障害者雇用で働ける職種の実例まとめ

「障害者雇用で働きたいけれど、自分に合う仕事があるのかわからない」「事務作業以外の職種は選べないのでは?」と、仕事探しの選択肢について不安を感じていませんか?
かつて、障害者雇用は定型的な事務補助業務が中心でしたが、近年は企業のダイバーシティ推進とIT化の進展により、専門性の高い職種や、テレワークが可能な職種など、その選択肢は驚くほど多様化しています。
この記事では、障害者雇用で実際に募集されている4つの主要な職種カテゴリーと具体的な仕事内容を、メリット・デメリットを交えて徹底的に解説します。さらに、ご自身の障害特性と職種との適性を見極めるための具体的なステップもご紹介します。
この記事を読むことで、あなたの能力や希望に合った仕事を見つけ、自信を持って就職活動に臨むための明確なロードマップを手に入れられるでしょう。
カテゴリー1:事務・オフィス系職種
(1)事務補助・庶務
事務補助や庶務は、障害者雇用枠で最も募集が多い職種の一つです。主な仕事内容は、データ入力、書類の整理・ファイリング、郵便物の仕分け、備品管理、簡単な資料作成サポートなど、定型化されたルーティンワークが中心となります。
この職種のメリットは、業務内容が明確で、体力的・精神的な負担が比較的少ない点です。特に、集中力を要する作業や、コツコツと取り組む作業が得意な方(発達障害の一部の方など)に適しています。デメリットとしては、業務が限定的であるため、給与水準が抑えられがちであることや、キャリアアップのスピードが緩やかになる傾向があります。
(2)一般事務・経理サポート
一般事務や経理サポートは、より専門的なスキルや経験が求められる職種です。具体的には、請求書の処理、売掛金・買掛金の管理、伝票入力、電話応対の一部代行など、企業の運営に直接関わる責任ある業務が含まれます。
この職種のメリットは、専門性を磨くことができ、キャリアアップや昇給の機会が多いことです。一定のPCスキル(Excelなど)や簿記の知識が求められますが、その分、やりがいも大きくなります。ただし、月末や期末などの繁忙期には残業が発生する可能性もあるため、体調の安定と自己管理能力が不可欠です。
(3)人事・採用サポート
大企業や人材系の企業では、人事・採用部門でのサポート業務も多く募集されています。社員の入退社手続きのサポート、研修資料の準備、採用応募者のデータ管理、説明会の受付手伝いなどが主な業務です。これは、人との関わりを避けつつ、正確な作業を好む方に特に適しています。
この職種では、機密情報を取り扱うため、高い倫理観と情報管理能力が求められます。企業の「人」に関する重要な業務に携われるため、やりがいを感じやすい職種ですが、急な問い合わせやスケジュール変更への対応が求められる場合もあります。
💡 事務職のトレンド
近年、多くの企業でRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した定型業務の自動化が進んでいます。障害者雇用においても、単純なデータ入力だけでなく、RPAで自動化できない複雑な判断を伴う業務や、マニュアル作成などの「付加価値の高い事務スキル」が求められ始めています。
カテゴリー2:専門・技術系職種
(1)ITエンジニア・プログラマー
IT分野は、障害者雇用が急速に拡大している分野の一つです。ウェブサイトのコーディング、ソフトウェアのテスト(デバッグ)、データ分析、システム運用サポートなど、高い専門知識と集中力が活かせる職種が豊富にあります。
この職種の最大のメリットは、リモートワークや在宅勤務が制度として確立されている企業が多く、通勤や対人コミュニケーションの負担を大幅に軽減できる点です。また、スキルや成果が給与に直結しやすく、高水準の報酬を得られる可能性も高いです。
ただし、常に新しい技術を学ぶ意欲や、論理的な思考力、そして納期を守るための自己管理能力が求められます。身体障害や精神障害のある方でも、専門スキルがあれば十分に活躍できるフィールドです。
(2)Webデザイナー・DTPオペレーター
企業の広報部門やデザイン会社などでは、自社サイトの更新、パンフレットの制作、社内報のデザイン調整などを行うWebデザイナーやDTPオペレーターが募集されています。これは、視覚的なセンスやクリエイティブな能力が活かせる職種です。
メリットは、成果物が目に見える形で現れるため、達成感を得やすいこと、そしてこちらもリモートワークが可能なケースが多いことです。デメリットとしては、クライアントや部署からの修正指示への対応がストレスになる可能性があるため、フィードバックを冷静に受け止められる能力が必要です。
(3)CADオペレーター・設計サポート
建設、製造、機械設計などの分野では、CADソフト(設計図面を作成するソフト)を使って、設計者のサポートを行う職種があります。図面の修正やデータ管理、簡単なモデリングなどが主な業務で、緻密で正確な作業を長時間続けられる能力が求められます。
この職種は、座り仕事が中心であるため、身体的な負担が少なく、数字や図形、論理的な作業が得意な方に非常に向いています。専門スキルが必要ですが、職業訓練校などで習得することが可能です。
カテゴリー3:サービス・軽作業系職種
(1)特例子会社での専門業務
特例子会社とは、障害のある方の雇用を促進するために、親会社が設立した子会社のことです。特例子会社では、親会社の業務の一部(印刷、スキャン、データ管理、清掃、カフェ運営など)を請け負っており、障害特性に合わせた環境と業務設計が徹底されています。
最大のメリットは、非常に手厚い配慮と専門的な支援(ジョブコーチなど)を受けられる点です。多様な障害の方が働いているため、理解も深いです。デメリットとしては、業務内容が親会社からの委託に限定されるため、職種の幅が狭いことや、一般企業に比べて給与水準が低いケースが多いことです。
(2)クリーンスタッフ・清掃業務
オフィスビルや商業施設、病院などでの清掃業務は、体を使う作業が中心となります。この職種のメリットは、比較的簡単な作業が多く、対人コミュニケーションが最小限で済む点です。特に、動きながら作業することを好む方、または静かな環境で集中して作業したい方に適しています。
デメリットは、立ち仕事や体力を要する作業が多いため、身体的な負担が大きいことです。企業によっては、勤務時間や休憩を調整するなどの配慮が受けられますが、ご自身の体力を正確に見極める必要があります。
(3)工場・物流倉庫での軽作業
製造業の工場や、Eコマース企業の物流倉庫では、製品の検品、ピッキング(商品の選別)、梱包、ラベル貼りなどの軽作業が募集されています。これらは、単純な反復作業や、高い正確性が求められる業務です。
メリットは、仕事の指示が明確で覚えやすく、個々のペースで作業を進めやすい点です。デメリットとしては、作業環境が単調になりやすいため、モチベーションを維持する工夫が必要なこと、また、立ち仕事や騒音が伴う可能性があることです。
カテゴリー4:新しいトレンド職種
(1)テレワーク(在宅勤務)可能な職種
コロナ禍以降、在宅で完結できる業務の求人が急速に増加しています。データ入力、コールセンター(インバウンド・アウトバウンド)、Webサイトの監視、秘書業務などがその例です。これは、通勤や対人ストレスを大幅に軽減したい方にとって、非常に大きなメリットです。
特に精神障害や内部障害、身体障害などで外出が困難な方にとっては、最も理想的な働き方と言えます。ただし、自己管理能力や時間管理能力が非常に重要であり、仕事とプライベートの切り分けをしっかり行う必要があります。
(2)専門性の高い「企画・マーケティング」サポート
大企業やコンサルティングファームなどでは、市場調査、データ収集・分析、プレゼン資料作成のサポートなど、専門性の高い企画・マーケティング系のサポート業務が募集されることがあります。これは、論理的な思考力や、情報収集能力に長けている方に適しています。
この職種のメリットは、給与水準が高く、将来的なキャリアパスに繋がりやすいことです。ただし、業務の成果が厳しく問われるため、求められるスキルレベルが高く、入社前の準備が不可欠です。
(3)農福連携による農業・地域貢献
近年、農業分野と福祉が連携した「農福連携」の取り組みが注目されています。これは、農作業(収穫、梱包、選別など)を通じて、自然の中で働く機会を提供するものです。心身のリフレッシュ効果も期待でき、地域貢献にもつながるやりがいのある仕事です。
この職種は、屋外での作業となるため、体力や天候への耐性が求められますが、作業ペースや内容について柔軟な配慮が受けられる場合が多いです。新たな働き方として、今後さらに拡大していくことが期待されています。
最適な職種を見つけるための3つのステップ
ステップ1:徹底した「自己理解」と「特性の明確化」
最適な職種を選ぶためには、まず「自分自身がどんな人間か」を徹底的に理解することが不可欠です。紙に以下の項目を書き出してみましょう。
- 得意な作業:ルーティンワーク、分析、コミュニケーション、創造性、体力など。
- 苦手なこと:電話応対、急なスケジュール変更、騒音、立ち仕事など。
- 必要な配慮:休憩頻度、残業の可否、通勤の負担、業務量の調整など。
特に、就労移行支援事業所では、職業評価や訓練を通じて、客観的にこれらの特性を明確化するサポートが受けられます。まずは専門家の力を借りて、ご自身の「働く適性」を明確にしましょう。
ステップ2:譲れない条件と仕事の価値観を整理する
次に、仕事に求める「価値観の優先順位」をつけます。「給与水準」「安定性」「職種の専門性」「自宅からの距離」「職場の雰囲気」など、複数の要素を比較検討し、「これだけは譲れない」という条件を3つ程度に絞り込みましょう。
例えば、「給与は低くても良いから、対人業務なしで安定して働きたい」のか、「多少無理しても良いから、専門スキルを磨き高給を目指したい」のかによって、選ぶべき職種カテゴリーは大きく変わってきます。
ステップ3:職場実習(トライアル雇用)で適性を確認する
最終的な適性は、実際にその職場で働いてみないとわかりません。応募前に、企業に職場実習やトライアル雇用が可能か相談してみましょう。
職場実習は、数日〜数週間、実際の業務を体験できる貴重な機会です。仕事内容だけでなく、職場の雰囲気、上司の指導方法、必要な配慮が本当に受けられるかなど、求人情報だけではわからない部分を肌で感じることができます。積極的に実習に参加することが、ミスマッチを防ぎ、長期定着への一番の近道となります。
まとめ
障害者雇用で働ける職種は、事務補助からITエンジニア、マーケティングサポート、在宅勤務など、多岐にわたります。あなたの能力を最大限に活かせる場所が、必ず見つかります。
就職活動を成功させるには、多様化する求人の中から、ご自身の「障害特性」「得意なこと」「必要な配慮」に最も合った仕事を見つけることが重要です。まずは就労移行支援などの専門機関で自己分析を徹底し、職場実習を通じて適性を確認するステップを踏んでいきましょう。
- 障害者雇用枠の職種は、事務系だけでなく、IT、デザイン、テレワークなど多様化している。
- 職種を選ぶ際は、給与水準やキャリアパスだけでなく、障害特性との「相性」を最優先する。
- 最適な職種を見つけるには、専門家のサポートのもと、自己理解を深め、職場実習で適性を確認することが不可欠である。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





