障害者雇用の就活でまずやるべきこと|自己理解と情報収集

障害者雇用の就活:成功への第一歩は自己理解とリサーチから
「そろそろ働きたいけれど、何から始めたらいいかわからない」「自分の障害をどう説明すれば採用されるのだろうか」と、最初の一歩に立ち止まっていませんか。障害者雇用での就職活動は、単に求人を探すだけではなく、自分自身の特性と向き合い、社会の仕組みを正しく知ることから始まります。焦って応募を繰り返すよりも、土台を固めることで、結果として自分にぴったりの職場に出会える確率がぐっと高まります。
この記事では、障害者雇用枠での就活を成功させるために不可欠な自己理解と情報収集の具体的なやり方を詳しく解説します。専門的な言葉を避け、今日から実践できるステップを丁寧にまとめました。この記事を読み終える頃には、自分の強みをどう伝え、どこで求人を探せばよいのかが明確になり、前向きな気持ちで準備を進められるようになっているはずです。
あなたの新しいキャリアが、安心と自信に満ちたものになるよう、心を込めてサポート情報をお届けします。それでは、まずは就活の根幹となる「自分を知る作業」から一緒に見ていきましょう。
自己理解:自分という「取扱説明書」を作ろう
自分の障害特性を客観的に把握する
障害者雇用の面接で必ず聞かれるのが、「どのような配慮が必要ですか?」という質問です。これに答えるためには、自分の障害が仕事のどんな場面で影響し、どう対処すれば安定して働けるのかを深く知る必要があります。これを自己理解と呼びます。単に病名を知るだけでなく、自分の体調や気分の波、得意・不得意な作業を細かく言語化していく作業です。
まずは、過去の経験を振り返ってみましょう。例えば「マルチタスクが苦手でパニックになったことがある」「大きな音がすると集中力が切れる」といったマイナスの経験は、実は大切な情報です。これを知ることで、「指示は一つずつメモでもらう」「静かな環境の席を希望する」といった具体的な合理的配慮の提案に繋げることができます。自分の弱みを知ることは、決して恥ずかしいことではなく、長く働き続けるための戦略なのです。
実例として、ある30代のASD(自閉スペクトラム症)の男性は、自分の特性を「耳からの情報は抜けやすいが、目からの情報は正確に理解できる」と分析しました。彼は就活の際、この自己分析をもとに「マニュアルの提供」と「チャットツールの活用」を企業に希望しました。結果として、入社後のコミュニケーションミスが劇的に減り、現在は事務職として中心的な役割を担っています。自分の取説を作ることで、企業側も安心してあなたを迎え入れることができます。
「できること」と「強み」を棚卸しする
障害特性と向き合う一方で、それ以上に大切なのが自分の強み(ストレングス)を見つけることです。障害者雇用であっても、企業はあなたの「障害」を雇うのではなく、あなたの「能力」を雇います。これまでの学校生活や趣味、あるいは福祉施設での訓練の中で、没頭できたことや感謝されたことはありませんか。自分では当たり前だと思っていることが、実は強力な武器になることもあります。
例えば、「コツコツと同じ作業を続けるのが苦にならない」「データの入力速度が速い」「誰に対しても丁寧な挨拶ができる」といったことも立派な強みです。障害者雇用の現場では、正確性や継続性が高く評価される傾向にあります。自分の強みを見つけるのが難しいときは、家族や支援機関のスタッフに「私の良いところはどこですか?」と聞いてみる他己分析も非常に有効です。
自分という人間を多角的に見つめ直すために、以下の項目をノートに書き出してみることから始めてみてください。
- 集中力が続く時間や、得意な時間帯(午前・午後など)
- 人から褒められたことのある作業や行動
- ストレスを感じたときのサインと、その解消法
- 仕事をする上で、絶対に譲れない条件
ナビゲーションブックの活用
自己理解を形にするツールとしておすすめなのが、ナビゲーションブックの作成です。これは、自分の障害特性、必要な配慮、強み、今後の目標などを数ページにまとめた、いわば「自分専用の就活パンフレット」です。口頭での説明が苦手な方でも、これを用意しておくことで、面接官に視覚的かつ正確に情報を伝えることができます。
ナビゲーションブックには、単に「疲れやすい」と書くのではなく、「1時間の作業ごとに5分の休憩をいただければ、1日7時間の勤務が可能です」といった具合に、具体的な数字を入れるのがポイントです。企業側は「何をすればいいか」が明確であればあるほど、採用のハードルが下がります。また、自分自身でも「ここまでなら頑張れる」という境界線がはっきりするため、無理な働き方を防ぐことにも繋がります。
作成の際は、ハローワークの専門窓口や就労移行支援事業所のスタッフと一緒に作ると良いでしょう。客観的な視点が入ることで、より説得力のある内容になります。ナビゲーションブックは一度作って終わりではなく、就活を進めながら、あるいは実際に働いてみて得た気づきを加え、常に更新していく「生きた書類」として活用していきましょう。
💡 ポイント
自己理解を深める際は「できないこと」だけに注目せず、それに対して「どう工夫しているか(対処法)」をセットで考えるようにしましょう。これが企業への安心感に繋がります。
情報収集:障害者雇用のマーケットを知る
障害者雇用の種類と特徴を理解する
自分自身の準備が整ってきたら、次は外の世界、つまり労働市場の情報収集です。障害者雇用といっても、働き方は一つではありません。大きく分けると、一般企業の中の障害者枠、特例子会社、そして福祉的就労(A型・B型)などがあります。それぞれの特徴を知り、今の自分の体調やキャリアプランにどれが合っているかを見極める必要があります。
最近特に注目されているのが、特例子会社です。これは、親会社が障害者の雇用を促進するために設立した子会社で、障害に対する配慮が非常に手厚いのが特徴です。指導員や看護師が常駐しているケースもあり、安定して長く働きたい方には非常に人気があります。一方で、より一般社員に近い環境で切磋琢磨したい方は、大手企業の障害者枠を直接狙うのが良いでしょう。以下に、主要な雇用形態の比較表をまとめました。
| 項目 | 一般企業の障害者枠 | 特例子会社 | 就労継続支援A型 |
|---|---|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員など | 主に契約社員(正社員登用あり) | 雇用契約あり |
| 配慮の程度 | 部署や上司により様々 | 専門スタッフによる厚い配慮 | 福祉的サポートが中心 |
| 主な業務 | 事務、軽作業、専門職など | 事務補助、清掃、印刷など | 軽作業、製造、サービスなど |
| 賃金水準 | 最低賃金以上(比較的高め) | 最低賃金以上(安定) | 各地域の最低賃金 |
求人を探すための多角的なチャネル
求人情報は、一箇所に集まっているわけではありません。効率よく自分に合った仕事を見つけるためには、複数の窓口を活用するのが成功のコツです。まずは基本となる「ハローワーク」です。ここでは障害者専門の窓口があり、地域の求人を網羅しています。しかし、ハローワークだけで活動を完結させるのは少しもったいないかもしれません。
最近は、民間が運営する「障害者専門の転職エージェント」が非常に充実しています。エージェントを利用するメリットは、一般には公開されていない非公開求人を紹介してもらえることや、キャリアアドバイザーが企業との条件交渉(給与や配慮事項など)を代行してくれることです。また、サイト上では見えない職場の雰囲気や、過去にどんな障害の方が採用されたかといった詳細なデータを教えてもらえることもあります。
他にも、企業のホームページにある「採用情報」を直接チェックしたり、障害者向けの「合同就職面接会」に参加したりする方法もあります。特に合同面接会は、一日で複数の企業の担当者と直接話せる貴重な機会です。履歴書を送る前に「どんな雰囲気の人が働いているのか」を肌で感じることができるため、ミスマッチを防ぐためにも積極的に参加を検討してみましょう。
企業研究:配慮と業務内容のバランスを見る
気になる求人が見つかったら、徹底的に企業研究を行います。障害者雇用で最も重要なのは、「その企業がどれだけ障害理解があるか」と「自分ができる仕事があるか」のバランスです。企業の公式サイトだけでなく、障害者雇用に関するレポートや、実際に働いている方の口コミサイトなどをチェックしましょう。
注目すべきポイントは、その企業の「障害者雇用率」や「平均勤続年数」です。雇用率を法定以上に維持し、定着率が高い企業は、それだけ受け入れ体制が整っている可能性が高いと言えます。また、業務内容が「誰でもできる単純作業」ばかりなのか、あるいは「本人の適性に合わせてステップアップできる環境」なのかも、長く働く上では重要な視点です。
実例として、身体障害のある女性は、憧れていたアパレル企業の事務職に応募しました。事前のリサーチで、その企業がバリアフリー化を推進し、テレワーク制度を積極的に導入していることを知りました。面接では「企業の多様性を認める姿勢」に共感したことを伝えたところ、理解のある会社だと評価され、見事採用となりました。事前の調べ学習が、面接での熱意となり、採用を勝ち取る決め手になるのです。
✅ 成功のコツ
合同面接会や説明会では、質問時間を活用して「現在働いている障害のある方は、どのようなスケジュールで過ごしていますか?」と聞いてみましょう。実際の働き方がリアルにイメージできます。
支援機関の活用:一人で戦わない就活
ハローワーク専門窓口の役割
就活の強力なパートナーとしてまず挙げられるのが、ハローワーク(公共職業安定所)の「障害者専門窓口」です。ここには、障害者雇用に関する専門知識を持った職員や、就職困難な方をサポートする「就職支援ナビゲーター」が配置されています。彼らは単に仕事を紹介するだけでなく、あなたの自己理解の度合いを確認し、必要であれば模擬面接などの練習も行ってくれます。
ハローワークを活用する最大のメリットは、「地域ネットワーク」の強さです。地元の企業がどのような意図で障害者を採用しようとしているのか、窓口の担当者は裏事情を把握していることがよくあります。また、「特定求職者雇用開発助成金」などの助成金制度についても詳しいため、企業側に対しても「私を雇うとこのようなメリットがありますよ」という提案を一緒に行ってくれることもあります。
初めて行くときは、主治医の診断書や障害者手帳を持参し、まずは「登録」から始めましょう。具体的な希望が決まっていなくても、「これから探したい」という相談だけで大丈夫です。定期的に通うことで担当者との信頼関係が築かれ、あなたにぴったりの新着求人が出たときに、優先的に声をかけてもらえるようになることもあります。公的な機関を賢く味方につけることが、就活を有利に進める一歩です。
就労移行支援事業所を使い倒す
「いきなり就活を始める自信がない」「規則正しい生活リズムから整えたい」という方におすすめなのが、就労移行支援事業所です。これは障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、最大2年間、通所しながらスキルアップや就職活動のサポートを受けられます。事業所では、PC操作などの実務訓練から、ビジネスマナー、コミュニケーションスキルの習得まで、幅広いプログラムが提供されています。
就労移行支援の大きな特徴は、「就職後の定着支援」までセットになっている点です。就職が決まってからも、スタッフが定期的に職場を訪問し、上司とのトラブルや体調の変化について相談に乗ってくれます。この安心感があるからこそ、企業側も「サポート体制があるなら採用しよう」と前向きになりやすいのです。一人で応募するのが不安な場合は、スタッフが面接に同行してくれることもあります。
実例として、うつ病で休職中だった40代の女性は、就労移行支援に1年間通いました。そこでの模擬面接を通じて、自分の病歴をどうポジティブに説明するかを練習しました。結果として、スタッフの紹介で地元の中堅企業の事務職に採用されました。「一人だったら途中で投げ出していたけれど、スタッフさんの『大丈夫』という言葉に救われました」と彼女は言います。共に走ってくれる伴走者を持つことで、就活の孤独感は大きく軽減されます。
障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)
就労だけでなく、生活面を含めたトータルな相談ができるのが、通称「ナカポツ」と呼ばれる「障害者就業・生活支援センター」です。仕事を探すことと、安定した生活を送ることは表裏一体です。家計のやりくりや一人暮らしの不安、服薬の悩みなど、仕事に影響する「生活の土台」についても相談に乗ってくれるのがこの機関の強みです。
ナカポツの職員は、企業、ハローワーク、医療機関、そしてあなたを繋ぐ「ハブ(拠点)」のような役割を果たします。例えば、就職した後に「仕事は楽しいけれど、帰宅後に家事ができなくて体調が崩れそう」といった場合、ナカポツがヘルパーの導入を調整してくれたりします。このように、長期的な視点であなたの人生をサポートしてくれる存在です。
これら全ての支援機関に共通しているのは、「あなたの味方である」ということです。就活は断られることも多く、心が折れやすいイベントです。そんなときに、「次に行きましょう!」と背中を押してくれる専門家が周りにいる環境を作っておきましょう。支援を受けることは甘えではなく、プロの力を借りて自分の目標を達成するための「賢い選択」なのです。
「支援機関を利用するようになってから、自分の特性を客観的に見られるようになりました。一人で悩んでいた時間がもったいなかったと感じるほど、視界が開けました。」
— 20代・ADHD(注意欠如・多動症)のある利用者の声
⚠️ 注意
支援機関によって得意分野が異なります。「IT系に強い」「精神障害に特化している」など。複数の機関を見学し、自分に合うところを選ぶことが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 障害者手帳を持っていないと障害者雇用枠で応募できませんか?
原則として、障害者雇用枠での応募には障害者手帳の提示が必要です。これは、企業が「障害者雇用率」にカウントするために手帳の番号が必要になるためです。現在手帳を持っていないけれど障害者雇用を検討している方は、まず主治医に相談し、手帳の申請から始めることをおすすめします。ただし、手帳がなくても「合理的配慮」を受けながら一般枠で働くことは可能です。その場合は、自身の特性を伝え、どのような環境なら働けるかを企業と交渉することになります。自分の状況にどちらが合うか、ハローワーク等の専門家に相談してみましょう。
Q. 過去の離職歴(空白期間)をどう説明すればいいですか?
空白期間については、無理に隠す必要はありません。大切なのは「その期間をどう過ごし、今は働ける状態まで回復したか」を伝えることです。「療養に専念し、生活リズムを整えていた」「就労移行支援事業所で訓練を受け、現在は週5日安定して通所できている」といった具合に、現在の安定性を根拠とともに説明しましょう。企業が最も恐れるのは「入社後にすぐ体調を崩して辞めてしまうこと」です。過去よりも、未来に向かってどのような準備をしてきたかをアピールすることが、面接官の安心感に繋がります。
Q. どの程度の配慮を求めていいのか基準がわかりません。
配慮の基準は「業務の遂行に不可欠で、かつ企業にとって過重な負担にならない範囲」です。例えば、「残業を免除してほしい」「指示を文書でもらいたい」といった内容は、多くの企業で受け入れられやすい配慮です。一方で、「自分専用の個室を用意してほしい」「嫌な仕事はしたくない」といった内容は、過度な負担と見なされる可能性があります。配慮は一方的に求めるものではなく、企業と「すり合わせ」をするものです。まずは自分が「これがあれば安定して働ける」という最低限のラインを整理し、支援機関のスタッフに客観的なアドバイスをもらうのがベストです。
まとめ
障害者雇用での就職活動は、自分自身の取扱説明書を作り、適切な支援の輪に入り、社会のニーズを知るという3つの軸で成り立っています。最後に、この記事のポイントを整理しましょう。
- 自己理解を深める:特性だけでなく「強み」と「具体的な配慮事項」を言語化する。
- 取説(ナビゲーションブック)を作る:企業に自分のことを正しく伝えるためのツールを用意する。
- 多角的に情報を集める:ハローワーク、エージェント、合同面接会などを組み合わせて活用する。
- 支援機関とつながる:一人で抱え込まず、就労移行支援やナカポツなどのプロの力を借りる。
- 「安定性」をアピールする:今の自分なら安定して働けるという根拠を客観的に提示する。
就活の過程で、時には不採用通知を受け取ることもあるでしょう。しかし、それはあなたの人間性が否定されたわけではなく、単にその企業の環境と今のあなたの特性がマッチしなかっただけのことです。自己理解と情報収集を地道に続けていれば、必ず「ここなら自分らしくいられる」と思える職場が見つかります。
次のアクションとして、まずは自分の「好きなこと」と「苦手なこと」を3つずつノートに書き出すことから始めてみませんか。あるいは、近所のハローワークの場所を調べるだけでも十分な一歩です。小さな行動の積み重ねが、大きな自信へと変わっていきます。あなたの就職活動が、素敵な出会いに繋がることを心から応援しています。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





