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個別支援計画で気づけた子どもの強み

📖 約49✍️ 鈴木 美咲
個別支援計画で気づけた子どもの強み
知的障害や難病を持つお子さんの「個別支援計画」を、単なる事務書類ではなく、お子さんの潜在的な強みを発掘するための「宝の地図」として活用する方法を提案した記事です。親が陥りがちな「課題(欠点)ばかりに目が向く」状態を、支援者との対話やリフレーミング(視点の変換)を通じて、「強みを伸ばす視点」へ変えていくプロセスを詳しく解説。難病による体調の波を考慮した柔軟な目標設定、学校や福祉間の情報連携の重要性、そして計画を通じて家族全体のQOLを向上させるコツを、実体験と専門的な知見を交えて温かく伝えています。

個別支援計画が教えてくれた「できない」の先にある子どもの輝き

知的障害や難病を抱えるお子さんを育てていると、どうしても「何ができないか」「周りと比べてどこが遅れているか」という部分に目がいってしまいがちです。学校や役所から届く書類には、課題や不足している能力ばかりが並び、読むたびに心が重くなる経験をされている方も多いのではないでしょうか。

私自身、息子の「個別支援計画」の作成に関わるまでは、その計画書を単なる「事務的な課題リスト」だと思い込んでいました。しかし、支援者の方々と膝を突き合わせ、一文字ずつ計画を作り上げるプロセスの中で、私が見落としていた息子の圧倒的な強みに気づかされたのです。この記事では、個別支援計画を通じて親の視点がどう変わったのか、そしてお子さんの強みを引き出すための計画活用のコツを詳しくお伝えします。この記事を読み終える頃には、お手元の計画書が、お子さんの未来を照らす希望の書に見えるはずです。


個別支援計画を「課題リスト」から「宝の地図」へ

そもそも個別支援計画とは何か

障害福祉サービスを利用する際、必ず作成されるのが「個別支援計画」です。これは、本人がどのような生活を送り、どのような目標を達成したいのかを記したオーダーメイドの支援指針です。放課後等デイサービスや就労支援、生活介護など、それぞれの事業所で作成されます。

多くの親御さんにとって、この計画書は「はい、承諾しました」と判を押すだけの書類になりがちです。しかし、2024年の法改正以降、これまで以上に「本人の意向」や「ストレングス(強み)」を重視する方針が強化されています。単に欠点を補うためのものではなく、本人が自分らしく輝くための戦略図、いわば「宝の地図」として機能させるべきものなのです。

「できないこと」を裏返せば強みになる

計画作成の会議(モニタリング)の中で、支援員さんが仰った言葉が忘れられません。「お母さん、息子さんは『集中力がなくて落ち着きがない』のではなく、『好奇心が旺盛で、情報の取捨選択が非常に速い』んですよ」。このリフレーミング(視点の変換)こそが、個別支援計画の醍醐味です。

落ち着きがないという「課題」を、新しいものへの反応が良いという「強み」として捉え直すと、支援の方法はガラリと変わります。「静かにさせようとする支援」から、「その好奇心を満たしながら学習に繋げる支援」へと進化するのです。計画書を作成する時間は、親が子どもの特性をポジティブに翻訳し直す、極めて重要なセラピーの時間でもありました。

💡 ポイント

個別支援計画を作成する際は、ぜひ「今の困りごと」を支援員さんに伝えてみてください。プロの視点で、その困りごとをどう「強み」に変換できるか、一緒に考えてもらうことができます。

親の知らない「外での姿」が強みを教えてくれる

家庭内では甘えが出て、ワガママ放題の息子も、デイサービスでは「年下の子の面倒をよく見るリーダー」としての一面を持っていました。個別支援計画の中には、私の知らない息子の社会性がびっしりと書き込まれていました。家という狭い空間だけでは見えてこない多面的な強みを、支援員さんたちは見逃さずにいてくれたのです。

親が一人でお子さんの全てを把握しようとする必要はありません。複数の事業所で作られるそれぞれの計画書を読み合わせることで、お子さんの立体的な像が浮かび上がってきます。「この子は、こんなに多くの人に愛され、期待されているのだ」と実感できること。それ自体が、家族にとっての大きな救いになります。


難病児としての歩みと、計画に救われた心

体調の波さえも「計画」に組み込む強さ

難病を抱えるお子さんの場合、成長のペースは一定ではありません。体調を崩せば、昨日までできていたことができなくなることもあります。かつての私は、計画通りに進まないことに焦りを感じていました。しかし、計画の中に「体調に合わせた柔軟な目標」を盛り込むことで、心がふっと軽くなりました。

「今日はここまでできたから100点」ではなく、「今日は椅子に座れたから満点」といった具合に、本人のその時のコンディションに合わせたゴールを設定する。個別支援計画は、決して本人を追い詰めるためのノルマではありません。むしろ、どんな状態の本人であっても「これでいいのだ」と全肯定するための防波堤なのです。

短期目標と長期目標のバランス

難病の進行や知的障害の特性を考慮すると、遠い未来の「自立」という言葉に圧倒されてしまうことがあります。個別支援計画では、大きな目標(長期目標)に向かって、スモールステップの「短期目標」を設定します。この短期目標の設定こそが、親の不安を具体的な安心に変えてくれます。

「半年後に、一人で靴を履けるようになる」という小さな一歩。それが達成されたとき、計画書に「達成」の二文字が刻まれます。この積み重ねが、親子の自信になります。大きな山を一気に登るのではなく、今日の歩幅に合わせた階段を設計する。個別支援計画は、そんな優しさに満ちた仕組みです。

目標の種類 設定の目安 親としての心の持ち方
長期目標 1年~数年単位 お子さんの「なりたい姿」を大きく描く
短期目標 3ヶ月~6ヶ月単位 「これならできそう」という小さな成功を祝う
配慮事項 随時更新 体調や特性への「守り」のルールを明確にする

支援者との「共闘関係」が生まれる瞬間

個別支援計画を一緒に作っていく中で、支援者の方々は「単なるサービス提供者」から、共に戦う「戦友」へと変わっていきました。私の不安を計画に反映し、具体的な対応策を明文化してくれることで、「私一人でこの子を守らなくていいんだ」と心から思えるようになったのです。

ある時、計画の中に「お母さんの休息時間を確保するためのサービス利用」という一文が入っていました。支援員さんは、「お母さんが元気でいることが、お子さんの最大の環境調整です」と仰いました。個別支援計画は、お子さんだけでなく、家族全体の笑顔を守るための計画でもあるのです。


実例:個別支援計画が変えた息子の日常

こだわりを「職人気質」という強みに

息子には、特定の電車の時刻表を丸暗記し、一分でも遅れるとパニックになるという強い「こだわり」がありました。私はそれを、社会生活を妨げる困った癖だとばかり思っていました。しかし、個別支援計画の作成時に、「この記憶力と、正確さへの執着は素晴らしいギフトです」と評価されました。

計画では、そのこだわりを無理に消すのではなく、「情報を整理する力」として伸ばす方向が示されました。デジタルツールを使って、自分の予定を管理する練習を始めたのです。自分の特性が「悪いこと」ではなく「役に立つこと」として認められた息子は、以前よりもずっと落ち着いて過ごせるようになりました。

成功のコツは「本人の好きなこと」から始める

計画を立てる際、どうしても「着替え」や「排泄」など、身辺自立の目標を優先させたくなります。しかし、成功のコツは「本人の強み・好きなこと」を計画の真ん中に据えることです。息子の場合、それは「絵を描くこと」でした。絵を通じてコミュニケーションをとる、絵を完成させるために椅子に座る。

好きなことを軸に計画を立てると、本人の意欲が全く違います。「やらされる課題」から「やりたい活動」へ。その変換ができたとき、個別支援計画は真に命を宿します。以下の成功のコツを、ぜひ次回の面談で意識してみてください。

✅ 成功のコツ

「課題」の欄を埋める前に、「お子さんが笑顔になる瞬間」を箇条書きにして支援員さんに渡してみましょう。それが計画の最も重要なベースになります。

「できない」の裏にある「できている」を見つける

「ボタンが留められない」という課題があったとします。以前の私なら「まだできないのか」とため息をついていました。しかし計画書には、「ボタンを穴にかけようと指先を動かし、3秒間集中できた」と書かれていました。結果が0点でも、そのプロセスの中に100点の努力があることを、計画書は教えてくれました。

結果ではなく過程を評価する。この視点が親に備わると、家庭内の雰囲気は劇的に変わります。個別支援計画は、親が「子どものプロ」である支援者から、褒め方のコツを盗むための教科書でもあるのです。計画書を読むたびに、息子の小さな頑張りを見落としていた自分を反省し、同時に新しい強みを見つける喜びに浸っています。


学校と福祉、そして家庭を繋ぐ「共通言語」

学校の教育支援計画との連携

学校で作成される「個別の教育支援計画」と、福祉事業所で作られる「個別支援計画」。この二つをバラバラにしておくのはもったいないことです。私は、福祉側の計画書を学校の担任の先生に見せ、逆に学校の計画を福祉事業所に共有するようにしました。これにより、一貫した支援が可能になります。

学校では見せない強みを福祉側が知っており、福祉では見せない課題を学校が把握している。情報を繋ぎ合わせることで、お子さんのサポートの網の目が細かくなります。この連携の核となるのが、明文化された個別支援計画なのです。親は、情報を運ぶ「ハト」になり、お子さんの強みをあらゆる場所で自慢していきましょう。

将来の「移行支援」を見据えた準備

お子さんが成長し、学校を卒業して社会に出る際、これまでの個別支援計画の蓄積は、本人の「歩みの証明」となります。新しい場所へ移る際、ゼロから特性を説明するのは大変な労力です。しかし、過去数年分の計画書があれば、どのような支援が有効で、どのような強みがあるのかが一目瞭然です。

個別支援計画を書き溜めておくことは、お子さんの「応援団」を増やすための歴史を作ることでもあります。将来、親の手を離れていくとき、この計画書たちが本人の代わりに「僕はこんなことが得意で、こんな風に助けてほしい」と語ってくれるはずです。今、判を押しているその一枚は、未来の本人を守るための盾になります。

⚠️ 注意

計画書の内容が実態と合っていないと感じたら、遠慮なく修正を依頼しましょう。計画は固定されたものではなく、お子さんの成長に合わせて「進化」させていくものです。

きょうだい児や家族の視点も計画に

個別支援計画の会議には、時にきょうだい児の様子や、家族の就労状況なども話題に上ります。「お兄ちゃんがデイに行っている間、妹とゆっくり過ごす時間を確保する」といった目標が、間接的に本人への良い影響として盛り込まれることもあります。家族は運命共同体です。

本人の強みを伸ばすためには、支える家族が健康でなければなりません。個別支援計画という枠組みを使って、家族全体のサポート体制を公的に認めてもらう。そうすることで、福祉サービスを罪悪感なく利用できるようになります。強みを伸ばすための「余白」を作ることも、計画の立派な目的の一つです。


よくある質問(FAQ)

Q. 個別支援計画の面談で、支援員さんに言いたいことが言えません。

緊張してしまいますよね。対策として、事前に「最近の良かったこと」と「今困っていること」をメモして持参することをおすすめします。口頭で伝えるのが難しければ、そのメモをそのまま渡しても構いません。支援員さんは、親御さんの本音を最も必要としています。上手く話そうとせず、箇条書きのメモで十分伝わりますよ。

Q. 目標が達成できなかったとき、子供が傷つかないか心配です。

個別支援計画の目標は、あくまで「支援の方向性」であり、お子さんをテストするためのものではありません。もし達成できなかったら、それは「目標設定が高すぎた」か「支援の方法が合っていなかった」だけであり、お子さんのせいではないのです。むしろ、目標を修正する過程で「この子にはこのアプローチの方が合う」という新しい発見ができるため、失敗は成功の母になります。

Q. 難病で将来が不透明な場合、どのような目標を立てればいいですか?

無理に「数年後の自立」を掲げる必要はありません。今、この瞬間を「心地よく過ごすこと」も立派な目標です。例えば、「好きな音楽を聞いてリラックスする時間を増やす」「自分の気持ちをYES/NOで伝えられるようになる」など、QOL(生活の質)の向上に焦点を当てた目標を立てましょう。その時々の体調に寄り添い、本人が「今、幸せであること」を最大の目標に据えてみてください。


まとめ

個別支援計画は、お子さんの「できない」を数えるためのものではなく、まだ誰にも見つかっていない「強み」を採掘するための道具です。親、本人、そして支援者が三位一体となって作り上げるこの計画には、お子さんの未来を変える力が宿っています。

  • 強みを再定義する:困った特性をリフレーミングし、お子さん独自の才能として計画に盛り込みましょう。
  • スモールステップを祝う:短期目標を設定し、日々の微細な成長を「見える化」して親子で自信をつけましょう。
  • 連携のハブにする:家庭、学校、福祉を計画書で繋ぎ、お子さんを360度から支える応援団を作りましょう。

次に個別支援計画の面談があるときは、ぜひ「この子の新しい強みを一緒に見つけましょう」と切り出してみてください。その一言から、新しい物語が始まります。お子さんの可能性を誰よりも信じているあなたと、プロの視点を持つ支援者が手をつなげば、どんな困難も乗り越えていくことができます。これからも、お子さんの輝きを一枚一枚の計画書に刻んでいきましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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