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特別支援学校を選ぶまでの道のりと決断の理由

📖 約51✍️ 鈴木 美咲
特別支援学校を選ぶまでの道のりと決断の理由
知的障害と難病を抱える娘の就学先として、特別支援学校を選んだ保護者の体験談です。当初抱いていた「地域の学校」への強い執着や葛藤、特別支援学校に対する偏見をどのように乗り越えたかを詳しく綴っています。実際に見学して驚いた専門性の高い教育環境や、医療的ケアの安心感、子供の自己肯定感を守る重要性など、決断の決定打となった3つの理由を解説。入学後のポジティブな変化や、同じ悩みを持つ親へのアドバイスを交え、納得のいく就学先選びのためのヒントを提案します。

特別支援学校への進学を決めるまで——親の葛藤と子供の未来を信じた選択の記録

お子さんの就学先を選ぶ時期、親御さんの心は千々に乱れるものです。「地域の友達と一緒に育ってほしい」という願いと、「この子に合った手厚い支援を受けさせてあげたい」という現実的な視点。特に知的障害や難病を抱えるお子さんの場合、特別支援学校という選択肢は、期待と同時にある種の「寂しさ」を伴うこともあるでしょう。

私自身、希少難病と重度の知的障害を持つ娘の就学先を決める際、夜も眠れないほど悩み抜きました。しかし、現在娘は特別支援学校で毎日を笑顔で過ごしています。この記事では、私がどのようなステップを踏み、何を決定打として特別支援学校を選んだのか、その道のりを詳しく綴ります。この記事が、今まさに就学相談の渦中にいる皆さんの心を、少しでも軽くする一助となれば幸いです。


就学先選びのスタート地点と抱いた不安

「普通」への執着と揺れ動く心

娘が年少の頃、私の頭には「地域の小学校の支援級」という選択肢しかありませんでした。近所の子供たちと一緒にランドセルを背負って登校する姿を夢見ていたのです。特別支援学校という存在は知っていましたが、どこかで「そこはもっと重い障害のある子が行く場所だ」と、自分には関係のない世界のように線を引いていました。

しかし、成長とともに娘の理解力の遅れや、集団生活でのパニックが目立つようになりました。療育センターの先生から「特別支援学校も視野に入れてみませんか」と言われたとき、私は自分の育て方が否定されたような、あるいは娘の未来が限定されてしまったような、激しい喪失感に襲われました。今思えば、それは娘のためではなく、親である私のプライドだったのです。

情報不足が引き起こす恐怖

なぜ私がこれほどまでに特別支援学校を避けていたのか。それは、単に「知らない」からでした。当時の私は、特別支援学校に行けば勉強は全く教えてもらえないのではないか、卒業後の進路が狭まるのではないか、といった根拠のない不安を抱えていました。ネット上の断片的な情報に振り回され、勝手に壁を作っていたのです。

また、地域の小学校に行けば、多様性を認める友達に囲まれて幸せになれるはずだという理想もありました。しかし、それは「適切な支援」がなければ、娘にとってただの過酷な環境になりかねないという視点が欠けていました。親の理想と子供の現実。そのギャップに苦しむ時期が1年近く続きました。

⚠️ 注意

就学先選びにおいて、親の「理想の姿」を子供に押し付けていないか、一度立ち止まって考えることが必要です。環境が合わないストレスは、子供の二次障害を引き起こす原因にもなり得ます。

就学相談という高いハードル

自治体の「就学相談」が始まると、いよいよ現実を突きつけられる感覚になります。医師の診断書、発達検査の結果、専門員との面談。数字や判定で娘の能力が仕分けられていく過程は、親にとって精神的な磨耗を伴うものです。私は面談のたびに、娘がいかに頑張っているかを必死にアピールしていました。

しかし、相談員の方は優しくこう言いました。「お母さん、私たちは娘さんを不合格にするためにいるのではありません。娘さんが最も輝ける場所を一緒に探すパートナーです」。その言葉を聞いて、私は初めて「戦う」のをやめ、相談することに意識を向けられるようになりました。この視点の転換が、納得のいく進路選びの第一歩となりました。


特別支援学校を見学して見えた真実

教育環境の圧倒的な質と安心感

重い腰を上げて初めて特別支援学校の見学に行った日、私の偏見は180度覆されました。校内に一歩足を踏み入れると、そこには子供たちの実態に合わせた驚くほど緻密な工夫が溢れていました。視覚的にスケジュールを伝える写真カード、車椅子でも移動しやすい広い廊下、そして何より、先生方の専門性の高さに圧倒されました。

地域の小学校では1人の担任が35人以上を見るのが普通ですが、特別支援学校では数人の子供に対して複数の教員が配置されます。娘のような知的障害がある子にとって、指示が通らない不安の中で過ごす1時間よりも、個別に寄り添ってもらい「できた!」を積み重ねる10分間の方が、どれほど価値があるか。その光景を目の当たりにして、私の心は大きく揺れました。

「自立」を目指す具体的なカリキュラム

特別支援学校は、単に「預かる場所」ではありませんでした。学習指導要領に基づきつつも、「生活単元学習」や「自立活動」といった、生きていくために必要な力を育む独自の授業が充実しています。ボタンを留める、順番を待つ、自分の気持ちを伝える。そうした生活の基礎を、教育のプロが徹底的にサポートしてくれるのです。

地域の学校の支援級も見学しましたが、やはり教科書の内容をどう噛み砕くかに主眼が置かれていました。一方で、特別支援学校は「この子が将来、一人で買い物に行けるようになるには?」「仕事に就くために必要な集中力は?」という、数十年後を見据えた教育を行っていました。この長期的な視点こそが、難病や障害を持つ我が子に最も必要なものだと直感しました。

💡 ポイント

学校見学の際は、授業内容だけでなく「休み時間の過ごし方」や「給食の指導風景」を見てください。子供たちの表情がリラックスしているかどうかが、その環境の適合性を示す一番の指標です。

在校生保護者のリアルな声に救われて

見学の際、たまたまお話しできた在校生の保護者の方の言葉が、私の背中を強く押してくれました。「最初は地域の学校に未練があったけれど、ここに来てから娘が一度もパニックにならなくなったの。自分を受け入れてもらえる場所があるって、親にとっても最大の救いよ」。その言葉には、嘘偽りのない実感がこもっていました。

「普通」の集団の中で必死に背伸びをさせ、疲弊していく娘を見るのは耐えられない。それよりも、この子の歩幅を尊重し、笑って過ごせる場所を選びたい。そう思えたとき、あんなに怖かった特別支援学校という選択肢が、光り輝く希望の道に見えてきました。以下の表は、検討段階で比較したポイントのまとめです。

比較項目 地域の小学校(支援級) 特別支援学校
教員1人あたりの児童数 約3人〜8人 約1人〜3人(重層的な配置)
カリキュラムの柔軟性 通常級に準ずる部分が多い 個別の教育支援計画に完全特化
専門スタッフ(看護師等) 自治体により配置に差がある 常駐しており、医療的ケアにも対応
施設設備 一般的な学校設備 スヌーズレン室、スロープ等充実


決断の決定打となった「3つの理由」

理由1:医療的ケアと安全への配慮

難病を抱える娘にとって、体調の急変は常に隣り合わせのリスクです。地域の小学校では、看護師が配置されていても「教育」と「医療」の連携に壁を感じることがありました。しかし、特別支援学校は学校全体が医療的ケアを前提とした組織体制になっています。吸引や導尿、発作時の対応などがルーチンとして組み込まれている安心感は、何物にも代えがたいものでした。

また、廊下を走る子がいない、角がクッション材で保護されているといった、物理的な安全面での配慮も決定打となりました。親が毎日付き添わなくても、この場所なら娘の命と安全が守られる。そう確信できたことが、私の不安を解消してくれました。教育以前に、まずは「安全な居場所」であることが最優先だったのです。

理由2:本人の「居心地」と自己肯定感

ある体験入学会のとき、娘が初めて会う先生に笑顔で駆け寄っていく姿を見ました。地域の小学校の見学では、多すぎる人数と騒音に圧倒されて私の足にしがみついていた娘が、です。特別支援学校の先生方は、声のトーン、話すスピード、視線の合わせ方まで、娘が安心するポイントを瞬時に見抜いて接してくれました。

「この子はここでなら、自分をダメな存在だと思わずに済む」。そう確信しました。周りができることが自分だけできない環境で過ごすことは、幼い心に深い傷を残します。反対に、自分の特性が当たり前の個性として認められる環境なら、娘の自己肯定感は健やかに育まれるはずだ。この直感が、決断の大きな柱となりました。

理由3:卒業後の豊かな進路ネットワーク

特別支援学校は、地域の就労支援事業所や福祉施設との繋がりが非常に強固です。高等部を卒業した後の「出口」まで見据えた一貫した支援体制があります。地域の学校では、進路指導の段階で親がゼロから福祉サービスを探さなければならないケースも多いですが、支援学校には長年蓄積されたデータとノウハウがあります。

娘の人生は小学校で終わりではありません。むしろ、学校を卒業した後の人生の方が圧倒的に長いのです。その長い道のりを、福祉の専門家たちと手を取り合って歩んでいける体制が整っていることは、私たち親にとって最大の安らぎとなりました。「18歳以降の娘の笑顔」を想像できたことが、最終的な決め手となりました。

✅ 成功のコツ

夫婦で意見が割れたときは、ぜひ「20歳になった子供がどこで、どんな顔で過ごしているか」を共通のゴールとして話し合ってみてください。目の前の「学校名」より大切なものが見えてきます。


入学後に実感した「選んで良かった」瞬間

初めての運動会で見せた奇跡

入学して数ヶ月後、初めての運動会。地域の学校なら、娘は音に驚いて耳を塞ぎ、参加することさえ難しかったでしょう。しかし、支援学校の運動会は、音響の音量も調整され、種目も子供たちが無理なく参加できるようカスタマイズされていました。娘が自分の足でゴールテープを切り、先生とハイタッチをする姿を見て、私は涙が止まりませんでした。

そこには、「障害があるから参加させてもらう」のではなく、「一人の主役として輝く」娘がいました。順位を競うのではなく、昨日の自分を超えることを祝福してくれる環境。この温かな眼差しの中で過ごせる幸せは、何物にも代えられません。娘は今、自分の力で頑張ることの楽しさを、日々学んでいます。

「お母さん」という役割に専念できる

支援学校に通い始めてから、私自身の精神状態も劇的に改善しました。以前は、娘の遅れを補うために家庭でも「訓練」ばかりしていましたが、今はそれを学校のプロに安心してお任せできています。学校からの連絡帳には、娘の小さな成長が専門的な視点で毎日綴られており、それを読むのが楽しみになりました。

学校が娘を丸ごと受け止めてくれることで、私は学校の愚痴を聞いたり、宿題を無理やりやらせたりする「厳しい先生」ではなく、ただ娘を愛でる「お母さん」に戻ることができました。家庭が再び安らぎの場になったこと。これこそが、特別支援学校という選択が家族にもたらした最大のギフトだったと感じています。

友達との「対等な」関わり

「特別支援学校だと友達ができないのでは?」という不安もありましたが、それは大きな間違いでした。クラスメイトたちは、お互いの特性を自然に受け入れ、言葉を超えたコミュニケーションをとっています。車椅子を押し合ったり、パニックになった子を優しく見守ったり。そこには、大人が教えなくても育まれる、深い共感と友情がありました。

地域の交流級の友達とも、学期に一度の交流会で良い関係を築いています。支援学校という確固たるホームグラウンドがあるからこそ、娘は地域の友達ともリラックスして接することができています。「分ける教育」ではなく、「適切な支援のための環境選択」だったのだと、改めて実感する毎日です。

「支援学校を選んだことは、娘の可能性を諦めたことではなく、娘が最も伸びるための土壌を選んだことでした。」

— 難病児を持つBさん(保護者)


よくある質問(FAQ)

Q. 特別支援学校に行くと、普通高校への進学はできなくなりますか?

法的には可能ですが、特別支援学校(小学部・中学部)のカリキュラムは「知的障害者用」となっていることが多いため、全日制高校の入試内容をカバーするのは非常に困難なのが現実です。しかし、近年では通信制高校や単位制高校など、多様な学習歴を受け入れる高校が増えています。進路の幅は、親の情報収集次第でいくらでも広げることができます。

Q. 地域の友達と疎遠になってしまうのが心配です。

「居住地校交流」という制度を活用すれば、支援学校に在籍しながら地元の小学校の行事や授業に参加し、近所のお友達と繋がりを持ち続けることが可能です。また、地域の放課後等デイサービスを利用することで、学校以外の場所で地元の友達を作ることもできます。「学校」だけがコミュニティではないと考えれば、不安は軽減されるはずです。

Q. 就学相談で「支援学校」を勧められましたが、納得できません。

相談員の意見はあくまでアドバイスであり、最終的な決定権は保護者にあります。もし納得がいかない場合は、判定を不服として再協議を求めることも可能です。ただし、なぜ専門家がそこを勧めるのか、その客観的な理由を冷静に聞くことも大切です。感情的にならず、「娘のどんな特性が、支援学校に適していると判断されたのか」を具体的に問い、納得いくまで話し合ってください。

💡 ポイント

地域の学校の「支援級」と「特別支援学校」の両方を、最低でも2回は見学することをお勧めします。1回目で見落とした細かな配慮や、子供たちの表情の違いが見えてきます。


まとめ

特別支援学校を選ぶまでの道のりは、親にとって自分の中の偏見や理想と向き合う、苦しくも大切なプロセスでした。しかし、その先に見つけたのは、娘が誰と比較されることもなく、自分自身のスピードで成長し、心から笑える楽園のような場所でした。

  • 子供の「今」を直視する:親の希望する未来ではなく、今の子供が最も安心し、力を発揮できる環境を選びましょう。
  • 情報は「生」の声を重視する:学校見学や在校生保護者との対話を通じて、イメージではないリアルの支援体制を確認してください。
  • 決断はポジティブな選択:特別支援学校は「普通」の代替品ではなく、子供の可能性を最大化するための専門機関です。

進路選びに正解はありません。しかし、親が迷い、悩み抜いて出した結論であれば、それはお子さんにとって必ず「最善」のものになります。お子さんの笑顔を信じて、一歩踏み出してみてください。応援しています。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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