生活費が足りない…障害当事者のためのお金の悩み解消ガイド

生活費の不安を安心に変えるためのお金解消ガイド
障害を持ちながら生活を送る中で、避けて通れないのがお金の悩みです。「物価が上がって生活が苦しい」「将来の蓄えが全くない」といった不安は、心身の健康にも大きな影響を及ぼします。日々の暮らしを維持するだけで精一杯という状況は、決してあなた一人の責任ではありません。
この記事では、障害当事者の方が利用できる公的な所得保障制度や、支出を抑えるための優遇措置、さらにはどうしても家計が回らなくなった時の相談先を詳しく解説します。現状を正しく把握し、使える仕組みを一つずつ組み合わせていくことで、心穏やかに過ごせる生活基盤を整えていきましょう。
まずは収入を支える公的制度を点検する
障害年金の受給漏れはありませんか
障害当事者にとって最大の収入の柱となるのが障害年金です。しかし、制度が複雑であるために、本来受け取れるはずの人が申請していない「受給漏れ」のケースも少なくありません。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、初診日にどの年金制度に加入していたかによって決まります。
例えば、障害基礎年金2級であれば、2024年度の支給額は月額換算で約6.6万円ですが、これに「年金生活者支援給付金」が加算される場合もあります。もし現在の体調が悪化しているなら、額改定請求によって等級を上げられる可能性もあります。年金事務所や社会保険労務士に相談し、今の自分の状態が正しく評価されているか確認してみましょう。
特別障害者手当と自治体独自の手当
障害年金以外にも、国が支給する手当が存在します。特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害があるため、日常生活において常時の介護を必要とする方に支給されます。月額は27,000円を超え、年金と併給できるため、非常に強力なサポートとなります。
また、お住まいの自治体によっては「心身障害者福祉手当」などの名称で独自の支給を行っている場合があります。月額数千円から数万円と地域差はありますが、固定収入が増えるメリットは大きいです。市役所の福祉課で「自分に該当する手当が漏れていないか」をリストアップしてもらうのが賢明な第一歩です。
就労支援と工賃の仕組みを知る
「少しでも自分で稼ぎたい」という思いがある場合、就労継続支援という選択肢があります。就労継続支援A型は雇用契約を結び最低賃金が保証されるため、月額8万円〜10万円程度の収入が見込めることもあります。一方、B型は雇用契約を結びませんが、リハビリを兼ねながら「工賃」を得ることができます。
近年ではB型事業所でも工賃向上に力を入れている所が増えており、月額3万円以上の工賃を支払う事業所も出てきています。自分の体力や体調に合わせて、無理のない範囲で「働くことによる収入」を組み込むことができれば、生活費の足しになるだけでなく、社会とのつながりも得られます。
💡 ポイント
障害年金や手当の申請には医師の診断書が不可欠です。日頃から困っていることやできないことをメモしておき、診察時に正確に伝えることが、適切な受給につながります。
固定費と日常の支出を徹底的に削る
公共料金の減免制度をフル活用
支出を減らす上で最も効果的なのが、一度手続きすればずっと続く固定費の削減です。障害者手帳をお持ちであれば、多くの自治体で水道料金の基本料金免除や、NHK受信料の全額・半額免除が受けられます。これだけで年間数万円の節約になる場合があります。
また、大手キャリアのスマホ料金には「ハートフレンド割引」などの障害者割引があり、月々の基本料金が大幅に安くなります。格安SIMへの乗り換えとどちらがお得かを比較検討する価値は十分にあります。固定費は「一度の手間」で大きな効果を生むため、優先的に取り組みましょう。
医療費の負担を1割に抑える制度
障害当事者にとって避けられないのが通院費用です。自立支援医療(精神通院医療など)を利用すれば、通常3割負担の医療費が1割負担に軽減されます。さらに世帯の所得に応じて、ひと月あたりの支払上限額が設定されるため、毎月多額の医療費がかかる方にとっては救世主のような制度です。
また、自治体によっては「重度心身障害者医療費助成制度」があり、窓口負担が無料や数百円で済む場合もあります。薬代も含めて家計を圧迫しているなら、これらの制度が正しく適用されているか、適用範囲に含まれる病院を通院しているかを再確認してください。
交通費と公共施設の割引利用
移動にかかる費用も馬鹿になりません。鉄道やバスの運賃割引(多くは5割引き)はもちろんのこと、自治体によってはタクシー券の配布やガソリン代の補助を行っているケースもあります。公共交通機関を頻繁に利用する方は、これらを活用することで行動範囲を広げつつ出費を抑えられます。
また、都立・県立の公園、美術館、動物園などの公共施設は、手帳提示で本人と介護者1名が無料になることが一般的です。お金をかけずに余暇を楽しむ手段を持つことは、ストレス解消にもつながり、結果として無駄な衝動買いやストレスによる浪費を防ぐ効果も期待できます。
| 節約項目 | 具体的な支援・制度 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 通信費 | 携帯キャリアの障害者割引 | 月額数千円の削減 |
| 光熱費 | 水道料金の基本料金免除 | 2ヶ月で2,000円〜3,000円程度 |
| 医療費 | 自立支援医療・重度医療助成 | 上限設定により高額負担を回避 |
家計管理の工夫と「見えない出費」の対策
日常生活自立支援事業での管理
「どうしてもお金があると使ってしまう」「公共料金を払い忘れてしまう」という悩みがある場合、自分の意思の力だけで解決しようとするのは大変です。各地域の社会福祉協議会が行っている日常生活自立支援事業を利用してみましょう。
この事業では、専門の支援員が通帳を預かり、家賃や公共料金の支払いを代行した上で、生活費として週に一度数千円ずつ手渡してくれるといったサポートが受けられます。手数料はかかりますが、確実に固定費を支払った上で「今週使えるお金」が明確になるため、借金や滞納のリスクを劇的に減らすことができます。
食費を抑えるための地域ネットワーク
生活費の中で変動しやすいのが食費です。最近では、賞味期限が近い食品などを無料で提供するフードバンクや、低価格で食事ができる子ども食堂(大人の利用も可能な場合が多い)が各地に広がっています。これらは決して「恥ずかしいこと」ではなく、地域の助け合いの仕組みです。
また、自炊が難しい体調の時は、無理をして外食やコンビニ弁当に頼るのではなく、自治体が補助を出している配食サービス(お弁当の配達)を利用できる場合があります。栄養バランスが整うことで病気の悪化を防ぎ、将来的な医療費増大を抑えるという長期的な節約にもつながります。
「ついつい買い」を防ぐ仕組み作り
精神的な不安や発達障害の特性により、ネットショッピングでの衝動買いが止まらないという相談も多く寄せられます。対策として、クレジットカードを解約し、銀行の残高分しか使えないデビットカードに変更するのが有効です。
また、Amazonなどの通販アプリをあえてスマホから削除し、ブラウザからログインする手間を作ることで「ワンクリック」のハードルを上げましょう。買う前に「これは本当に今必要か?」と3日間考えるルールを作るなど、自分を責めずに済む「仕組み」を整えることが、家計の安定に直結します。
✅ 成功のコツ
家計簿を完璧につける必要はありません。まずは「通帳を分ける(貯金用と生活用)」だけでも効果があります。管理をシンプルにすることが継続の秘訣です。
借金や滞納に直面した時の緊急対応
生活福祉資金貸付制度という選択肢
どうしても今月の支払いができない、急な出費で生活が立ち行かないという時のために、生活福祉資金貸付制度があります。これは銀行のローンとは異なり、低所得世帯や障害者世帯を対象とした公的な貸付制度です。利息が非常に低く設定されており、中には無利子のものもあります。
ただし、あくまで「貸付」であり返済義務があるため、利用には社会福祉協議会との相談が必要です。一時的に家計を立て直すための「つなぎ」として利用し、その間に固定費の削減や手当の申請を進めるなど、根本的な解決に向けた計画をセットで考えることが重要です。
債務整理を怖がらないで
消費者金融やカードローンなどですでに多額の借金があり、月々の返済が収入を上回っている場合は、一刻も早く専門家に相談すべきです。法テラス(日本司法支援センター)では、収入が一定以下の方を対象に、弁護士や司法書士による無料相談や、費用の立て替え制度を行っています。
自己破産や個人再生といった債務整理を行うことで、借金をゼロにしたり大幅に減らしたりできます。「障害年金が差し押さえられるのでは?」と不安になるかもしれませんが、年金自体は差し押さえ禁止債権として守られるのが原則です。借金の悩みで体調を崩す前に、プロの手を借りて人生の再スタートを切りましょう。
家賃滞納には住居確保給付金
家賃を滞納しそうで住む場所を失う恐れがある場合は、住居確保給付金という制度があります。これは貸付ではなく「支給(返済不要)」です。一定期間、自治体が家主に直接家賃を支払ってくれます。
かつては離職した方向けの制度でしたが、現在は「個人の責に帰さない理由で収入が減少した方」も対象となっています。住まいは生活の基盤です。家賃を滞納して退去命令が出る前に、早急に自立相談支援機関(多くの市役所に設置されています)に相談を申し込んでください。
⚠️ 注意
「即日融資」「審査なし」といった甘い言葉の闇金(SNS上の個人間融資も含む)には絶対に手を出さないでください。一度借りると、公的な支援でも解決が非常に難しくなります。
将来への不安と向き合う「親亡き後」の備え
特定贈与信託の仕組み
ご家族、特に親御さんにとって最大の悩みは「自分たちが亡くなった後、この子の生活費はどうなるのか」という点でしょう。その解決策の一つとして、特定贈与信託があります。これは、親などが金銭を信託銀行に託し、信託銀行が障害当事者に対して定期的に生活費を支払う仕組みです。
一定額(特別障害者は6,000万円、それ以外の特定障害者は3,000万円)まで贈与税が非課税になる優遇措置もあります。まとまったお金を一渡してしまうと管理が心配だという場合に、長期間にわたって「月々の定額給付」という形を確保できるため、生活の安定に大きく寄与します。
心身障害者扶養共済制度
多くの自治体で実施されている障害者扶養共済制度(しょうぶ共済)も、将来の備えとして有効です。保護者が毎月一定の掛金を支払うことで、保護者が亡くなった後、障害当事者に対して生涯にわたり月額2万円(2口加入なら4万円)の年金が支給されます。
掛金は保護者の年齢によって決まりますが、所得に応じて減免制度もあります。障害年金+扶養共済年金という「2階建ての所得」を作ることで、一人暮らしやグループホームでの生活費をより確実に賄えるようになります。早い段階で加入を検討しておくのがポイントです。
成年後見制度と財産管理
お金があっても、それを適切に使う判断が難しい場合には、成年後見制度が将来の安心材料になります。後見人が本人に代わって、無駄な契約を解約したり、生活に必要な支払いを滞りなく行ったりしてくれます。
「後見人を立てるほどではないが、将来が不安」という場合は、元気なうちに将来のサポーターを決めておく「任意後見制度」という仕組みもあります。信頼できる支援員や弁護士などと契約を結び、自分の希望する生活スタイルにお金を使ってもらえるよう準備しておくことは、精神的な自立にもつながります。
「お金の話を福祉の相談員にするのは気が引けていましたが、勇気を出して話してみたら、知らない手当や割引制度がたくさん見つかりました。少しだけ、未来が明るく見えてきました。」
— 精神障害を持ちながら生活するCさん
よくある質問と具体的な対処法
Q1. 生活保護を受けるのは恥ずかしいことですか?
全くそんなことはありません。生活保護は、日本国憲法第25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るための、大切な公的システムです。障害のために働くことが難しく、年金や手当を合わせても最低生活費に届かない場合は、正当に利用すべき権利です。生活保護を受けることで医療費も無料になり、安定した環境で療養に専念できるメリットもあります。まずは「自立相談支援窓口」で今の苦しさを話してみることから始めましょう。
Q2. ネットで「障害者でも稼げる」という副業広告を見ましたが…
残念ながら、弱みに付け込む詐欺的な広告も少なくありません。「初期費用で数万円必要」「スマホをポチポチするだけで月50万」といったものは、ほぼ例外なくお金を失う結果に終わります。安全に収入を増やしたいなら、まずはハローワークの障害者専門窓口や、就労移行支援事業所に相談してください。公的なルートを通じた在宅ワークや特例子会社への就職など、着実で安全な方法を提案してくれます。
Q3. 手帳を持っていますが、どこで割引が受けられるか分かりません
「障害者手帳で行こう」というウェブサイトや、スマホアプリの「ミライロID」を活用してみてください。全国のレジャー施設や公共交通機関の割引情報が網羅されています。また、お住まいの市区町村が発行している「福祉のしおり」には、その地域限定の優遇措置(ゴミ袋の無料配布、入浴施設の割引など)が詳しく載っています。意外な所で見つかる割引は、家計にとって大きな助けになります。
Q4. 家族にお金の相談ができず、一人で悩んでいます
家族に心配をかけたくない、あるいは家族との関係が複雑な方もいらっしゃるでしょう。そんな時は、迷わず「基幹相談支援センター」や「精神保健福祉センター」を利用してください。これらは第三者の立場で、中立的に相談に乗ってくれます。お金の悩みは心理的な要因と結びついていることも多いため、ケースワーカーや心理士などの専門職と一緒に家計を見直すことで、解決への道筋がより明確になります。
まとめ
お金の不安は、私たちの思考を止めてしまい、孤独へと追い込む力を持っています。しかし、今回ご紹介したように、日本には障害当事者の生活を支えるための「セーフティネット」が何層にも用意されています。収入を増やし、支出を減らし、管理を助けてもらう。この三つの柱を少しずつ太くしていくことで、今ある苦しさは必ず軽減できます。
まずは、一番身近な役所の福祉窓口や、相談支援事業所のスタッフに「実はお金のことで困っている」と一言伝えてみてください。その小さなアクションが、あなたの生活を守る大きな仕組みを動かすスイッチになります。あなたは一人ではありません。使えるものはすべて使い、より穏やかで自分らしい毎日を取り戻していきましょう。
まとめ
- 障害年金や各種手当の受給漏れがないか、定期的に自治体の窓口や専門家に確認しましょう。
- 公共料金や通信費の割引、医療費助成制度をフル活用して、毎月の固定費を最小限に抑えましょう。
- 自分一人での管理が難しい場合は、日常生活自立支援事業などを利用して、お金を「守る仕組み」を作りましょう。
- 借金や家賃滞納など深刻な事態に陥った時は、法テラスや自立相談支援機関など、公的な専門窓口へ早急に相談しましょう。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
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