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障害者のための安全な生活環境作りのポイント

📖 約26✍️ 鈴木 美咲
障害者のための安全な生活環境作りのポイント
障害者が自宅で安全に自立して暮らすためには、総合的な環境整備が不可欠。記事では、転倒防止のため床面の段差解消やコード整理、手すりの戦略的配置を強調。火気熱源対策としてIH化を推奨している。さらに、認知・聴覚特性への配慮として、わかりやすいサインや光・振動式の火災報知器、緊急通報システムの導入を提案。安全性を高めるため、段差や手すりにコントラストの強い色を使用する工夫も紹介している。環境整備を進める際は、理学療法士や福祉住環境コーディネーターによる専門的なアセスメントを受け、介護保険と障害者総合支援法の公的支援を最大限に活用することが成功の鍵である。

障害を持つ方が自宅で安全に、そして快適に暮らすためには、単に「段差をなくす」というだけでなく、生活のあらゆる場面でのリスクを想定した環境づくりが不可欠です。ご自身やご家族が安心して生活できる場所であるはずの自宅が、転倒や火傷といった事故の危険に満ちていては、日々のストレスは増大するばかりです。

特に、身体機能の低下がある場合、ちょっとしたつまずきや、手の届かない場所にあるものが原因で、重大な事故につながることがあります。また、認知機能や感覚機能に特性がある場合は、予期せぬ行動や火気の扱いなど、想定すべきリスクが多岐にわたります。

この記事では、障害の種類や程度にかかわらず、自宅を「自立を支えるセーフティネット」に変えるための、具体的な環境整備のポイントを、専門的な視点も交えてご紹介します。物理的なバリアフリーだけでなく、認知面や情報面での安全を高めるためのアイデアも豊富に盛り込みました。ぜひ、ご自宅の環境チェックにご活用ください。


物理的な危険を排除する4つの基本

基本①:転倒を防ぐ「床面と動線」の徹底チェック

家の中での事故の多くは「転倒」によって引き起こされます。転倒を防ぐためには、まず床面のバリアを徹底的に排除することが重要です。

  • 小さな段差の解消:部屋間の敷居、浴室の入口、ベランダへの掃き出し窓など、数ミリの段差も見逃さず、段差解消スロープ(既製品または工事による)で解消しましょう。
  • コード類の整理:電気コード、電話線、延長コードなどは、床を這わせず、壁や巾木(はばき)に沿わせてモールなどで固定します。コードが原因のつまずきは非常に多い事故です。
  • 滑り止め対策:水回り(浴室、洗面所)だけでなく、フローリングや玄関のタイルにも、滑り止め加工のワックスやマットを施し、摩擦係数を高めましょう。

特に、車椅子や歩行器を使う場合は、カーペットや絨毯の「厚み」も抵抗となり得るため、薄型のものを選ぶか、床を露出させることが推奨されます。

基本②:自立を支える「手すり」の戦略的配置

手すりは、移動や立ち上がり・着座といった動作の「不安定さ」を補う、安全確保の要です。単に設置するだけでなく、使う人の動作能力に合わせた「戦略的な配置」が必要です。

  1. 動作の要所玄関の上がり框、廊下の壁、トイレの横、浴槽の出入り口など、力を入れて立ち上がったり、バランスを取ったりする場所に設置します。
  2. 連続性の確保:移動の動線となる廊下では、手すりが途切れないように連続して設置することで、安心感を持って移動できます。
  3. 高さと太さ:握りやすい直径3.2~3.5センチ程度のものを選び、高さは使用者が直立した時の手首の高さ(床から75~85cm)を目安に、福祉専門職と相談して決めましょう。

手すりの設置は、公的制度の住宅改修費の支給対象となる場合が多いため、積極的に活用すべき最も重要な物理的対策の一つです。

基本③:火気・熱源からの徹底隔離

火気や熱源による事故は、重篤な怪我に繋がるため、特に注意が必要です。手の機能が不安定な方や、認知症の方がいる家庭では、対策を強化しましょう。

キッチンでは、ガスコンロからIHクッキングヒーターへの変更が最も安全です。熱源に直接触れるリスクがなくなり、消し忘れの心配も減ります。やむを得ずガスコンロを使う場合は、調理中に目を離さない自動消火機能付きのものを選ぶなどの対策が必要です。また、暖房器具は、火傷の心配がない床暖房やエアコンの利用が推奨されます。

⚠️ 注意

手すりやスロープをDIYで設置する場合、耐荷重の不足不安定な固定により、事故につながる可能性があります。特に体重がかかる部分は、必ず専門業者に依頼し、壁の補強を確認しましょう。


心理的・情報的な安全を確保するポイント

ポイント①:認知・聴覚特性への配慮と通知システム

身体的なバリアだけでなく、認知や感覚の特性に合わせた環境整備も、安全な生活には欠かせません。

  • わかりやすいサイン:トイレや浴室など、間違えやすい場所には絵文字や写真を用いたわかりやすいサインを貼ります。特に認知症の方にとって、視覚的な情報は非常に重要です。
  • 火災報知器の工夫:聴覚に障害がある場合は、光や振動で異常を知らせる火災報知器(フラッシュライト付きやベッドシェイカー連動)を導入しましょう。
  • 緊急通報システム:体調不良や転倒時など、緊急時にボタン一つで外部(家族や専門業者)に連絡できる通報システム(ペンダント型、設置型)を導入することで、「もしもの時」の安心感が劇的に高まります。

これらの補助具やシステムは、日常生活用具給付事業の対象となる場合がありますので、自治体の窓口に相談してみましょう。

ポイント②:色彩とコントラストを活用した視認性の向上

視力低下や色の識別が難しい方、空間認知に困難を抱える方にとって、適切な色彩やコントラストは安全性を高める重要な要素です。

  1. 段差の強調:階段の踏み板の先端や、段差の角には、蛍光色や明るい色の滑り止めテープを貼り、視覚的に目立たせます。
  2. 手すりの色:白い壁には、濃い茶色や黒など、コントラストの強い色の手すりを設置します。これにより、手すりの位置が明確になり、握り間違いを防げます。
  3. スイッチ周り:照明スイッチやコンセントの周りに、視認性の高い色のプレートを貼ることで、見つけやすく、操作しやすくなります。

環境の色を単調にせず、機能的な部分に色を使って注意を促すという工夫は、低コストで安全性を高める効果的な方法です。

ポイント③:整理整頓による環境変化の最小化

特に認知機能に障害がある方にとって、予期せぬ環境の変化は混乱やパニックの原因となります。また、物が散らかっている状態は、物理的な危険も高めます。

安全な生活環境を維持するためには、「整理整頓の習慣化」が不可欠です。すべての物に「定位置」を決め、使ったらすぐに元に戻すルールを作りましょう。家具の配置は頻繁に変えず、配置を変える場合は、事前に写真や絵などで変更点を説明し、理解を促すことが大切です。整理整頓は、物理的な安全性と、精神的な安心感の両方を保つ基本中の基本です。

💡 ポイント

緊急時の連絡先や避難経路など、重要な情報は、文字だけでなく絵や図を用いて作成し、目線の高さのわかりやすい場所に掲示しましょう。これは、誰でも、パニック時でもすぐに情報を確認できるようにするためです。


安全な環境づくりを進めるための戦略

戦略①:福祉専門職による「アセスメント」の活用

自宅の安全な環境づくりは、ご家族や当事者だけで判断せず、必ず専門職の力を借りることが成功の鍵です。専門職は、「アセスメント(評価)」を通じて、潜在的なリスクや必要な改修を科学的に分析してくれます。

  • 理学療法士(PT)/作業療法士(OT)体の残存機能や生活動作を評価し、どの動作で転倒しやすいか、どのような自助具が有効かをアドバイスします。
  • 福祉住環境コーディネーター建築の専門知識と福祉の視点を持ち、安全で使いやすい住宅改修のプランを提案し、工事業者との橋渡しをしてくれます。
  • ケアマネジャー介護保険サービス住宅改修費の支給制度など、公的な支援制度の活用をサポートしてくれます。

これらの専門職がチームとなって、あなたの生活全体の安全性を高めるための最適な方法を見つけ出してくれます。

戦略②:公的支援制度の「二段構え」活用

安全な環境づくりのための改修には費用がかかりますが、国や自治体による公的な支援制度を賢く活用しましょう。

制度名 目的 主な対象 費用の目安(自己負担除く)
介護保険 住宅改修費 段差解消、手すり設置など 要介護・要支援認定者 上限20万円(原則)
障害者総合支援法 日常生活用具給付 火災報知器、通報システムなど 身体障害者手帳など保有者 種目ごとに基準額あり(自治体による)

特に、住宅改修は介護保険火災報知器や徘徊感知器は障害者総合支援法と、制度を「二段構え」で利用できるかケアマネジャーに確認しましょう。改修を行う前に必ず申請が必要です。

戦略③:定期的な「安全点検」の習慣化

一度バリアフリー化しても、時間とともに環境は変化します。床材の劣化、手すりの緩み、新しい家具の導入、そして使用者の身体機能の変化などが、新たな危険を生み出します。

安全な生活環境を維持するためには、年に一度の定期的な「安全点検」を習慣化しましょう。点検リストを作成し、手すりのグラつき、マットのめくれ、照明の切れなどをチェックします。特に、病状が進行したり、新たなリハビリを始めた際には、その都度環境を見直すことが重要です。

✅ 成功のコツ

すべての改修を一気にやろうとせず、転倒リスクの高い場所や、生活の自立に最も直結する場所(トイレ、浴室)から優先順位をつけて取り組みましょう。段階的に進めることで、費用や労力の負担も軽減できます。


まとめ

障害者のための安全な生活環境作りは、物理的なバリアを解消することに加え、認知・情報面での配慮を組み合わせた、総合的なアプローチが必要です。転倒を防ぐための床面整理と手すりの設置、火災を防ぐIH化、そして緊急通報システムの導入は、安心と自立を支える基本です。

安全な環境は、当事者だけでなく、介護するご家族の負担も大幅に軽減します。ぜひ、理学療法士や福祉住環境コーディネーターといった専門職に相談し、公的制度を最大限に活用しながら、自宅を「安心のセーフティネット」に変えていきましょう。

まとめ

  • 物理的危険の排除は、床面の段差解消手すりの戦略的配置、そして火気・熱源の安全対策が基本です。
  • 心理的・情報的な安全確保のため、わかりやすいサイン緊急通報システム色彩による視認性向上が有効です。
  • 環境づくりは、専門職によるアセスメントを受け、介護保険や障害者総合支援法を「二段構え」で活用しましょう。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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