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障害者向け住宅改修助成の申請方法と注意点

📖 約57✍️ 伊藤 真由美
障害者向け住宅改修助成の申請方法と注意点
障害のある方やその家族に向けて、住宅改修助成制度の活用方法を詳しく解説した記事です。介護保険と障害者総合支援法の違いや、手すり設置・段差解消といった具体的な改修ポイント、申請時の最大の注意点である「事前申請の必須ルール」について網羅しています。また、賃貸住宅での注意点や、ケアマネジャー、専門業者との連携の重要性など、失敗しないための実践的なコツを紹介。住環境を整えることで自立した生活を守り、将来の不安を解消するための具体的なステップを提示します。

障害者向け住宅改修助成の基本と安心の住まいづくり

毎日の生活を送る場所である「家」は、本来であれば最もリラックスできる安心な空間であるはずです。しかし、身体の状況が変化したり、もともとの間取りに不便さを感じていたりすると、段差や狭い通路が大きなハードルになってしまうことがあります。

「お風呂への出入りが怖くなった」「玄関の段差で転びそうになる」といったお悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。住宅改修は、そうした不安を解消し、自立した生活を守るための大切なステップです。

この記事では、住宅改修に関する助成金の種類や具体的な申請方法、失敗しないための注意点を詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、補助金を賢く活用し、自分らしく快適に暮らせる住まいづくりの道筋が見えているはずです。


住宅改修助成制度の全体像を知る

主な助成制度の種類

障害のある方が利用できる住宅改修の助成制度には、大きく分けて「介護保険」「障害者総合支援法」の2つのルートがあります。これらは重複して利用できる場合や、優先順位が決まっている場合があるため、まずは自分の対象を確認することが重要です。

基本的には、65歳以上の方や特定の疾病がある方は介護保険が優先されます。一方で、それ以外の方は障害者総合支援法に基づく「日常生活用具給付等事業」の中に含まれる住宅改修費の助成を利用することになります。自治体独自の「住宅設備改修費給付」という名称で行われていることも多いです。

また、これらとは別に各市区町村が独自に上乗せで行っている助成金や、バリアフリーリフォームに対する所得税の控除、固定資産税の減額といった税制面の優遇措置も存在します。これらを組み合わせることで、自己負担を大幅に抑えることが可能です。

助成対象となる工事の範囲

助成の対象となる工事は、厚生労働省のガイドラインによってある程度決められています。一般的には、生活の安全性と自立を促すための工事が認められます。例えば、手すりの取り付けや段差の解消などは代表的な項目です。

具体的には、和式便器から洋式便器への交換、開き戸から引き戸への変更、滑りにくい床材への貼り替えなどが含まれます。一方で、単なる「老朽化に伴うリフォーム」や、部屋の増築などは助成の対象外となるため注意が必要です。

また、支給される限度額は原則として20万円(自己負担を除く)に設定されていることが多いですが、自治体によっては独自の基準で50万円〜100万円程度の高額な助成を用意しているケースもあります。まずはお住まいの地域のパンフレットを取り寄せてみましょう。

所得制限と自己負担割合

助成制度を利用する場合、避けて通れないのが「所得制限」と「自己負担」の確認です。障害者総合支援法に基づく制度では、世帯の所得に応じて自己負担額が決定されます。多くの場合は1割負担となりますが、生活保護受給世帯や市民税非課税世帯は自己負担が0円になることもあります。

一方で、世帯収入が一定基準を超えている場合、助成そのものが受けられない可能性もあります。この「世帯」の範囲は、基本的には本人と配偶者を指す場合が多いですが、自治体によって判断が異なるため、窓口での確認が欠かせません。

💡 ポイント

助成金は工事が完了した後に支払われる「償還払い」が基本ですが、最初から自己負担分だけを支払えば済む「受領委任払い」に対応している自治体も増えています。


申請から工事完了までの具体的なステップ

ケアマネジャーや相談員への相談

住宅改修を検討し始めたら、まずは計画を立てるパートナーを見つけましょう。介護保険を利用する場合はケアマネジャー、障害者制度を利用する場合は相談支援専門員がその役割を担います。

彼らは生活の困りごとをヒアリングし、どのような改修が必要かを一緒に考えてくれます。また、申請に必要な「理由書」を作成する役割も担っているため、早い段階で相談することがスムーズな進行の鍵となります。相談員がいない場合は、市役所の障害福祉課や地域包括支援センターが窓口となります。

自分一人で「ここを直したい」と考えるよりも、プロの視点を入れることで「実は手すりの位置はここより10cm低いほうが使いやすい」といった具体的なアドバイスをもらえるはずです。リハビリの専門職である理学療法士(PT)や作業療法士(OT)に同行してもらうのも非常に有効です。

業者選びと見積もりの作成

次に、実際に工事を行う業者を選びます。住宅改修は一般的なリフォームとは異なり、障害特性への理解が必要です。できれば「福祉住環境コーディネーター」などの資格を持つスタッフがいる業者や、自治体の登録業者から選ぶのが安心です。

業者が決まったら、現地調査を依頼して見積もりを作ってもらいます。この際、必ず「工事前の写真」を撮影してもらうようにしてください。申請には、改修予定箇所がはっきりとわかる写真と、完成後のイメージがわかる簡単な図面が必須となります。

複数の業者から相見積もりを取ることも大切ですが、単に安いだけでなく、親身に相談に乗ってくれるか、アフターフォローはしっかりしているかを確認しましょう。改修後の生活は長く続くため、信頼関係を築ける業者を選ぶことが成功のコツです。

事前申請と審査のプロセス

住宅改修の助成において、最も注意すべきルールは「工事着工前に申請が必要」であることです。申請を出して自治体の確認を受ける前に工事を始めてしまうと、たとえ内容が適切であっても助成金を受け取ることができません。

申請書類には、申請書のほか、見積書、工事箇所ごとの図面、工事前の写真、そして専門職が作成した理由書などを添付します。これらを役所に提出すると、内容が適切かどうかの審査が行われます。審査期間は通常1〜2週間程度ですが、自治体によっては審査会が開かれるため1ヶ月程度かかることもあります。

自治体から「承認(決定通知)」が届いたら、ようやく工事のスタートです。急いでリフォームしたい気持ちもあるかと思いますが、このプロセスを丁寧に進めることが、確実な助成金の受給につながります。

⚠️ 注意

事前申請を忘れて工事を終えてしまった場合、後から遡って申請することは原則できません。必ず役所の「OK」が出てから着工しましょう。


部位別の改修ポイントと成功のコツ

玄関周りのアプローチと段差

玄関は外出の第一歩となる場所です。車椅子を利用する場合や、足腰に不安がある場合、わずかな段差や傾斜が大きな壁になります。玄関の段差を解消するためにスロープを設置したり、昇降機を導入したりする工事はよく行われる改修の一つです。

また、玄関扉を横にスライドさせる「引き戸」に変更するのも効果的です。開き戸だと、ドアを開ける際に向こう側へ移動しなければならず、姿勢を崩すリスクがありますが、引き戸であれば車椅子のままでもスムーズに開閉が可能になります。

照明の工夫も忘れてはいけません。足元が暗いと段差が見えにくく転倒の原因になります。人感センサーライトを導入することで、暗い時間に帰宅した際もスイッチを探す手間がなく、安全に家の中に入ることができます。こうした細かな工夫が、日々の安心を支えます。

浴室・トイレの安全対策

水回りは家庭内で最も事故が起きやすい場所です。特に浴室は床が滑りやすく、温度差によるヒートショックのリスクもあります。床材を滑りにくい素材に変更し、浴槽のまたぎ高さを低くするための工事は優先度が高いと言えるでしょう。

トイレについては、立ち座りの動作をサポートするL字型の手すり設置や、スペースの拡張が一般的です。車椅子で中まで入る必要がある場合は、入り口を広げて段差をなくし、中で方向転換ができるスペースを確保する計画を立てます。

浴室やトイレの改修で大切なのは、「現在の動作だけでなく、将来の体調変化も見据える」ことです。今は手すり一本で大丈夫でも、将来的に介護が必要になった際、介助者が入るスペースがあるかどうかを確認しておくと、二度手間になるのを防げます。

廊下・室内移動の快適化

家の中の移動をスムーズにするためには、廊下や各部屋の入り口に注目しましょう。古い日本家屋に多い「敷居」の段差は、数センチであってもつまずきの原因になります。これを取り除き、フラットな床にすることで、家全体の回遊性が高まります。

また、廊下への手すり設置は移動を支えるだけでなく、立ち止まって一息つく際の支えにもなります。手すりの太さや材質(木製か樹脂製かなど)は、実際に握り心地を確認して選ぶのがベストです。冬場に冷たくならない素材を選ぶと、触るのが億劫にならず、安全性が保たれます。

床材選びも重要です。車椅子を使用する場合は耐久性が高く傷がつきにくい素材を、歩行が主体の場合は足への衝撃を和らげるクッション性のある素材を選ぶなど、本人の歩き方に合わせた選択が求められます。

✅ 成功のコツ

ショールームへ足を運び、実際に手すりを握ったり、便座に座ってみたりすることをおすすめします。カタログだけではわからない「フィット感」が、使い心地を左右します。


助成金申請で見落としがちな注意点

賃貸住宅や公営住宅の場合

持ち家ではなく賃貸物件にお住まいの場合も、住宅改修の助成は利用可能です。ただし、大きな壁となるのが「大家さんの承諾」です。改修工事を行うには、建物の所有者から工事の許可を得る必要があります。また、退去時に元の状態に戻す「原状回復」の義務についても話し合っておかなければなりません。

公営住宅(市営・県営など)の場合は、自治体の管理規定に基づいた手続きが必要です。独自のルールがあることも多いため、まずは管理窓口に相談しましょう。近年ではバリアフリー化が進んでおり、比較的スムーズに許可が出るケースも増えていますが、事前の書類提出は必須です。

承諾を得る際は、改修によって建物の価値が上がる可能性があることや、安全に長く住み続けたいという意欲を伝えると、理解を得やすくなる場合があります。無理に進めず、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

限度額の使い切りと再申請

多くの住宅改修助成には「限度額」があります。介護保険の場合、原則として20万円までですが、これは一度の工事で使い切る必要はありません。例えば、今回は手すりだけで5万円使い、数年後にお風呂の工事で残りの15万円を使う、といった分割利用も可能です。

また、一度限度額を使い切ったら二度と申請できないわけではありません。「要介護度が3段階以上上がった場合」「転居した場合」には、再度20万円の枠がリセットされて使える仕組みがあります。障害者制度についても、一定期間の経過や身体状況の変化によって再度の利用が認められることがあります。

「一度きりのチャンスだから」と無理に今すぐ必要ない場所まで工事するのではなく、その時々の身体状況に合わせて、必要な分だけ利用していくのが賢い活用法です。常にケアマネジャーや相談員と最新の状態を共有しておきましょう。

工事業者の「指定」や「登録」

自治体によっては、助成金を支給する条件として「市が指定した業者による施工」を義務付けている場合があります。これは施工の質を保ち、トラブルを未然に防ぐための仕組みですが、知り合いの工務店にお願いしたい場合などは注意が必要です。

もし指定業者でない場合は、その業者が新たに登録手続きを行えるかどうかを確認するか、あるいは助成金の対象外として全額自己負担で行うことになってしまいます。見積もりを依頼する前に、必ず自治体のホームページ等で登録業者のリストを確認してください。

また、悪質な業者による高額請求トラブルも報告されています。「今すぐ工事しないと危険だ」と不安を煽ったり、助成金で全額賄えると言って不必要な工事を勧めたりする業者には注意が必要です。公的な窓口で紹介された業者を利用するのが最も安全です。


よくある質問(FAQ)

Q. 自分で買ってきた手すりを取り付けるだけでも助成の対象になりますか?

A. 原則として、材料費だけでなく業者が施工を行うことが条件となる場合がほとんどです。自分で購入してDIYで設置した場合は、助成の対象外となる可能性が高いです。また、置き型の手すりなど「工事を伴わないもの」は住宅改修ではなく「福祉用具の購入やレンタル」の枠組みになるため、まずはケアマネジャー等に確認しましょう。

Q. 申請してから工事が始まるまで、どのくらいかかりますか?

A. 自治体の審査に1〜2週間、そこから業者のスケジュール調整を含めると、相談を開始してから着工まで早くても1ヶ月程度は見ておくのが一般的です。特に冬場の浴室工事などは需要が重なりやすいため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。

Q. 家族が同居していますが、本人以外が使う場所も改修できますか?

A. 住宅改修の目的はあくまで「対象者本人の自立支援・負担軽減」です。そのため、本人が全く使用しない場所や、もっぱら家族の利便性のためだけの工事は認められません。ただし、本人が生活する上で通る動線であれば、家族も共有する場所(リビングや玄関など)の改修はもちろん可能です。

Q. 中古物件を購入して、入居前に改修したい場合はどうなりますか?

A. 基本的に住宅改修助成は「現に居住している住宅」が対象です。しかし、入居が決まっていて、障害者手帳の交付などを受けている場合は、事前申請を行うことで入居に合わせて工事を進められる特例がある自治体も多いです。売買契約書などの証明書類が必要になるため、引っ越し前に早めに窓口へ相談してください。


理想の住まいを実現するために

住宅改修は、単に段差をなくすための「作業」ではありません。そこでの生活がどのように変わるか、どのような笑顔が増えるかを想像しながら進める「希望のプロジェクト」です。これまで諦めていた外出や、不安だった入浴が快適になることで、心にも大きな余裕が生まれます。

また、改修だけでなく、日々の生活を支えるサービス(ヘルパー派遣や訪問リハビリなど)と組み合わせることで、より安全な暮らしが完成します。家というハード面を整え、サポートというソフト面を充実させていくことが、豊かな在宅生活の秘訣です。

制度は複雑に見えますが、あなたを支える専門家が周りに必ずいます。まずは身近な相談窓口へ電話を一本入れるところから始めてみてください。小さな一歩が、将来の大きな安心へとつながっていきます。あなたのこれからの毎日が、より自由で輝かしいものになることを心から願っています。


まとめ

  • 複数の助成制度を正しく理解する:介護保険や障害者制度など、自分に合った制度を窓口で確認しましょう。
  • 必ず工事前に申請を行う:事前申請なしでの着工は助成金が受け取れない最大の原因です。ルールを厳守しましょう。
  • 専門家や信頼できる業者と連携する:ケアマネジャーや福祉住環境コーディネーターの知恵を借り、将来を見据えた計画を立てましょう。
  • 小さな改修が大きな安心を生む:手すり一本からでも生活は変わります。無理のない範囲で、安全な環境づくりを始めましょう。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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