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障害家庭の家計管理のポイント【家族向け】

📖 約29✍️ 酒井 勝利
障害家庭の家計管理のポイント【家族向け】
障害を持つご家族がいる家庭の家計管理は、特有の支出と収入の不安定さから複雑になりがちです。本記事では、経済的な安定を築くための3つの柱、「収入の最大化」「支出の最適化」「将来の備え」を解説します。障害年金や各種手当の申請漏れを防ぎ、自立支援医療や税金・公共料金の減免制度を徹底活用することが重要です。また、親亡き後の生活を見据え、グループホームの費用試算や福祉型信託の検討を推奨します。地域の支援センターや社労士などの専門家と連携し、家族で安心して暮らせる経済基盤を築きましょう。

障害家庭の家計管理のポイント【家族向け】

経済的な安心を家族で築くために

障害を持つご家族を支える皆さまにとって、家計管理は非常に重要であり、また複雑な課題を伴います。障害によって収入が不安定になりがちである一方、医療費、福祉サービス費用、特別に必要な生活費など、一般の家庭にはない特有の支出が発生するためです。

将来の不安を解消し、ご家族全員が安心して暮らせる基盤を作るためには、感情論ではなく、公的な制度を最大限に活用した合理的な家計管理が不可欠です。しかし、「どこから手をつければいいのかわからない」「制度が複雑すぎる」と感じる方も多いでしょう。

この記事では、障害を持つご家族がいる家庭に特化した家計管理の具体的なポイントを、「収入の確保」「支出の削減」「将来への備え」の三つの柱に分けて徹底的に解説します。経済的な安定を目指し、家族の未来を守りましょう。


家計管理の柱1:収入を最大限に確保する

公的年金・手当の徹底的な見直し

障害家庭の収入の安定の基盤となるのは、公的な年金と手当です。これらは「申請主義」であり、知らずに申請を漏らしているケースや、等級の見直しで増額できるケースが少なくありません。まずは、現在受給している制度と、まだ申請していない制度を全て洗い出しましょう。

  • 障害年金(基礎年金・厚生年金):初診日や納付要件を満たしているか、また、障害認定日以降も病状が悪化し、より重い等級に該当しないか(額改定請求)を確認しましょう。
  • 特別障害者手当:重度の障害があり、常時特別の介護が必要な場合に支給されます。(所得制限あり)
  • 特別児童扶養手当:20歳未満で精神または身体に障害を持つ児童を養育している場合に支給されます。(所得制限あり)

年金・手当の申請漏れを防ぐポイント

これらの制度は、必要書類が多く手続きが複雑なため、申請を諦めてしまう方がいます。申請手続きは、社会保険労務士(社労士)や地域の相談支援専門員に相談することで、スムーズに進めることが可能です。特に障害年金の申請代行は、社労士の専門分野です。

就労による収入の確保と福祉的就労

障害を持つご家族の就労は、経済的な自立だけでなく、社会参加という側面からも重要です。収入を得る方法は、一般企業への就職だけではありません。

  • 障害者雇用枠での就労:体調や障害特性に配慮された環境で働くことで、安定した収入を得ることを目指します。
  • 就労継続支援(A型・B型):一般企業での就労が難しい場合に、作業を通じて賃金や工賃を得る福祉サービスです。特にB型は比較的短時間や体調に合わせたペースで働けるため、障害年金受給者でも利用しやすい場合があります。

就労による収入が増えても、障害年金や手当がすぐに全額停止されるわけではありません。収入と年金・手当のバランスを考え、将来的な自立に向けた収入源を確保していくことが重要です。

💡 ポイント

障害を持つ方の収入は、生活保護の計算において非課税枠や控除が適用される場合があります。就労支援や収入に関する相談は、障害者就労・生活支援センターに行いましょう。


家計管理の柱2:支出を賢く削減する

医療費・福祉サービス費用の徹底的な削減

障害家庭の支出で大きな割合を占めるのが、医療費と福祉サービス費用です。これらを公的な助成制度によって最小限に抑えることが、家計安定の鍵です。

  • 自立支援医療制度:精神通院医療や更生医療の自己負担を原則1割に軽減します。さらに、世帯所得に応じて月々の自己負担上限額が設定されるため、高額な医療費がかかっても安心です。
  • 重度心身障害者医療費助成:自治体独自の制度で、医療費の自己負担分を実質無料(または一部負担のみ)にします。これは、必ずお住まいの自治体で申請が必要です。

福祉サービスの自己負担上限額の確認

障害福祉サービス(居宅介護、デイサービスなど)の利用料は、原則1割負担ですが、所得に応じて月々の負担上限額(0円〜37,200円など)が定められています。複数のサービスを利用しても、この上限額を超えて支払う必要はありません。

特にサービス利用頻度が高い家庭では、この上限額の適用が非常に重要です。負担上限額が正しく適用されているか、市区町村の障害福祉担当課や相談支援専門員に確認しましょう。

税金・公共料金の減免と各種割引制度

障害者手帳を持つ方がいる家庭は、様々な税金や公共料金で減免・割引を受けられます。申請漏れがないか、必ず確認しましょう。

以下の制度は申請が必須です。

  • 所得税・住民税の障害者控除:年末調整や確定申告時に申告することで、税金が軽減されます。
  • 自動車税・自動車取得税の減免:障害を持つ方やその家族が、障害者のために利用する自動車について適用されます。
  • NHK受信料の免除:世帯構成や手帳の等級によって、全額または半額免除が適用されます。
  • 公共交通機関の割引:JR、私鉄、バス、タクシーなどで、手帳提示により運賃が割引されます。

✅ 成功のコツ

障害者控除の申告漏れは非常によくあります。過去5年間に遡って還付申告を行うことが可能です。もし申告漏れに気づいたら、税務署に相談し、過去の税金を取り戻しましょう。


家計管理の柱3:将来の資金計画と備え

将来の居住費と生活費の計画

障害を持つお子様やご家族の将来、特に親亡き後の生活をどのように支えるか、居住費と生活費の資金計画を立てることは、家計管理の最終目標です。

  • グループホームの活用:将来的にグループホームに入居する場合、家賃は低く抑えられますが、生活費は引き続き必要です。入居した場合の月々の費用を試算しましょう。
  • 成年後見制度の活用検討:知的障害や精神障害によりご本人が金銭管理が困難な場合、将来的に親族や専門家が財産を管理する「成年後見制度」の利用を検討する必要があります。
  • 遺言や信託の準備:親が亡くなった後も、障害を持つ子どもの生活資金が確保されるよう、遺言書作成や、福祉型信託(家族信託)の活用を検討しましょう。これは、親が生きている間に、子どもの生活費管理を信託銀行や専門家に託す仕組みです。

福祉型信託のメリット

福祉型信託は、親亡き後も信託財産(金銭など)が契約に基づいて確実に、障害を持つ子どもの生活費として使われる仕組みを法的に確立できます。これにより、第三者の横領や不適切な使用を防ぐことができます。

教育費・一時費用のための資産形成

障害を持つお子様の専門的な教育費用や、将来的な補装具の買い替え費用など、まとまった一時費用に備えるための資産形成も重要です。

  • 特定障害者扶養保険(愛称:ふくし)の検討:これは、親が死亡または高度障害になった場合に、毎月一定額の年金が障害を持つ子どもに支払われるという公的な生命保険制度です。掛け金は所得控除の対象となります。
  • 財産管理口座の分離:親の資産と、障害を持つご本人の障害年金や手当の口座を明確に分離し、ご本人の将来の生活費として貯蓄専用の口座を設けて管理しましょう。

資産形成においては、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナー(FP)に相談する際、障害を持つご家族がいることを隠さず伝え、福祉制度に理解のある専門家を選ぶことが大切です。

「障害家庭の家計管理で最も大切なのは、収入と支出の『制度的な最適化』です。単なる節約ではなく、障害年金の等級見直し、医療費の自己負担上限額の適用、そして税金の控除申請を漏れなく行うことが、一般家庭の何倍も家計に影響します。」

— ファイナンシャルプランナー H氏


よくある質問と専門的な相談窓口

Q1. 障害年金と生活保護は併用できますか?

A. はい、併用は可能です。ただし、障害年金は収入とみなされるため、年金額が生活保護費から差し引かれて支給されます

例えば、生活保護で定める最低生活費が月15万円で、障害年金が月8万円の場合、生活保護費からは差額の7万円が支給されるという仕組みです。生活保護を申請する際は、障害年金などの公的給付を先に全て申請していることが前提となります。

Q2. 家族が病気で働けなくなった場合、他に利用できる制度はありますか?

A. 障害を持つ方を支える家族が病気や怪我で働けなくなった場合、以下の制度が利用可能です。

  • 傷病手当金:会社員の場合、病気や怪我で休職した場合に健康保険から支給されます。
  • 生活福祉資金貸付制度:一時的に生活が困窮した場合に、社会福祉協議会から低利子または無利子で資金を借り入れられます。
  • 自立相談支援事業:地域の自立相談支援機関で、生活再建のための総合的な相談と支援プランを作成してもらえます。

Q3. 家計全体を相談したい場合、どこに相談すべきですか?

A. 障害家庭の家計管理は、福祉と金融の両方の知識が必要です。以下の窓口に相談しましょう。

  • 障害者就労・生活支援センター:福祉サービスの利用計画、生活費の収支相談、地域の制度活用に詳しいです。
  • 家計改善支援事業(社会福祉協議会):債務整理や家計診断など、専門的な家計の見直しアドバイスを受けられます。
  • ファイナンシャルプランナー(FP):特に将来の資産形成や信託、保険について相談したい場合に適しています。ただし、福祉制度に詳しいFPを選ぶことが重要です。

まずは地域の支援センターで全体像を把握し、必要に応じてFPなどの専門家につなげてもらうのが最もスムーズな流れです。


まとめ

障害を持つご家族がいる家庭の家計管理は、通常の家庭よりも複雑で、将来への見通しを立てにくい側面があります。しかし、公的な制度を徹底的に活用し、収入を最大化し、支出を最小化することで、経済的な安定を確実に築くことが可能です。

特に、障害年金の適正な等級確保、医療費の自己負担上限額の適用、各種税金・公共料金の減免申請は、家計に大きな影響を与える最重要項目です。これらの手続きは煩雑ですが、社労士や相談支援専門員の協力を得ながら、家族で力を合わせて経済的な基盤を盤石なものにしていきましょう。

まとめ

  • 障害年金、特別児童扶養手当など、利用可能な公的給付の申請漏れがないか確認する。
  • 医療費の助成制度や福祉サービスの自己負担上限額適用を徹底し、支出を抑える。
  • 障害者控除や各種公共料金の減免を申請し、固定費を削減する。
  • 将来の居住費や生活費のために、特定障害者扶養保険や福祉型信託の活用を検討する。

酒井 勝利

酒井 勝利

さかい かつとし38
担当📚 実務経験 12
🎯 生活サポート🎯 福祉用具

📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター

作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。

リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。

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DIY、キャンプ

🔍 最近気になっているテーマ

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