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障害者雇用のメリット・デメリットを徹底整理

📖 約36✍️ 伊藤 真由美
障害者雇用のメリット・デメリットを徹底整理
障害者雇用は、体調の波がある方にとって「安定して働く」ための強力な選択肢です。最大のメリットは、法律で定められた合理的配慮の提供義務と、それによる職場の深い理解、そして就労移行支援などの手厚いサポートを受けられることです。これにより、体調を崩しにくい環境で長期就労を目指せます。一方、デメリットとして、一般就労より給与水準が低い傾向にあること、希望職種が限定されやすいこと、障害情報の開示が必須となることが挙げられます。これらのデメリットを乗り越えるためには、給与以外の価値に目を向け、自身の「トリセツ」を作成して積極的に業務拡大を提案する姿勢が重要です。記事では、精神・発達・身体といった障害種別ごとの具体的なメリットも解説しています。

「障害者雇用で働くことを検討しているけれど、本当に自分に合っているのか知りたい」「障害者雇用のメリットだけでなく、隠れたデメリットや注意点も知っておきたい」と、一歩踏み出す前に情報を整理したいと考えている方は多いのではないでしょうか。

障害者雇用は、安心して働くための多くのメリットがある一方で、一般就労とは異なる側面や制約も存在します。これらの情報を事前に把握しておくことは、後悔のない就職活動と、長期的な安定就労のために不可欠です。

この記事では、障害者雇用で働くことの4つの大きなメリットと、事前に理解しておくべき3つのデメリット・注意点を、具体的なデータや事例を交えて徹底的に解説します。

この記事を読むことで、障害者雇用の全体像を正確に把握し、自信を持ってあなたに合った働き方を選択するための判断材料が得られるはずです。


障害者雇用の核となる4つの大きなメリット

メリット1:合理的配慮の提供が法的に担保されている

障害者雇用で働く最大のメリットは、企業側が合理的配慮(ご自身の障害特性に応じた調整)を提供する義務を負っていることです。これは、障害者雇用促進法という法律によって定められており、企業は過度な負担にならない範囲で、必要な配慮を行わなければなりません。

この配慮が担保されることで、体調の波があっても働き続けやすい環境が生まれます。例えば、疲れやすい方には休憩時間の頻度を増やす、精神的な配慮が必要な方には電話対応を免除するなど、一人ひとりのニーズに合わせた調整が期待できます。

合理的配慮は、単に「優遇」されることではなく、障害のない方と同等に能力を発揮できるための環境調整です。この法的裏付けがあるからこそ、安心して長く働ける土台が築かれるのです。

  • 通勤ラッシュを避けるための時差出勤
  • 通院日のための柔軟な休暇取得
  • 業務量の調整や残業の免除
  • 集中できるパーテーション付きのデスク配置

メリット2:職場の理解が深く、安心して働ける

障害者雇用枠を設けている企業は、障害のある方を雇用することへの意識が高く、人事担当者や管理職が障害に関する一定の知識を持っていることが多いです。これにより、職場の理解が得られやすく、働く上での心理的な負担が大きく軽減されます。

一般就労(クローズ)で働いている場合、体調不良や通院の際に、障害について説明する義務がないとはいえ、理解を得られずに孤立してしまうリスクがあります。しかし、障害者雇用であれば、入社時から障害をオープンにしているため、周りの同僚も配慮を前提に行動してくれます。

この「理解されている」という安心感は、ストレスを軽減し、結果的に出勤率の向上や安定した業務遂行につながります。精神的な安定こそが、長期就労の鍵となります。

メリット3:就労支援サービスを活用できる

障害者雇用を目指す方は、ハローワークの専門援助部門のほか、「就労移行支援事業所」や「障害者就業・生活支援センター」といった専門の支援機関を無料で利用できます(一部、費用負担が発生する場合もあります)。

これらの支援機関では、就職前の準備段階から入社後の定着まで、手厚いサポートを受けることができます。具体的には、応募書類の作成指導、模擬面接、職業訓練、そして職場実習(トライアル雇用)のあっせんなどです。

「就労移行支援を利用したことで、自分の障害特性に合った企業の探し方や、面接での伝え方を徹底的に練習できました。一人で悩まずにプロのサポートを受けられたことが、就職成功の大きな要因だと思います。」

— 20代・発達障害のある方

入社後も、ジョブコーチ(職場適応援助者)による定着支援を受けることができ、職場で困りごとが発生した際に、企業とご本人の間に立って調整役を担ってくれるため、安心して働き続けることができます。

メリット4:雇用の機会が安定して確保されている

障害者雇用は、「法定雇用率制度」によって、企業に一定の割合で障害のある方を雇用することが義務付けられています。これは、常に一定数の求人需要が存在することを意味します。

特に従業員が一定数以上の大企業では、この法定雇用率の達成に積極的に取り組んでいるため、安定した雇用機会が得やすいと言えます。この制度のおかげで、一般の景気動向に左右されすぎず、就職活動の機会を比較的多く確保できるという利点があります。

💡 法定雇用率の現状

現在の民間企業の法定雇用率は2.5%です(2024年4月時点)。これは、常時雇用する従業員が40人以上の企業は、少なくとも1人は障害のある方を雇用しなければならないことを意味します。


知っておくべき3つのデメリットと注意点

デメリット1:給与水準が一般就労より低い傾向がある

障害者雇用で働く際に、多くの方が懸念するのが「給与」についてです。残念ながら、統計上、障害者雇用の平均賃金は、一般就労の平均賃金よりも低い傾向にあります。

この背景には、合理的配慮の結果、業務内容が責任の重いポジションではなく、サポート業務や定型的な業務に限定されたり、勤務時間が短縮されたりするケースが多いことが挙げられます。給与の低さが、生活水準に影響を及ぼす可能性は、事前に検討しておくべき重要な要素です。

ただし、近年は専門性の高いスキルを持つ障害者を積極的に採用し、一般社員と同等の報酬体系を持つ企業も増えています。求人に応募する際は、業務内容や昇給・賞与の制度をしっかりと確認することが重要です。

デメリット2:希望する職種や業務が限定されやすい

障害者雇用枠では、企業が合理的配慮を提供しやすい部署や業務に配置することが多いため、職種や仕事内容の選択肢が限定的になる傾向があります。

例えば、対人業務が苦手な方、または体力の消耗を避ける必要がある方の場合、事務補助やデータ入力、軽作業などの業務に配属されることが多く、営業職や専門職、管理職といったキャリアパスを目指すことが難しくなる場合があります。

ご自身のスキルやキャリアプランと、企業側が提供できる業務内容との間で、ミスマッチが生じないように、選考時に業務内容を具体的に確認することが求められます。

⚠️ キャリアパスに関する注意

入社後、一般社員と同じように昇進・昇格を目指したい場合は、選考時に人事制度やキャリアアップの事例を企業に具体的に質問し、自身の希望と企業側の考えをすり合わせることが大切です。

デメリット3:障害情報の開示が必須である(プライバシー)

障害者雇用枠で働くためには、企業に対してご自身の障害の種類、程度、必要な配慮事項などの情報を開示(オープン)することが必須となります。これは、企業が適切な合理的配慮を提供するために必要なプロセスです。

この情報開示は、職場以外での活動や人間関係に影響を与えることはありませんが、ご自身のプライバシーに関わる情報をオープンにすることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。

企業は、提供された障害情報を適切に管理する義務がありますが、採用面接時や入社後の情報共有の際に、どこまで詳しく、誰に情報を開示するのかを、ご自身でコントロールする意識を持つことが重要です。


デメリットを乗り越えるための具体的な準備

準備1:給与以外のメリットに価値を見出す

給与水準が低いというデメリットを乗り越えるためには、「給与以外の価値」に目を向けることが重要です。障害者雇用で得られる「安定性」「安心感」「継続性」は、体調の波がある方にとっては、給与以上に価値のあるものです。

例えば、体調を崩しやすく、一般就労で早期離職を繰り返してしまう場合、その都度、再就職活動を行うストレスや収入が途絶えるリスクを考えると、多少給与が低くても安定して働き続けられる方が、長期的な生涯賃金や生活の安定につながる可能性が高いと言えます。

「この会社なら無理なく長く働けそうだ」と感じられる企業の求人を見つけ、「働きやすさ」を最優先事項に据えることが、デメリットを解消する鍵となります。

準備2:自分の「トリセツ」で業務を拡大する

業務が限定的になるというデメリットに対しては、自己理解を深めた「トリセツ(取扱説明書)」を作成し、積極的に企業に提案することが有効です。

企業は「配慮の仕方がわからない」から業務を限定するケースもあります。そこで、ご自身の得意なことや、配慮があれば挑戦したい業務を具体的に示し、「この配慮があれば、この業務にも貢献できます」と伝えることで、任される業務の範囲を拡大できる可能性が高まります。

自己理解の要素 業務拡大のための伝え方
得意な業務 「データ分析は得意なので、〇〇のレポート作成を任せてほしい」
必要な配慮 「電話対応は苦手ですが、メール対応なら集中力を活かせます」
体調管理 「週に一度、体調が安定していることを上司に報告します」

準備3:支援機関を通じた企業との情報交換

プライバシーに関する情報開示に不安がある場合は、転職エージェントや就労移行支援事業所を介して、企業と事前に情報交換を行うことが有効です。支援機関の担当者が、ご本人の個人情報を守りつつ、企業側が求める情報や配慮の可否を調整してくれます。

また、応募する企業が、どの範囲の社員に障害情報を共有するか(人事部のみ、直属の上司のみなど)を事前に質問し、納得した上で応募することも可能です。情報の取り扱いについての企業の姿勢を確認することは、安心して働くために非常に重要です。


障害種別から見たメリットの具体例

精神障害の方にとってのメリット

精神障害のある方にとって、障害者雇用のメリットは特に大きいです。最大のメリットは、「体調の波」に対する理解と柔軟な対応です。

例えば、急な体調不良で欠勤や早退が必要になった場合でも、あらかじめ配慮事項として合意していれば、精神的な負担なく対応してもらいやすくなります。また、残業や休日出勤が免除されることで、生活リズムを乱すことなく安定したセルフケアを継続できる点も重要です。

さらに、人間関係でストレスを感じやすい方には、業務上のコミュニケーションをメールやチャット中心にするなど、ストレス要因を最小限にする配慮も期待できます。

発達障害の方にとってのメリット

発達障害のある方(特にASD、ADHDなど)にとってのメリットは、特性に合わせた作業環境と業務の明確化です。

例えば、聴覚過敏がある方には、パーティションや個室のデスクを用意する、ルーティンワークを好む特性に合わせて定型的な業務を集中して任せる、といった配慮が有効です。また、指示や連絡事項を口頭ではなく、文書(メールなど)で明確に伝えるルールを職場に設定してもらうこともできます。

業務内容やコミュニケーションが明確になることで、不必要なストレスやミスを防ぎ、ご自身の得意な能力を最大限に発揮できる環境を得られます。

身体障害の方にとってのメリット

身体障害のある方にとっての最大のメリットは、物理的な環境整備(バリアフリー)と通勤への配慮です。

企業は、車いすでの移動を考慮したトイレやエレベーターの設置、勤務地の1階への配置、そして通勤の負担を軽減するための通勤手段や時間の調整などを行ってくれます。また、必要な補助機器(PCの特殊な入力デバイスなど)の導入についても、配慮として検討してもらうことが可能です。

これらの配慮は、業務遂行に直結するだけでなく、日々の生活の質(QOL)を大きく向上させ、働き続ける意欲を維持する上で不可欠です。


まとめ

障害者雇用は、「安定して長く働くこと」を最優先に考える方にとって、非常に有効な選択肢です。合理的配慮の保証、職場の理解、専門的な支援サービスの利用という大きなメリットは、一般就労にはない魅力です。

一方で、給与や職種の限定、情報開示といったデメリットも存在します。大切なのは、これらのデメリットをただ恐れるのではなく、「給与以外の価値」に目を向けたり、支援機関と連携して業務拡大を提案したりするなど、積極的に解決策を探ることです。

まずは、ご自身の障害特性と必要な配慮を明確にし、専門の支援機関に相談することから始めましょう。あなたの能力を最大限に活かせる、最適な働き方がきっと見つかるはずです。

  • 最大のメリットは、合理的配慮の提供義務による雇用の安定と、職場の深い理解である。
  • デメリットである給与や職種の限定に対しては、安定性という価値を重視したり、トリセツを活用して業務拡大を提案したりする工夫が必要である。
  • 就労移行支援やハローワークなど、専門的な支援サービスを積極的に活用し、入社後の定着までサポートを受けることができる。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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