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体力が落ちやすい子のために家で工夫したこと

📖 約54✍️ 鈴木 美咲
体力が落ちやすい子のために家で工夫したこと
知的障害や難病を抱える「体力が落ちやすい子」を持つ保護者に向け、家庭で実践できる環境づくりや体力維持の工夫を詳しく解説した記事です。疲れやすさの原因を理解し、家の中の動線を整える方法、効率的な栄養補給、睡眠の質を高めるルーティン、無理のない「生活リハビリ」のアイデアを紹介しています。また、福祉用具やレスパイトケアの活用が親子関係にゆとりをもたらすことを強調し、親が一人で抱え込まずに「頑張らない支援」を選択することで、お子さんの笑顔の時間を増やすための具体的なアクションを提案しています。

体力が落ちやすい子の日常を守る——家庭でできる環境づくりと体力維持の工夫

知的障害や難病を抱えるお子さんを育てる中で、「学校から帰るとぐったりして動けない」「季節の変わり目には必ず体調を崩してしまう」といった悩みに直面することはありませんか。体力が落ちやすい特性を持つお子さんにとって、日々の生活は私たちが想像する以上にハードなものです。体力の消耗は、単なる疲れだけでなく、情緒の不安定や学習意欲の低下にも直結してしまいます。

私自身、筋力の弱さや疲れやすさを伴う難病の娘を持つ親として、長年「どうすれば娘の体力を温存し、笑顔の時間を増やせるか」を試行錯誤してきました。この記事では、専門家の助言を受けながら我が家で実践した生活環境の工夫や、無理のない体力維持のメソッドを詳しくご紹介します。今日から無理なく取り入れられるアイデアを通じて、親子ともに穏やかな毎日を過ごすヒントを見つけていただければ幸いです。


疲れやすさの正体を知り環境を整える

エネルギーの「バケツ」をイメージする

体力が落ちやすいお子さんの支援を考えるとき、私はよく「エネルギーのバケツ」の話をします。健康な子のバケツが大きく、穴が開いていないのに対し、難病や障害のある子のバケツはもともと小さかったり、底に小さな穴が開いていて常にエネルギーが漏れ出していたりします。疲れやすさの特性を理解することは、適切なサポートの第一歩です。

知的障害がある場合、周囲の刺激を処理するだけで脳が激しく疲労することもあります。また、難病による筋疾患や代謝の異常がある場合は、普通に座っている姿勢を保つだけでも大量のエネルギーを消費します。まずは「怠けている」のではなく「人一倍頑張ってエネルギーを使っている」のだと、親が理解してあげることが大切です。

家の中の「動線」を最小限にする

家庭内で最初に工夫したのは、移動による体力の消耗を減らすことでした。例えば、着替え、トイレ、食事の場所が離れていると、それだけで移動のたびにエネルギーを奪われます。我が家では、娘が最も長く過ごすリビングを中心に、必要なものを手の届く範囲に配置する「コックピット化」を進めました。

具体的には、リビングの一角に着替え用のおしゃれなチェストを置き、朝の着替えのために階段を上り下りしなくて済むようにしました。また、重い扉の開閉が負担にならないよう、よく使う部屋のドアは引き戸にするか、常に開放しておくなどの工夫をしています。こうした「小さな移動の削減」の積み重ねが、夕方の余力に繋がります。

💡 ポイント

お子さんが一日のうちに「どこで」「何を」しているかを観察し、無駄な移動や立ち座りが発生していないかチェックしてみましょう。

視覚的・聴覚的刺激をカットする

意外と見落としがちなのが、環境刺激による疲労です。テレビの音、外を走る車の音、散らかった部屋の視覚情報などは、脳にとって大きなノイズとなります。知的障害を伴うお子さんの場合、これら全ての情報を処理しようとして、気づかないうちに脳疲労を起こしていることが多々あります。

我が家では、リラックスする時間には照明を少し落とし、ノイズキャンセリングヘッドフォンやイヤーマフを活用しています。また、家具の色を統一し、壁に貼るカレンダーやポスターを最小限にすることで、視覚的な落ち着きを演出しました。家を「情報を処理しなくていい安全地帯」にすることで、体力の回復速度が劇的に上がりました。


食事と睡眠でエネルギーを効率的に補う

高栄養で食べやすい食事の工夫

体力が落ちやすい子は、食べる力そのものが弱かったり、消化にエネルギーを使いすぎて食後に寝込んでしまったりすることがあります。一回に食べられる量が少ない場合は、補食(間食)を上手に取り入れるのがコツです。我が家では、おやつを「お菓子」ではなく「4回目の食事」と考えています。

例えば、小さなおにぎり、チーズ、バナナ、プロテイン入りのヨーグルトなど、少量で効率よくエネルギーを補給できるものを用意しています。また、難病の影響で噛む力が弱い時期は、ブレンダーを活用してポタージュ状にするなど、消化の負担を減らす工夫をしました。以下のテーブルは、我が家で活用しているエネルギー補給の例です。

項目 工夫の内容 期待できる効果
主食 一口サイズの小さなおにぎりにする 無理なく完食でき、達成感に繋がる
タンパク質 卵豆腐や茶碗蒸しなど喉越しの良いもの 咀嚼の疲れを減らしつつ栄養を摂取
間食 ナッツ類や高カロリーゼリー 短時間で効率的なエネルギー補填
調理法 圧力鍋で野菜をトロトロに煮込む 胃腸の負担を最小限にする

睡眠の質を上げるためのルーティン

体力を回復させる最大のチャンスは睡眠ですが、障害の特性により眠りが浅かったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりするお子さんも多いです。睡眠の質を上げるために、我が家では入眠前のルーティンを徹底しました。寝る1時間前からはスマホやタブレットを控え、アロマや静かな音楽で副交感神経を優位にします。

また、体温調節が苦手な難病の子のために、寝具にもこだわりました。通気性の良いマットや、重みのあるブランケット(ウェイトブランケット)など、その子が最もリラックスできる感触を探しました。睡眠環境を整えることで、朝起きた時の「顔色の良さ」が明らかに変わり、一日の活動時間が30分から1時間ほど延びる結果となりました。

水分補給と体温管理の徹底

体力が落ちやすい子は、脱水や体温の変化に非常に敏感です。少し水分が足りないだけで、急激に倦怠感が増すことがあります。こまめに水分を摂るよう促すのはもちろんですが、本人が自発的に飲めるよう、お気に入りのボトルを常に横に置いておく工夫をしています。

また、夏場のエアコン管理や冬場の湯たんぽなど、外気温に体力を奪われないよう細心の注意を払っています。「28度設定」といった一般的な基準ではなく、お子さんの指先の温度や顔色を見て個別に調整することが重要です。親が温度の番人になることで、季節の変わり目のダウンを最小限に食い止めることができます。

✅ 成功のコツ

スマートフォンのアプリなどで、一日の水分量と睡眠時間を1週間ほど記録してみましょう。体調を崩す前の「前兆」が見えてくるようになります。


無理のない「貯金」としての運動習慣

理学療法士と連携した「ゆるトレ」

「体力がないから動かさない」という選択肢もありますが、全く動かないと筋力はさらに低下し、より疲れやすい体になってしまいます。大切なのは、エネルギーを使い果たす「運動」ではなく、将来のための「体力貯金」としての運動です。我が家では、訪問リハビリの理学療法士さんと相談し、家でできる「ゆるトレ」を導入しました。

例えば、寝たまま足をバタバタさせる、座ったまま風船をポンポンと叩くなど、心拍数を上げすぎない遊び中心の運動です。知的障害がある娘にとって、難しい訓練はストレスになりますが、遊びの要素を取り入れることで、楽しみながら筋肉に刺激を与えることができています。頑張りすぎないことが、継続の最大の秘訣です。

「立ち上がり」を運動に変える工夫

特別な時間を設けなくても、日常の動作を少し工夫するだけで体力維持に繋がります。例えば、椅子から立ち上がるときに、少しだけゆっくり動くよう声をかけたり、本人が届く高い位置におもちゃを置いて、少しだけ背伸びをさせたり。こうした「生活リハビリ」の視点を持つことで、生活そのものがリハビリになります。

ただし、その日の体調を見極めることが絶対条件です。顔色が白いときや、目の下にクマがあるときは、こうした工夫も一切お休みします。親が「今日は頑張れる日かな?」と、お子さんのコンディションを見極めるプロになることで、無理なく体力を底上げしていくことができます。

外出を「イベント」ではなく「日常」に

体力が低いと外出が億劫になりますが、ずっと家にいると五感への刺激が減り、精神的な活力が失われてしまいます。我が家では、車椅子やバギーを積極的に活用し、移動の体力は機械に任せ、目的地での「体験」にエネルギーを全振りするようにしました。

「自分の足で歩かせなきゃ」という思い込みを捨てたことで、外出のハードルがぐっと下がりました。近所の公園で5分だけ風に当たるとか、車窓から景色を眺めるといった短時間の外出でも、本人の表情は明るくなります。心の元気が貯まると、不思議と体の方にも良い影響が出てくるものです。

「歩くことに全エネルギーを使うより、車椅子を使って友達とお喋りすることにエネルギーを使う。その選択が、娘の世界を広げてくれました。」

— 難病児の保護者 Bさん


道具と福祉サービスを使い倒す

バリアフリー便利グッズの活用

最近は、100円ショップやネット通販で、体力のない子を助ける便利な道具がたくさん手に入ります。我が家で重宝しているのは、ボタンを留めやすくする道具や、軽い力で持てるスプーン、そして電動歯ブラシです。一つひとつの動作に必要な握力や筋力を道具で補うことで、セルフケアによる疲労を軽減しています。

特に電動歯ブラシは、細かい手の動きが苦手な知的障害のある子にとって、体力を消耗せずに清潔を保てる優れたツールです。また、靴選びも重要です。片手で履けるマジックテープ式の軽量シューズに変えるだけで、外出時の「一歩目」の重さが変わります。道具に頼ることは、決して手抜きではなく、効率的なエネルギーマネジメントです。

レスパイトケアによる「親の体力維持」

お子さんの体力を守るためには、ケアをする親御さんの体力が温存されていることが絶対条件です。体力が落ちやすい子の育児は、夜間のケアや細かな体調管理が必要で、親の睡眠も削られがちです。そこで、短期入所(ショートステイ)や居宅介護などのレスパイトケアを計画的に利用しましょう。

親がリフレッシュして元気になることで、お子さんの小さな変化(疲れのサイン)に敏感に気づけるようになります。親が疲れ果ててイライラしていると、お子さんは心理的なストレスを感じ、それがさらなる体力消耗を招くという悪循環に陥ります。「親が休むことは、子供の体力を守ること」だと考えてください。

⚠️ 注意

福祉サービスの利用を「子供を預けて申し訳ない」と感じる必要はありません。お子さんにとっても、家庭以外の安全な場所を持つことは、将来の自立に向けた大切な体力・精神力作りになります。

福祉用具のレンタルと住宅改修

難病などで症状が進行する場合や、成長に伴い体が重くなる場合は、早めに福祉用具の検討を始めましょう。特注の椅子(座位保持椅子)は、正しい姿勢を楽に保てるため、座っているだけで疲れてしまうお子さんにとって劇的な効果があります。これらの用具は、障害者総合支援法などの制度を利用して購入・レンタルが可能です。

また、住宅改修も有効な手段です。段差にスロープを設置したり、お風呂に手すりを付けたりすることで、お子さんが「自分の力でできること」を維持しながら、体力の浪費を防ぐことができます。理学療法士やソーシャルワーカーに相談し、今の住環境でどこに最もエネルギーをロスしているかを評価してもらいましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. 学校に行くだけで精一杯で、帰宅後は寝てばかりです。無理させているのでしょうか?

学校という場所は、学習、人間関係、移動、集団生活のルールなど、非常に多くのエネルギーを消費します。帰宅後に寝てしまうのは、体が必死に回復しようとしている証拠です。放課後の習い事や宿題を一旦整理し、「学校に行けただけで100点満点」というスタンスで、家では徹底的に休ませてあげてください。どうしても辛そうな場合は、週に一度欠席日を設ける「休養登校」を学校と相談するのも一つの手です。

Q. 知的障害があり、自分の疲れをうまく言葉で伝えられません。どう察すればいいですか?

言葉の代わりに、お子さんの「サイン」を見つけてあげてください。我が家の場合は、(1)目がトロンとしてくる、(2)普段より怒りっぽくなる、(3)独り言が増える、(4)姿勢が崩れてくる、といったサインがありました。これらのサインが出たら、すぐに活動を切り上げ、静かな場所へ移動させます。「疲れた」と言う前に休ませるのが、ダウンさせないための鉄則です。

Q. 季節の変わり目に必ず熱を出します。防ぐ方法はありますか?

自律神経の乱れが原因であることが多いです。気圧の変化や寒暖差に弱い特性を理解し、その時期は通常よりもスケジュールを白紙に近くしておきます。また、足首や首元を冷やさない、加湿器で粘膜を守るなど、物理的なガードを強めます。何より「この時期は体調を崩しやすいものだ」と親が覚悟しておき、早め早めの休養をスケジュールに組み込んでおくことが、大崩れを防ぐコツです。


「頑張らない」を頑張る、という選択

今の体力を「守る」ことが未来に繋がる

お子さんのために「何かをさせてあげたい」と思うのは親心ですが、体力が落ちやすい子にとって、時には「何もしないこと」が最善の支援になります。活動を詰め込みすぎて倒れてしまうと、回復に数日を要し、その間に筋肉や意欲が削られてしまいます。「細く、長く、楽しく」生活を続けることを目標にしましょう。

体力を守るための工夫は、決して制限ではありません。無駄な疲れをカットすることで、その子が本当にやりたいこと、例えば好きな絵を描くことや、友達と笑うことにエネルギーを回せるようにするための準備です。引き算の支援が、結果としてお子さんの世界の質を高めることに繋がります。

今日からできるアクションの提案

記事を読み終えた後、まずは以下の小さな一歩から始めてみませんか?

  • お子さんが一日の中で「どこで一番疲れているか」をメモしてみる。
  • リビングに、すぐに横になれる「お休みコーナー(クッションなど)」を作る。
  • 福祉用具のカタログを請求したり、リハビリの先生に「家庭での環境」について聞いてみる。
  • 「今日は何もしなくていいよ」とお子さんに伝え、親子で一緒にのんびりする時間を作る。
小さな環境の変化が、お子さんの「明日の元気」を作ります。無理せず、一つずつ取り入れてみてください。


まとめ

体力が落ちやすいお子さんの育児は、常にバッテリー残量を気にしながら走るような緊張感があります。しかし、家庭での工夫次第で、そのバッテリーを効率よく使い、長く持たせることが可能です。

  • 環境の最適化:移動動線の短縮と刺激のカットで、無駄なエネルギー漏れを防ぎましょう。
  • 質の高い補給:効率的な食事と睡眠ルーティンで、回復力を最大化します。
  • 道具と制度の活用:親の力だけで頑張らず、福祉用具やサービスを賢く使って「余力」を作りましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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