です。失敗した時、本人が一番ショックを受けているかもしれません。責められると、本人はトラブルを隠すようになってしまい、かえって被害が深刻化します。「一緒に解決しよう」という姿勢を示し、失敗を次の予防策を考えるための「データ」として捉える前向きなコミュニケーションを心がけましょう。

定期的な家計の振り返りとコミュニケーション

支援者や家族ができる具体的な行動として、定期的な「家計の振り返り会」をお勧めします。週に一度、あるいは一ヶ月に一度、一緒にお小遣い帳や通帳を確認し、「今月はこれが楽しかったね」「ここはもう少し節約できるかな」と明るく話し合います。これは監視ではなく、健康診断のように現在の状態をチェックする作業です。

この振り返りを通じて、不審な出費がないか、不自然な増減がないかを早期に発見できます。もし、本人に言えないような秘密の支出がある様子なら、優しく理由を聞いてみてください。「誰かに脅されていないか」「寂しさを買い物で埋めていないか」といった背景が見えてくることがあります。金銭トラブルの影には、しばしば孤独やストレスが隠れています。

また、良いお金の使い方ができた時は、目いっぱい褒めてください。「計画的にお金を使って欲しかったものが買えたね」「今月は予算内に収まったね」という成功体験が、本人の自己肯定感を高め、自分のお金を自分で守ろうとする意欲を育てます。ポジティブな関わりが、最大の防御策となるのです。

支援ネットワークを構築しておく

金銭管理のサポートを家族だけで抱え込むのは限界があります。特に「親なき後」を見据えると、早い段階から地域の支援ネットワークに本人を繋いでおくことが重要です。相談支援専門員、ヘルパー、就労支援員、主治医など、関わる多職種の間でお金の管理に関する情報を共有しておきましょう。

「この方は勧誘に弱いので、見慣れない人が家に来ていたら教えてください」「最近お金の使い方が荒いので、様子を見てください」といった連携があれば、地域全体で見守ることができます。また、社会福祉協議会の権利擁護担当者など、お金の専門知識を持つ人と顔見知りになっておくだけでも、いざという時の安心感が違います。

家族以外に「お金のことを相談できる人」を本人に作ってあげることも大切です。家族には言いにくいことでも、信頼できる支援員になら話せるという場合もあります。本人の周りに複数の「目」と「耳」がある状態を作っておくこと。それが、悪質な業者や搾取から本人を遠ざける、最も確実なセーフティネットになります。

✅ 成功のコツ

金銭管理をサポートする際は「本人の自己決定」を大切にしましょう。すべてを取り上げるのではなく、本人が自由に使える「遊び金」を一定額確保することで、管理への協力が得られやすくなります。


よくある質問(FAQ)

Q. 借金があることが分かりました。どうすればいいですか?

まずは冷静になり、借金の総額と借入先、利息の状況を正確に把握してください。本人を問い詰める前に、すべての利用明細やカードを確認します。その上で、なるべく早く「弁護士」や「司法書士」などの専門家に相談しましょう。障害があることで判断能力が不十分だったと認められれば、支払いを免れたり、過払い金を取り戻したりできるケースもあります。法テラスや自治体の法律相談などを活用し、自力で返済しようと無理をせず、専門的な手続き(債務整理など)を検討することが解決への最短ルートです。

Q. スマホ課金を止めさせるにはどうすればいいですか?

精神論だけで止めるのは難しいため、物理的な制限とルールの両面からアプローチしましょう。まず、スマホの設定で「アプリ内課金」を制限(ペアレンタルコントロール機能など)します。クレジットカード情報を削除し、プリペイドカードでのチャージ制に変更するのも有効です。同時に、なぜ課金したくなるのかという本人の気持ちに耳を傾けてください。「ゲーム以外に楽しめることがない」「友達に負けたくない」といった理由があるなら、そのニーズを別の形で満たせないか(他の趣味を見つける、コミュニティに参加するなど)を一緒に考え、少しずつゲームへの依存度を下げていく長期的な視点が必要です。

Q. お金を管理したがると本人が怒ります。どう説得すればいいですか?

「管理する」という言葉は、本人にとって「自由を奪われる」というネガティブな印象を与えがちです。説得するのではなく、「トラブルからあなたを守るためのチームを作ろう」という提案に変えてみてはいかがでしょうか。「あなたが頑張って稼いだ(あるいは受け取った)大切なお金だから、悪い人に取られないように一緒に工夫したいんだ」と、本人のメリットを強調して伝えましょう。また、すべてを管理するのではなく、一部分(家賃や光熱費などの固定費)だけをサポートに回し、それ以外は本人の自由に任せるなど、段階的に信頼関係を築いていくことが、納得感を得るためのポイントです。

Q. 障害者年金が搾取されている疑いがあります。どこに相談すればいいですか?

家族や知人による年金の搾取は、立派な「経済的虐待」にあたります。まずは、お住まいの市区町村にある「障害者虐待防止センター」または障害福祉窓口に相談してください。匿名での相談も可能です。調査が行われ、事実と認められれば、加害者からの分離や年金の振込口座の変更、成年後見制度の活用などの具体的な対策が取られます。本人が被害に気づいていない、あるいは言えない場合も多いため、周囲の気づきと早めの通報が、本人の生活を守る唯一の手段となります。


まとめ

お金は生活を豊かにするための道具ですが、一歩間違えると大きなトラブルの種にもなります。障害のある方が安心して暮らしていくためのポイントを、最後にもう一度整理しましょう。

  • 特性を知る:お金の「重み」や「価値」の感じ方には個人差があることを理解する。
  • 仕組みで防ぐ:現金の制限、デビットカードの利用、クーリング・オフなど、具体的な対策を持つ。
  • 公的支援を頼る:日常生活自立支援事業や成年後見制度など、権利を守る制度を積極的に活用する。
  • 繋がっておく:一人で抱え込まず、家族、支援員、専門家と情報を共有し、チームで守る。

金銭トラブルを防ぐことは、決して本人の自由を奪うことではありません。むしろ、将来にわたって自立した生活を送り続けるための、最も大切な「基盤作り」です。今日からできる小さな工夫を一つずつ積み重ねていきましょう。

次のアクションとして、まずは一ヶ月分の家計の流れ(収入と、必ず払うお金)を紙に書き出して、現在の「お金の健康状態」を確認することから始めてみませんか。今の状況を客観的に見ることで、どこをサポートすればより安心できるかが明確になってくるはずです。あなたの未来を守るための一歩を、心から応援しています。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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