支援者が語る|就職がうまくいく人の共通点

就職がうまくいく人の共通点を見つける
「いつになったら仕事が決まるのだろう」「自分に向いている仕事が分からない」と、出口の見えないトンネルの中にいるような不安を感じていませんか。就職活動は、ご本人はもちろん、それを見守るご家族にとっても忍耐が必要な時期です。周りと比較して焦ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、多くの就労支援の現場で、スムーズに内定を獲得し、その後も生き生きと働き続けている方々には、驚くほど共通した特徴があります。それは決して、「特別な資格」や「高い事務能力」だけではありません。むしろ、もっと身近で、日々の生活の中にある小さな習慣や考え方が鍵を握っています。
本記事では、これまで数多くの就職をサポートしてきた支援者の視点から、就職がうまくいく人の共通点を深掘りしていきます。今の自分に足りないものを探すのではなく、これから何を大切にしていけばよいのか、そのヒントを一緒に見つけていきましょう。
安定した土台を作る生活習慣の秘密
規則正しいリズムが信頼を生む
就職活動において、企業が最も厳しくチェックするのは、実は「毎日決まった時間に出勤できるか」という点です。どれほど優秀なスキルを持っていても、体調が不安定で欠勤が多いと、企業側は仕事を任せることができません。安定した生活リズムは、社会人としての最大の武器になります。
就職がうまくいく方は、訓練や通所の段階から、すでに「働く時間」を意識した生活を送っています。夜更かしをせず、決まった時間に起床し、朝食を摂る。この当たり前の繰り返しが、本人の自律神経を整え、ストレス耐性を高めることにつながります。
ご家族のサポートとしても、無理に励ますより「決まった時間に食卓を囲む」といった環境作りが非常に効果的です。生活リズムが整っていると、面接時にも表情が明るくなり、相手に「この人なら安心して任せられる」という安心感を与えることができます。
睡眠と服薬管理の徹底
精神障害や発達障害のある方にとって、睡眠の質は日中のパフォーマンスに直結します。就職がスムーズな方は、自分の睡眠時間を削るリスクをよく理解しており、「翌日の仕事のためにしっかり寝る」という自己管理ができています。これはプロフェッショナルとしての第一歩です。
また、服薬が必要な場合、自分の判断で薬を増やしたり減らしたりせず、主治医の指示を守っていることも共通点です。体調の変化を敏感に察知し、早めに対処できる力は、職場での安定感に直結します。服薬管理を自分で行えるようになると、自信にもつながります。
💡 ポイント
まずは1週間の睡眠時間と気分の変化をメモしてみましょう。自分の「好不調の波」をデータで把握することが、安定した通所や就労への近道になります。
余暇の過ごし方を知っている
「働くこと」だけに集中しすぎると、いつか息切れしてしまいます。就職活動がうまくいく人は、適度な抜きどころを知っています。趣味を楽しんだり、散歩をしたり、自分なりのストレス解消法(コーピング)をいくつか持っているのが特徴です。
オンとオフの切り替えが上手な人は、職場での緊張を家庭に持ち込みすぎません。支援の現場でも、自分の好きなことを楽しそうに話してくれる方は、精神的な回復力が高い傾向にあります。休むことはサボることではなく、「長く働き続けるための大切な仕事の一部」と捉えるのが成功のコツです。
自己理解が深まっている人の強み
自分の障害特性を言葉にできる
企業が求めているのは、「障害がないこと」ではなく、「どのような配慮があれば能力を発揮できるか」という明確な情報です。就職が早い方は、自分の得意なことだけでなく、苦手なことやパニックになりやすい状況を客観的に把握し、説明することができます。
例えば、「聴覚過敏があるため、静かな席をお願いしたい」「一度に複数の指示を受けると混乱するので、メモで指示をいただきたい」といった具体的なリクエストです。自分の弱さを隠さず、どう補うかを提案できる姿勢は、企業側から見て非常に建設的でポジティブに映ります。
この「自己理解」は、一朝一夕には身につきません。就労移行支援事業所などでの失敗経験を振り返り、「なぜあの時はうまくいかなかったのか」を支援者と一緒に分析するプロセスを経て、少しずつ言葉になっていくものです。
「できること」と「やりたいこと」の区別
「アニメが好きだからアニメ制作会社に行きたい」という「やりたいこと」だけで突っ走ってしまうと、現実とのギャップに苦しむことがあります。うまくいく人は、自分の適性(できること)を冷静に見極めた上で、現実的な職種選択を行っています。
自分の強みがデータ入力にあるなら、まずはその強みを活かせる職場で実績を作る。その上で、趣味としての「やりたいこと」は私生活で充実させる。このようなバランス感覚を持っている人は、就職後の満足度も高く、早期離職のリスクが低いのが特徴です。
| 視点 | やりたいこと(Will) | できること(Can) |
|---|---|---|
| 重要度 | モチベーションの源泉 | 採用決定の決め手 |
| 判断基準 | 本人の希望・興味 | これまでの経験・訓練成果 |
| 成功のコツ | 将来の目標として持つ | 今の仕事選びの軸にする |
失敗を「データ」として捉える力
就職活動に不採用はつきものです。しかし、そこで「自分はダメだ」と全否定してしまうのではなく、「今回の面接ではこの質問への答え方が不十分だった」「この職種は自分の特性には合わなかった」と、失敗を次の改善のためのデータとして処理できる人は非常に強いです。
支援者がアドバイスをした際、素直に「次はこうしてみます」と試行錯誤できる柔軟性も大切です。「不採用=自分自身の否定」ではないと切り離して考えられるようになることが、心の健康を保ちながら就職活動を完走するための秘訣です。
「相談力」という最強のビジネススキル
早い段階で「助けて」と言える
仕事において最も困るのは、問題が大きくなってから報告されることです。就職がスムーズな人は、訓練中から「ここが分かりません」「少し体調が悪いです」と、小さな段階で周囲に発信することができます。これは、企業が最も重視する「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」の根幹です。
自立とは、何でも一人で完結させることではありません。適切に他人の力を借りることも、立派な自立です。自分の限界を認め、早めにヘルプを出せる人は、職場でのトラブルを未然に防ぐことができるため、結果として高い評価を得ることになります。
家庭内でも、「困ったときはいつでも相談してね」という空気感があることは重要です。家族が「解決」しようとしすぎず、まずは「話を聞く」ことに徹することで、本人の相談するハードルが下がります。
アドバイスを「自分なりに」取り入れる
支援者や企業の担当者からの指摘を受けた際、ただ「はい」と聞くだけでなく、それをどう自分の行動に落とし込むか考えられる人は伸び代が大きいです。頑固にならず、かといって鵜呑みにしすぎず、「自分に合うやり方」を模索する姿勢です。
例えば「もっと大きな声で挨拶しよう」と言われたとき、大きな声が出せない特性があるなら「声のトーンを少し上げて、笑顔で会釈を付け加える」といった代わりの方法を考え出せる柔軟性が、現場では重宝されます。完璧を目指すのではなく、工夫を楽しむ心の余裕が成功を引き寄せます。
✅ 成功のコツ
相談相手を一人に絞らず、主治医、支援員、家族など「相談のポートフォリオ」を持っておきましょう。多角的な視点を持つことで、より自分に合った解決策が見つかりやすくなります。
感謝と謝罪を素直に伝えられる
非常にシンプルですが、非常に強力なのが「ありがとうございます」と「すみません」が言えることです。特に障害者雇用の枠では、周囲の配慮を受ける場面が多くなります。その際に、当然の権利としてではなく、感謝の気持ちを言葉にできる人の周りには、自然と助けてくれる人が集まります。
また、ミスをしたときに言い訳をせず、誠実に謝れる誠実さは、技術的なスキル以上に職場の人間関係を円滑にします。企業は「長く一緒に働きたい人」を探しています。人間味のあるコミュニケーションができることは、就職において大きなアドバンテージとなります。
企業研究とマッチングの質を高める
「どこでもいい」と言わないこだわり
就職を急ぐあまり「どんな仕事でもいいから雇ってください」と言ってしまうことがありますが、これは逆効果になることが多いです。企業側は「なぜうちの会社なのか」を知りたいと考えています。うまくいく人は、自分の特性とその会社の業務内容がどうマッチするかを、具体的にイメージできています。
例えば、「自分は集中力があるから、この検品作業でミスなく貢献できる」といった明確な動機です。自分を安売りするのではなく、企業にとってのメリットを提示できる視点を持つことが大切です。そのためには、求人票を読み込み、可能であれば職場見学に行くといった地道な情報収集が欠かせません。
支援員と一緒に企業の特徴を分析し、「ここは静かそうだから集中できそう」「ここは明るい雰囲気だからコミュニケーションが取りやすそう」と、自分との相性をすり合わせる作業を丁寧に行いましょう。
実習(ジョブトライアル)を最大限に活用する
障害者雇用の現場では、採用前に数日間の実習を行うことが一般的です。就職に成功する人は、この実習を「選ばれる場」としてだけでなく、「自分も会社を見極める場」として積極的に活用しています。実際に働いてみて、自分に無理がないかを確認するのです。
実習中に「ここは少し大変だな」と感じたことを正直に支援者に伝えることで、企業との交渉材料になります。「この作業は難しいけれど、こういう道具があればできます」という具体的な提案につなげることができるからです。実習でのフィードバックを真摯に受け止める姿勢が、採用への扉を開きます。
⚠️ 注意
実習で「良いところを見せよう」と無理をしすぎないようにしましょう。本来の自分以上の力を出して採用されても、入社後に維持できず苦しくなってしまうからです。等身大の自分で臨むことが、ミスマッチを防ぐ唯一の方法です。
長く働くイメージを具体化する
就職がうまくいく人は、入社日のことだけでなく、1年後、3年後の自分をイメージしています。例えば「3年後にはこの業務を一人で任されるようになりたい」「給料をこれくらい貯めて、一人暮らしを始めたい」といった目標です。
こうした具体的なビジョンがあると、就職活動の苦しい時期も乗り越えやすくなります。また、面接官に対しても「長く貢献したい」という意欲が自然と伝わります。就職はゴールではなく、人生の新しいチャプターの始まりです。その先の景色を想像することを忘れないでください。
周囲のサポートを味方につける方法
家族との適度な距離感
就職活動がうまくいく人のご家族には、ある特徴があります。それは「信じて待つ」という姿勢です。ご本人が自分で決めるまで辛抱強く見守り、過干渉にならないように気をつけています。家族が先回りしてすべてを準備してしまうと、本人の当事者意識が薄れてしまうからです。
ご本人が失敗したときも、「だから言ったじゃない」と責めるのではなく、「今回は残念だったね、次はどうする?」と、本人が次のアクションを考えられるような問いかけをしています。家庭が「評価される場所」ではなく「ありのままでいられる安全地帯」であるとき、本人は外で思い切り挑戦できるようになります。
また、ご家族自身も自分の生活を楽しみ、ストレスを溜め込まないように工夫されています。家族の笑顔が、ご本人にとって最大の精神的安定剤になるのです。
支援機関との信頼関係
就労移行支援事業所やハローワークなどの支援員と、何でも話せる関係を築けている人は強いです。支援員に対して格好をつけず、ダメな部分も見せることができると、より的確なアドバイスが得られます。「支援員を使いこなす」くらいの気持ちでいるのがちょうど良いでしょう。
例えば、面接で失敗した直後に支援員に連絡し、その時の感情を共有する。そうすることで、悔しさが鮮明なうちに具体的な対策を立てることができます。支援員は、あなたの就職活動という航海を支えるナビゲーターです。情報をこまめに共有することで、座礁するリスクを大幅に減らすことができます。
「自分一人で頑張らなきゃと思っていた時は苦しかったけれど、支援員さんに『一緒に考えましょう』と言われて肩の荷が下りました。それから不思議と面接もうまくいくようになったんです。」
— 30代・一般企業事務職に就職した当事者の声
チーム支援の意識を持つ
今の就労支援は、一人を多方面から支える「チーム支援」が主流です。主治医、カウンセラー、支援員、家族、そして企業の担当者。これらすべての人が同じ方向を向いていれば、就職成功率は格段に上がります。
うまくいく人は、このチームの「中心」に自分自身を置いています。人任せにするのではなく、自分がどうなりたいかをチームに発信し、調整を依頼する。そんなリーダーシップを少しずつ発揮できるようになると、就職後の職場でもリーダーや同僚と良好な関係を築けるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 資格を持っていないのですが、やはり不利でしょうか?
A. 結論から言うと、資格がなくても就職は可能です。多くの企業は、特定のスキルよりも「継続して通えるか」「指示を守れるか」といった基礎能力を重視しています。もちろん、事務職など特定の職種ではパソコンスキルが有利に働くこともありますが、まずは日々の通所や規則正しい生活を安定させることが、資格取得よりも優先順位が高いと言えます。
Q2. 面接で緊張してしまい、うまく話せません。
A. 緊張するのは、それだけ真剣に向き合っている証拠です。流暢に話す必要はありません。むしろ、言葉に詰まりながらも一生懸命に自分の思いを伝えようとする姿勢が評価されることも多いです。事前に支援員と何度も練習し、想定質問への答えを準備しておくことで、少しずつ自信がついていきます。「緊張しています」と最初に伝えてしまうのも、一つの有効なテクニックです。
Q3. 就職活動が長引いていて、心が折れそうです。
A. 就職活動には「運」や「縁」の要素も大きく関わります。不採用が続いたとしても、それはあなたの価値とは関係ありません。今は少し休息が必要なサインかもしれません。一度就職活動から離れて、好きなことに没頭する時間を作ってみてください。エネルギーが回復すれば、また新しい視点で活動を再開できます。周囲の支援員に、今の率直な気持ちを吐き出してみてください。
Q4. 家族ができる、最も効果的なサポートは何ですか?
A. 「いつも通りでいること」です。就職活動の成否によって態度を変えず、温かい食事を用意し、家を居心地の良い場所に保つこと。これが最も本人の力になります。就職の話題ばかりになると本人は追い詰められてしまうので、あえて仕事に関係のない世間話を楽しむ時間を大切にしてください。
一歩前へ進むための具体的なアクション
自分を褒める習慣をつける
就職活動中は、どうしても「できていないこと」に目が向きがちです。しかし、今日ハローワークに行ったこと、履歴書の一行を書いたこと、あるいは朝決まった時間に起きたこと。それらすべてが、就職に向けた立派な前進です。一日の終わりに、「今日できたこと」を3つ書き出してみるのがおすすめです。
自分を承認する力がつくと、面接でも自信を持って振る舞えるようになります。小さな成功体験の積み重ねが、大きな壁を乗り越えるエネルギーになります。自分自身の最大の味方になってあげてください。
情報収集の幅を広げてみる
もし今の活動が行き詰まっているなら、少し視点を変えてみるのも手です。行ったことのない就労支援事業所を見学してみる、障害者就業・生活支援センターに登録してみる、あるいは合同面接会に足を運んでみる。新しい場所には、新しい出会いや情報があります。
インターネットの情報だけでなく、実際に足を運んで得た「生の情報」は、あなたの判断をより確かなものにしてくれます。一気にすべてをやろうとせず、まずは電話一本、見学予約一つから始めてみましょう。
まとめ
就職がうまくいく人の共通点は、決して「完璧な人間」であることではありません。むしろ、自分の弱さを認め、周囲に助けを求め、日々の生活を大切に積み重ねている人たちです。これらの要素は、今この瞬間から、誰でも少しずつ育てていくことができます。
- 安定した生活リズムを作り、社会人としての土台を固める。
- 自己理解を深め、自分の特性と配慮事項を言葉にする。
- 「相談力」を磨き、一人で抱え込まずに周囲のサポートを味方につける。
就職は、長い人生の中の一つの大きな通過点です。焦らず、自分のペースを大切にしながら、納得のいく職場との出会いを探していきましょう。私たちは、あなたの「働きたい」という思いを心から応援しています。
まずは今日、自分が頑張ったことを一つだけ、自分自身で褒めてあげてください。そこから新しい明日が始まります。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ハンドメイド、音楽鑑賞
🔍 最近気になっているテーマ
発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





