障害のある子の進学ルートは?学校選びの基本と考え方

お子さんが成長し、小学校、中学校、そして高校へと進む時期は、親御さんにとって大きな喜びであると同時に、「この子にとって、どの学校が一番合っているのだろうか」という深い悩みや迷いが生じる時期でもあります。
特に、障害のあるお子さんの場合、進学ルートの選択肢は多様であり、一般の学校(インクルーシブ教育)から特別支援学校まで、それぞれに異なる教育内容や環境が用意されています。一つひとつの選択が、お子さんの将来の自立や社会参加に大きく関わってくるため、不安に感じるのは当然のことです。
この記事では、障害のあるお子さんの進学ルートについて、学校選びの基本となる考え方、主な選択肢ごとの特徴、そして進路決定までの具体的なステップをわかりやすく解説します。
この情報を通じて、お子さんの個性と可能性を最大限に引き出す、最適な学びの場を見つけるための羅針盤としてご活用ください。
進学ルートを考える前に:学校選びの基本となる3つの視点
進学ルートを検討する際、親御さんが最も大切にすべきは、「お子さんにとって何が最善か」という視点です。周囲の意見や一般的な情報に惑わされず、以下の3つの基本的な視点に基づいて検討を進めましょう。
視点1:将来の目標とお子さんの特性
まず、「将来、お子さんにどのような生活を送ってほしいか」という目標を具体的にイメージすることから始めましょう。自立して就労することを目標とするのか、地域社会で安心して生活できることを目標とするのかによって、適した進学先は変わってきます。
- 特性の理解:お子さんの障害の種類、程度、得意なこと、苦手なこと、そして特に集団生活や環境変化への適応度を正確に把握します。
- 目標設定:その特性を考慮した上で、義務教育修了後や卒業後に、どのような進路(一般就労、福祉的就労、大学進学など)を目指すのかを仮設定します。
学校は、あくまで目標達成のための手段です。目標が明確になれば、それに必要な教育内容を提供している学校がおのずと見えてきます。
視点2:環境と合理的配慮の必要性
お子さんが学校生活を送る上で、どのような環境やサポート(合理的配慮)が必要かを検討します。必要な配慮の度合いによって、学校の選択肢が絞られてきます。
- 軽度の配慮で十分な場合:授業中に静かな場所で休憩が取れる、テスト時間が延長できるなど、比較的軽度の配慮で集団生活が送れる場合は、一般の学校の特別支援学級や通級指導教室が選択肢に入ります。
- 専門的な支援が不可欠な場合:医療的ケアが必要、専門性の高い個別指導が欠かせない、または常時の集団生活が難しい場合は、特別支援学校が適しています。
学校見学の際には、提供される配慮が、机上の計画だけでなく、実際に運用されているかどうかを重点的に確認しましょう。
視点3:地域社会との繋がりと親御さんの願い
お子さんを地域社会の中で育みたい、近所の友達と同じ学校に通わせたいという親御さんの願いも、進路選択において重要な要素です。
一般の学校に通うことで、障害のない同級生との交流を通じて、社会性やコミュニケーション能力を養うことができます。一方、特別支援学校では、専門的な指導や仲間との交流を通じて、障害受容や専門的なスキルを深めることができます。
どの環境で、どのような人間関係の中で成長してほしいかという、親御さんの教育観も大切にしながら、選択肢を比較検討していきましょう。
💡 ポイント
進路は一度決めたら変えられないものではありません。特に義務教育段階では、途中で学校種を変更することも可能です。まずは「お子さんが最も落ち着いて学べる環境は何か」という視点から選びましょう。
進学ルートの3つの主な選択肢とその特徴
ここでは、小・中学校段階における障害のあるお子さんの主な進学ルートとして、「特別支援学校」「特別支援学級」「通級指導教室」の3つの選択肢を解説します。
選択肢1:特別支援学校(自立と社会参加を目指す専門教育)
特別支援学校は、障害のある児童生徒に対して、個々の障害特性に応じた専門的な教育を提供する学校です。幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害による学習上または生活上の困難を克服するための指導(自立活動)を行います。
- 特徴:少人数学級で、専門知識を持つ教員や医療・福祉の専門家が連携して指導にあたります。教育課程は、障害の程度や種類に応じて組まれ、特に高等部では、職業や生活に直結した訓練が重視されます。
- 対象:比較的障害の程度が重い、または医療的ケアや専門性の高い指導が常時必要なお子さんが中心となります。
- メリット:専門的な指導と手厚いサポート、バリアフリーの環境、進路選択時の就職・進路実績が充実している点です。
選択肢2:特別支援学級(交流と個別のバランス)
特別支援学級(通称「特支学級」)は、一般の小中学校内に設置され、特定の障害種別(知的障害、肢体不自由、自閉症・情緒障害など)に応じて編成される少人数の学級です。
- 特徴:基本的には特別支援学級で個別の指導計画に基づいた学習を行いますが、一部の授業(給食、体育、音楽など)は一般学級の児童生徒と一緒に受ける「交流及び共同学習」が積極的に行われます。
- 対象:障害の程度が比較的軽度で、集団生活に一定の適応が見込まれるお子さん。
- メリット:地域の友達との交流を保ちつつ、きめ細やかな個別指導を受けられる点、通学負担が比較的軽い点です。
選択肢3:通級指導教室(一般学級に在籍しながら個別指導)
通級指導教室は、一般学級に在籍するお子さんが、授業時間の一部だけ(週に数回など)個別指導を受ける教室です。授業の大半は、一般学級で通常の子どもたちと共に受けます。
- 特徴:主に言語障害、情緒障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など、一部の困難に対して集中的な指導が必要なお子さんが利用します。
- 対象:一般学級での学習がおおむね可能であり、特定の課題のみを克服したいお子さん。
- メリット:一般学級での学びや集団生活を維持しつつ、専門家による指導によって学習上の困難を解消できる点です。
⚠️ 注意
これらの選択肢は、お子さんの状態に応じて柔軟に変更可能です。例えば、小学校で特別支援学級に通っていたお子さんが、中学校で通級指導教室へ移行するといったケースも多く見られます。
高校進学のルート:就労・進路目標による違い
義務教育後の高校進学は、お子さんの将来の進路と直結するため、より慎重な検討が必要です。進路目標に合わせて、主に以下の3つのルートが考えられます。
ルート1:特別支援学校高等部(職業訓練と自立支援)
特別支援学校の高等部は、就労や地域生活への移行を最も重要な目標として掲げています。多くの場合、学科やコースが設置され、職業教育がカリキュラムの大部分を占めます。
- 教育内容:軽作業、農作業、清掃、サービス業、事務補助など、実際の就職を見据えた職業訓練が充実しています。職場実習も頻繁に行われます。
- 就職実績:ハローワークや福祉機関と連携した手厚いサポートにより、高い就職率を誇ります。卒業生の多くは、一般就労や就労継続支援(A型・B型)などの福祉的就労に進みます。
- 対象:将来的な就労や福祉サービス利用を目指しており、専門性の高い職業訓練が必要なお子さん。
ルート2:一般の高等学校(キャリア教育・進学を目指す)
一般の高校(全日制、定時制、通信制)に進学し、高校卒業資格の取得や大学・専門学校への進学、あるいは一般就労を目指すルートです。
- 教育内容:一般的な教科学習が中心ですが、近年は公立高校にもインクルーシブ教育の観点から、特別支援教育の視点を持つ先生が増え、発達障害など比較的軽度の障害のある生徒への配慮が行われるようになってきています。
- 課題:高校段階での合理的配慮は、義務教育に比べると制度化が不十分な面があり、生徒や保護者が学校と個別に交渉し、配慮を引き出す努力が必要になる場合があります。
- 対象:大学進学や専門的な分野への就職を目指しており、高い学習能力がある、または必要な配慮が比較的少ないお子さん。
💡 ポイント
一般高校への進学を検討する場合、事前の情報収集が極めて重要です。その高校が過去にどのような障害特性の生徒を受け入れてきたか、どのような配慮を提供しているかについて、オープンキャンパスや学校説明会で具体的に確認しましょう。
ルート3:高等専修学校・高等特別支援学校(専門技術の習得)
一部の地域では、高等特別支援学校(障害のある生徒を対象とした職業訓練に特化した学校)や、特定の専門分野に特化した高等専修学校も選択肢となります。
- 特徴:高等特別支援学校は、特別支援学校高等部よりもさらに職業訓練に重点を置き、特定の業種への就職を目指すことができます。高等専修学校は、調理や服飾、ITなど特定の専門分野を深く学べますが、障害者向けの配慮は学校によって大きく異なります。
進路決定までの具体的なステップと相談機関
進路の選択は、親御さんだけで抱え込まず、様々な専門機関と連携して進めることが成功の鍵となります。進路決定までの具体的なステップを確認しましょう。
ステップ1:専門家によるアセスメント(評価)
進路選択の第一歩は、お子さんの能力や特性を専門家の視点から客観的に評価してもらうことです。教育委員会や学校と連携し、就学相談や教育相談を受けましょう。
- 医療機関:医師や臨床心理士による診断や心理検査の結果(知能指数、発達検査など)を参考にします。
- 学校:担任の先生や特別支援教育コーディネーターと、学校生活での様子や学習到達度について詳細に話し合います。
- 教育委員会:教育委員会の就学指導委員会(または進路指導委員会)が、これらの情報をもとに、お子さんにとって適切な学校種や支援体制について助言を行います。
ステップ2:進路先候補の徹底的な見学・情報収集
気になる学校や施設があれば、必ず足を運び、複数の選択肢を比較検討しましょう。
- 見学時のチェックポイント:
- 施設のバリアフリー状況、通学ルートの安全性。
- クラスの人数、教員の配置、専門職員の有無。
- 授業中の生徒の様子、職員の生徒への接し方。
- 特に高等部の場合は、過去の卒業生の進路や就職先。
学校側に必要な配慮事項を具体的に伝え、それが提供可能かどうか、そして実績があるかどうかを確認することが大切です。
ステップ3:個別の教育支援計画の作成
進路が決定したら、学校と保護者、そして関係機関(医療、福祉、労働など)が連携して、「個別の教育支援計画」を作成します。
この計画には、お子さんの長期的な教育目標や、学校生活における具体的な支援内容が記載されます。この計画があることで、進学後も一貫した支援を受けることができ、学校間の情報共有や連携もスムーズになります。
✅ 成功のコツ
進学ルートの検討は、義務教育修了の数年前(中学校入学時など)から始めるのが理想的です。早めに情報収集と見学を始め、お子さんの成長に合わせて計画を柔軟に見直していきましょう。
まとめ
この記事では、障害のあるお子さんの進学ルートと学校選びの基本について解説しました。
- 進学ルートの選択は、お子さんの特性、将来の目標、必要な合理的配慮という3つの視点から検討しましょう。
- 主な選択肢として、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室があり、それぞれ専門性や一般学級との交流の度合いが異なります。
- 高校進学においては、特別支援学校高等部、一般高等学校など、就労・進学の目標に応じてルートを選びます。
進路選択の鍵は、親御さんが全ての情報を把握し、様々な専門家の意見を聞き、そして何より「お子さん自身の気持ち」を尊重することです。焦らず、お子さんのペースに合わせて、最適な学びの場を見つけていきましょう。
✅ 次のアクション
まずは、現在通っている学校の特別支援教育コーディネーター、またはお住まいの地域の教育委員会(就学相談窓口)に連絡を取り、進路に関する相談を始めてみましょう。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
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