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重度心身障害者手当とは?市区町村ごとの違いを解説

📖 約41✍️ 阿部 菜摘
重度心身障害者手当とは?市区町村ごとの違いを解説
「重度心身障害者手当」は国が定める統一制度ではなく、地方自治体が独自に実施する福祉手当の総称です。その実体は、国が定める「特別障害者手当」を補完する役割が強く、自治体ごとに支給基準(障害等級)や所得制限の有無が大きく異なります。支給額は地域差がありますが、国の手当で所得制限にかかった人でも受給できる可能性があります。また、現金の手当だけでなく、「重度心身障害者医療費助成制度」や「特別障害者控除」といった医療・税制優遇も、重度心身障害者の生活を支える重要な柱です。申請は市区町村の福祉担当課で行い、併給のルールと所得制限の基準を事前に確認することが成功の鍵となります。

重度心身障害者手当とは?市区町村ごとの違いを解説

重度の心身障害を持つ方やそのご家族にとって、「重度心身障害者手当」という言葉は、非常に重要な経済的支援の柱となる可能性があります。しかし、この手当は国が定めた統一の制度名ではないため、「自分の住む地域にはない」「名称が違う」といった混乱が生じやすいのが実情です。この名称は、主に地方自治体(都道府県や市区町村)が独自に設けている福祉手当や医療費助成制度を指していることが多く、その内容や要件は地域によって大きく異なります。

この記事では、まず「重度心身障害者手当」と呼ばれる制度の実体と種類を明確にし、次に国が定める関連性の高い手当を整理します。その上で、自治体ごとの支給基準や支給額の違いに焦点を当てて詳しく解説します。この記事を読むことで、ご自身のお住まいの地域で、どの手当が「重度心身障害者手当」の役割を果たしているのかを正確に把握し、必要な経済的支援を漏れなく受け取るための具体的な道筋を見つけられるでしょう。


「重度心身障害者手当」の実体と国の関連制度

自治体独自の名称が多い「重度心身障害者手当」

結論から言うと、「重度心身障害者手当」は、特定の法律に基づいて全国一律に支給される国の制度名ではありません。この名称が使用されている場合、ほとんどが地方自治体(市区町村や都道府県)が独自に条例を定めて実施している福祉手当であると考えられます。自治体によって、「重度障害者福祉手当」「在宅福祉手当」「愛の手当」など、その名称は多岐にわたります。

これらの自治体独自の制度は、重度の心身障害を持つ方(またはその介護者)に対し、日常生活で生じる特別な出費や介護の労苦をねぎらい、生活の安定を図ることを目的としています。支給額は比較的少額であることが多いですが、国の手当では所得制限などで対象外となった方も受け取れる可能性があるため、非常に重要な支援です。

国の制度「特別障害者手当」との違い

自治体の「重度心身障害者手当」と混同されやすい、国が定めている重度障害者向けの手当に「特別障害者手当」があります。特別障害者手当は、20歳以上で、身体または精神に著しく重度の障害があり、常時特別な介護が必要な在宅の障害者本人に支給される国の制度です。

両者の主な違いは、実施主体所得制限にあります。特別障害者手当は国が定める全国一律の制度であり、本人と扶養義務者双方に所得制限があります。一方で、自治体の手当は、所得制限がないか、あっても国の基準より緩やかな場合があり、国の手当を補完する役割を果たしています。したがって、重度心身障害者は、両方の制度の対象となる可能性があります。

医療費助成制度も広義の手当に含まれる

自治体が「重度心身障害者手当」という名称を使うとき、それが現金の手当ではなく、実際には「重度心身障害者医療費助成制度」を指している場合もあります。この医療費助成制度は、重度の障害を持つ方の医療費自己負担分を公費で助成するもので、医療費の心配を大幅に軽減する、実質的な補助金です。

この医療費助成は、手当のような現金給付ではありませんが、生活費から医療費を捻出する必要がなくなるため、経済的なメリットは非常に大きいです。多くの自治体で実施されており、通常、所得制限がないか、あっても非常に緩やかであることが特徴です。手当と医療費助成は別物として、両方を申請することが重要です。


自治体ごとの支給基準と対象者の違い

支給対象となる障害の範囲と等級基準

自治体独自の「重度心身障害者手当」の最大の変動要因は、支給対象となる障害の範囲と等級です。多くの自治体では、以下のいずれかの条件を満たすことが要件とされています。

  • 身体障害者手帳の1級または2級。
  • 療育手帳(愛の手帳など)の最重度(A判定)または重度(B判定)の一部。
  • 上記のいずれかを満たし、かつ精神障害が合併している場合(重複障害)。

特に「心身障害」の「重度」の定義が自治体によって微妙に異なります。例えば、ある市では「身体1級+療育A」の重複障害を必須とする一方、別の市では「身体1級単独」でも対象となる場合があります。申請前に、お住まいの自治体の要綱で、ご自身の障害等級が明確に対象となっているかを確認することが必須です。

所得制限の有無と扶養義務者の扱い

自治体独自の重度心身障害者手当の大きな特徴は、所得制限の有無が地域によって全く異なる点です。

パターン 特徴 具体例
所得制限なし 障害の等級のみで判定。誰でも受給可能。 例:A市 重度障害者福祉手当
国の基準より緩い制限 本人所得のみが制限対象、または基準額が高い。 例:B区 在宅福祉手当
国の基準に準ずる制限 特別障害者手当とほぼ同じ水準の所得制限を設ける。 例:C市 心身障害者手当

特に、国の特別障害者手当の所得制限で不支給となった方でも、自治体の手当では所得制限なしのパターンであれば受給できる可能性があります。また、国の手当と異なり、同居の扶養義務者の所得を審査対象としない自治体もあります。これは、申請前の確認事項として最重要です。

支給対象となる年齢制限の有無

自治体の手当には、対象者の年齢制限が設けられていることがあります。多くの場合は、以下のいずれかのパターンです。

  • 全年齢対象型:0歳から65歳未満(または全年齢)の重度障害者が対象。
  • 高齢者除外型:概ね65歳未満を対象とし、高齢者(65歳以上)は介護保険制度の支援が中心となるため、対象外とする。
  • 子ども限定型:20歳未満の重度障害児のみが対象。

特に65歳以上の方は、介護保険制度が優先されるため、この手当の対象外となることが多いです。しかし、中には長期間受給している方は継続できるといった経過措置を設けている自治体もあります。ご自身の年齢とお住まいの自治体の要件を照らし合わせましょう。


支給額と併給調整の具体的なパターン

支給額の相場と地域間格差の存在

自治体独自の重度心身障害者手当の支給額は、地域間によって大きな格差があります。大都市圏や財政豊かな自治体ほど、支給額が高く設定される傾向が見られます。一般的には、月額3,000円から15,000円程度の範囲で支給されることが多いです。

例えば、ある政令指定都市では重度心身障害者に対し月額15,000円を支給している一方、隣接する市では月額5,000円というケースもあります。同じ障害等級であっても、住んでいる場所によって受け取れる支援額が変わるという、地域間の格差が存在します。この支給額は、自治体の福祉施策への力の入れ具合を示す指標の一つとも言えます。

国の支援制度との併給調整のルール

自治体の手当を申請する際、特に注意すべきが併給調整のルールです。多くの自治体では、以下の国の支援制度を受給している場合、手当が支給停止または減額となる場合があります。

  • 特別障害者手当:国の重度障害者手当を受給している場合、自治体の手当は併給不可または減額となるケースが多いです。
  • 障害児福祉手当:障害児の場合、国の重度手当を受給していると、自治体の手当が支給停止となることがあります。
  • 障害年金:障害基礎年金や障害厚生年金を受給していても、自治体の手当とは併給可能とするケースが多いですが、一部自治体で年金の金額に応じて調整されることがあります。

自治体の手当は、国の手当の受給対象外となった人を救済する目的が強いため、国の手当を受給しているかどうかが併給の大きな分かれ目となります。

⚠️ 注意

自治体独自の制度の中には、「国の手当を申請したにもかかわらず、所得制限で却下された人」のみを対象とする、非常に特殊な要件を持つものもあります。申請前に窓口で併給の可否を必ず確認しましょう。

医療費助成と手当の併給は原則可能

前述の通り、「重度心身障害者手当」と呼ばれるものの中に、医療費助成が含まれることがありますが、現金の手当と医療費助成の併給については、原則として可能です。例えば、特別障害者手当を受給しながら、重度心身障害者医療費助成制度を利用することは一般的です。

医療費助成は「医療費の自己負担を補填する」、手当は「生活費・介護費用を支援する」という目的が異なるため、併せて申請することで、経済的な支援を最大化できます。ただし、自治体によっては、医療費助成の所得制限と手当の所得制限を同一の基準で設けている場合があります。


申請のステップと自治体への問い合わせのコツ

申請に必要な書類と窓口の確認

自治体の重度心身障害者手当の申請窓口は、お住まいの市区町村の福祉担当課(障害福祉課など)です。申請には、概ね以下の書類が必要となります。

  • 申請書(自治体所定の様式)
  • 身体障害者手帳または療育手帳
  • 所得証明書類(所得制限がある場合)
  • 住民票謄本(世帯全員の記載があるもの)

自治体によっては、専用の診断書の提出が必要な場合もあります。手帳の等級で判定が難しい場合や、重複障害がある場合は、診断書を通じて介護の必要性を証明することが求められます。必ず事前に窓口で必要な書類のリストを入手しましょう。

認定をスムーズにするための準備とコツ

自治体の手当の認定をスムーズに進めるためには、申請日を確保すること現状を正確に伝えることが重要です。手当は通常、申請書を提出した月の翌月分から支給されるため、できるだけ早く申請日を確定させることが大切です。

また、自治体の手当は、等級だけでなく「在宅で常に介護が必要な状態」であるかどうかも審査される場合があります。日常生活における具体的な介護の状況や、必要な見守りの状況などをメモにまとめ、窓口の職員や医師に提供することで、重度な状況を正確に理解してもらうことができます。

💡 ポイント

手帳の等級がギリギリで認定基準を満たしているか不明な場合は、「試しに申請」してみることも一つの方法です。自己判断で諦めるのではなく、まずは窓口で相談してみましょう。

地域の福祉担当課への具体的な問い合わせ例

お住まいの地域の福祉担当課に問い合わせる際は、以下の具体的な質問をしましょう。

  1. 重度心身障害者を対象とした、自治体独自の現金の手当はありますか?あれば名称を教えてください。」
  2. 「その手当は、身体障害者手帳〇級、または療育手帳A判定で対象になりますか?」
  3. 所得制限の有無と、所得制限の対象者(本人だけか、扶養義務者もか)を教えてください。」
  4. 「国の特別障害者手当を受給している場合でも、併給は可能ですか?」

このように具体的に質問することで、職員は複数の手当の中から、ご家庭に適用される制度を正確に判断しやすくなります。


重度心身障害者を支援する医療・税制優遇

重度心身障害者医療費助成制度の詳細

「重度心身障害者手当」と並んで重要度の高いのが、重度心身障害者医療費助成制度です。この制度は、多くの自治体で実施されており、重度の障害を持つ方が、健康保険を使った診療を受けた際の自己負担分を公費で賄うものです。

この制度のおかげで、重度の障害を持つ方は、医療機関の窓口でほとんど費用を支払うことなく、必要な医療を受けることができます。特に、頻繁な通院や高額な薬が必要な場合、この助成制度は手当以上の経済的な効果を発揮します。申請には、お住まいの自治体から発行される受給者証が必要になります。

障害者控除(特別障害者)による税負担軽減

重度の心身障害者は、税制上の優遇措置である「障害者控除」の中でも、控除額が大きい「特別障害者」の対象となることが多いです。特別障害者控除は、納税者本人または扶養親族に適用され、所得税や住民税の計算時に所得から一定額を差し引くことができます。

この控除により、支払うべき税金が大幅に軽減されます。特に、在宅介護をしているご家族が納税者である場合、この控除を適用することで、世帯全体の可処分所得が増加し、実質的な支援となります。年末調整や確定申告の際に、手帳を提示または申告することを忘れないようにしましょう。

その他、公共料金の割引と生活支援

重度の心身障害者手当や医療費助成のほかにも、障害者手帳を提示することで利用できる、生活費の負担を軽減する優遇措置があります。

  • NHK受信料の免除:世帯構成や手帳の等級によっては、受信料が全額または半額免除されます。
  • 有料道路の割引:一部の有料道路で、障害者本人またはその介護者が運転する場合に割引が適用されます。
  • 公共交通機関の割引:バスやタクシー、JRなどの運賃割引が適用されます。

これらの割引をすべて合計すると、年間でかなりの金額の節約に繋がります。手当だけでなく、これらの優遇措置も漏れなく活用することが、重度心身障害者世帯の生活安定に不可欠です。


よくある質問と次の一歩の提案

Q: 手当が年金より所得制限が厳しいのはなぜ?

特別障害者手当や自治体の手当が、障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)よりも所得制限の基準が厳しく設定されていると感じる方がいます。これは、手当が税金(一般財源)を主な原資としており、国民年金保険料を原資とする年金とは財源が異なるためです。

福祉手当は、「生活に困窮している方」を重点的に支援するという性格が強いため、所得が多い世帯への支給は制限される傾向にあります。そのため、所得制限で国の手当が不支給となっても、自治体の手当は所得制限なしのパターンがないか、必ず確認することが重要です。

Q: 65歳を過ぎたら手当はなくなるのか?

多くの自治体独自の「重度心身障害者手当」は、65歳未満を対象としています。これは、65歳以上になると介護保険制度による支援が中心となるため、福祉手当の対象から外れることが多いからです。

ただし、自治体によっては、65歳になる前に受給資格を得ていた方については、65歳以降も引き続き支給するという経過措置を設けている場合があります。また、65歳以上であっても、介護保険の要介護認定を受けている重度心身障害者を対象とした別の手当が用意されていることもあります。65歳が近づいたら、早めに役所に確認しましょう。

次のアクションへの具体的な提案

重度心身障害者手当とその関連支援を確保するための具体的なアクションは以下の通りです。

  1. 自治体手当の特定:お住まいの市区町村の福祉担当課に連絡し、「重度心身障害者を対象とした現金の手当の名称と支給基準」を特定してください。
  2. 二重申請の確認:国の特別障害者手当と自治体の手当について、所得制限併給の可否を明確に確認し、漏れなく申請しましょう。
  3. 医療費助成の受給者証の確認重度心身障害者医療費助成制度の受給者証をすでに持っているか確認し、持っていない場合はすぐに申請しましょう。

これらの手当や助成制度は、ご家族の生活を安定させ、重度介護を続ける上での大きな支えとなります。複雑な制度を諦めず、ぜひ活用してください。


まとめ

「重度心身障害者手当」は、自治体が独自に定める福祉手当を指すことが多く、その支給基準や所得制限、支給額は地域によって大きく異なります。

  • 国の支援である特別障害者手当と、自治体独自の重度心身障害者手当は併給できない場合がありますが、所得制限の有無で適用が分かれることが多いため、両方を比較検討すべきです。
  • 手当と並行して、重度心身障害者医療費助成制度特別障害者控除という医療・税制優遇を最大限に活用し、経済的支援を最大化しましょう。
  • 申請の際は、お住まいの市区町村の福祉担当課に、手当の名称、等級基準、所得制限、併給の可否について具体的に問い合わせることが、支援を漏れなく受け取るための鍵です。

地域ごとの制度の違いを理解し、ご家庭に最適な支援を見つけ出してください。

阿部 菜摘

阿部 菜摘

あべ なつみ36
担当📚 実務経験 12
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士

社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。

大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。

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精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。

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「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

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