心と体がつらいときの原因と対処法【障害当事者向け】

心と体がつらいときの原因と対処法【障害当事者向け】
心と体がつらい、しんどいと感じる時、その辛さを誰にもわかってもらえないように感じ、孤独な気持ちになることはありませんか。
「頑張りたいのに頑張れない」「昨日までできていたことが急にできなくなった」といった経験は、障害を持つ多くの当事者の方が抱える共通の悩みです。
この記事では、心と体がつらいと感じる時の主な原因を、専門的な視点と、当事者の方々のリアルな声も交えて深掘りします。 そして、その辛さを和らげ、自分らしく毎日を送るための具体的な対処法や相談窓口をご紹介します。
自分を責める必要はありません。まずはこの記事を読んで、ご自身の心と体が発しているサインに耳を傾けてみましょう。
心身の不調はなぜ起こる?主な原因を知る
心と体の不調を感じる時、「自分の努力が足りないからだ」「もっと我慢しなければ」と考えてしまう方もいますが、それは違います。
不調の裏側には、様々な要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。ここでは、障害当事者の方によく見られる、心身の辛さの主な原因を解説します。
原因を知ることは、適切な対処への第一歩となります。
障害特性と環境のミスマッチ
心の辛さや体の疲れは、ご自身の障害特性と、いま置かれている環境(職場、学校、家庭、地域社会など)が合っていないことから生じることが多くあります。
例えば、聴覚過敏のある方が騒音の多い職場で働いている場合、常に神経をすり減らし、それが極度の疲労やストレスに繋がります。
また、発達障害(ADHD、ASDなど)の特性を持つ方が、曖昧な指示が多い職場で働いていると、強い不安感やミスへの恐れから、心身の不調を引き起こしやすいです。
二次障害や併存疾患の可能性
もともとの障害に加えて、長期的なストレスや環境の不適応が原因で、新たな精神疾患や身体的な不調を発症することがあります。これを「二次障害」と呼びます。
💡 ポイント
二次障害の例として、うつ病、不安障害、パニック障害、不眠症、あるいは心因性の身体症状(頭痛、めまい、胃腸の不調など)が挙げられます。
特に、痛みや不快感を言葉で表現するのが苦手な場合、身体的な不調として心の辛さが現れることもあります。
過度な努力と自己肯定感の低下
障害を持つ方が社会で生活する中で、「人並みに見られたい」「迷惑をかけたくない」という思いから、必要以上に努力してしまうことがあります。
しかし、特性に合わない過度な努力は、やがて心身のキャパシティを超え、燃え尽き症候群のような状態を引き起こします。
頑張りすぎて疲弊した結果、「こんな自分ではダメだ」と自己肯定感が低下し、さらに気持ちが落ち込んでしまうという悪循環に陥りやすいのです。
心がつらい時の具体的なサインと対応策
心が「もう限界だ」と訴える前に、私たちの体と心はいくつかのサインを出しています。
そのサインに気づき、早めに対処することが、重い不調を防ぐ鍵となります。ここでは、心がつらい時の具体的なサインと、それぞれに対する有効な対処法を見ていきましょう。
見過ごしてはいけない心のSOSサイン
以下のような変化が見られたら、あなたの心が休息を求めているサインかもしれません。
- 何をしても楽しくない、喜びを感じられない(抑うつ気分)
- 集中力が続かない、以前より忘れっぽくなった
- イライラしやすくなった、小さなことで怒りを感じる
- 食欲がない、または過食してしまう
- ベッドに入っても眠れない、または寝すぎる(睡眠障害)
- 人と会うのが億劫になり、引きこもりがちになった
これらの症状が2週間以上続く場合は、専門家への相談を検討すべき時期です。
心の休息をとるための対処法
心の疲労回復には、物理的な休息だけでなく、精神的な休息も不可欠です。
まずは、「何もしない時間」を意識的に確保しましょう。趣味や生産的な活動から一旦離れ、ただぼーっとする時間も立派な休養です。
✅ 成功のコツ
「やめる勇気」を持つことが重要です。完璧主義を手放し、「今日はこれだけできれば十分」と、自分へのノルマを下げる練習をしてみましょう。
感情を「見える化」する習慣
ご自身の感情や体調を客観的に把握するために、日記やムードトラッカー(感情記録ツール)を活用してみましょう。
感情を言葉にしたり、色や数字で記録したりすることで、辛さの原因やパターンが見えてくることがあります。
| 記録項目 | 記録の目的 |
|---|---|
| 気分(5段階) | 感情の波を客観視する |
| 睡眠時間 | 心身の安定との関係を見る |
| 出来事 | 不調のトリガー(きっかけ)を特定する |
この記録は、後で医療機関や支援機関に相談する際の、非常に重要な情報にもなります。
体がだるい、疲れる時の対策と環境調整
体の辛さは、心への負担にも直結します。特に、慢性的な疲労や痛みは生活の質(QOL)を大きく低下させます。
ここでは、体がだるく、疲れやすい時の原因を深掘りし、日常生活でできる具体的な対策と、疲労をためないための環境調整についてご紹介します。
身体的な疲れの裏にある要因
障害当事者の方の中には、健常者の方よりも疲れやすい傾向にある方も少なくありません。これには、様々な身体的要因や、特性からくる生活のしづらさが関係しています。
- 感覚刺激の過負荷:音、光、匂いなどに過敏な場合、それらを処理するために常に脳がエネルギーを使っている状態です。
- 姿勢や動作の偏り:肢体不自由や、無意識の緊張などにより、特定の筋肉に負担がかかり、疲労が蓄積しやすくなります。
- 睡眠の質の低下:不安や痛み、生活リズムの乱れなどから深い睡眠がとれていないと、どれだけ長く寝ても疲れがとれません。
「エネルギー貯金」を意識した生活
疲れやすさを自覚している方は、ご自身の「エネルギー貯金」を意識した生活を送ることが大切です。
エネルギーを使いすぎる活動(仕事、人との交流、環境への適応など)と、エネルギーを回復させる活動(休息、趣味、安心できる場所でのんびりするなど)のバランスを意識的にコントロールしましょう。
⚠️ 注意
疲れを感じた時に「もう少し頑張れる」と無理を続けると、エネルギー残高が一気にゼロになる可能性があります。ゼロになる前に必ず休む習慣をつけましょう。
生活空間と仕事・学業の環境調整
疲労を軽減するためには、環境を自分の特性に合わせることが最も効果的です。
例えば、視覚過敏があるなら、職場の照明を暖色系に変えたり、明るさを落としてもらうよう相談する。ADHDの特性で集中力が途切れやすいなら、静かな個室での作業や、休憩時間を増やしてもらうなどの配慮を求めることです。
これらの環境調整は、「わがまま」ではなく、あなた本来の能力を発揮するための合理的な配慮として、職場や学校に提案する権利があります。
「私は音に敏感なので、イヤホンでの作業許可をもらいました。周囲への気兼ねがなくなり、疲れが半分以下に減りました。」
— 当事者の声(30代・精神障害)
一人で抱え込まないための具体的なアクション
つらい時、最も避けるべきは「一人でなんとかしよう」と頑張りすぎることです。
適切なサポートを求めることは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ自分を大切にするための賢明な選択です。
ここでは、心身の不調を感じた時に、今すぐできる具体的なアクションと、活用すべき支援リソースをご紹介します。
専門家への相談をためらわない
心身の不調を感じたら、まず専門家に相談しましょう。相談先は、精神科、心療内科、カウンセリング機関など、症状によって異なります。
特に、睡眠、食欲、意欲の低下などが続く場合は、医療機関の受診を強く推奨します。
医師や心理士は、あなたの話を客観的に聞き、薬物療法や認知行動療法など、あなたの状態に合わせた治療法や対処法を提案してくれます。
利用できる支援制度の確認
障害当事者の方は、その状態や必要性に応じて様々な公的支援制度を利用できます。
- 障害者就業・生活支援センター(ナカポツ):就職や職場定着だけでなく、生活全般に関する相談もできる地域の中核的な支援機関です。
- 相談支援事業所:福祉サービス利用のための「サービス等利用計画」作成など、あなたに合ったサービスを一緒に検討してくれます。
- 地域活動支援センター:日中活動の場を提供し、ピアサポート(当事者同士の支え合い)の機会を得られます。
これらの機関に相談することで、自分だけでは気づけなかった解決策や情報を得られることが多々あります。
ピアサポートや当事者会の活用
同じ障害を持つ人同士だからこそ分かり合える辛さや悩みがあります。
ピアサポートグループや当事者会に参加することは、孤独感を和らげ、共感と安心感を得るための非常に有効な手段です。
自分の経験を話すことで整理ができたり、「自分だけじゃない」という気づきを得られたりすることが、心の回復に繋がります。
「当事者会で話を聞いてもらい、泣いてスッキリしたことがあります。完璧でなくてもいい、という仲間の言葉に救われました。」
— 当事者の声(40代・身体障害)
回復を促すための具体的なセルフケア技術
支援機関や専門家によるサポートと並行して、ご自身で行うセルフケアも非常に重要です。
セルフケアは「自分を甘やかす」ことではなく、「自分の心と体のメンテナンス」と捉えましょう。日々の小さな積み重ねが、大きな不調を未然に防ぎます。
リラックスのための呼吸法とマインドフルネス
心が落ち着かない時や、不安が高まっている時は、呼吸が浅くなっていることが多いです。意識的に深い呼吸を行うことで、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを整えることができます。
- 静かな場所で座るか横になります。
- 鼻から4秒かけて息を吸い込みます。
- 1秒〜2秒息を止めます。
- 口から8秒かけてゆっくりと息を吐き出します。
- これを5回〜10回繰り返します。
また、マインドフルネスは「今、ここ」に意識を集中させ、雑念から心を解放する練習です。毎日5分でも取り組むことで、ストレス反応を和らげる効果が報告されています。
五感を意識した感覚調整
感覚過敏や鈍麻がある方は、五感を意識的に調整するセルフケアが有効です。
| 感覚 | ストレス軽減アクションの例 |
|---|---|
| 視覚 | アロマを焚く、好きな色のものを身につける |
| 聴覚 | 自然音(川の音など)を聞く、ノイズキャンセリングイヤホンを使う |
| 触覚 | 肌触りの良いブランケットにくるまる、ペットを撫でる |
| 嗅覚 | アロマを焚く、好きな色のものを身につける |
| 味覚 | 温かい飲み物をゆっくり飲む、お気に入りの甘いものを少しだけ食べる |
ご自身にとって心地よい感覚刺激を見つけることが、心身の安定に繋がります。
睡眠衛生と生活リズムの確立
良質な睡眠は、心身の回復の基本です。以下の「睡眠衛生」を意識してみましょう。
- 毎朝、同じ時間に起きて日光を浴びる(体内時計のリセット)
- 寝る前のカフェイン、アルコール、喫煙を控える
- 寝室は暗く、静かに、快適な温度に保つ
- 寝る1時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を避ける(ブルーライトが睡眠を妨害します)
💡 ポイント
規則正しい生活リズムを確立することは、心の安定に繋がる予測可能性を生活にもたらします。日中の活動量を調整し、夜はしっかり休むメリハリをつけましょう。
よくある質問(FAQ)と相談窓口
心身の不調を感じている当事者の方やご家族から寄せられる、よくある質問にお答えします。
Q. 病院に行くのは敷居が高いです。他に相談できる場所はありますか?
A. はい、医療機関以外にも安心して相談できる場所はたくさんあります。
特に、地域の精神保健福祉センターや保健所の相談窓口では、無料で専門的な相談が受けられます。ここでは、匿名での電話相談が可能な場合が多く、まずは話を聞いてもらうだけでも心が軽くなることがあります。
また、前述の障害者就業・生活支援センターも、生活全般の相談に応じてくれる心強い味方です。
Q. 障害者手帳がないと利用できない支援は多いですか?
A. 一部の公的な福祉サービス(障害福祉サービスなど)の利用には手帳が必要ですが、手帳の有無にかかわらず利用できる支援は数多く存在します。
例えば、就労移行支援や、地域活動支援センターの一部、精神保健福祉センターでの相談、ハローワークの専門援助部門などは、医師の診断や意見書があれば利用できる場合があります。まずは、お住まいの自治体の窓口や相談支援事業所に問い合わせてみましょう。
Q. 疲れすぎて、何をしたらいいのか分かりません。
A. 燃え尽きている状態では、何かを「すべき」と考えること自体が大きなストレスになります。
まずは、「何もしない」という選択を自分に許してあげましょう。テレビを眺める、横になる、暖かい飲み物を飲む、といった「極小の活動」から始めて、エネルギーが少し回復してから、支援機関への連絡など、次のステップを検討するので十分です。
✅ 成功のコツ
「やらなくてはいけないこと」ではなく、「やってみたいこと(自分を喜ばせること)」をリストアップして、その中から最も負荷の低いものを選ぶことから始めてみましょう。
まとめ
- 心と体の辛さの原因は、障害特性と環境のミスマッチ、二次障害、過度な努力など、複雑な要因が絡み合っています。自分を責める必要はありません。
- 心のSOSサイン(抑うつ、不眠、イライラ)や、体の疲れを見過ごさず、早めに休息と環境調整を行うことが重要です。
- 一人で抱え込まず、専門家(医師、カウンセラー)や支援機関(障害者就業・生活支援センターなど)、そしてピアサポートの力を積極的に借りましょう。
- 日々のセルフケアとして、深い呼吸や五感を意識した感覚調整、規則正しい生活リズムの確立が、心身の安定に役立ちます。
心と体がつらいと感じる時、それはあなたが一生懸命生きてきた証拠でもあります。
今日から「自分に優しくする時間」を意識的に作り、無理せず、あなたのペースで毎日を過ごしていきましょう。
もし、今この記事を読んでいるあなたが非常に辛い状況にあるならば、まずは「相談窓口」に電話一本するという、小さな一歩を踏み出してみませんか。私たちは、あなたの回復を心から願っています。
主な相談窓口・参考情報
- いのちの電話: 0570-783-556(ナビダイヤル)、または 03-6634-2556(IP電話・PHS等)
- 精神保健福祉センター: お住まいの都道府県・政令指定都市の名称+「精神保健福祉センター」で検索
- 障害者就業・生活支援センター: 厚生労働省のサイトなどで全国の施設を検索できます。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





