休職してわかった「休むことの大切さ」

「休む」ことへの罪悪感——休職を決めるまで
「休職の診断書を書きます」——主治医からその言葉を聞いた時、私は激しい罪悪感に襲われました。「仕事を休むなんて」「周りに迷惑をかける」「自分は弱い人間だ」——そんな思いが頭を巡りました。
でも実際は、心も体も限界を超えていました。毎朝会社に行くことが恐怖で、涙が止まらず、何度も無断欠勤をしていました。それでも「休んではいけない」と自分を責め続けていました。「休むこと」が、こんなに難しいとは思いませんでした。
この記事では、3ヶ月間の休職を経験して学んだ「休むことの大切さ」と、休職中に起きた心と体の変化についてお話しします。休職を迷っている方、休職中の方の参考になれば幸いです。
休職前——「休んではいけない」という呪縛
限界を超えても働き続けた
振り返ってみると、私は明らかに限界を超えていました。睡眠時間は毎日3〜4時間。食事はコンビニ弁当を机で流し込むだけ。休日も仕事のことが頭から離れず、心が休まることはありませんでした。
体からは、様々なサインが出ていました。
- 慢性的な頭痛と吐き気
- 動悸と息苦しさ
- 食欲不振と体重減少(2ヶ月で7キロ減)
- 不眠(寝つけない、途中で目が覚める)
- 集中力の低下
- 感情のコントロールができない(突然泣く、イライラする)
でも私は、これらすべてを「疲れているだけ」「もう少し頑張れば」と片付けていました。
⚠️ 注意
体からのサインを無視し続けると、精神疾患の発症や重症化につながります。「少し疲れている」程度だと思っていても、症状が2週間以上続く場合は、専門家に相談することが重要です。
「休む = 負け」という思い込み
なぜ休めなかったのか。それは、「休む = 負け」という思い込みがあったからです。
私の中には、以下のような考えがありました。
- 「休むのは、能力が低い証拠」
- 「他の人は頑張っているのに、自分だけ休むのは甘え」
- 「休んだら、もう戻れない」
- 「休職したら、キャリアが終わる」
- 「周りに迷惑をかける」
- 「自分がいないと、仕事が回らない」
こうした思い込みが、私を休むことから遠ざけていました。
職場で倒れた日
転機は、職場で倒れた日でした。
会議中、突然めまいがして、その場に座り込んでしまいました。同僚が救急車を呼び、病院に運ばれました。検査の結果、身体的な異常は見つかりませんでしたが、医師は言いました——「すぐに心療内科を受診してください」と。
その後受診した心療内科で、「うつ病」と診断されました。そして主治医から、はっきりと言われました——「このまま働き続けると、もっと悪化します。すぐに休職してください」と。
「休むことは、弱さではありません。むしろ、これ以上悪化しないための賢明な判断です。今休まないと、もっと長く休むことになります」
— 主治医の言葉
休職初日——罪悪感と解放感
診断書を会社に提出する
診断書を持って上司に報告する日は、人生で最も辛い日の一つでした。「自分は仕事から逃げている」「期待を裏切っている」——そんな思いで、涙が止まりませんでした。
でも上司の反応は、予想外でした。「実は心配していたんだ。もっと早く言ってくれれば良かった。ゆっくり休んで、元気になって戻ってきてほしい」。
その言葉に、少しだけ救われました。
初めて「何もしない」日
休職初日、私は初めて「何もしない」という経験をしました。
朝、アラームをセットせずに自然に目覚めました。外を見ると、平日の昼間。普段なら会社にいる時間に、自宅にいる——その事実が、不思議な感覚でした。
最初は罪悪感でいっぱいでした。「今頃、皆は忙しくしているだろう」「自分がいないことで、迷惑をかけている」——そんな思いが頭を巡りました。
でも同時に、体が軽くなったような感覚もありました。「明日会社に行かなくていい」という事実が、どれほどの安堵をもたらすか——初めて知りました。
「休む許可」をもらった安心感
休職して数日経った頃、私は重要なことに気づきました——診断書という形で「休む許可」をもらったことの意味です。
これまで私は、自分に「休む許可」を出せませんでした。でも医師から診断書をもらったことで、公式に「休んでいい」と認められたのです。
この「許可」があることで、罪悪感が少しずつ軽くなっていきました。
💡 ポイント
休職は「逃げ」ではなく、医学的に必要な治療期間です。診断書は、その正当性を示すものです。罪悪感を感じる必要はありません。むしろ、適切なタイミングで休職することが、早期回復につながります。
休職中の変化——心と体が回復していく
最初の1ヶ月——ただ休む
主治医とカウンセラーから、繰り返し言われたのは——「最初の1ヶ月は、ただ休んでください」ということでした。
「何もしない」ことの難しさを、私は初めて知りました。何もしていないと、「これでいいのか」と不安になる。焦りが湧いてくる。
でもカウンセラーは言いました——「今のあなたにとって、『休むこと』が最も重要な仕事です」と。
その言葉を信じて、私はただ休むことに専念しました。寝たい時に寝る。食べたい時に食べる。何もしたくない時は、何もしない——そんな日々を過ごしました。
| 時期 | 過ごし方 | 心の状態 |
|---|---|---|
| 1週目 | ほぼ一日中寝ている | 罪悪感と安堵感が交互に |
| 2週目 | 少しずつ起きている時間が増える | 「これでいいのか」という不安 |
| 3週目 | テレビを見たり、本を読んだり | 少し落ち着いてくる |
| 4週目 | 散歩に出かけられるようになる | 「休んでもいい」と思えるように |
睡眠の質が劇的に改善
休職して最も大きく変わったのは、睡眠でした。
働いていた頃は、毎晩「明日も会社に行かなければ」というプレッシャーで、なかなか眠れませんでした。眠れても、悪夢で何度も目が覚めました。
でも休職してからは、そのプレッシャーから解放されました。徐々に、ぐっすり眠れるようになりました。
十分な睡眠が取れるようになると、日中の気分も安定してきました。「睡眠がこんなに大切だったのか」と、改めて実感しました。
「今、ここ」を感じられるようになった
働いていた頃、私の頭は常に「過去」と「未来」でいっぱいでした。過去の失敗を後悔し、未来の不安に怯える——「今」を生きることができていませんでした。
でも休職して、時間に追われない生活を送る中で、「今、ここ」を感じられるようになりました。
朝のコーヒーの香り。窓から差し込む日差しの温かさ。鳥のさえずり——こうした小さなことに、心が動くようになりました。
「生きている」という実感を、久しぶりに感じることができました。
「休むこと」の本当の意味
「何もしない」ことの価値
休職する前、私は「生産的であること」に価値を置いていました。何かを成し遂げること、結果を出すこと——それが人間の価値だと思っていました。
でも休職中、私は「何もしない」日々を過ごしました。最初は罪悪感がありましたが、次第に気づきました——「何もしない」ことにも、大きな価値があると。
休むことで、心と体が回復する。エネルギーが充電される。自分を見つめ直す時間が持てる——これらは、どんな「生産的な活動」にも劣らない価値があります。
休息も「仕事」の一つ
カウンセラーが教えてくれた言葉が、今でも心に残っています——「休息も、立派な『仕事』です」と。
アスリートは、トレーニングと同じくらい休息を大切にします。なぜなら、休息があってこそ、パフォーマンスが向上するからです。
私たちも同じです。休息があってこそ、良い仕事ができる。休むことは、怠けることではなく、次に備えるための大切なプロセスなのです。
✅ 成功のコツ
休職中は「何もしない罪悪感」と闘うことになります。しかし、休息こそが回復への最重要課題です。「休むこと」を仕事として捉え、焦らず自分のペースで過ごすことが大切です。
自分を大切にすることを学んだ
休職前の私は、自分を大切にしていませんでした。睡眠も、食事も、健康も——すべてを犠牲にして、仕事を優先していました。
でも休職中、私は初めて自分を大切にすることを学びました。
疲れたら休む。食べたいものを食べる。好きなことをする。自分の気持ちに正直になる——こうした当たり前のことが、どれほど大切かを知りました。
自分を大切にできてこそ、他人も大切にできる。自分が満たされてこそ、他人に与えられる——その真理を、休職が教えてくれました。
復職に向けて——新しい働き方
リワークプログラム
休職2ヶ月目から、リワークプログラムに参加し始めました。これは、復職に向けたリハビリテーションプログラムです。
週2日、午前中だけから始めました。生活リズムを整え、作業能力を回復し、ストレス対処法を学ぶ——段階的に、働く準備を整えていきました。
リワークで最も役立ったのは、「自分の限界を知る」ことでした。どのくらいの負荷なら大丈夫か。どんな時にストレスを感じるか——自分のことを、深く理解できました。
復職条件を会社と相談
復職に向けて、産業医や人事部と相談しました。いきなりフルタイムではなく、段階的な復職を提案してもらえました。
最初は週3日、1日4時間から。業務内容も、負担の少ないものから。そして徐々に、時間と業務量を増やしていく計画でした。
この「段階的復職」という配慮が、私には大きな安心感を与えてくれました。
新しい働き方のルール
復職前に、私は自分なりの「働き方のルール」を作りました。二度と同じ状態にならないための、予防策です。
- 睡眠時間は最低7時間確保する
- 残業は月20時間以内
- 週1日は定時退社
- 有給休暇は計画的に取得
- 疲れたら、無理せず休む
- 「NO」と言うことを恐れない
- 月1回の通院は必ず続ける
- 体からのサインを無視しない
これらのルールを守ることで、仕事と健康のバランスを保てるようになりました。
復職後——「休む」ことを続ける
復職初日の緊張と安堵
休職から3ヶ月後、私は職場に復帰しました。久しぶりのオフィス、久しぶりの同僚——緊張で手が震えました。
でも同僚たちは、温かく迎えてくれました。「おかえり」「無理しないでね」——その言葉に、涙が出そうになりました。
最初の4時間は、あっという間に過ぎました。疲れはしましたが、「働けた」という達成感がありました。
「休む権利」を使う
復職後、私は積極的に「休む権利」を使うようになりました。
疲れを感じたら、有給休暇を取る。無理な仕事は断る。定時で帰る日を作る——以前なら罪悪感を感じたであろうことを、今は堂々とできるようになりました。
なぜなら、休むことが長く働き続けるための鍵だと理解したからです。
周りの反応の変化
意外だったのは、周りの反応でした。私が休むようになっても、誰も否定的なことを言いませんでした。むしろ、「それでいいんだよ」「無理しないでね」と言ってくれる人が多かったのです。
私が恐れていた「怠けていると思われる」ということは、起こりませんでした。適切に休むことは、責任ある行動として受け入れられたのです。
休職を迷っている人へ
限界を超える前に
もし今、休職を迷っているなら、ぜひ伝えたいことがあります——限界を超える前に休んでください。
私は限界を超えてから休みましたが、そのために回復に時間がかかりました。もっと早く休んでいれば、もっと早く復帰できたかもしれません。
以下のようなサインがあったら、休職を検討してください。
- 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
- 睡眠障害が続いている
- 食欲が著しく低下している
- 仕事に行くことが恐怖
- 集中力が著しく低下している
- 何をしても楽しくない
- 「消えたい」と思うことがある
「休む = 負け」ではない
休むことは、負けることではありません。むしろ、自分を守るための賢明な判断です。
休職は、キャリアの終わりではありません。新しい働き方を見つけるための、転機です。
私も、休職前は「キャリアが終わる」と思っていました。でも実際には、休職を経て、より健康的で持続可能な働き方を見つけることができました。
会社は思っているほど困らない
「自分がいないと仕事が回らない」——そう思っているかもしれません。でも実際には、会社は何とかなります。
私がいない間、同僚たちが私の仕事をカバーしてくれました。新しい人が入ったところもあります。組織は、思っているより柔軟です。
あなたの健康の方が、はるかに大切です。会社のために自分を犠牲にする必要はありません。
休職中の経済的サポート
「休職したら、生活できない」という不安があるかもしれません。でも、様々なサポート制度があります。
- 傷病手当金(健康保険から給与の約2/3が支給)
- 自立支援医療制度(医療費の自己負担軽減)
- 障害年金(条件を満たせば受給可能)
- 会社の福利厚生制度
人事部や社会保険労務士に相談すれば、利用できる制度を教えてくれます。
「休むことは、自分への投資です。今休んで回復することで、将来長く働き続けることができる。それは、あなた自身のためでもあり、会社のためでもあるんです」
— 産業医の言葉
よくある質問
Q1: 休職期間はどのくらいが適切ですか?
症状の重さや回復の速度によって異なりますが、一般的には3ヶ月〜6ヶ月程度です。焦って早く復職すると再発のリスクが高まるため、主治医や産業医と相談しながら、十分に回復してから復職することが大切です。
Q2: 休職中は何をして過ごせばいいですか?
最初の1〜2ヶ月は「ただ休む」ことに専念してください。回復してきたら、散歩や軽い運動、趣味など、自分が楽しめることを少しずつ取り入れましょう。リワークプログラムへの参加も効果的です。
Q3: 休職したことが、キャリアに悪影響を与えませんか?
適切に休職して回復することは、長期的にはキャリアにプラスです。無理をして体調を崩し続けるより、しっかり休んで健康に働き続ける方が、会社にとっても本人にとっても良い結果になります。多くの企業が、休職・復職支援制度を整備しています。
Q4: 休職中、会社の人と連絡を取るべきですか?
基本的には、治療に専念するため連絡は最小限にすることをお勧めします。必要な連絡は人事部や産業医を通じて行い、業務に関する連絡は避けましょう。完全に遮断することが難しい場合は、月1回程度の定期報告にするなど、ルールを決めておくと良いでしょう。
Q5: 復職後、また同じ状態になるのが怖いです
その不安は自然なことです。だからこそ、復職前に働き方のルールを決め、段階的に復職し、定期的な通院を続けることが大切です。また、ストレスサインに早めに気づき、対処することで、再発を防げます。産業医や主治医と連携しながら、無理のない働き方を見つけていきましょう。
まとめ
この記事では、3ヶ月間の休職を経験して学んだ「休むことの大切さ」についてお話ししました。
- 休むことは負けではなく、自分を守るための賢明な判断です
- 十分な休息が、心と体の回復をもたらします
- 休職は終わりではなく、新しい働き方を見つけるための転機です
- 適切に休むことが、長く健康的に働き続けるための鍵です
もし今、限界を感じているなら、どうか休むことを恐れないでください。休むことは、あなたの権利であり、必要なことです。あなたの健康が、何よりも大切です。限界を超える前に、勇気を持って休んでください。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
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