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就労定着支援の利用で、“辞めない働き方”をサポート

📖 約35✍️ 菅原 聡
就労定着支援の利用で、“辞めない働き方”をサポート
就労定着支援(就定支援)は、就職後最長3年半、障害のある方の「辞めない働き方」をサポートする専門サービスです。主なメリットは、職場とのコミュニケーションの壁の解消です。支援員が、企業側の負担を考慮した合理的配慮の調整案を提案し、交渉を代行します。また、定期的な職場訪問で課題を早期に発見します。さらに、生活リズムの安定や金銭的な不安など、生活課題全般のサポートを通じて、体調悪化による離職を未然に防ぎます。支援を最大限に活かすには、課題を「早期に、正直に、具体的に」伝える主体的な姿勢が不可欠です。

念願の就職を果たしたものの、「入社後、仕事が覚えられずミスが増えてきた」「人間関係のストレスで体調を崩しそう」「上司に相談しにくい課題が出てきた」など、入社後の壁に直面し、早期離職の不安を感じていませんか?

障害のある方の離職率は、一般的に高い傾向があります。その主な原因は、業務のミスマッチ、職場の人間関係、そして体調の波への対応が遅れることにあります。就職活動を頑張って内定を勝ち取っても、その後のフォローがないと、せっかくの努力が水の泡になりかねません。

そこで活用したいのが、障害福祉サービスのひとつである「就労定着支援(就定支援)」です。このサービスは、就職から最長3年半にわたり、あなたと職場、そして支援機関が一体となって、「長く安定して働き続ける」ための環境調整と課題解決を専門的にサポートしてくれます。

この記事では、就労定着支援がどのようなサービスか、そして利用することで得られる「3つの具体的なメリット」を徹底解説します。また、利用の流れや、支援を最大限に活かすための具体的な方法をご紹介し、あなたの「辞めない働き方」をサポートする道筋を示します。


就労定着支援とは?長期安定就労のための必須サポート

就労定着支援は、2018年4月に創設された障害福祉サービスで、就職後の「継続」を目的とした専門的なサポートを提供します。就労移行支援や就労継続支援などを利用して就職した方が、より長く安心して働けるように設計されています。

(1)サービス対象者と利用期間

就労定着支援を利用できるのは、原則として、就労移行支援、就労継続支援、自立訓練(生活訓練)などを経て一般企業に就職した障害のある方です。サービスには利用期間が定められています。

  • 利用期間:就労移行支援などを利用して就職した日から6ヶ月間は、原則として元の支援事業所(就労移行支援など)による「職場定着支援」が提供されます。
  • 就労定着支援:その後の就職後6ヶ月経過した時点から、最長3年間にわたって「就労定着支援」が利用可能になります(合計で最大3年半のサポート期間)。

この長期にわたるサポートこそが、入社後の課題が深刻化する前に、早期に対応し、離職を防ぐための最大の強みです。

(2)定着支援の専門職が担う役割

就労定着支援事業所の担当者(定着支援員)は、あなたの心身の状態、生活状況、そして職場の環境変化を定期的に確認し、課題が顕在化する前に手を打ちます。その役割は多岐にわたります。

  • 生活リズムの確認:体調の波や生活面での課題がないかを確認し、主治医や医療機関との連携をサポート。
  • 職務調整のサポート業務量や内容のミスマッチ、人間関係の課題について、本人と職場双方から情報を収集し、解決策を提案。
  • 外部連携のハブ職場(上司・人事)と、自宅(家族)、医療機関(主治医)、行政(市町村)といった関係機関との連絡・調整役となり、支援を一本化します。

定着支援員は、あなたが直接言い出しにくい「配慮の追加」や「業務の調整」を、専門的な視点から企業に伝える交渉役としての役割も果たします。


メリット1:職場との「コミュニケーションの壁」を解消

入社後、最もストレスとなるのが「職場への相談」です。「忙しそうだから相談しにくい」「配慮をお願いすると評価が下がるのではないか」という不安を、就労定着支援が解消してくれます。

(3)企業側の負担を減らす「情報整理と提案」

定着支援員は、あなたから課題を聞き取るだけでなく、「企業にとって最も実行しやすく、負担の少ない解決策」として調整案を提案します。

  • 具体例(発達障害の場合):あなたが「業務手順が覚えられない」と悩んでいる場合、支援員は「あなたの特性に合わせた指導方法の工夫(例:手順の視覚化、指示を箇条書きにする)が合理的配慮として有効です」と、具体的なツールや方法を企業側に提示します。
  • 交渉の代行:あなたが直接言いにくい「体調不良による一時的な残業免除」や「休憩時間の追加」といった要望も、支援員が「長期的な安定就労に必要な合理的配慮である」と専門家として交渉します。

企業側は、支援員という専門家から客観的なアドバイスをもらえるため、安心して調整に取り組みやすくなります。

(4)「職場訪問」による環境の客観的なモニタリング

定着支援員は、あなたの同意を得た上で、定期的に職場を訪問し、環境や人間関係を直接確認します。これにより、あなたが気づいていない課題や、職場の誤解を早期に発見できます。

  • 支援の例:あなたが「人間関係は良好です」と報告していても、支援員が職場を訪れた際に、同僚からの指示が曖昧で混乱が生じている状況を発見したとします。
  • 介入と調整:支援員は、上司にその状況を伝え、「指示は〇〇さんの席で、必ず文書で渡すというルールを徹底してはどうでしょうか」といった、具体的な対策を提案し、職場の協力を促します。

支援員による客観的なモニタリングは、課題の芽を早期に摘み取り、人間関係や業務のミスマッチの悪化を防ぐ上で、非常に強力な機能です。


メリット2:再発防止と「生活面の安定」を徹底サポート

就労定着支援のサポート範囲は職場に留まりません。体調悪化の根本原因となる生活リズムの乱れや、経済的な不安といった生活課題にも踏み込んで、安定就労を支えます。

(5)「生活の乱れ」を早期に察知し、医療機関と連携

体調の波や生活の乱れは、業務のミスや遅刻欠勤に直結します。定着支援員は、定期的な面談を通じて、あなたの生活リズムのわずかな乱れも見逃しません

  • 生活リズムの確認「睡眠時間の変化」「食欲の有無」「週末の過ごし方」など、仕事から離れた生活面での変化を詳しく確認します。
  • 医療連携:体調悪化の兆候が見られた場合、支援員が主治医と連携を取り、あなたの職場での状況を伝え、治療方針の見直しや、服薬指導の調整をサポートします。これにより、症状が悪化し、休職に至る事態を未然に防ぐことができます。

支援員は、「生活の安定=仕事の安定」という視点から、あなたを全方位的にサポートしてくれます。

(6)「金銭・行政手続き」に関する不安の解消サポート

生活費や障害年金、行政手続きに関する不安も、仕事の集中力を削ぐ大きな要因です。定着支援員は、これらの生活課題についても支援します。

  • 経済的な不安障害年金の手続きのサポート、生活保護や各種福祉制度の利用相談を通じて、経済的な不安を軽減します。
  • 他の専門機関への連携:就労移行支援事業所などが行う定着支援では、必要に応じて「障害者就業・生活支援センター(就生センター)」や「相談支援事業所」といった、生活面・地域生活に特化した専門機関への連携を行います。

仕事上の課題だけでなく、生活上の根深い不安を解消することが、長期的な安定就労の鍵となります。


就労定着支援を最大限に活かすための戦略

就労定着支援は、受け身で待っているだけでは効果が半減します。このサービスを最大限に活かすために、あなた自身が主体的に行動すべき2つのポイントがあります。

(7)1:課題は「早期に、正直に、具体的に」伝える

支援員が効果的なサポートを行うためには、あなたからの正直で具体的な情報提供が不可欠です。

  • 早期伝達「まだ大丈夫」と我慢せず、少しでも不安や異変を感じた時点で支援員に連絡しましょう。問題が大きくなってからでは、解決に時間がかかり、心身の負担も増大します。
  • 具体的な情報:抽象的な「辛い」ではなく、「〇〇さんが△△と言ったことが、私の特性(聴覚過敏)に影響し、その後2時間集中できなかった」といった、具体的な事実と影響をセットで伝えましょう。

支援員は、あなたの味方です。あなたの情報を企業攻撃に使うことはありませんので、信頼して情報を開示することが、定着支援のスタートラインです。

(8)2:支援者を通じて「定期的な見直し」を提案する

就労定着支援は最長3年という長い期間利用できますが、支援内容を更新しないと、マンネリ化しがちです。半年〜1年に一度は、支援者を通じて「定着支援計画の見直し」を企業に提案しましょう。

  • 見直しの機会「入社1年が経過したので、これまでの定着支援が効果的であったかを企業、支援員、私の三者で話し合いたい」と申し出ます。
  • 次のステップ:見直しの場で、「次の1年は、業務拡大を目指して〇〇という新たな配慮を試したい」といった、キャリアアップに繋がるような提案を行うことも可能です。

支援の計画を見直すことで、あなたは常に成長し、企業はサポートを継続する責任を再認識する、という好循環が生まれます。


まとめ

就職はゴールではなく、スタートラインです。障害者雇用で「辞めない働き方」を実現するためには、就労定着支援という専門的なサポートを最大限に活用することが、最も合理的で効果的な戦略です。

就労定着支援は、職場との建設的なコミュニケーションを可能にし、生活面での課題にも踏み込んで、あなたの安定就労を全方位から支えます。不安を一人で抱え込まず、支援員を信頼して早期に課題を共有し、主体的に支援を求める姿勢を持つことが、長期安定就労への鍵となるでしょう。

  • 就労定着支援は、就職後最長3年半にわたり、長期安定就労をサポートする。
  • 支援員は、企業にとって受け入れやすい「合理的配慮の調整案」を提案する。
  • 生活リズムや金銭的な課題など、生活面の安定も徹底的にサポートする。
  • 課題は「早期に、正直に、具体的に」伝え、支援を最大限に活かす。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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