家族も疲れた…支援を受けて知った“頼る大切さ”

「私が支えなければ」という思い込み
「誰にも頼らない。私が全部やる」——息子が統合失調症と診断された時、私はそう決めました。母親である私が、息子のすべてを支えなければならない。それが当然だと思っていました。家事、通院の付き添い、服薬管理、食事の準備、話し相手——すべてを、私一人でこなそうとしました。
でも2年が経った頃、私は限界でした。体は悲鳴を上げ、心は疲弊し、もう一歩も動けませんでした。「助けて」——その言葉を言うことが、どれほど難しかったか。でもその言葉を発した時、初めて知りました。頼ることの大切さを。
この記事では、一人で抱え込んでいた私が、支援を受けることで変わっていった過程をお話しします。同じように疲弊している家族の方に、少しでも勇気を与えられれば幸いです。
一人で抱え込んだ2年間
「母親なんだから当然」
息子が統合失調症と診断されたのは、21歳の時でした。大学を休学し、実家に戻ってきました。
私は、息子のケアをすべて自分でやると決めました。「母親なんだから当然」——そう思っていました。
夫は仕事が忙しく、あまり家にいませんでした。娘は大学生で、一人暮らしをしていました。息子を支えられるのは、私しかいない——そう考えました。
⚠️ 注意
家族が一人で介護やケアを抱え込むことは、深刻な疲弊につながります。「家族なんだから当然」という思い込みが、助けを求めることを妨げます。家族も人間です。限界があります。早めに支援を求めることが、本人にとっても家族にとっても重要です。
24時間気が抜けない日々
息子の症状は不安定でした。幻聴に苦しむ日もあれば、妄想にとらわれる日もありました。
私は、24時間気が抜けませんでした。夜中に大声を出すこともあれば、外に飛び出そうとすることもありました。常に息子を見守り、何かあればすぐに対応する——そんな日々でした。
睡眠不足が続きました。ゆっくり食事をする時間もありませんでした。友人と会うことも、趣味を楽しむことも、すべて諦めました。
| 時間 | 私の状態 | やっていたこと |
|---|---|---|
| 5:30 | 睡眠不足でふらふら | 起床、朝食準備 |
| 7:00 | 息子を起こす緊張 | 服薬確認、朝食 |
| 9:00 | ほっと一息 | 家事(掃除、洗濯) |
| 12:00 | 疲労が溜まる | 昼食準備、息子の様子確認 |
| 15:00 | 不安と緊張 | 通院の付き添い(週2回) |
| 18:00 | クタクタ | 夕食準備、服薬確認 |
| 21:00 | 気が抜けない | 息子の様子確認、明日の準備 |
| 23:00 | やっと自分の時間 | でも疲れて何もできない |
| 深夜 | 息子の物音で目覚める | 様子確認、また眠れない |
「弱音を吐いてはいけない」
辛くても、私は弱音を吐きませんでした。
「私が頑張らなければ」「私が支えなければ」——そう自分に言い聞かせていました。
友人が「大丈夫?」と聞いてくれても、「大丈夫」と答えました。夫が「疲れているのでは」と言っても、「平気」と答えました。
誰にも、助けを求めませんでした。助けを求めることは、「母親失格」のように思えました。
「家族が『助けて』と言えないのは、『家族なんだから当然』という社会的プレッシャーや、『私がやらなければ』という責任感からです。でも、一人で抱え込むことは、長期的には誰のためにもなりません。早めに助けを求めることが大切です」
— 後に相談支援専門員が教えてくれた言葉
限界の瞬間——倒れた日
体調を崩した
2年が経った頃、私の体は限界でした。
不眠、頭痛、めまい、動悸——様々な症状が出ました。でも、病院に行く時間もありませんでした。息子を一人にできなかったからです。
ある日、スーパーで買い物をしている時、突然倒れました。気を失って、救急車で運ばれました。
診断は、「過労とストレスによる自律神経失調症」でした。医師は言いました——「このままでは、もっと重篤な状態になります。すぐに休養が必要です」。
「私が倒れたら、息子は?」
病院のベッドで、私は思いました——「私が倒れたら、息子はどうなるんだろう」と。
息子を一人にできない。でも、私の体はもう動かない。どうすればいいのか、わかりませんでした。
その時、看護師が言いました——「ご家族だけで抱え込んでいませんか? 使える支援サービスがありますよ」。
この言葉が、転機になりました。
💡 ポイント
家族が倒れてしまうと、本人も支えられなくなります。「私が倒れる前に」支援を求めることが大切です。限界を感じたら、すぐに相談してください。様々な支援サービスがあります。
「助けて」と言った日
退院後、私は息子の主治医に相談しました。そして初めて、「助けてください」と言いました。
この言葉を発するのが、どれほど難しかったか。「母親失格だと思われるのでは」「息子を見捨てると思われるのでは」——様々な不安がありました。
でも主治医は、優しく答えました——「よく言ってくださいました。お母さんが倒れてしまったら、お子さんも困ります。一緒に、使える支援を探しましょう」。
その言葉を聞いて、私は初めて泣きました。2年間、我慢していた涙が、溢れました。
支援を受け始める——恐る恐るの一歩
相談支援専門員との出会い
主治医の紹介で、相談支援専門員と会いました。
彼女は、私の状況を丁寧に聞いてくれました。息子のこと、私の疲労、家族の状況——すべてを、否定せずに受け止めてくれました。
そして言いました——「お母さん、本当によく頑張ってこられましたね。でももう、一人で抱え込まなくていいんです。使える支援サービスがたくさんあります。一緒に、お母さんと息子さんに合ったサービスを探しましょう」。
この言葉に、救われました。
最初のサービス——訪問看護
最初に導入したのは、訪問看護でした。
週2回、看護師が自宅を訪問して、息子の健康チェックや服薬確認をしてくれるサービスです。
最初は抵抗がありました。「他人に家に入られるのが不安」「息子が嫌がるのでは」——そんな思いがありました。
でも、利用してみると、想像と違いました。看護師は優しく、息子も受け入れてくれました。そして何より、服薬管理を任せられることで、私の負担が大きく減りました。
デイケアの利用
次に導入したのは、デイケアでした。
週3日、日中の数時間、息子がデイケアに通うようになりました。そこで、プログラムに参加したり、仲間と過ごしたりします。
息子がデイケアに行っている間、私は初めて一人の時間を持てました。友人と会ったり、病院に行ったり、ただ休んだり——この時間が、どれほど貴重だったか。
そして、息子にとっても良い影響がありました。家以外の居場所ができ、仲間ができ、少しずつ表情が明るくなっていきました。
✅ 成功のコツ
支援サービスの導入は、段階的に進めることができます。まず一つのサービスから始め、慣れてから次のサービスを追加——この方法で、本人も家族も抵抗なく受け入れやすくなります。相談支援専門員と一緒に計画を立てましょう。
「頼る」ことを学ぶ——罪悪感との闘い
「母親失格」という思い
サービスを使い始めても、私には罪悪感がありました。
「息子のケアを他人に任せるなんて、母親失格だ」「私が楽をしているだけだ」——そんな思いが、消えませんでした。
デイケアに息子を送り出した後、一人でコーヒーを飲んでいる時——「こんなことをしていていいのか」と、自分を責めました。
相談支援専門員の言葉
その罪悪感を、相談支援専門員に話しました。
彼女は言いました——「お母さん、『頼る』ことは『逃げる』ことじゃありません。むしろ、賢明な判断です」。
「一人で抱え込んで、お母さんが倒れたら、息子さんを支えられなくなります。でも、適切に支援を使えば、お母さんも元気でいられる。そして、元気なお母さんがいることが、息子さんにとって最大のサポートなんです」。
「だから、『頼る』ことを恥じる必要はありません。それは、長く支え続けるための、賢い選択なんです」。
この言葉で、少しずつ罪悪感が薄れていきました。
家族会での出会い
家族会にも参加し始めました。そこで、同じような経験を持つ家族と出会いました。
皆、最初は私と同じように、一人で抱え込んでいました。でも、支援を使うようになって、楽になった——そう語っていました。
「頼ることは、恥ずかしいことじゃない」「むしろ、頼らないことの方が問題」——先輩の家族たちの言葉が、私を支えてくれました。
「自分だけじゃない」——その実感が、大きな救いになりました。
変化——私と息子、そして家族
私の変化
支援を受けるようになって、私は変わりました。
まず、体調が回復しました。十分な睡眠が取れるようになり、頭痛やめまいも減りました。
心にも余裕が生まれました。息子に対して、以前より穏やかに接することができるようになりました。イライラすることが減り、笑顔が増えました。
自分の時間も持てるようになりました。友人と会ったり、趣味を再開したり——「私」を取り戻せました。
息子の変化
意外なことに、息子も良くなりました。
デイケアで仲間ができ、少しずつ外に出られるようになりました。訪問看護師との会話も楽しんでいるようでした。
何より、私が元気になったことで、息子も安心したようでした。以前の私は、疲れていてイライラしていました。でも今は、穏やかでいられます。
息子は言いました——「お母さん、元気になってよかった。前は、すごく疲れているように見えて、心配だった」。
私が頼ることで、息子も楽になった——そのことを知りました。
家族関係の改善
夫との関係も、改善しました。
以前の私は、夫に対して「あなたは何もしてくれない」と不満を持っていました。でも、それを口に出すこともできませんでした。
支援を受けるようになって、私は夫とも話せるようになりました。「こういう時、こうしてほしい」「今、こういう状態だから助けてほしい」——具体的に伝えられるようになりました。
夫も、変わりました。できることを手伝ってくれるようになりました。家族で支える体制が、できてきました。
1年後の今——頼ることが当たり前に
使っているサービス
今、私たちが使っているサービス:
- 訪問看護:週2回、健康管理と服薬確認
- デイケア:週3日、日中の居場所とプログラム
- ホームヘルプ:週1回、家事のサポート
- ショートステイ:月1回程度、私のレスパイトのため
- 相談支援:月1回、定期面談
これらのサービスがあることで、私は無理なく息子を支えられています。
「頼る」が当たり前に
今では、「頼る」ことが当たり前になりました。
罪悪感もありません。むしろ、「頼ることで、より良いサポートができる」と思っています。
困った時は、すぐに相談支援専門員に連絡します。一人で抱え込むことは、もうありません。
息子の目標
息子は今、就労移行支援の利用を検討しています。「働いてみたい」——そう言うようになりました。
これも、デイケアで仲間と出会い、自信をつけたからです。支援を使うことで、息子の可能性も広がりました。
一人で抱え込んでいる家族へ
あなたは頑張りすぎている
もし今、一人で抱え込んでいるなら、知ってほしいことがあります——あなたは、頑張りすぎています。
「家族なんだから当然」——その思い込みを、手放してください。家族だからといって、一人で全部背負う必要はありません。
「助けて」と言っていい
「助けて」と言うことは、恥ずかしいことじゃありません。弱さではありません。むしろ、強さです。
自分の限界を認めること。助けを求めること——それは、勇気ある行動です。
支援はたくさんある
あなたが知らないだけで、支援はたくさんあります。
訪問看護、デイケア、ホームヘルプ、ショートステイ、相談支援——様々なサービスがあります。経済的な支援制度もあります。
まず、相談してください。市区町村の障害福祉課、精神保健福祉センター、相談支援事業所——相談できる場所は、たくさんあります。
頼ることで、より良く支えられる
最後に、これだけは伝えたいです——頼ることで、より良く支えられます。
一人で抱え込んで疲弊するより、支援を使って元気でいる方が、本人にとっても良いのです。
元気な家族がいること——それが、本人にとって最大のサポートです。だから、頼ってください。自分を大切にしてください。
「家族が『頼る』ことを学ぶのは、本人の回復にもつながります。家族が元気で余裕があると、本人も安心できます。だから、頼ることは、家族のためだけでなく、本人のためでもあるんです」
— 相談支援専門員の言葉
よくある質問
Q1: 支援を使うと、費用がかかりますか?
多くの福祉サービスは、所得に応じた負担上限があります。障害福祉サービスの多くは、無料または低額で利用できます。自立支援医療制度を使えば、医療費も軽減されます。まずは相談支援事業所や市区町村の障害福祉課に相談してください。
Q2: 本人が支援を拒否します。どうすればいいですか?
最初は抵抗する方も多いです。体験利用から始める、信頼できる人から勧めてもらう、主治医から説明してもらうなど、段階的なアプローチが有効です。また、まず家族向けのサービス(レスパイトケアなど)から始めることもできます。相談支援専門員に相談してください。
Q3: 「頼る」ことに罪悪感があります
その気持ちは自然ですが、罪悪感を持つ必要はありません。頼ることは、長く支え続けるための賢明な判断です。家族会やカウンセリングで、同じ経験を持つ人と話すことで、罪悪感が軽くなることもあります。
Q4: どこに相談すればいいですか?
まず、市区町村の障害福祉課や精神保健福祉センターに相談してください。相談支援事業所では、相談支援専門員が個別に相談に乗り、サービス計画を立ててくれます。本人の主治医や病院の医療ソーシャルワーカーに相談することもできます。
Q5: 今すぐ限界です。どうすればいいですか?
緊急の場合は、すぐに相談してください。精神保健福祉センター(平日)、夜間・休日は精神科救急情報センターなどに連絡できます。家族が倒れる前に、ショートステイなどの緊急レスパイトを利用することもできます。一人で我慢せず、すぐに助けを求めてください。
まとめ
この記事では、一人で抱え込んでいた私が、支援を受けることで変わっていった過程をお話ししました。
- 「家族なんだから当然」という思い込みが、助けを求めることを妨げます
- 一人で抱え込むと、家族も倒れてしまい、本人も支えられなくなります
- 「助けて」と言うことは、弱さではなく、賢明な判断です
- 頼ることで、家族も本人も、より良い状態になれます
もし今、一人で抱え込んで疲弊しているなら、「助けて」と言ってください。様々な支援があります。頼ることは恥ずかしいことではありません。あなた自身を大切にすることが、本人を支え続けるための鍵です。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





