自己否定ばかりだった私が自己肯定感を取り戻すまで

「私には価値がない」と思い続けた日々
鏡を見るたび、自分が嫌いでした。何をしても「ダメだ」と思いました。他人と比べて、いつも自分が劣っていると感じました。「私なんか、いない方がいい」——その思いが、心を支配していました。
うつ病と診断された時、医師は言いました——「あなたは、自己否定が非常に強いですね」。その言葉を聞いて、私は「やっぱり自分はダメなんだ」と、また自分を責めました。自己否定が、さらなる自己否定を生む悪循環に、私は囚われていました。
この記事では、極度の自己否定から抜け出し、少しずつ自己肯定感を取り戻すまでの2年間の道のりをお話しします。同じように自分を責め続けている方の参考になれば幸いです。
自己否定の始まり——「私はダメな人間」
幼少期からの刷り込み
振り返ってみると、私の自己否定は幼少期から始まっていました。
厳格な家庭で育った私は、常に「もっと頑張りなさい」「それではダメ」と言われていました。褒められた記憶はほとんどありません。どんなに頑張っても、「まだ足りない」と言われました。
学校では、クラスメイトと比べられました。「〇〇ちゃんはできるのに、なぜあなたはできないの?」——この言葉を、何度聞いたことか。
こうして私の中に、深く刷り込まれた信念がありました——「私はダメな人間だ」という信念が。
⚠️ 注意
幼少期の養育環境や周囲からの言葉は、自己肯定感の形成に大きな影響を与えます。否定的な言葉を繰り返し受けることで、「自分には価値がない」という信念が形成されることがあります。これは本人のせいではありません。
完璧主義という呪縛
自己否定は、完璧主義を生みました。
「完璧でなければ、価値がない」——そう思っていました。だから、少しでもミスをすると、自分を激しく責めました。
仕事でも、完璧を求めました。小さなミスも許せませんでした。同僚が「大丈夫だよ」と言っても、私には「大丈夫」とは思えませんでした。
完璧主義の私の思考パターン:
- 「100点以外は、すべて失敗」
- 「一つでもミスをしたら、すべてが台無し」
- 「他人ができることを、自分ができないのは恥」
- 「期待に応えられないなら、やる意味がない」
- 「完璧にできないなら、最初からやらない方がいい」
この完璧主義が、私を追い詰めていきました。
他人と比べ続ける日々
そして私は、常に他人と自分を比べていました。
SNSを見ては、「あの人は充実している。それに比べて私は」と落ち込む。友人の昇進を聞いては、「私はまだこんなところ」と自己嫌悪に陥る。
他人の良いところばかりが目に入り、自分の良いところは見えませんでした。比較の基準は、常に「他人」でした。
| 他人 | 私の解釈 | 自己否定 |
|---|---|---|
| 友人が昇進した | 「私は能力が低い」 | 自分はダメだ |
| SNSで楽しそうな投稿 | 「私の人生はつまらない」 | 自分は不幸だ |
| 同僚が褒められた | 「私は認められていない」 | 自分は価値がない |
| 誰かが結婚した | 「私は愛されない」 | 自分は魅力がない |
この比較癖が、自己否定をさらに強めていきました。
「自己否定は、習慣です。長年繰り返してきた思考のパターン。でも、習慣は変えることができます。時間はかかりますが、必ず変えられます」
— 後にカウンセラーが教えてくれた言葉
うつ病の発症——自己否定の極致
「存在する価値がない」
過労とストレスで、私はうつ病を発症しました。そして自己否定は、極致に達しました。
「私は何もできない」「周りに迷惑をかけている」「存在する価値がない」——こうした思いが、24時間頭を巡っていました。
朝起きると、「また今日も生きてしまった」と思いました。鏡を見ると、「この顔が嫌い」と思いました。誰かと話すと、「つまらない人間だと思われている」と感じました。
すべての出来事を、自分を否定する証拠として解釈していました。
「死にたい」という思い
自己否定が極まると、「消えたい」「死にたい」という思いが湧いてきました。
積極的に死のうとは思いませんでしたが、「このまま目が覚めなければいい」「事故にでも遭えばいい」——そんなことを考えていました。
これは、自己否定の最終形態でした。自分の存在そのものを否定する——それほどまでに、私は自分を嫌っていました。
💡 ポイント
希死念慮(死にたい気持ち)は、うつ病の重要な症状の一つです。これは本人の弱さではなく、病気の症状です。こうした思いが現れたら、必ず主治医や信頼できる人に伝えてください。
治療開始——「自己否定を手放す」という課題
心療内科を受診し、うつ病と診断されました。主治医は言いました——「あなたの問題の根本には、強い自己否定があります。治療では、この自己否定と向き合う必要があります」。
正直、その時は意味がわかりませんでした。「自己否定が問題? でも、私は本当にダメな人間なのに?」——そう思いました。
主治医は続けて言いました——「あなたが『自分はダメだ』と思っているのは、事実ではなく、思い込みなんです。その思い込みを、一緒に検証していきましょう」。
この言葉が、私の回復の第一歩でした。
自己否定からの脱却——小さな気づきの積み重ね
認知行動療法との出会い
カウンセリングでは、認知行動療法に取り組みました。自分の思考パターンを客観的に見て、検証していく方法です。
カウンセラーは言いました——「あなたが『私はダメだ』と思う時、その根拠は何ですか? 具体的な事実を挙げてみてください」。
最初は簡単だと思いました。「だって、何をやってもうまくいかないから」「周りに迷惑をかけているから」——すぐに答えが出ました。
でもカウンセラーは、さらに聞きました——「『何をやっても』というのは、本当に文字通り『すべて』ですか? 一つも成功したことはないのですか?」
この質問に、私は詰まりました。考えてみれば、成功したこともあったのです。
思考記録をつける
カウンセラーの勧めで、思考記録をつけ始めました。
自己否定的な考えが浮かんだら、それを書き出す。そして、それを支持する証拠と反する証拠を書き出す——このプロセスを繰り返しました。
例えば:
自動思考:「私は何もできない無能な人間だ」
支持する証拠:仕事でミスをした、上司に注意された
反する証拠:プロジェクトを期限内に完成させた、同僚から感謝された、新しいスキルを習得できた、困っている人を助けられた
記録を続けるうちに、気づきました——自己否定的な考えは、一部の事実だけを取り上げて、全体を無視していることに。
✅ 成功のコツ
思考記録は、自己否定的思考を客観視する有効なツールです。感情的になっている時は難しいですが、少し落ち着いてから記録すると効果的です。継続することで、思考の歪みに気づきやすくなります。
「良いこと日記」
もう一つ、カウンセラーが勧めてくれたのは「良いこと日記」でした。
毎日、その日にあった「良いこと」を3つ書く。どんな小さなことでもいい——というものでした。
最初は「良いこと」が見つかりませんでした。でも続けるうちに、小さな良いことに気づけるようになりました。
- 朝、鳥のさえずりが聞こえた
- コーヒーが美味しかった
- 友人からメッセージが来た
- 天気が良かった
- 好きな音楽を聴けた
こうした小さな「良いこと」に目を向けることで、世界の見方が少しずつ変わっていきました。
自己肯定感を育てる——小さなステップ
「できたこと」に目を向ける
カウンセラーは教えてくれました——「自己肯定感を育てるには、『できないこと』ではなく、『できたこと』に目を向けることが大切です」。
私は常に「できないこと」に目を向けていました。でも、「できたこと」にも目を向けるようにしました。
どんな小さなことでもいい。今日ベッドから起きられた。シャワーを浴びた。ご飯を食べた——こうした当たり前のことも、「できたこと」として認めるようにしました。
最初は違和感がありました。「こんな当たり前のこと、認める価値がある?」と思いました。
でもカウンセラーは言いました——「うつの状態で、それらができることは、決して当たり前ではありません。十分、認める価値があります」。
他人と比べない練習
次に取り組んだのは、他人と比べない練習でした。
これは非常に難しかったです。長年の習慣を変えるのは、簡単ではありませんでした。
カウンセラーのアドバイスは、「比較している自分に気づいたら、『あ、また比べてる』と認識して、意識を自分に戻す」というものでした。
また、SNSを見る時間を減らしました。比較の材料を減らすことで、比較する機会も減らせました。
そして、比較の基準を「他人」から「過去の自分」に変えました。他人と比べるのではなく、昨日の自分、先週の自分、先月の自分と比べる——こうすることで、自分の成長が見えるようになりました。
セルフコンパッションを学ぶ
カウンセリングの後半では、セルフコンパッション(自分への思いやり)を学びました。
「もし親友が同じ状況だったら、あなたは何と言いますか?」——カウンセラーの質問に、私は答えました——「『大変だったね』『よく頑張ったね』と言うと思います」。
「では、なぜ自分には『ダメだ』『情けない』と言うのですか?」
この質問に、私は言葉を失いました。確かに、自分にだけ厳しすぎたのです。
それから、自分に対しても、親友に接するように優しく接することを心がけました。失敗した時も、「ダメだ」ではなく、「大変だったね」「次は違う方法を試してみよう」と自分に言うようにしました。
変化の実感——少しずつ自分を認められるように
「まあ、いいか」と思えた日
治療を始めて半年ほど経った頃、小さな変化がありました。
いつもなら激しく自分を責めるような失敗があった時、私は思いました——「まあ、いいか」と。
完璧ではなかった。でも、それでいい。次はもっとうまくやればいい——そう思えたのです。
この「まあ、いいか」という感覚が、私にとって大きな転機でした。
鏡の中の自分を見られるようになった
もう一つの変化は、鏡を見られるようになったことでした。
以前は、鏡を見るのが嫌でした。鏡の中の自分が、嫌いでした。でも徐々に、鏡を見ても自己嫌悪に陥らなくなりました。
「好き」とまでは言えませんでしたが、「まあ、これが自分だ」と受け入れられるようになりました。
褒め言葉を受け取れるようになった
以前、誰かに褒められると、「そんなことない」「お世辞でしょ」と否定していました。褒め言葉を、素直に受け取れませんでした。
でも徐々に、「ありがとう」と言えるようになりました。完全には信じられなくても、相手の言葉を否定しないようになりました。
この変化も、自己肯定感が少しずつ育っている証拠でした。
1年後——新しい自分として生きる
「私には価値がある」
治療を始めて1年が経った頃、私は初めて思いました——「私には価値がある」と。
完璧ではない。欠点もたくさんある。でもそれでも、私には価値がある——そう思えるようになりました。
この思いは、突然訪れたわけではありません。小さな気づきと変化の積み重ねが、ようやくこの実感につながったのです。
自分の長所に気づく
カウンセラーと一緒に、自分の長所をリストアップしました。
最初は一つも思いつきませんでした。でもカウンセラーが質問を重ねてくれることで、少しずつ見つかっていきました。
- 人の話を丁寧に聞ける
- 約束を守る
- 細かいことに気づく
- 責任感がある
- 優しさがある
- 粘り強い
- 誠実である
これらは、以前の私なら「当たり前」として価値を認めなかったことでした。でも今は、これらが私の長所だと認められます。
弱さも受け入れる
そして何より大きな変化は、弱さも受け入れられるようになったことでした。
完璧でなくていい。できないこともある。疲れることもある。失敗することもある——そのすべてを、人間として自然なことだと受け入れられるようになりました。
弱さを見せることは、恥ずかしいことではない。むしろ、弱さを認められることが強さなのだと、理解できました。
今——自己肯定感と共に生きる
完璧な自己肯定感ではない
今でも、時々自己否定的な考えは浮かびます。完全に消えたわけではありません。
でも以前と違うのは、その考えに気づけること、そして対処できることです。
「あ、また自分を責めてる」と気づいたら、思考記録をつける。あるいは、「親友だったら何と言うか」を考える。こうした対処法を使うことで、自己否定のスパイラルに落ちずに済みます。
自分らしく生きる
自己肯定感が育ったことで、自分らしく生きられるようになりました。
他人の期待に応えることより、自分がどうしたいかを大切にできるようになりました。他人と比べることより、自分の成長を喜べるようになりました。
完璧を目指すことをやめ、「十分良い」を目指すようになりました。そのおかげで、心が楽になりました。
他人にも優しくなれた
意外だったのは、自分に優しくなることで、他人にも優しくなれたことでした。
自分を責めなくなると、他人も責めなくなりました。自分の弱さを受け入れられると、他人の弱さも受け入れられるようになりました。
自己肯定感は、対人関係も改善してくれました。
自己否定に苦しむ人へ
あなたのせいではない
もし今、自己否定に苦しんでいるなら、まず知ってほしいことがあります——それはあなたのせいではありません。
自己否定は、長年の環境や経験によって形成された思考パターンです。あなたが弱いから、ダメだから、そうなったのではありません。
でも、その思考パターンは変えることができます。時間はかかりますが、必ず変えられます。
小さなステップから
自己肯定感を育てるのは、一朝一夕にはいきません。でも、小さなステップから始められます。
- 毎日、「できたこと」を3つ書く
- 自己否定的な考えに気づいたら、それを書き出して検証する
- 他人と比べている自分に気づいたら、意識を自分に戻す
- 失敗した時、親友だったら何と言うかを考える
- 良いことが起きたら、素直に喜ぶ
これらの小さな実践が、積み重なって大きな変化になります。
専門家の力を借りて
自己否定が強い場合、一人で抱え込まず、専門家の力を借りてください。
カウンセリングは、自己否定と向き合うための強力なツールです。カウンセラーと一緒に、思考パターンを検証し、新しい見方を学ぶことができます。
私も、カウンセラーの助けなしには、ここまで変われなかったと思います。
「完璧な自己肯定感」を目指さない
最後に、これだけは伝えたいです——「完璧な自己肯定感」を目指さないでください。
時々自己否定的になっても、それでいいのです。大切なのは、そこから抜け出せることです。
「まあまあ自分を認められる」「時々自分を褒められる」——それだけで十分です。完璧を目指さず、「十分良い」を目指しましょう。
「自己肯定感とは、『自分は完璧だ』と思うことではありません。『完璧じゃないけど、それでいい』と思えることです。欠点も含めて、自分を受け入れる——それが本当の自己肯定感なんです」
— カウンセラーの言葉
よくある質問
Q1: 自己肯定感を高めるのに、どのくらいの期間がかかりますか?
個人差が大きいですが、数ヶ月から数年かかることが一般的です。私の場合、小さな変化を感じ始めたのは半年後、明確な変化を実感したのは1年後でした。焦らず、小さな進歩を大切にすることが重要です。
Q2: 思考記録をつけても、自己否定的な考えが減りません
思考記録は継続が大切です。すぐに効果が出なくても、続けることで徐々に思考の歪みに気づきやすくなります。また、カウンセラーと一緒に記録を振り返ることで、より効果的になります。一人で難しい場合は、専門家のサポートを受けることをお勧めします。
Q3: 自己肯定感が低いのは、性格ですか? 病気ですか?
性格と病気の境界は曖昧ですが、日常生活に支障をきたすほど自己否定が強い場合、うつ病などの精神疾患の可能性があります。また、自己否定が強いこと自体が精神疾患のリスク因子にもなります。心配な場合は、専門家に相談してください。
Q4: 家族として、自己否定が強い人をどう支えればいいですか?
まず、否定的な言葉を避け、肯定的な言葉を増やしてください。「ダメだ」「もっと頑張れ」ではなく、「よく頑張ってるね」「そのままでいいよ」という言葉が助けになります。また、専門家への相談を勧めることも大切です。家族自身も、家族向けのサポートを利用しましょう。
Q5: 自己肯定感が高すぎるのも問題ですか?
健康的な自己肯定感は、「自分には長所も短所もある」と現実的に認識することです。根拠のない過大評価や、他人を見下すような態度は、健康的な自己肯定感とは異なります。バランスの取れた自己認識を目指すことが大切です。
まとめ
この記事では、極度の自己否定から抜け出し、自己肯定感を取り戻すまでの2年間の道のりをお話ししました。
- 自己否定は、長年の環境や経験によって形成された思考パターンです
- 認知行動療法や思考記録で、思考の歪みを修正できます
- 「できたこと」に目を向け、小さな成功を積み重ねることが大切です
- 完璧な自己肯定感ではなく、「まあまあ」を目指しましょう
もし今、自己否定に苦しんでいるなら、諦めないでください。変化は可能です。小さなステップから始めて、専門家の力も借りながら、少しずつ自分を認められるようになっていってください。あなたには、価値があります。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
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実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
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