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在宅介護が必要になったら知っておきたい支援制度

📖 約29✍️ 高橋 健一
在宅介護が必要になったら知っておきたい支援制度
在宅介護が必要になったら、障害者総合支援法、介護保険法、医療保険の3つの主要な公的制度を知ることが重要である。障害者総合支援法では、居宅介護(身体・家事援助)や重度訪問介護(医療的ケア対応)、短期入所などが利用でき、主に40歳未満の障害者を支える。介護保険は65歳以上または特定疾病の40歳以上が対象で、訪問介護や訪問看護、デイサービスなどが提供される。在宅医療では訪問診療・訪問看護が鍵となり、これらすべてのサービスを効率的に利用し、介護負担を軽減するためには、ケアマネジャーや相談支援専門員といった専門家と連携し、医療と介護・福祉が連携した包括的な支援体制を構築することが成功の鍵となる。

突然、家族の誰かが病気や怪我、または障害を負い、在宅での介護や支援が必要になったとき、何から手を付けたら良いのか分からず、不安で心細い気持ちになるのは当然のことです。「自宅でどう生活を整えたらいいのか」「家族だけでどこまで負担を負えばいいのか」といった疑問や重圧は計り知れません。

しかし、日本には、障害を持つ方やそのご家族の生活を支えるための公的な支援制度が、医療、介護、福祉の様々な分野にわたって整備されています。これらの制度を理解し、適切に活用することで、介護の負担を軽減し、当事者の方の生活の質(QOL)を高めることが可能になります。

この記事では、在宅介護・在宅支援が必要になった際に最優先で知っておくべき3つの主要な支援制度(医療保険、介護保険、障害者総合支援法)の基本と、それらを効果的に組み合わせるための知識を、具体的な手続きの流れと併せて解説します。これらの知識を武器に、安心できる在宅生活を実現するための一歩を踏み出しましょう。


柱1:生活を支える障害者総合支援法

制度①:障害福祉サービスの土台「居宅介護」

障害者総合支援法は、障害を持つ方が地域で自立した生活を送るために必要なサービスを規定する、最も重要な法律です。その中でも、在宅生活の基盤となるのが「居宅介護(ホームヘルプ)」サービスです。

  • 身体介護食事、排泄、入浴、着替えなど、身体に直接触れて行う介護。これにより、当事者の方の衛生と健康が維持されます。
  • 家事援助掃除、洗濯、調理、買い物など、日常生活に必要な家事の代行。主に介護者の負担軽減に繋がります。
  • 通院等介助医療機関への移動の付き添いと、病院内での必要な介助

居宅介護は、障害の種類や程度、家族構成に応じて、必要な時間数が市町村によって決定されます(これを「支給量」といいます)。

制度②:重度な障害者を支える「重度訪問介護」

居宅介護では対応が難しい、特に重度な障害を持つ方のために用意されているのが「重度訪問介護」です。これは、長時間、包括的な支援を必要とする方を対象としています。

  1. 支援の包括性身体介護、家事援助、外出介助などを、切れ目なく一体的に提供します。例えば、長時間にわたる外出や夜間の見守りも可能です。
  2. 医療的ケア対応喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な場合、研修を受けたヘルパーがこれらの処置を行うことができます。これにより、病院ではなく自宅での療養が可能になります。
  3. 対象者の基準障害支援区分4以上で、かつ重度訪問介護の基準に該当する方など、非常に厳格な基準が設けられています。

重度訪問介護は、人工呼吸器を使用している方や、ALSなどの難病の方の在宅生活を維持する上での最後の砦とも言える重要な制度です。

制度③:一時的な休息のための「短期入所(ショートステイ)」

在宅介護を続けていると、介護者側の心身の疲労が蓄積し、共倒れになるリスクがあります。これを防ぐために活用すべきなのが「短期入所(ショートステイ)」です。

短期入所は、当事者の方が一時的に施設に入所し、入浴、排泄、食事などの介護や支援を受けるサービスです。これにより、介護者は一時的に休息を取ったり、病気や冠婚葬祭などの用事を済ませたりすることができます。利用日数には上限がありますが、介護保険のショートステイと併用するなど、柔軟な活用が可能です。

💡 ポイント

障害者総合支援法のサービスを利用するためには、まず市区町村の障害福祉窓口に申請し、「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。この区分認定が、利用できるサービスと支給量を決める重要なカギとなります。


柱2:高齢者と難病を支える介護保険制度

制度④:介護保険の対象者とサービスの特徴

在宅介護の支援制度として、介護保険法のサービスも非常に重要です。特に40歳以上の特定疾患65歳以上の方が在宅介護を受ける場合は、まずこの制度が適用されます。

  • 対象者65歳以上の要介護認定者、または40歳以上65歳未満特定疾病(末期がん、関節リウマチ、ALSなど16種類)により要介護認定を受けた方。
  • サービスの特徴訪問介護、訪問看護、デイサービス、福祉用具のレンタルなど、多岐にわたるサービスがあり、自己負担は原則1割(所得に応じて2~3割)です。
  • 利用計画:サービスを利用する際は、ケアマネジャー(介護支援専門員)ケアプランを作成し、医療や福祉サービスを総合的にコーディネートしてくれます。

介護保険と障害者総合支援法は併用が可能ですが、原則として介護保険が優先されます(「償還規定」)。

制度⑤:介護保険の重要な3つのサービス

在宅介護の負担を軽減し、生活の質を保つために、特に活用すべき介護保険サービスは以下の3つです。

  1. 訪問看護看護師が自宅を訪問し、健康チェック、点滴、床ずれの処置、医療機器の管理などを行います。在宅医療を支える要となるサービスです。
  2. デイサービス(通所介護):施設に通い、入浴、食事、レクリエーション、機能訓練などを受けることができます。社会参加の機会を提供するとともに、家族の介護からの解放の時間を提供します。
  3. 福祉用具貸与・住宅改修車椅子や介護ベッド、手すりなどをレンタル(貸与)できるサービス、および手すりの設置や段差解消などの住宅改修を補助する制度です。

これらのサービスは、ケアマネジャーと相談しながら、ご本人の心身の状態や生活環境に合わせて適切に組み合わせて利用することが重要です。

制度⑥:公的制度の相談窓口「地域包括支援センター」

65歳以上の方や、その介護を担うご家族がまず相談すべき窓口が、地域包括支援センターです。これは、高齢者の総合相談窓口としての役割を担っています。

地域包括支援センターでは、介護保険サービスの利用案内、介護予防の相談はもちろんのこと、虐待防止や権利擁護地域の医療機関や福祉サービスの情報提供も行っています。もし、介護保険の申請方法どのサービスが利用できるのかが分からなくても、専任の職員が丁寧に教えてくれます。

✅ 成功のコツ

介護保険サービスを利用する際は、複数の事業所サービス内容や料金、ヘルパーの質を比較検討しましょう。特に、訪問看護や訪問介護は、事業所によって対応できる範囲や専門性が大きく異なります。


柱3:在宅医療を支える制度と連携

制度⑦:在宅での治療と管理「訪問診療・訪問看護」

在宅で医療的な管理が必要になった場合、医療保険に基づくサービスが非常に重要な役割を果たします。特に訪問診療訪問看護は、病院と自宅を繋ぐ医療の要となります。

  • 訪問診療(在宅医療)医師が計画的に自宅を訪問し、診察、処置、薬の処方などを行うサービスです。これにより、体調の急変リスクが高い方でも、病院に通う負担なく医療を受けられます。
  • 訪問看護(医療保険)看護師や理学療法士が訪問し、医師の指示に基づいた専門的なケアを提供します。難病や小児の障害を持つ方など、介護保険の対象外の方も利用できます。
  • 医療費の助成重度心身障害者医療費助成制度難病医療費助成制度など、障害や難病を持つ方には医療費の自己負担を軽減する制度が用意されています。

訪問診療の依頼は、現在かかっている病院の医師地域連携室を通じて行うか、在宅療養支援診療所に直接相談します。

制度⑧:医療と介護の連携の重要性

医療、介護、福祉の各サービスは独立していますが、在宅介護ではこれらが密接に連携しなければ、安全かつ質の高い支援は提供できません。

  1. ケアマネジャーと相談支援専門員介護保険のケアマネジャー障害福祉の相談支援専門員が、互いの計画(ケアプランとサービス等利用計画)を共有し、重複なく必要なサービスが提供されるように調整します。
  2. 多職種連携会議医師、看護師、ヘルパー、リハビリ専門職など、当事者の方に関わる全ての専門職が定期的に集まり、情報共有や支援方針の確認を行います。
  3. 緊急時の対応体調急変時に、誰に連絡し、誰が駆けつけるかといった緊急時の連絡体制と役割分担を明確にし、関係者全員で共有しておくことが、在宅介護の最大の安心材料となります。

この「連携の仕組み」を構築することが、在宅介護の成功の鍵であり、ケアマネジャーや相談支援専門員に積極的に関わってもらうことが重要です。

制度⑨:経済的負担を軽減する制度

在宅介護では、介護サービスの利用料、医療費、オムツ代、食費など、様々な費用がかかります。これらの経済的負担を軽減するための制度も活用しましょう。

特に重要なのは、高額療養費制度(医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に戻ってくる制度)と、高額介護サービス費制度(介護サービス費の自己負担額が一定額を超えた場合に戻ってくる制度)です。また、医療保険と介護保険の自己負担額合算して、さらに負担を軽減する「高額医療合算介護(予防)サービス費制度」も存在します。

⚠️ 注意

介護保険と障害者総合支援法のサービスを併用する際、「同じ時間帯に、同じ種類のサービス」を受けることはできません。例えば、介護保険の訪問介護で入浴介助を受けている時間帯に、障害福祉の居宅介護で身体介護を受けることはできません。この重複がないよう、計画の作成が厳しくチェックされます。


まとめ

在宅介護が必要になったら、障害者総合支援法、介護保険法、医療保険3つの柱となる制度を理解し、ご本人の年齢や障害特性に応じて適切に組み合わせることが重要です。特に40歳未満の障害を持つ方障害者総合支援法居宅介護や重度訪問介護を中心に、40歳以上の方介護保険を優先的に検討しましょう。

サービス利用の際は、市区町村の窓口地域包括支援センター、そしてケアマネジャーや相談支援専門員といった専門家に必ず相談し、医療と介護・福祉が連携した包括的な支援体制を構築することが、介護者の負担軽減安心できる在宅生活を実現するための最良の道となります。

まとめ

  • 在宅介護の支援は、主に障害者総合支援法、介護保険法、医療保険の3つの制度を組み合わせて行われます。
  • 介護保険65歳以上または特定疾病の40歳以上が優先、障害者総合支援法それ以外の障害者の生活を支えます。
  • サービス利用の際は、ケアマネジャーまたは相談支援専門員に相談し、医療・介護・福祉の連携体制を整えましょう。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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