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就労移行支援を使うべき人・使わないほうが良い人の違いとは

📖 約36✍️ 菅原 聡
就労移行支援を使うべき人・使わないほうが良い人の違いとは
就労移行支援サービスの利用を検討している障害者やその家族、支援者に向けた判断ガイドです。このサービスを「使うべき人」として、生活リズムの構築が必要な方や自己分析を深めたい方を挙げ、「使わないほうが良い人」として、即戦力スキルがある方や即時の収入を求める方を具体的に解説しています。他の就労支援サービス(A型・B型)やハローワークとの違い、失敗しない事業所選びの3基準、利用期間や工賃に関するよくある疑問についても網羅。利用のベストタイミングを見極め、自分に合った「働く道」を選ぶための実践的なアドバイスをまとめています。

就労移行支援を最大限に活かす!自分に合った選択をするための判断基準

「働きたいけれど、ブランクがあって不安」「自分にどんな仕事が向いているのか分からない」と悩んでいませんか。障害者雇用の枠組みで就職を目指す際、強力な味方となるのが就労移行支援というサービスです。しかし、誰にとっても「とりあえず通えば良い場所」というわけではありません。

この記事では、就労移行支援を使うことで人生が好転する人と、逆に使わないほうがスムーズに就職できる人の違いを徹底的に分析しました。制度の仕組みやメリットだけでなく、あえて「使わないほうが良いケース」についても具体的に触れていきます。この記事を読み終わる頃には、あなたが次にとるべきアクションが明確に見えてくるはずです。あなたの未来に向けた最初の一歩を、一緒に踏み出しましょう。

就労移行支援を使うべき人の特徴とメリット

安定した生活リズムを取り戻したい方

就労移行支援を利用する最大のメリットの一つは、会社に通うための基礎体力と生活リズムを養えることです。長期間の療養生活を送っていた方や、朝起きるのが辛いという方にとって、週に数回決まった時間に事業所へ通うという行為そのものが、非常に重要なリハビリテーションになります。

事業所では、スタッフがあなたの体調を考慮しながら、少しずつ通所日数を増やすサポートをしてくれます。最初からフルタイムで働くのはハードルが高くても、まずは「午前中だけ」「週3日から」といったスモールステップで進めることができるのです。この段階を踏むことで、就職後に「体力が持たなくて辞めてしまう」というリスクを大幅に減らすことができます。

自分の特性を客観的に把握したい方

「自分には何ができて、何ができないのか」を一人で分析するのは限界があります。就労移行支援事業所では、事務作業や軽作業、PCスキルなど、さまざまな訓練プログラムを通じて、あなたの得意・不得意をプロの視点で評価してくれます。自分では短所だと思っていたこだわりが、実はデータ入力の正確性という長所になるかもしれません。

また、発達障害や精神障害などの特性がある場合、どのような環境であればストレスを感じにくいかを一緒に探ってくれます。「静かな場所なら集中できる」「指示は口頭ではなくメモが欲しい」といった具体的な配慮事項を整理できることは、就職活動における強力な武器になります。自分を知ることは、長く働き続けるための第一歩です。

就職活動の具体的なノウハウを学びたい方

履歴書の書き方や面接の練習は、誰にとっても緊張するものです。就労移行支援では、障害者雇用の専門知識を持ったスタッフが、あなたの経歴を魅力的に伝えるための応募書類作成をマンツーマンで手伝ってくれます。特に、病歴や空白期間をどう説明すべきかといった、一人では悩みがちなポイントを一緒に解決できます。

また、模擬面接を繰り返すことで、実際の選考での緊張を和らげることができます。企業とのマッチング支援も行っているため、ハローワークだけでは見つけにくい求人情報に出会える可能性もあります。就職活動を「孤独な戦い」にしないための伴走者がいることは、精神的な安定にもつながるでしょう。

💡 ポイント

就労移行支援は「就職すること」だけでなく「就職した後に働き続けること」を見据えた準備をする場所です。

あえて就労移行支援を使わないほうが良いケース

即戦力のスキルがあり、すぐに働きたい方

すでに高い専門スキルを持っており、直近まで仕事をしていた方は、就労移行支援を通さずに直接就職活動をしたほうが早い場合があります。就労移行支援は、あくまで「訓練」の場です。ある程度の期間(数ヶ月から1年程度)をかけてじっくり準備することが前提となっているため、スピード感を重視する方には向かない可能性があります。

もし、あなたが履歴書の準備も面接対策も完璧にできており、体力的にもフルタイム勤務に自信があるなら、エージェントサービスやハローワークの障害者専門窓口を活用して、すぐに選考へ進むのが賢明です。自分の状態が「訓練が必要な段階」なのか「挑戦できる段階」なのかを冷静に見極めましょう。

利用期間の制限を気にする必要がある方

就労移行支援の利用期間は、原則として最大2年間と決められています。これは一生に一度の権利のようなもので、一度使ってしまうと再利用には厳しい審査が必要になります。まだ体調が非常に不安定で、週に1日通うのもやっとという段階で利用を開始してしまうと、肝心の就職活動期に期間が足りなくなってしまうリスクがあります。

「とりあえず何か始めたい」という焦りから利用を決めるのではなく、まずは医師と相談し、ある程度通所の見込みが立ってから利用を開始することをお勧めします。体調が整っていない時期は、就労移行支援ではなく「自立訓練(生活訓練)」などの、生活基盤を整えるための別のサービスを検討するのも一つの手です。

今の生活レベルで「工賃」を期待する方

就労移行支援は訓練施設であるため、原則として給料(工賃)は発生しません。一部の事業所ではわずかな手当が出ることもありますが、基本的には「無給で通う学校」のようなイメージです。生活費のために今すぐ現金が必要という方は、就労移行支援よりも就労継続支援A型などの、雇用契約を結んで給料をもらいながら働く場所を選んだほうが現実的です。

経済的な余裕がない中で訓練に集中するのは難しいものです。障害年金や生活保護などの受給状況を確認し、2年間(あるいはそれ以下の期間)無給で訓練に専念できる環境かどうかを、家族や自治体の担当者としっかり話し合っておきましょう。無理な計画は、後々の挫折の原因になりかねません。

⚠️ 注意

就労移行支援の利用には、多くの場合「前年度の所得」に応じた利用料が発生します。多くの場合は無料ですが、事前に自治体へ確認しましょう。

就労移行支援と他のサービスの比較

就労継続支援A型・B型との違い

よく混同されるのが「就労継続支援」です。大きな違いは、「一般企業への就職を目指すかどうか」と「給料が出るかどうか」にあります。就労移行支援は、あくまで一般企業へのステップアップを目的としており、雇用契約は結びません。対して継続支援は、その場所自体が働く場となります。

A型は雇用契約を結ぶため最低賃金が保証されます。B型は雇用契約を結ばず、体調に合わせた短時間勤務が可能で、作業に対する「工賃」が支払われます。一般就労への意欲が非常に高く、今のところスキル習得に専念できる方は「就労移行支援」を、まずは働いて収入を得ながら安定を目指したい方は「就労継続支援」を選ぶのが一般的です。

ハローワークの専門窓口との使い分け

ハローワークは求人紹介のプロですが、日々の生活習慣の改善や、細かいスキル習得のトレーニングまでは面倒を見てくれません。一方、就労移行支援事業所はハローワークと連携しており、訓練の結果をもとにハローワークでの活動を有利に進めるサポートをしてくれます。

すでに「何がしたいか」が明確で、必要なスキルも持っている人はハローワークだけで十分です。しかし、「どんな配慮が必要か分からない」「面接で病気の説明がうまくできない」という方は、就労移行支援でスタッフと一緒に「自己紹介シート」や「ナビゲーションブック」を作成してからハローワークに行くことで、マッチングの精度が格段に上がります。

障害者就業・生活支援センターとの連携

地域には「なかぽつ(ナカポツ)」と呼ばれる、障害者就業・生活支援センターという心強い味方もいます。ここは就職だけでなく、生活面の相談(住まい、余暇、金銭管理など)にも乗ってくれる場所です。就労移行支援事業所は、このセンターとも連携してあなたの生活を多角的に支えます。

就労移行支援の利用期間が終わった後も、このセンターが定着支援を引き継いでくれることが多いため、早い段階で顔を売っておくのが得策です。一つのサービスに固執するのではなく、複数の支援機関をパズルのように組み合わせて、自分を取り囲む「支援の網」を作ることが、安定した社会復帰のコツです。

項目 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 一般企業への就職 福祉的就労(雇用あり) 福祉的就労(雇用なし)
給料(工賃) 原則なし 最低賃金を保証 出来高に応じた工賃
利用期間 原則2年間 制限なし 制限なし

自分にぴったりの事業所を選ぶ3つの基準

訓練プログラムの内容が自分の目標に合っているか

事業所によって、得意とする訓練内容は全く異なります。PCスキル(ExcelやWord)に特化したところもあれば、プログラミングやデザインを学べるところ、あるいは軽作業や清掃などの実践的なトレーニングを重視するところもあります。あなたの「なりたい姿」を想像して、そのスキルが身につく環境かどうかを見極めましょう。

また、最近では「在宅訓練」に対応している事業所も増えています。将来的に在宅ワークを目指したい方は、オンラインでのコミュニケーションツールやタスク管理の使い方も学べる事業所を選ぶのが賢明です。見学の際には、実際にどのようなプログラムが行われているか、テキストや機材を自分の目で確かめることが大切です。

就職実績と「定着率」をチェックする

事業所選びで最も重要な指標の一つが、過去の就職実績です。単に「何人就職したか」だけでなく、どのような業界や職種に決まったのかを確認しましょう。さらに重要なのが「定着率(半年後や1年後に働き続けている割合)」です。就職させて終わりではなく、その後のフォローが手厚いかどうかを見極める指標になります。

実績を聞く際は、「自分と同じような障害特性を持つ人が、どのような会社に決まったか」を質問してみてください。成功事例が多い事業所は、企業側との信頼関係も厚く、独自の求人ルートを持っていることもあります。具体的なエピソードを話してくれるスタッフがいる事業所は、一人ひとりと丁寧に向き合っている証拠です。

スタッフや事業所の雰囲気が自分に合うか

どれほどプログラムが素晴らしくても、スタッフとの相性が悪ければ通い続けるのが苦痛になってしまいます。就労移行支援は最長2年という長い付き合いになります。スタッフの言葉遣いや態度は親切か、あなたの悩みを否定せずに聞いてくれるか、そして何より「ここでなら安心して失敗できる」と思える雰囲気があるかを確認しましょう。

できれば1日の見学だけでなく、数日間の「体験利用」をすることをお勧めします。実際の訓練に参加し、他の利用者との距離感や、休憩時間の過ごし方などを肌で感じてみてください。直感は意外と当たるものです。あなたが「ここなら自分らしくいられそう」と思える場所が、最適な事業所です。

✅ 成功のコツ

少なくとも3か所以上の事業所を見学して比較しましょう。それぞれの特徴がより明確に見えてきます。

就労移行支援に関するよくある質問

Q1. 2年経っても就職できなかったらどうなりますか?

原則は2年ですが、市区町村の判断により最大1年間の延長が認められる場合があります。ただし、これは「あと少しで就職が決まりそう」という具体的な見込みがある場合に限られます。もし2年経過しても就職が難しい場合は、無理に一般就労を急がず、就労継続支援A型やB型に切り替えて、さらに力を蓄えてから再挑戦するというルートもあります。2年間という時間をどう有効に使うか、常にスタッフと相談しながら進めることが大切です。

Q2. 通うのに交通費や昼食代はかかりますか?

事業所によって対応が分かれます。自治体から交通費の助成が出る地域もあれば、事業所が独自に交通費を補助している場合もあります。昼食についても、無料で提供してくれる事業所や、1食数百円で食べられるところ、あるいは完全にお弁当持参のところなど様々です。これらは地味ですが、毎日通うとなると大きな出費になります。契約前に必ず「自己負担がいくらになるか」を確認しておきましょう。

Q3. 就職活動中、企業に「移行支援を使っていること」は隠すべき?

隠す必要はありません。むしろ、障害者雇用枠での応募であれば、就労移行支援を使っていることは「自分の特性を理解し、働く準備を整えてきた」という前向きな評価に繋がることが多いです。企業側も、支援機関がついていることで「入社後のトラブルの際にも相談できる窓口がある」と安心します。スタッフは企業への同行や条件交渉も手伝ってくれるため、積極的にアピールして支援をフル活用しましょう。

Q4. アルバイトをしながら通うことはできますか?

原則として、就労移行支援を利用しながらのアルバイトは認められていません。この制度は「一般就労が困難な状態にある人」を対象としているため、働ける状態であればサービスは不要と判断されるためです。ただし、自治体によっては、就職直前の短期間の試行的な就労などを認める例外もあります。経済的な事情でどうしても働かなければならない場合は、まず自治体の窓口や相談支援専門員に正直に相談してみてください。

「最初は週3日通うのも精一杯でしたが、スタッフの方と半年かけてリズムを整え、今は事務職として1年以上働き続けています。あの時、勇気を出して見学に行って本当に良かったです。」

— 元利用者のAさん


まとめ

就労移行支援は、あなたの「働きたい」という想いを現実に変えるための強力なプラットフォームです。生活リズムの構築、自己理解の深化、そして具体的な就職テクニックの習得。これらをプロのサポートを受けながら進められる環境は、他にはありません。一方で、自分の現在のスキルレベルや体調、経済状況によっては、他のサービスのほうが適している場合もあります。

大切なのは、今の自分を客観的に見つめ、「今、何が最も必要なのか」を判断することです。迷っているなら、まずは一歩踏み出してみましょう。多くの事業所では無料の相談や見学を受け付けています。「合わない」と思えば別の道を探せば良いだけです。この記事が、あなたが自分にぴったりの働き方を見つけるためのガイドになれば幸いです。あなたの挑戦を、心から応援しています。

まとめ

  • 生活リズムを整え、自分の特性をプロの視点で分析したい人にとって、就労移行支援は最適な場所です。
  • 即戦力のスキルがあり、すぐに収入が必要な場合は、就労継続支援A型やエージェントの活用も検討しましょう。
  • 事業所選びでは、プログラムの内容、就職・定着実績、そしてスタッフとの相性を実際に体験して確かめることが重要です。
  • 「2年間」という期限を有効に活用するために、医師や自治体の担当者と相談し、ベストなタイミングで利用を開始しましょう。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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