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受診を決めるまでの葛藤と、診断がついた意味

📖 約61✍️ 鈴木 美咲
受診を決めるまでの葛藤と、診断がついた意味
わが子の発達に違和感を抱えながらも、診断を受けることに恐怖や抵抗を感じていた母親の体験談です。「障害を認めること=絶望」と捉えていた葛藤の日々から、受診を決意し、診断がついたことで得られた「深い安堵感」と具体的なメリットについて詳しく綴っています。診断がついたことで福祉サービスや合理的配慮に繋がり、家庭内が「隠すべき秘密」を抱えた状態から「課題に挑むチーム」へと変わった過程を解説。今まさに迷いの中にいる保護者に向けて、受診は未来を閉ざすものではなく、適切なサポートを得るための新しいスタートラインであることを優しく伝えます。

違和感から診断へ、家族が歩んだ長い道のり

「うちの子、もしかして周りの子と少し違う?」そんな小さな違和感を抱えながらも、病院を受診すべきか迷い、悶々とした日々を過ごしていませんか。専門機関の門を叩くことは、ある意味で「わが子の障害を認める」ことのように感じられ、大きな勇気が必要なものです。

私自身も、息子の発達に対する不安を抱えながら、受診を決めるまでに長い時間を費やしました。しかし、結果として診断がついたことは、暗闇の中に一筋の光が差し込むような、新しい生活のスタートでもありました。

この記事では、受診を迷った時期の葛藤から、実際に診断名がついて分かったこと、そしてそれが家族にとってどのような意味を持ったのか、実体験に基づき詳しくお伝えします。今、一人で悩んでいるあなたの心が、少しでも軽くなるヒントになれば幸いです。


受診を迷い続けた「グレーゾーン」の時期

「少し遅いだけ」という希望と不安

息子が1歳半を過ぎた頃、明らかに言葉が遅いことに気づき始めました。周りの子が「ママ」「ブーブー」とお喋りを楽しむ中、息子は喃語(意味のない音)を発するだけで、こちらの問いかけにもなかなか目が合いませんでした。

地域の1歳半健診では「様子を見ましょう」と言われ、その言葉にどこか安堵したのを覚えています。まだ小さいのだから、そのうち追いつくはず。私は自分にそう言い聞かせ、「障害」という言葉を頭から追い出そうと必死でした。

しかし、3歳が近づくにつれて、多動や偏食、激しいパニックが目立つようになりました。スーパーでひっくり返って泣き叫ぶ息子を抱えながら、私は周囲の冷ややかな視線に耐え、「育て方が悪いのではないか」という自責の念に押しつぶされそうになっていました。

専門機関を避けてしまった理由

なぜすぐに受診しなかったのか。それは、診断がつくことで「わが子の未来が閉ざされてしまう」という恐怖があったからです。病名や障害名というレッテルを貼られるのが怖くて、現実から目を背けていました。

また、夫や両親との温度差も大きな要因でした。「男の子だから遅いだけだ」「過保護すぎる」と言われるたびに、私は自分の直感を信じられなくなっていきました。家庭内での孤立が深まり、誰にも相談できない孤独な日々が続きました。

今思えば、あの頃の私は「診断」を「宣告」のように捉えていたのだと思います。けれど、実際には診断は「その子を理解するためのガイドブック」を手に入れるプロセスでした。そのことに気づくには、さらなる時間が必要でした。

背中を押してくれた小さなきっかけ

転機となったのは、保育園の先生との面談でした。先生は息子の困りごとを否定するのではなく、「〇〇くんがもっと楽しく過ごせるように、専門のアドバイスをもらってみませんか?」と提案してくれたのです。

「この子が困っている」。その視点に立ったとき、親のプライドや恐怖よりも、息子の生きづらさを解消したいという気持ちが上回りました。告知を恐れるのではなく、この子の通訳者になるための情報を得よう。そう決意し、児童精神科の予約を入れました。

予約は3ヶ月待ち。その期間も不安でしたが、不思議と「ようやく動ける」という清々しさもありました。受診を決めるまでの数年間は、私にとって嵐の前の静けさのような、苦しくも大切な熟成期間だったのかもしれません。


初めての病院と診断がついた瞬間

精密検査と問診で見えた特性

ついに訪れた受診日。病院では、医師による丁寧な問診と、心理士さんによる発達検査が行われました。それまで「わがまま」だと思っていた行動が、実は感覚過敏や認知の偏りによるものだと、科学的な視点で説明されていきました。

検査の結果、息子には「知的障害を伴う自閉スペクトラム症」と、遺伝性の疑いがある「難病」の可能性があることが示唆されました。具体的な検査数値を目の当たりにし、これまでの私の苦労が「気のせい」ではなかったことが証明された瞬間でした。

医師は淡々と、しかし温かいトーンで説明してくれました。息子が見ている世界が、私たちが感じている世界といかに異なっているか。そのギャップを埋めるのが「療育」であることを、初めて体系的に理解することができました。

診断名がついた時の意外な感情

病名や障害名を告げられたとき、私は号泣するだろうと思っていました。しかし、実際に口にされた瞬間、私の心に湧き上がったのは、意外にも「深い安堵感」でした。

「ああ、だからこの子はあんなに苦しんでいたんだ」「私の努力不足じゃなかったんだ」。その確証を得たことで、何年も自分を縛り付けていた鎖がバラバラと崩れ落ちるような感覚を覚えたのです。

もちろん、将来への不安がゼロになったわけではありません。けれど、正体の分からない化け物に怯えていた状態から、名前のある相手とどう向き合うかを考えるフェーズに移ったことは、私にとって大きな精神的転換点となりました。

夫や周囲への報告と変化

診断結果を携えて帰宅し、夫に事実を伝えました。最初は絶句していた夫でしたが、医師の診断書や検査データという「客観的な事実」があることで、ようやく息子の特性を認め、自分事として考え始めるようになりました。

親戚に対しても、「育て方の問題ではなく、脳の特性である」とはっきり伝えられるようになりました。周囲の反応も、単なる同情から「どう手助けすればいいか」という具体的な協力へと変わっていったのを感じます。

診断がついたことで、私たちは「隠すべき秘密」を抱えた家族から、「課題に挑むチーム」へと進化しました。病名を知ることは、決してわが子を型に嵌めることではなく、家族の結束を強めるためのプロセスだったのです。


診断がついたことで得られた「具体的なメリット」

福祉サービスの利用がスムーズに

診断がつくと、医師の診断書をもとに「療育手帳」や「障害者手帳」の申請が可能になります。これにより、これまで自己流で限界を感じていた自宅での育児から、プロの手を借りた組織的なサポートへと切り替わりました。

私たちはすぐに「放課後等デイサービス」や「児童発達支援」の利用を開始しました。専門の指導員さんによる療育は、息子のパニックを劇的に減らしてくれました。また、送迎サービスがあることで、私自身の休息時間(レスパイト)も確保できるようになったのです。

また、経済的な支援も大きな支えとなりました。以下の表は、私たちが受給できるようになった主な手当や制度の例です(自治体により異なります)。

制度・手当名 主な内容
特別児童扶養手当 障害のある児童を養育する家庭への手当
障害児福祉手当 重度の障害があり、日常生活に常時介護を要する場合の手当
自立支援医療(精神通院) 通院費の自己負担額を軽減する制度
小児慢性特定疾病医療費助成 特定の難病の治療費を助成する制度

学校や教育現場での配慮

診断がついていることは、就学先を決める際や、学校生活での「合理的配慮」を求める際の大きな後ろ盾になります。学校側に「どのような特性があり、どのような場面で助けが必要か」を明確に伝えられるようになったからです。

例えば、息子は視覚情報が入りすぎると混乱するため、教室の掲示物を減らしてもらったり、衝立(パーティション)を使って集中できる環境を整えてもらったりしました。これらは、「診断」という根拠があるからこそスムーズに実現した配慮です。

「みんなと同じ」を強要されるのではなく、個々の特性に合わせた学びの形を追求できる。これは、診断がついたからこそ得られた、息子にとっての大きな権利だと言えるでしょう。

医療的フォローアップの確立

特に難病の疑いがある場合、診断は「命を守るための羅針盤」になります。息子の場合も、定期的な検査や、合併症を予防するための経過観察がルーチン化されました。これにより、何かあってもすぐに専門医に繋がれるという絶大な安心感を得ることができました。

医師との面談では、常に「次の一歩」を相談できます。家庭内だけで悩んでいた頃に比べ、専門的な見地から「今はこれに挑戦しましょう」「これはまだ待ってあげましょう」と指示を仰げるのは、親として非常に心強いものです。

医療・福祉・教育の3本柱が整ったことで、私たちの生活は格段に安定しました。診断は、お子さんの可能性を狭めるものではなく、むしろ適切なリソースに繋がるための通行証だったのです。


葛藤を抱える親御さんへの「心の整え方」

「障害」という言葉の解釈を変える

もし今、あなたが「障害」という言葉にネガティブなイメージを持ち、受診を躊躇しているのなら、その言葉の定義を少し書き換えてみませんか。障害とは、その子自身にあるものではなく、その子と社会の「間」にある摩擦のことです。

診断名がつくことは、その摩擦がどこで起きているのかを特定する作業です。摩擦の場所が分かれば、そこを削ったり、クッションを置いたりして、通りやすくすることができます。それは、決してその子の価値を損なうものではありません。

「特別な子」にするのではなく、「その子らしくいられる環境」を用意するために、名前をつける。そう考えると、少しだけ受診へのハードルが下がるのではないでしょうか。

⚠️ 注意

受診を急ぎすぎる必要もありません。親御さんの心の準備ができていない状態で診断結果を聞くと、深い傷になることもあります。まずは「相談」という形で、保健師さんや信頼できる支援者に胸の内を話すことから始めてください。

自分を責めるのをやめる

「妊娠中の行動がいけなかったのか」「愛情が足りなかったのか」。診断がつくと、つい過去を振り返って自分を責めてしまいがちです。しかし、知的障害や難病の多くは、遺伝子の偶然の組み合わせや先天的な要因によるものです。

医師からも「お母さんのせいではありません」とはっきり言われました。その言葉を100回唱えてください。あなたは今日まで、正解のない問いに立ち向かい、精一杯お子さんを守ってきました。自分を責めるエネルギーを、これからは「自分を労うエネルギー」に変えていきましょう。

お母さん、お父さんが元気でいることが、お子さんにとって最大の療育資源です。美味しいものを食べる、短時間でも自分の趣味に没頭する。そんな「自分勝手」を、どうか自分に許してあげてください。

「今、この瞬間」の可愛さを守る

将来を案じて夜も眠れなくなることがあるかもしれません。「この子が大人になったらどうなるのか」「誰が面倒を見るのか」。けれど、未来の不安のために今日の幸せを犠牲にするのはもったいないことです。

診断がついたことで、私たちは将来の備えを事務的に進められるようになりました。その分、心は「今」に戻ることができます。今日、息子が笑ったこと。一緒にプリンを食べたこと。そんな何気ない日常の輝きこそが、私たちの宝物です。

診断名は、その子の全てではありません。自閉症であっても、難病であっても、その子はあなたの可愛いわが子であることに変わりはありません。ラベルに惑わされず、目の前の生身のお子さんとの対話を大切にしていきましょう。


よくある質問(FAQ)セクション

Q1. 病院での診察では、どのようなことを聞かれますか?

主に「出生時の状況(妊娠経過や出産体重など)」「首すわりや歩行の開始時期」「現在の食事や睡眠の様子」「パニックの有無や引き金」など、成長の過程を詳しく聞かれます。母子手帳を持参し、気になる行動を動画で撮影しておくと、医師への説明が非常にスムーズになります。

Q2. 診断がつくことで、就職や将来の選択肢が制限されませんか?

むしろ逆のケースが多いです。診断に基づき適切な支援を受けて育ったお子さんは、自分の特性を理解し、環境を調整するスキルを身につけます。また、障害者雇用枠などの公的なサポートも利用可能になるため、選択肢はむしろ広がると言えます。無理に「普通」を目指して挫折するよりも、自分に合った道を見つける強みになります。

Q3. 夫や家族が受診に反対している場合、どう説得すべきですか?

感情的にぶつかるのではなく、「現状の困りごと」をリスト化して共有しましょう。「〇〇くんがパニックで苦しそうで、私も限界が近い。プロの助言をもらって、みんなが楽になれる方法を探したい」と、家族全体のメリットとして伝えてみてください。また、一緒に病院や相談窓口へ足を運んでもらうのも有効です。

💡 ポイント

「障害があるかどうかを確認しに行く」のではなく、「育児のヒントをもらいに行く」というニュアンスで伝えると、周囲の抵抗感が和らぐことがあります。

Q4. セカンドオピニオンは受けてもいいのでしょうか?

もちろんです。医師との相性や、診断の納得感は非常に重要です。もし納得がいかない場合は、別の医療機関を受診することも一つの選択肢です。ただし、転院を繰り返すことで療育の開始が遅れるリスクもあるため、信頼できる相談支援専門員と相談しながら進めるのがベストです。


まとめと次の一歩へのアクション

受診は「新しいスタートライン」

受診し、診断を受けることは、決して終わりではありません。それは、お子さんが自分らしく生きるための「環境設定」をアップデートするための第一歩です。葛藤し、悩み抜いたあなたの時間は、決してお子さんへの愛情を損なうものではありません。

私たちが診断を受けてから数年。息子は今、自分の特性を理解してくれる先生や友達に囲まれ、彼なりのペースで成長しています。あの時、勇気を出して病院の予約を入れて本当に良かった。心からそう思えます。

もし今、あなたが暗闇の中にいるのなら、どうかその手を差し伸べてみてください。あなたがその手を伸ばした先には、必ず支えてくれる手があります。一人で抱え込まず、社会の力を借りて、お子さんと笑い合える明日を一緒に作っていきましょう。

✅ 成功のコツ

まずは、地域の「保健センター」や「発達支援相談窓口」に電話をかけることから始めてみませんか。いきなり病院へ行くのがハードルが高い場合、まずは匿名でも可能な電話相談からスタートするのがおすすめです。

まとめ

  • 診断は「生きづらさ」の通訳者になるためのガイドブック:お子さんを深く理解し、適切な支援に繋がるための大切な情報です。
  • 公的サポートと福祉サービスを活用する:診断があることで、医療費助成や療育などの具体的なメリットを享受でき、家族の負担が軽減されます。
  • 親自身の心を守り、自分を責めない:障害は特性であり、育て方のせいではありません。まずは自分を労い、チームで支え合う体制を整えましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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