ホーム/記事一覧/生活サポート情報/住まい・生活環境/障害者向け住宅のバリアフリー改修事例集

障害者向け住宅のバリアフリー改修事例集

📖 約41✍️ 原田 彩
障害者向け住宅のバリアフリー改修事例集
本記事は、様々な障害特性を持つ方向けの住宅バリアフリー改修の成功事例集です。車椅子ユーザーの玄関スロープ設置(勾配1/12以下)や電動引き戸の導入、下肢機能課題のある方の階段昇降機設置事例を紹介。水回りでは、低床浴槽への改修や、車椅子対応トイレへの間取り拡張事例を解説します。また、認知・行動障害を持つ方向けの視覚的誘導や鍵付き収納による環境調整の重要性も強調。改修成功の鍵は、理学療法士や福祉住環境コーディネーターによる個別評価と、公的助成制度の賢い活用にあることを示します。

障害のある方のための住宅改修事例集:暮らしが変わるバリアフリーの工夫

ご本人、ご家族、そして支援者の皆様、住み慣れた家での生活を「もっと安全に、もっと便利に」したいという願いは、バリアフリー改修の動機となる最も大切な想いです。しかし、「うちの家は古いから無理かも」「どんな改修をすれば本当に快適になるの?」といった疑問や不安をお持ちではないでしょうか。

バリアフリー改修は、単に段差をなくすことだけではありません。それは、障害のある方が持つ個性や能力を最大限に活かし、自立した生活を可能にするための「オーダーメイドの環境づくり」です。特に、障害特性や介助方法によって、必要な改修内容は大きく異なります。

この記事では、様々な障害特性を持つ方の具体的な生活課題を解決するために行われた、住宅改修の成功事例を場所別・障害別に詳しくご紹介します。具体的な工夫を知ることで、皆様のご自宅の改修のヒントや、専門家との相談の際のアイデアを見つけることができるでしょう。


♿ 肢体不自由者のための移動・アクセス改善事例

車椅子を使用される方や、杖、歩行器を使って移動される方にとって、自宅内の移動のバリアを取り除くことは、生活の質(QOL)を大きく左右します。特に玄関や階段といった昇降部分は、事故の危険も高く、改修の最優先事項となります。

玄関アプローチ:段差解消と自動開閉の導入

事例1:車椅子使用者Aさん(60代・身体障害1級)

Aさんの自宅の玄関は、屋外に2段、屋内に1段の大きな段差があり、外出の度に家族の介助が必須でした。この問題を解決するために、以下の改修が行われました。

  • 屋外段差の解消: 既存の階段を撤去し、車椅子が自走可能な緩やかな勾配のスロープを設置しました。スロープの両脇には、立ち上がりの補助も兼ねた二段手すり(高・低)を設置しました。
  • 玄関ドアの改修: 重い開き戸を、軽量な引き戸に交換しました。さらに、電動アシスト機能を導入し、ボタン一つで軽く開閉できるようにしました。

この改修により、Aさんは家族に頼らずに一人で外出できるようになり、外出頻度が2倍に増加しました。電動アシスト付きの引き戸は、雨の日でも濡れる心配なく操作できるため、QOL向上に大きく貢献しました。

✅ 成功のコツ

スロープを設置する際は、勾配(傾斜)を1/12以下に抑えることが自立移動の成功の鍵です。勾配がきつすぎると、かえって介助負担が増したり、危険性が高まったりするため、敷地面積を最大限活用して緩やかな設計をしましょう。

階段昇降:安全性の確保と負担軽減

事例2:下肢機能に課題のあるBさん(40代・難病)

日によって体調や筋力が変動するBさんは、2階の寝室への昇降に大きな不安を抱えていました。大規模な改修を避けたいという希望もあり、以下の改修を採用しました。

  • 階段昇降機の導入: 階段の幅や構造を考慮し、いす式の階段昇降機を設置しました。これにより、体調がすぐれない日でも、安全に2階へ移動できるようになりました。
  • 手すりの二重化: 昇降機を使わない時や、他の家族が昇降する時のために、階段の壁側にしっかりと固定された連続手すりを適切な高さに設置し直しました。

階段昇降機は高額ですが、自治体の助成制度(障害者総合支援法の日常生活用具給付等)を適用することで、Bさんの自己負担額は大幅に軽減されました。階段昇降機は、設置前に必ず現地の採寸と試乗を行うことが重要です。


🚿 水回りでの安心:浴室・トイレの快適化事例

浴室とトイレは、自宅内で最も転倒事故が多く、介助の負担も大きい場所です。水回りでの安全と快適性を高めることは、在宅生活を続ける上で不可欠な要素です。

浴室:またぎ動作の軽減と温度のバリアフリー

事例3:介助量の多いCさん(70代・身体障害2級)

従来の浴室は浴槽の縁が高く、出入りに危険が伴い、介助者も腰を痛めやすい状態でした。そこで、ユニットバス全体を改修しました。

  • 低床浴槽の採用: 浴槽の縁の高さを、床から40cm程度まで下げる低床型ユニットバスを採用し、またぎ動作の負担を最小限にしました。
  • すべり止め床材への変更: 洗い場の床を、水はけが良く、濡れても滑りにくい特殊加工の床材に交換しました。
  • 手すりの多点設置: 浴槽への出入り、立ち座り、シャワーチェアからの立ち上がり、すべてに対応できるように、L字型や縦型の手すりを計算された位置に複数設置しました。

これにより、Cさんは安心して入浴を楽しめるようになり、介助者の負担も大幅に軽減されました。また、冬場のヒートショックを防ぐため、浴室暖房乾燥機を設置し、脱衣所にも暖房を導入する「温度のバリアフリー」も同時に行いました。

⚠️ 注意

浴室内の手すりは、必ず下地(壁の裏側の柱や補強材)にしっかりと固定してください。体重を預けた際に外れると、重大な事故につながります。改修業者に、適切な下地補強を依頼しましょう。

トイレ:車椅子対応と操作性の改善

事例4:上肢機能にも課題があるDさん(50代・脳性麻痺)

Dさんのトイレは車椅子でのアプローチが難しく、介助なしには利用できませんでした。以下の改修により、自立排泄を目指しました。

  • 間取りの拡張: トイレと隣接する収納スペースの壁を壊し、車椅子が回転できるだけの広いスペースを確保しました(内法寸法160cm×160cm以上)。
  • 便器周りの工夫: 車椅子から便器への移乗を容易にするため、跳ね上げ式のアームレスト(可動手すり)と、正面の縦手すりを設置しました。
  • 操作性の向上: 洗浄スイッチやウォシュレットのリモコンを、Dさんの残存機能で操作しやすい大型ボタンタイプのワイヤレスリモコンに変更し、ベストな位置に固定しました。

この改修により、Dさんは介助者に気兼ねなく、自分のペースでトイレを利用できるようになりました。車椅子でのアプローチのしやすさと、移乗時の安定した姿勢を確保する工夫が成功のポイントとなりました。


💡 認知・行動特性に対応した環境調整事例

身体的なバリアだけでなく、知的障害や精神障害、認知症などによる認知・行動上の特性に対応した環境調整も、安全な在宅生活には非常に重要です。

居室:視覚的誘導と危険防止の工夫

事例5:認知障害を伴うEさん(40代・精神障害)

Eさんは、物の位置を覚えたり、手順を理解したりすることが難しく、部屋が散らかって転倒しそうになったり、薬の管理に失敗したりすることが課題でした。改修というより「環境調整」に主眼を置いた事例です。

  • 視覚的情報整理: 収納棚を中身が見える透明なボックスに統一し、さらにボックスの外側に中身のピクトグラム(絵文字)と写真を貼って、どこに何をしまうか一目瞭然にしました。
  • 安全な動線の確保: 転倒の原因となるコード類をすべてモールで固定し、主要な移動経路には家具を置かないことをルール化しました。
  • 薬の安全管理: 誤飲を防ぐため、薬を保管する引き出しは鍵付きのものに交換し、家族や支援者が厳重に管理するスペースを明確に確保しました。

この工夫により、Eさんは自分で身の回りの整理整頓ができるようになり、転倒リスクと服薬管理のミスが大幅に減少しました。特に、環境がわかりやすく整理されることは、精神的な安定にもつながります。

💡 ポイント

認知特性に対応した改修や環境整備は、大掛かりな工事よりも、色や光、素材、配置の工夫が重要です。福祉住環境コーディネーターや作業療法士に相談し、専門的な視点を取り入れましょう。

生活の自立を促すキッチン改修

事例6:自立生活を目指すFさん(30代・知的障害)

Fさんはグループホームから独立し、自立生活を目指していますが、安全に調理することが課題でした。キッチンをバリアフリー化し、自立をサポートしました。

  • 安全な調理器具の導入: 火の消し忘れや火傷のリスクをなくすため、IHクッキングヒーターを導入しました。また、コンロのスイッチを大きなプッシュボタン式に変更しました。
  • 高さ調整可能な作業台: 椅子に座って作業できるよう、高さを自由に昇降できる電動式の作業台(調理カウンター)を導入しました。これにより、無理のない姿勢で調理ができるようになりました。

電動式の昇降カウンターは高価ですが、調理や作業への意欲を高め、生活スキルの向上に直結しました。これにより、Fさんは自炊を中心とした自立生活をスタートすることができました。


📚 住宅改修の成功に不可欠な連携と制度活用

これらの成功事例は、適切な改修技術と、公的支援制度の賢い活用、そして多職種連携によって実現されています。

専門家による事前評価の重要性

改修を成功させるには、工事に着手する前に、ご本人の状態と住環境を正確に評価することが不可欠です。この評価には、以下の専門職の知見が欠かせません。

  • 理学療法士・作業療法士: ご本人の動作分析を行い、身体機能に適した手すりの形状、高さ、設置場所を決定します。
  • 福祉住環境コーディネーター: 建築と福祉の両方の知識を持ち、改修プランの立案、助成金・補助金申請のサポート、業者との調整を行います。

特に、手すりの設置一つとっても、「どの高さで、どのくらいの太さで、どの角度に取り付けるか」は、ご本人の手の握り方や、力の入れ方に合わせてミリ単位で調整する必要があります。この個別性の高い評価こそが、改修効果を最大化する鍵です。

「バリアフリーの知識がある業者でも、障害特性の専門知識は持っていません。私たちが動作を観察し、数センチ単位の調整を依頼することで、初めて『使える』手すりになります。」

— 作業療法士のコメント

公的助成制度の活用事例

大規模な改修を行う際、費用負担の軽減に成功した事例の多くは、公的助成制度を組み合わせて活用しています。

事例7:車椅子での生活を始めたGさん

Gさんは、自宅の一階部分すべてを車椅子で移動できるように改修する必要がありました。費用は総額400万円。内訳は以下の通りです。

  • 段差解消・手すり設置(20万円分): 介護保険の住宅改修費支給制度(支給上限20万円、自己負担1割)を利用。
  • 浴室拡張・リフト設置(300万円分): 自治体独自の重度身体障害者向け住宅改修補助制度(上限あり)と、障害者総合支援法の日常生活用具給付事業を併用。

Gさんの事例のように、国の制度(介護保険など)でカバーできない部分を、自治体独自の補助金や低利融資で補うことが、高額改修を成功させるための定石です。事前に相談支援専門員と福祉住環境コーディネーターが連携し、利用可能なすべての制度を確認しました。


✨ まとめと次の一歩の提案

障害者向け住宅のバリアフリー改修は、単なる建築工事ではなく、ご本人の自立と安全、そして生活の質の向上に直結する重要なプロジェクトです。車椅子ユーザーのスロープ設置から、認知特性に応じた収納の工夫まで、事例は多岐にわたります。

改修を成功させるためには、ご本人のニーズを深く理解し、専門家(セラピストやコーディネーター)による個別評価に基づいて計画を立て、利用可能な助成制度を最大限に活用することが不可欠です。

今回ご紹介した事例が、皆様の自宅改修の具体的なイメージを描き、行動を始めるための勇気となれば幸いです。

次の一歩の提案

まずは、お住まいの地域で活動している「福祉住環境コーディネーター」を探し、ご自宅の現状を見てもらいましょう。「自宅のバリアフリー改修の可能性と、利用できる助成制度を知りたい」と伝えれば、具体的な第一歩を踏み出せます。

まとめ

  • 肢体不自由者の改修では、玄関スロープの緩やかな勾配(1/12以下)と、電動アシスト付きドアの導入が自立移動に大きく貢献する。
  • 水回りでは、低床浴槽の採用、外から開けられるドア、滑りにくい床材、そして多点手すりの設置が安全の基本である。
  • 認知・行動特性への対応として、視覚的誘導(ピクトグラム)鍵付き収納による危険物隔離が、安全と生活の安定につながる。

原田 彩

原田 彩

はらだ あや35
担当📚 実務経験 10
🎯 地域情報🎯 バリアフリー

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として10年、地域の福祉資源の発掘と繋ぎに力を入れています。「この街で暮らす」を支えるために、施設情報だけでなく、バリアフリースポットや割引施設など、生活を豊かにする地域情報をお届けします。

大学で福祉を学び、卒業後は地域の相談支援事業所に就職。当初は「障害福祉サービス」だけが支援だと思っていましたが、地域の中には使える資源がたくさんあることに気づきました。例えば、障害者割引が使える映画館、バリアフリー対応のカフェ、当事者の方が集まれるコミュニティスペースなど。こういった情報を知っているかどうかで、生活の質が大きく変わります。特に印象的だったのは、引きこもりがちだった方が、近所のバリアフリー図書館を知り、そこで読書会に参加するようになったこと。「外に出るのが楽しくなった」と言ってくださいました。記事では、すぐサポの26万件の施設データベースを活用しながら、地域ごとの福祉サービスの特徴や、知って得する地域情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で福祉を学び、地域の中に使える資源がたくさんあることに気づいたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

引きこもりがちだった方が、バリアフリー図書館を知り、読書会に参加するようになったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

すぐサポの施設データベースを活用し、地域ごとの特徴や知って得する情報を発信します。

🎨 趣味・特技

街歩き、写真撮影

🔍 最近気になっているテーマ

インクルーシブな街づくり、ユニバーサルデザイン

📢 この記事をシェア

関連記事