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障害者雇用とは?制度・働き方・メリットをわかりやすく解説

📖 約29✍️ 菅原 聡
障害者雇用とは?制度・働き方・メリットをわかりやすく解説
障害者雇用とは、障害者手帳を持つ方が、企業から合理的配慮を受けながら働くための制度です。法定雇用率制度に基づき、企業は採用義務を負っています。最大のメリットは、障害や体調についてオープンにでき、通院や休憩など個別の配慮を受けながら、無理なく長期的に働ける点です。一方で、給与水準やキャリアアップの制限といった懸念もあります。就職成功の鍵は、自身の障害特性と必要な配慮事項を明確にし、ハローワークや障害者就業・生活支援センターといった専門機関のサポートを積極的に活用することです。この制度は、働く意欲のある方が能力を発揮し、社会で活躍するための重要な選択肢です。

「障害があっても、自分らしく社会で活躍したい」「一般企業で働きたいけれど、自分の体調や障害特性について理解してもらえるか不安だ」

このような思いを抱いている方は少なくないでしょう。障害のある方が一般企業で働くための制度として、「障害者雇用」があります。これは、働く意欲のある方がその能力を活かし、安定して働き続けるための重要な仕組みです。

しかし、「障害者雇用」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な制度の内容や、一般雇用との違い、どのような配慮が受けられるのかがわからないという方もいるかもしれません。また、ご家族や支援者の方にとっても、この制度を正しく理解することは、適切なサポートを行う上で欠かせません。

この記事では、障害者雇用について、その制度の基本、働き方の特徴、企業側・働く側双方のメリットを、初めての方にもわかりやすく丁寧に解説します。

障害者雇用という働き方への理解を深め、あなたらしいキャリアの一歩を踏み出すための情報として、ぜひ最後までお読みください。


障害者雇用とは?制度の基本と一般雇用との違い

障害者雇用とは、障害のある方が企業で働くにあたり、その障害特性や体調に合わせて合理的配慮を受けながら、安定的に就労するための仕組みです。これは、日本の法律に基づいた制度であり、企業側には障害のある方を雇用する義務が課せられています。

この制度は、単に「障害のある人を雇う」というだけでなく、障害の有無にかかわらず誰もが能力を発揮できる社会を目指すための、重要な社会的な取り組みの一つと言えます。

「合理的配慮」と「法定雇用率」の二本柱

障害者雇用制度を支える主な柱は、以下の二つです。

  1. 合理的配慮の提供:事業主は、障害のある労働者が職場で働く際に生じる困難を取り除くため、個々の特性や状況に応じて必要な配慮をすることが義務付けられています。
  2. 法定雇用率制度:一定規模以上の企業(従業員43.5人以上、令和6年度時点)に対して、常用労働者に占める障害者の割合を「法定雇用率(2.5%)」以上にすることが義務付けられています。

この法定雇用率制度により、企業は積極的に障害のある方を採用するインセンティブが働き、働く場が確保されています。雇用率が達成できない企業には、障害者雇用納付金の支払い義務が生じます。

💡 ポイント

合理的配慮とは、たとえば「体調不良時に休憩を取りやすい環境を整える」「業務内容を調整する」「通勤に配慮する」など、過度な負担にならない範囲で個別に配慮することです。この配慮があるからこそ、障害者雇用は成り立っていると言えます。

障害者雇用と一般雇用の大きな違い

障害者雇用と、障害の有無にかかわらず誰もが応募できる「一般雇用(オープン採用)」の最も大きな違いは、「障害を開示しているかどうか」、そして「合理的配慮を前提としているかどうか」です。

項目 障害者雇用(クローズド採用) 一般雇用(オープン採用)
障害の開示 必須(障害者手帳の有無が条件) 不要(一般的に開示しない)
合理的配慮 前提となる 原則として配慮を求められない
選考基準 能力に加え、配慮事項への適応を重視 能力やスキルを最重視
働く環境 専門部署やサポート体制があることが多い 他の社員と同じ

障害者雇用は、障害者手帳を持つ方を対象とし、企業側は手帳の提示をもって、配慮事項の聞き取りと職場環境の整備をすることが義務付けられます。これにより、働く側は安心して自分の特性を伝え、必要なサポートを受けながら働くことができます。

障害者雇用の対象者と適用される法律

障害者雇用制度の対象となるのは、特定の障害者手帳を所持している方に限られます。この手帳の所持が、企業が法定雇用率の対象としてカウントするための必須条件となります。

対象となる障害者手帳の種類

法定雇用率の対象となるのは、以下のいずれかの手帳を所持している方です。

  • 身体障害者手帳:身体に永続的な障害がある方。
  • 療育手帳(愛の手帳など):知的障害がある方。
  • 精神障害者保健福祉手帳:統合失調症、うつ病、発達障害などの精神障害がある方。

注意すべき点として、精神障害者保健福祉手帳は、交付から1年以上の経過が必要とされるケースや、働き方の状況に応じて対象となるかどうかが変わる場合もあります。ご自身の状況を事前に確認しましょう。

「障害者雇用促進法」と「障害者総合支援法」

障害者雇用に関連する主な法律は二つあります。

  1. 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法):これは、雇用の促進を目的とした法律です。法定雇用率制度や、差別の禁止、合理的配慮の提供義務など、企業が守るべきルールや、障害のある方への職業リハビリテーションに関する規定が定められています。
  2. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法):こちらは、障害者の福祉サービスに関する法律です。就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)など、働くための訓練やサポートを提供する福祉サービスはこの法律に基づいています。

障害者雇用は企業での「労働」に関するものですが、就労移行支援などを経て就職活動を行うなど、福祉サービスと密接に連携しているため、両方の法律の関係性を理解しておくことが大切です。

⚠️ 注意

障害者手帳を申請中の方や、診断書があっても手帳を所持していない方は、現時点では法定雇用率の対象となる障害者雇用枠に応募することはできません。まずは手帳の取得を進める必要があります。

障害者雇用のメリット:安心して長く働くために

障害者雇用枠で働くことは、働く側にとって多くのメリットがあります。最大のメリットは、障害についてオープンにできる安心感と、それに伴う職場の理解やサポートです。

働く側が享受できる主なメリット

働く側にとってのメリットは、主に以下の3点に集約されます。

  • 合理的配慮を受けられる:障害の特性や体調に応じて、企業側が環境整備や働き方の調整をしてくれます。たとえば、通院のための休暇取得の柔軟化、休憩時間の延長、静かな環境での作業場所の確保などです。
  • 長期的な安定就労が可能:自分の障害や体調について理解が得られているため、無理なく働くことができ、結果として定着率が高まります。体調が悪化した際にも相談しやすく、離職を防ぎやすくなります。
  • 同じ境遇の仲間がいる可能性:企業によっては、障害者雇用枠の社員が集まる部署や、専任のジョブコーチや支援担当者が配置されており、安心して相談できる環境が整っていることがあります。

これらの配慮は、一般雇用枠ではなかなか得られません。「体調を隠して無理をする」必要がないことが、精神的な負担を大きく軽減し、仕事の成果にもつながります。

企業側のメリットと社会的意義

障害者雇用は、働く側だけでなく、企業側にとっても大きなメリットがあります。

  • 法定雇用率の達成と助成金:法定雇用率を達成することで、納付金を避けることができ、さらに安定雇用を続けることで、各種助成金(特定求職者雇用開発助成金など)を受けられる場合があります。
  • 多様性の確保(ダイバーシティ):多様な人材を受け入れることで、職場に新しい視点や発想が生まれ、組織の活性化につながります。これは企業のブランドイメージ向上にも貢献します。
  • 職場環境の改善:障害のある社員への配慮を通じて、業務の進め方や職場の物理的環境を見直す機会となり、結果としてすべての社員にとって働きやすい環境が整うことがあります。

「障害者雇用を始めたことで、業務プロセスを細かくマニュアル化する習慣がつき、これが他の社員の研修にも役立つなど、予想外の相乗効果がありました。」

— 企業の採用担当者の声

障害者雇用の課題と懸念される点

障害者雇用は素晴らしい制度ですが、良い点ばかりではありません。働く側、企業側双方に、いくつか懸念される点や課題が存在します。事前にこれらの課題を知っておくことが、入社後のミスマッチを防ぐ上で重要です。

働く側が感じる懸念とデメリット

働く側が感じる主な懸念は、以下の通りです。

  • 給与水準:一般雇用枠と比べると、業務内容や責任の範囲が限られることが多いため、給与水準が低めに設定される傾向があります。特に地方では、この傾向が顕著になることがあります。
  • キャリアアップの限界:職種や昇進の機会が限定的になる可能性があります。管理職などのキャリアアップを目指す際に、配慮事項との兼ね合いで制限を受けるケースもゼロではありません。
  • 業務内容の偏り:一部の企業では、障害特性を考慮した結果、単純作業や定型的な業務に偏り、多様なスキルを磨く機会が少ないと感じる場合があります。

しかし、近年では、専門職や高度なスキルを活かせる障害者雇用枠も増えており、企業選びを慎重に行うことで、これらの懸念を解消できる可能性も高まっています。

企業側の課題と合理的配慮の難しさ

企業側も、障害者雇用を進める上でいくつかの課題に直面しています。

  • 合理的配慮のバランス:「どこまで配慮すべきか」の線引きが難しく、過度な配慮が他の社員の負担増につながったり、逆に配慮不足で定着に至らなかったりするケースがあります。
  • 人材確保の難しさ:採用したい障害特性を持つ人材が見つからない、または定着しにくいといった、マッチングの難しさを抱えている企業も少なくありません。
  • 管理コスト:障害のある社員をサポートするための専任担当者の配置や、マニュアル作成、研修など、一定のコストがかかることも課題の一つです。

💡 ポイント

働く側は、企業に対して「どのような配慮が必要か」を具体的に、かつ明確に伝えることが大切です。曖昧な要求は、企業側の負担や誤解を生む原因になります。自身の「できること」と「できないこと」を整理しておきましょう。

障害者雇用で成功するためのポイントと働き方

障害者雇用枠での就職を成功させ、長く安定して働き続けるためには、いくつかの重要なポイントがあります。特に、就職活動における準備と、入社後のコミュニケーションが鍵となります。

就職活動で成功するための3つのステップ

障害者雇用枠での就職活動は、一般雇用とは異なる戦略が必要です。

  1. 自己理解を深める:まずは、自身の障害特性、体調の波、得意なこと、苦手なこと、どのような時に体調を崩しやすいかなどを詳細に分析します。この自己理解が、企業へ求める合理的配慮の根拠になります。
  2. 「求めたい配慮事項」を明確にする:自己理解に基づき、「通勤ラッシュを避けた時差出勤を希望する」「通院のための休暇を月に一度取得したい」「指示は口頭だけでなく、必ず文書で欲しい」など、具体的な配慮事項をリスト化します。
  3. 障害者就業・生活支援センターを活用する:ハローワークや、障害者就業・生活支援センター(就労支援機関)といった専門機関のサポートを積極的に利用しましょう。求人紹介だけでなく、面接対策や入社後の定着支援まで行ってくれます。

自己理解と配慮事項の明確化は、採用面接で企業に「この人を雇うと、どのような配慮が必要で、どのくらい活躍してくれるか」を具体的にイメージしてもらうために不可欠です。

入社後のコミュニケーションと定着の秘訣

内定獲得はゴールではありません。安定した定着のために、入社後も継続的なコミュニケーションが重要です。

  • オープンな情報共有:入社後も、体調の変化や業務上の困りごとは、抱え込まずに上司や担当者に定期的に報告・相談しましょう。特に体調の波が予想される場合は、事前に共有することが大切です。
  • 企業の文化への適応:合理的配慮はあくまで働くためのサポートです。その上で、企業のルールや文化、他の社員との協調性を意識した働き方を心がけましょう。
  • 支援機関との連携継続:入社後も、定期的に支援機関の担当者と面談し、職場の状況や悩みを聞いてもらうことで、問題が大きくなる前の早期解決につながります。これは「ジョブコーチ支援」としても活用されます。

✅ 成功のコツ

障害者雇用の成功は、「自分でできることは自分でやる」という意識と、「できないことは遠慮なく伝える」というオープンな姿勢のバランスにあります。主体的に仕事に取り組み、支援を上手に活用しましょう。

まとめ

この記事では、障害者雇用について、制度の基本、働き方、メリット、課題を幅広く解説しました。

  • 障害者雇用は、障害者手帳を持つ方が、合理的配慮を受けながら働くための仕組みです。
  • 最大のメリットは、障害を開示することで安心して長期的に働き続けられる点にあります。
  • 成功の鍵は、自身の障害特性と必要な配慮を正確に自己分析し、企業に明確に伝えることです。

障害者雇用は、あなたの「働きたい」という思いを実現し、社会で活躍するための、心強い選択肢の一つです。制度を正しく理解し、専門的なサポートを活かして、あなたにぴったりの働き方を見つけてください。

✅ 次のアクション

ご自身の障害特性や就労への適性について詳しく知りたい方は、お近くのハローワーク障害者就業・生活支援センターに相談し、就労移行支援などの福祉サービス利用についても検討してみましょう。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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